英雄王と劣等生   作:がんきゃりあー

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遅くなり申し訳ない。大切な試験があったんだ。


追憶編 #3

桜井さんが手配したクルーザーは7人乗りの電動モーター付き帆走船であり、お母様と桜井さんと兄と私の4人と舵をとる人とその補助の人の2人とあと1人は...

「良い!良いではないか!クルージングとは中々良い催だ!」

と言っているのが英雄王?ことギルガメッシュさんです。彼は光の船というものを持っているみたいなのですがこういった普通の船に乗った事は余りないらしく、私達と一緒に乗っている訳です。彼、無茶苦茶楽しそうに乗っています...

 

 

クルーザーは北北西、伊江島の方向へ進路を取り、帆を抜ける風をしばらく肌で感じていて、このまま終わればよく眠れるはずだったが、肌を刺す緊張感に私は目を開けた。桜井さんは厳しい表情で沖の方を睨みつけていた。あれは潜水艦?のようなものが

「お嬢様、前へ」

私は兄から「お嬢様」と呼び掛けられ、まるで他人行儀な呼び方にやや怒りをおぼえた

「分かってます!」

私は八つ当たり気味に怒鳴ってしまった。いつもの事なのに、他人行儀な呼び方をされて悲しかったからだ。

桜井さんがCADをスタンバイしていると

「雑種如きが、誰の許しを得て我を見ている!」と彼が言い

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)

彼の後ろから朝のトレーニングで見たときより、多く剣槍斧が出現した。

すると沸き立つ泡の中から二本の黒い影がこちらへ向かって来るのが見えた。魚雷!?何の警告も無しに!?

私が硬直していると

「達也、あの黒いのは任せるぞ」

「了解」

と兄は右手を海中の迫り来る黒い影へ向けて差し伸べた。

CADを持たず、何の意味があるというの?と思っていると魚雷がバラバラに分解されたからか、二本とも海の底へ沈んで行く。

...この人がやったの?何の補助具も無しに?

「よくやった我が臣下よ」

と彼が言うと背後に出現している武具を泡の沸き立っているところに向けて発射した。

...本当に彼も何の補助具も無しに発動したというの?

数秒後、海中で爆破でもしたのだろうか、大きな衝撃と水しぶきが周りに飛び散った。

兄と王?である彼らの事を、私は何も知らない?

私は兄と彼を見詰めたまま、長椅子の上でいすくまっていた。

 

☆☆

 

国防軍の沿岸警備隊が駆けつけた時には、不審潜水艦の残骸と思われしものが浮かんでいたと言う。原因は全くわからないらしい。剣槍斧で爆発したなんて誰も信じないから当然でしょうに。それはさておき、私は彼らの事が知りたいと思い誰に聞いたらわかるのか考えているとドアがノックされた。

「お休みのところすみません。防衛軍の方が、お話を伺いたい、とのことですが...」

と桜井さんは躊躇いがちな声で言った。

「私にですか?」

「はい...私と達也で訊きたい事には答えると言ったんですけど...」

「分かりました、リビングですか?」

桜井さんが頷くのを見て、着替えてからすぐにに行くことを伝えた。

 

事情聴取に来た軍人は風間玄信大尉と名乗って潜水艦についての質疑が行われた。桜井さんは国防軍の対応に不満を持っていた。桜井さんに睨まれた大尉さんは兄に問いを向けていた...あれ?この場に彼は居ないの?と思い桜井さんに彼が居ないのか聞くと

「王様は朝から外出しています。行き先ですか?私にもわからないです。」

...自由人だ、と思っていると大尉さんと兄の質疑が終わり

「ご協力感謝します。」

と大尉さんは立ち上がり、敬礼しながらそう言った。

 

大尉さんの見送りは私と兄が出た。表の通りに車が止めてあって、兵隊さんが二人立っていて、その内の一人が昨日の夕方に散歩道で絡んできた人だった。大尉さんは昨日の事について謝罪をし、兄は受け容れ、大尉は「都合が良ければ恩納基地に訪れてくれ。興味を持って貰えると思う」と言い残して車に乗り込んだ。

 

☆☆☆

 

バカンス三日目は朝から荒れ模様だった。そのためビーチへ出ようとは思わない。そこで琉球舞踊を観に行く事になったのだが、どうやらこの公演は女性限定らしい、そのためお母様は兄に

「達也、貴方は今日一日自由にして良いわ」と言い

「はい」

と兄が答えると

「達也よ、貴様は軍の雑種供から基地に誘われたそうではないか。我が庭に敵の侵入を許し、気づきもしなかった軍に我は興味があるぞ。なぁに、少し前の我なら基地を潰すことなど容易いことよ、だが今はそんな事するほど我の器は小そうない。」

と王様が言った。基地を潰すなんて貴方は何者ですか?

「達也、英雄王もそう言っているのだから見学して来なさい。もしかしたら訓練にさんかさせてもらえるかもしれないし」

「わかりました。」

兄は無表情に受け容れた。このままでは彼らと別れてしまう。

「あの、お母様!」

気がつけば私は口が開いていた。

「わたしも、に、兄さん達と一緒に行っても良いですか?わ、わたしも軍の魔法師がどんな訓練をしているのか興味がありますし、自分のガーディアンの実力も把握したいと思いましたので...」

「そう、感心ね...達也、英雄王さん、聞いてのとおり、基地の見学には、深雪さんが同行します。」

「わかりました」

「...まぁ、よかろう」

なんで彼は嫌がってるんですかね...

「ついては一つ注意しておきます。人前には、深雪さんに敬語を使ってはなりません。深雪さんのことは『お嬢様』ではなく『深雪』と呼びなさい。深雪さんが四葉の次期当主だと覚えられる可能性のある言動は禁止します。」

「...分かりました」

「それと、英雄王さんは...」

「なに、言われずともわかる。達也、基地にいる時のみ我の名を呼び捨てにすることを許そう。我の寛大な器に感謝するがよい。」

「有難き幸せです」

そんな無表情で言ってもね...

「くれぐれも勘違いをしてはなりませんよ。あくまで第三者の目を欺く為の方便です。深雪さんと貴方の関係に何らの変更もありません」

お母様のお言葉に兄は短く「肝に命じます」とだけ答えた。

 

 

 


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