「はぁ...」
思わずため息が漏れる。何故なら黒羽貢さんからパーティーの招待状が届いたからだ。今晩くらいはゆっくりしたかったのに...。
「深雪さん、用意は出来ましたか?」
と桜井さんの声がした。
「あっ、はい」
すると桜井さんは部屋の中へ入ってきた。が、かなり冴えない顔をしていた。
「どうかなさったのですか?」
「いえ...王様が騒ぎを起こさないか心配なのです...」
確かに英雄王?である彼は前のパーティーの時に黒羽貢さんの事を雑種と言った事により騒ぎになった。原因は彼を招待しなかった事だと聞いている。彼曰く「王である我を招待しないとはどういう了見だ!」と会場で言ったという...子供かあんたは。
「私から何か言った方がいいですかね?」
と桜井さんに提案してみる。
「そうしていただけると助かります!」
桜井さんが満面の笑みを浮かべていた。そんなに喜ぶ事なのですね...
*
私は今王様の部屋の前に来ています。
彼の部屋は特別に用意されているいわば彼専用の部屋です。ちなみに彼はお母様と同じくらい偉いらしい。ガーディアンなのに...
取り敢えず桜井さんに頼まれたためドアのノックする。
「深雪でございます。あの、王様さんお邪魔してよろしいですか?」
「深雪か、構わんぞ。」
彼からの許し?が出たので中に入ると、なんとまぁお母様の部屋より設備がよろしいことで
「それで、我に何か用か?」
「あの、今日のパーティーなのですが、騒ぎにを起こさないようにして欲しいのですが」
と言ってみた、色々言われるだろなぁ、、、
「フム、久々の深雪からの頼みか。仕方あるまい、騒ぎを起こさぬように我なりに善処しようではないか」
と普通に承諾された。断られると思ったのに。
「意外だな、と思っておるな?我の王の器をなんだと思っておる?」
「いえ、その...」
「まぁよい、他に用が無ければさっさと立ち去るがよい。」
と言われ素直に部屋から出た。
まぁ桜井さんもこれで楽になるでしょうに。相変わらず冷たい対応ですけど。
**
パーティー会場
「叔父様、本日はお招きありがとうございます」
私は頭を下げて型通りの挨拶をした。
「よく来てくれたね、深雪ちゃん。お母様は大丈夫かい?」
「お気遣い、恐れ入ります。少し疲れが出ているだけだと思いますが、本日は大事を取らせていただきました。」
「それを聞いて私も一安心だよ。おっと、こんなところで立ち話もなんだな。ささ、奥へどうぞ。亜夜子も文弥も、深雪ちゃんと会うのを楽しみにしていたんだよ」
奥へ連れていかれ黒羽親子の相手をしていた。そこへ
「深雪!王である我を置いて先にいくとはどういう了見だ!」
彼が乱入してきた...
「「王様!!」」
と言い黒羽双子は彼の元へ向かった
「ほう、我が臣下の亜矢子と文弥ではないか」
兄の他にも臣下はいるのね...
二人は彼と物凄く楽しそうに話していた。私と話すよりも。
ちなみに文弥は兄を尊敬していて、将来は王様みたいな堂々とした人になりたいという。間違っても彼の様な言葉使いにならないで欲しい...
なお、叔父様は苦虫を噛み潰していらっしゃった。彼と仲悪いですもんね。
叔父様は彼のもとへ向かい
「これはこれは、英雄王。来ていただき光栄でございます。」
完璧な作り笑いをしている。が、
「道化が。その様な作り笑いで我の目を誤魔化せると思っておったか?」
何言ってるんですかぁぁ!!騒ぎを起こさないようにに言いましたのに!
「...」
叔父様が黙っている...かなり怒っているのかな?
「消え失せよ、貴様に用はない」
そう言うと叔父様は出ていった。
彼、一体何者なの?私のガーディアンでしたね...
***
昨日の晩は遅くなったと言うのに私はお日様も登らない時間に目を覚ましていた。取り敢えず空気を入れ替えようと思いカーテンを開ける窓を開けた。ふと下を見ると兄と彼がいた。
トレー二ングをするのだろうと思っていた。彼の後ろから剣、槍、斧等が出てくるまでは、、、
その武具を兄に向けて撃っていた。兄は精一杯それを避けていた。これトレー二ングなのでしょうか...
「ほう、やるではないか。ならばこれならどうする?」
と兄の周りから剣槍斧が出てきて兄に向かって撃っていた。
兄は必死に避けていたがたまに武具に当たってしまってたが続けられた。
暫くするとトレー二ング?が終了したのだろう、剣などが出てこなくなった。
「ここまでにしておくか、あれをそこそこ避けれる様になるとはな、誉めて遣わすぞ達也よ!」
「ありがとうございます。」
二人は別荘の中へ戻った。
彼のあらゆるところから武具が出てくる魔法やあれを避ける兄が同じ私のガーディアンとは思えなかった。
あと兄の避ける姿を見ている際に王様から視線を感じたのは気のせいだと思いたい。
****
私は今別荘最寄のビーチに来て兄の用意したパラソルの下の、兄が敷いたシートの上に、うつ伏せに身体を横たえていた。四時からセーリングヨットで沖に出るのだが、午前中に予定はないので桜井さんの勧めでビーチでのんびりしている。私の横には腰を下して水平線へ目を向けている兄がいる。例の彼はというと
「我は自室で寛ぐ。達也、深雪の護衛は任せたぞ。」
と言っていたため彼は自室にいる。
そのため現在は兄と二人きりである。
...彼と二人きりの時は気まずいけれど、兄と二人きりの時は気まずいと思わないのは何故だろう。
まぁそんなことは置いておいて兄と彼の関係が知りたいと思っていたため聞いてみる事にした。
「ちょっと、聞きたい事があるのですが」
「何ですか?」
「兄にとって、かr...王様はどういう人ですか?」
兄は少し考える素振りをみせ
「もう一人の親、ですかね」
「親、ですか?」
「はい。自分勝手ではありますが、王様は無意味な事は命令しませんし、家族というより主従関係ではありますが一人の人間として接してくれますし、
自分の悪口を言われたら王様は悪口を言った人へ怒り(脅し)にいってくれるのです。そのため自分は王様の役に立ちたいと思えるのです。」
兄は普段私にみせない笑顔でそう言っていた。私の知っている彼と全然違う!彼はそんな人だったの?
「そう、ですか」
何故、私に対して彼は厳しいのでしょうか?それがわかるのはまだまだ先なのかもしれない。