追憶編 ♯1
こんにちは。私の名前は司波深雪です。今、私は夏休みを利用した家族旅行で沖縄に向かっています。家族旅行といってもプライベートじゃないケースがほとんどなのでガラにも無くウキウキしているのですが...問題が二つあります。一つ目は兄が一緒という事です。私は別に兄のことは嫌いではない。だけど苦手だ。正直一つ目のことはどうでもいい。問題なのは二つ目です。その二つ目ですが...後ろの三人座りのシートを独り占めしてまるで我が物のように座っている金髪の青年...英雄王?さんがついて来ていることです。私はこの人が嫌いだ。嫌いです。嫌いなんです。彼は私のガーディアンの一人なんですが、初対面の時私に向かって、「我の名を知らぬこの雑種の護衛をしろと?」といきなりバカにされ、いや悪口を吐かれました...当然私は悪口を言われたため怒ったのですが「煩いぞ雑種、身の程をわきまえぬか!」身の程をわきまえるのはどっちなんでしょうか...私は言い返そうとしましたが彼からの殺気が凄かったので言い返せませんでした...
今では雑種と呼ばなくなりましたがそれでも私は彼のことは大っ嫌いです!
*
飛行機から降りて別荘へ向かい別荘に着き
「いらっしゃいませ、奥様。英雄王さま。深雪さんも達也君も良く来たわね。」
と出迎えてくれたのは桜井穂波さんだった。
「さぁ、どうぞお入りください。麦茶も冷やしておりますよ。それともお茶を淹れましょうか?」
「せっかくだから麦茶をいただくわ」
とお母様が言い
「畏まりました。深雪さんと達也君も麦茶でよろしいですか?」
「はい、ありがとうございます」
「お手数をおかけします」
と私と兄が言い
「王様はいかがなさいますか?」
「我には最高の酒をだせ、くだらない酒を出そうものならこの家ごと吹き飛ばすぞ!」
「ええっと...」
桜井さんが困惑してる...
「冗談だ、英雄王ジョーク、大いに笑うがよいフハハハハ!」
「アハハハハ...」
桜井さん、ご愁傷様です。
**
「お母様、少し歩いてきます」
別荘に閉じこもっているのは勿体無い気がしたので、散歩に行くことにした。
「深雪さん、達也と王様を連れてお行きなさい」
「...わかりました」
兄はともかく彼も連れていかなければならないなんて、せっかくのお散歩が台無しになったが余計な心配はかけたくなかったため渋々了承した。
私は兄と彼を連れて海岸を歩いていた。意外にも彼と兄の関係は良い、私よりも。そのためか達也と話しながら彼はついて来ている。
(何故私と兄の対応がこうも違うのでしょうか...)そう思っていると前から来た人とぶつかってしまった。今のは私が悪いのだが、2回目は向こうからぶつかってきたのだ、しかし相手は大男だった。反射的な怒りが恐怖に取って代われたが、視界が兄の背中に塞がれると何故か安心感があった。
「あぁ?ガキに用はないぜ?」
「ハッ、チキン野郎がカッコつけてんじゃねーよ!」
と見下していた。
ちなみに彼はこんな状態でもただ観ていた。
「わびを求めるつもりは無い。来た道を引き返せ。それがお互いの為だ」
「なんだと?」
「聞こえていたはずだが?」
「テメェ!大人を舐めんじゃねえ!」
と直後男が兄に殴りかかろうとしたら男の顔スレスレに剣が飛ばされていた。...剣?何故剣が飛ばされていたのだろうか?
「雑種如きが。我が臣下に手を出そうものなら死罪に値するが我が寛大な心をもってして今すぐ立ち去ることで命は保証しよう」
と彼がこちらに近寄ってきた。もしかして彼が剣を飛ばしたの?それならば一体どこから剣を出したのだろうか?
「あ?なんだ?テメェは?」
「我は王の中の王。雑種如きに名乗る程安い名等ではないわ!」
...相変わらず堂々としていて相手を見下していますね。
「なんだとぉ!」
と彼を殴ろうとすると突然男の体全体に鎖が巻かれた。
「なんだ!これは!」
男は驚いているが実は私もかなり驚いている。彼が魔法を使っている所などみたことが無い。それに加えて彼はCADは持っていないからどうやって発動しているのかが全くわからない。
...しかし兄はなぜそこまで驚いていないのだろうか?
「呆れた男よ、自分自身の実力を知らず、我が臣下だけでなく我に手を出そうとは、死をもって償え」
と彼は後ろから剣を出現させてそれを手に取り男を斬ろうとするが
「やめておけ、王よ」
そう言ったのは兄だ。
「ここで人を殺せば問題になる。」
「...そうか、運がよかったな雑種。達也がいなければ今頃死んでいただろうな。」
と男に巻かれていた鎖が消滅した。
「黙って失せよ、雑種が」
「......」
彼の言葉通り男達は黙ってその場を立ち去った。
「深雪さん、何かあったんですか?」
別荘に戻ってきたら桜井さんが私に話しかけてきた
「ちょっと...男の人に絡まれてしまって」
「まぁ...それでその男は?」
「それは、兄と、かr...王様が追い払ってくれました。」
と言うと桜井さんは彼の元へ行き
「王様、深雪さんを守っていただきありがとうございます」
「フハハハハ!臣下である達也の妹を守るなど容易いことよ!それと穂波よ、最高の茶を出せ。くだらない茶を出せばわかっておるな?」
「畏まりました。」
と桜井さんはお茶を淹れにいった。
でもあの人は私では無くて兄を守ろうとしていた。私の事など、どうでもよかったのではと思った。
なんかの宗教みたいになってる気がする...が気にしない気にしない()