転生して気が付いたらIS学園で教師やってました。   作:逆立ちバナナテキーラ添え

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ほんへ、始まります。

カンッ!!(謎の金属音)


特訓付けてくれよな~。かしこまり!!

 目の前で人が倒れている。私が守るべき人が倒れている。息も絶え絶えで苦しそうにもがいている。

 

 ただ、それは正当な結果でなるべくしてなった事だ。束の妹もセシリアちゃんもその光景を見ることしか出来ない。

 

 倒れてる人──一夏君を叩き起こす。まだだ。まだ、へばってもらっては困る。この子には現実を叩き込まなければならない。自分の無力さを、愚かさを、自覚させねばならない。

 

 そうして私は斬りかかってくる一夏君にマガジン一本分の鉛弾と心臓への刺突をくれてやった。

 

 

 

 さて、何故このような状況になっているのか。時間は少しばかり遡る。

 

 

 

 ある朝、私は織斑先生、山田先生と話しながら教室へと向かっていた。SHRでの伝達事項、授業内容の確認、今朝の朝会で連絡された二組に編入してくる転校生の事。大方、情報が共有出来た所で一組の方が何やら賑やかなことに気付いた。

 

 気になりつつ、教室に入ると朝会で言っていた転校生と一夏君が喋っていた。どうやら知り合いだったようだ。確か転校生は中国の代表候補生だった気がする。そんな子と知り合いとは、案外一夏君の人脈も馬鹿に出来ないのかな?とか考えてたら転校生の子は織斑先生の出席簿(宝具)を喰らって帰っていった。やっぱりチフクレスは(以下略)

 

 そんなことがあった翌日。放課後、私は一夏君に土下座されてた。箒ちゃんは機嫌悪そうだし、セシリアちゃんはサムズアップしてる。意味が分からないよ。(QB感)

 

 「一夏君どうしたんだい?いや、それよりも取り敢えず頭を上げてくれないか?」

 

 「先生!!」

 

 「どうしたんだい?随分と切羽詰まってるようだけれど……」

 

 「俺に特訓を付けてください!!」

 

 はぁ……。特訓ですかい……?

 

 「それはISのってことかな?」

 

 「はい!!」

 

 そこで思い出した。今週はクラス対抗戦があるという事を。勿論、一夏君も出場するのだから私の所に来たという訳だろう。PCの中にあるトーナメント表を確認してみると、昨日転校してきた二組の子と試合するらしい。だが、確か二組の代表はカナダの代表候補生だった気がする。何故、この子がクラス代表になっているのだろう?

 

 まぁ、その辺りは後で二組の担任に聞くとして、私としてはこの特訓というかレッスンは受けても良いと思っていた。立て込んだ仕事も無いし、以前も私に頼んできた一夏君を無下には出来ない。箒ちゃんには悪いが、短い間一夏君を借りる事にした。

 

 しかし、それにしてもだ。箒ちゃんの機嫌が悪すぎた。一夏君を取られることで拗ねているとかそういうレベルじゃない。般若のような形相をしていた。そこで一夏君の頼みを了承した後、一夏君を先に帰して箒ちゃんとセシリアちゃんに何かあったのか聞いてみた。

 

 いやぁ、一夏君は一辺死ぬべきですね。女の子からの逆プロポーズを袖にして、勘違いとは度し難い。鈍感とかそういう次元では無いよ。織斑先生から鈍感、束から女難爆弾と聞いていたけど、ここまでとは……。織斑家の長男は化け物か!?よく今まで刺されなかったなぁ。これじゃあ二組の子が可哀想じゃないか。

 

 

 

 という訳で今に至ります。

 

 「先生、これ途中から八つ当たりになってません!?」

 

 「気のせいだよ。さぁ、もう一度だ。君が泣いても殴るのをやめない」

 

 「やっぱり何か怒ってますよね!?」

 

 「御託は良い。今日の私は阿修羅すら凌駕する存在だ!!来い、少年!!」

 

 「俺がガンダムだああああああああああ!!」

 

 そんな感じで斬りかかってくる一夏君の腹に膝蹴りを入れ、動きが止まった所をナイフで十七分割にしていく。もう、かれこれ一時間ほど同じ事を繰り返している。レッスンを始めた時に比べれば大分動きは良くなってきた。これも才能という物だろう。だがまだ甘いし、二組の子に勝てる訳でもない。

 

 実はあの二組の子は相当凄い。代表候補生という立場にいる以上それなりの実力があることは証明されているが、驚くべき所はそこではない。彼女は代表候補生、しかも専用機持ちに一年半でなったのだ。勿論、適正ランクや努力したという要因もあったのだろう。しかしそれ以上の才能が無ければ、一年半という短期間でそこまで辿り着くことは出来ないだろう。ある意味、この学年で一番の天才肌と言える。

 

 正直、勝てるとは思わない。セシリアちゃんの時もそうだったが、今回はそれ以上に分が悪い。何せ、相手は怒りが一周回って逆に冷静になっているのだから。淡々と潰しに来るだろう。さらに、一夏君自身搦め手を忌避する傾向がある。その真っ直ぐさ、愚直さ、彼の人間としての美徳が仇になる。

 

 一夏君はどんな相手にも勝てるジョーカーを持っている。言わずと知れた『零落白夜』だ。あれはどんなISであれ一太刀浴びせれば、それだけで必殺の強力無比な一撃。故に弱くもある。要は近づけなければどうという事はないからだ。加えて『零落白夜』の特性をクローズアップしてみても弱点が浮かび上がる。燃費の悪さ、パイロットの技量に大きく左右される刀という武装。

 

 相手も悪い。この相手がセシリアちゃんのような支援特化型のパイロットなら勝率が少し上がった。しかし二組の子は近接戦闘もこなせる。中近距離でそつなく戦えるオールラウンダーだ。同じ天才肌でもセシリアちゃんのような一つに秀でたタイプではなく、あらゆる要求にそれなり以上の成果を以て答えられる便利なタイプだ。一歩間違えば器用貧乏になってしまうが、そうなってない所も彼女の実力だろう。

 

 そして何よりも相手の機体がネックだ。中国が開発した第三世代機『甲龍』。中近距離での戦闘を想定しているからか大型の青竜刀を二基、搭載しているがそれは大した脅威ではない。

 

 『龍砲』、衝撃砲という不可視の砲弾を撃ち出す第三世代兵装だ。空間自体に圧力をかけ砲身を形成するため、その砲身も目視出来ない。近距離用の散弾仕様にする事も出来るという一夏君にとって最大の障害だ。

 

 はっきり言おう。一夏君が勝つ可能性は限り無く低い。一組にはデザートのフリーパスは諦めてもらおう。

 

 一夏君がジャイアントキリングを起こす可能性はある。だが、それを考慮してもキツイだろう。勝ちに行くのならばダーティープレイを前提とした搦め手満載の一夏君自己嫌悪セットで行くしかないだろう。

 

 まぁ、それでも最善は尽くすのだけれど。

 

 「一夏君、被撃墜王の一夏君。君は今まで何度墜とされた?」

 

 地面で大の字に伸びる一夏君を見下ろす。とても悔しそうな顔をしている。専用機に乗っていて、訓練機のラファールにこてんぱんにされたら無理もないか。

 

 「君は学習しないね。本来ならば君は搦め手を用いた短期決戦を挑むべきだが、君自身のこだわりで正々堂々等という勝率の低い方法を取ろうとしている」

 

 「それは……!!」

 

 「君の意見は聞いてないよ。特訓をつけてほしいと言ってきたのは君の方だ。だからね、はっきりと言わせてもらうよ。織斑一夏、君は凰鈴音に勝てない」

 

 「先生!!」

 

 箒ちゃんが叫んでいる。だけど、一夏君に自分がいる位置を知って貰わなければならない。

 

 「外野は黙っていろ。さて、一夏君ここで質問だ。君は銃撃で撃墜された時避けようとしたかい?」

 

 「はい……」

 

 「どうやって?」

 

 「ISのロックオンアラートで……」

 

 ダメだ。目視出来る銃弾でこれだ。衝撃砲を相手にした時、何も出来ずにフクロにされて終わってしまう。

 

 「一夏君、ハイパーセンサーが何の為にあると思う?」

 

 銃を撃つ時、多くの者はサイトを覗くであろう。アイアンサイトであれ、ACOGであれ、ホロサイトであれだ。狙いを定めずに撃っても意図した場所に着弾する訳がない。狙うべき場所を自分の目で見据える。つまり、射線とは視線である。

 

 「君は銃弾を避けるのにロックオンアラートと自分の目を頼っているようだけど、それじゃあ遅いって事は理解出来たよね?ではハイパーセンサーは何の為にあると思う?元はと言えば広大な宇宙空間での作業を想定し作られた物だけど、その機能はこのような場面で活かせないかな?」

 

 「それは……」

 

 「時間もない。本来ならば君が考えて、答えを出すべきなのだけれど私が言おう。ハイパーセンサーは遠方、後方すら見えることは分かるだろう?ならば何故、敵の視線を見ないんだい?確かに君の動体視力はISに乗ることによって強化されている。だが、それでも無理がある。音速以上で飛ぶ弾丸を目視で避けるだなんて人間辞めてるからね。相手を見ないで狙うだなんて離れ業をやってのける人外も早々いない。相手の視線をよく見なさい。その視線の先が射線だ。ことさら、凰鈴音に関してはその視線一つが勝負を分けることになるだろうね」

 

 第三世代兵装、イメージインターフェースを使用した兵装群は文字通りパイロットのイメージが要になる。セシリアちゃんのビットや凰鈴音の衝撃砲はその最たる物だろう。サイトも砲身もない衝撃砲を正確に撃つためにはやはり相手をしっかりと目視で捉える必要がある。いくら砲身の稼働限界が無いとは言え、ノールックで真後ろの目標を撃つだなんて事が出来るのは世界でも五人といないだろう。

 

 これが一夏君が凰鈴音に喰らいつく為の最低条件だ。逆に言えば、これが出来れば勝率が僅かだが上がるのだ。勿論ダーティープレイに徹した方が勝率はより上がる。だが、彼がやらないのならばそれも良いのだろう。ガキの喧嘩、試合(遊び)なのだ。私はそれを見守り、応援するだけだ。たまにこうして、手助けをするぐらいだ。

 

 「さぁ、一夏君。無力な底辺の屑野郎。もう一度言う。君は凰鈴音には勝てないだろう」

 

 「あぁ……そうだろうな……」

 

 「へぇ、分かってるじゃないか。で、どうするんだい?棄権するか?」

 

 「いや俺は棄権しない。例え、勝てなくとも俺は目の前の勝負から逃げたくない。俺の全力を鈴にぶつけたい。だから俺は諦めません。何度墜とされても、貴方から何かを得るまで倒れません」

 

 そう言って一夏君は雪片を正眼に構えた。いいね。うん。実に良い。やっぱり、人の可能性というのは心を沸かすような何かがある。

 

 「一夏君。私はさっき、君を無力な底辺の屑野郎と言った。事実だ。君の実力はとるに足らない、粗雑な物だ。だが、それは同時にこれ以上の下は無いという事でもある。そして君はオルコットさんの時、可能性を見せた。格上を倒せる(ジャイアントキリング)という可能性をだ。それを偽物だと言う輩もいるかもしれない。だが、私はそうは思わない。それこそが、織斑一夏の可能性だ」

 

 その可能性はまだ発展途上だ。花開いてない蕾だ。だが、その花が咲いた時、彼は何かを変えてくれるだろう。漠然とだが、私はそう思っている。だから──

 

 「証明してみせよう。君になら、それが出来る筈だ」

 

 ──立ち上がれ、少年。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 でも、プロポーズの件はもう許さねぇからなぁ?(憤怒)凰さんが可哀想だろうが!!いい加減にしろ!!




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