転生して気が付いたらIS学園で教師やってました。 作:逆立ちバナナテキーラ添え
(本編は)今年最後の投稿。
嘘は吐いて無いからセーフだね!!あぁ、止めて!!滅尽滅相しないで!!
そんな訳で、FGO二部の不穏さとファフナー新作のPVの不穏さに吊られて書いてしまった番外編です。まぁ、50話記念も合わせて書いてみました。
我らが副部長の登場に度肝を抜かれ、暫くピンク髪の女キャラに不信感を持ってしまいそうになる病に罹患しました。
それでは、番外編どうぞ!!
一夏君、夜刀様ルートです。
此は外典である。本来、訪れることの無い形の滅びを迎えた可能性の果て。
しかし、此は決して無視出来ない可能性でもある。『黒き鋼』が、『全能を騙る者』が。『開闢者』が『戦乙女』が■■■■■■に敗れ、滅ぼされ、彼らが死守してきた『
目を逸らしてはならない。何かを掛け違えれば、世界はいとも簡単にその者に塗り潰される。薄氷の上を全力で走っているようなものなのだから。
狂い哭け、求道者。貴様の末路は───
海に浮かぶ、白亜の残骸。崩れ、滅び、風化しかけている巨大な廃墟。栄華も、営みも、愛すべき平穏も、そこにあった全てが踏みにじられた地。嘗て、ラインアークと呼ばれた自由の楽園は今や見る影も無い。
跡には一人、男が佇む。玉座に座りし、長髪の青年。血の涙を流し、呪詛を吐き、襤褸を纏う。肌も髪も変色し、本来の面影は何処にも無い。
辺獄が王、琳菩。楽園の残骸を、嘗ての宝石の墓標を守護する墓守りの王。彼の眼前には若き新鋭たち。彼を睨み付け、滅びた世界の新生を成し遂げんとする勇士たちの倒れ伏す様が写る。
どだい、勝てる相手では無かった。ここに集まりし勇士たちは救世を掲げた者たち。征伐軍と銘打った彼らは■■■■■■打倒の為、万全を期す為、目下最大の反抗勢力であるラインアークの残党──辺獄を討つ為にこの地へと乗り込んだ。琳菩の配下を打ち倒し、玉座へと辿り着いたが、彼の王の圧倒的な力で一瞬にして戦線は瓦解。部分展開のみであしらわれ、次々と墜とされた。無手で薙がれ、殴られ、突かれた。征伐軍は壊滅。彼らの救世は潰えた。
琳菩は薄く開かれた瞳を地にむける。地を這う新鋭を一瞥し、目蓋を閉じる。部分展開された右腕を格納し、玉座から立ち上がった。息を吐き出し、天を仰ぐ。
「時は満ちた──」
琳菩の両眼が見開かれる。襤褸を脱ぎ捨てた彼に赤雷が纏わり付く。
まず、感じたのは『嚇怒』。
兄貴分であり、恩師であり、友であり、ライバルであった男を殺された。その胸は貫かれ、燃える大地へと墜とされた。彼の友も鏖殺された。彼の骸を貶める邪悪に激昂し、滅しようとして滅ぼされた。深淵の守り人のうち二名が絶え、恩師が守ろうとした叡智の結晶たる女も殺された。八つ裂きに、ばらばらに、原型を留めることなく、殺された。琳菩を愛した者たちも殺された。琳菩に助けを求めながら、涙を流しながらも最後まで邪悪に屈しなかった。共に学んだ友も、教えを授けてくれた先達も、死地を潜り抜けた戦友も、皆、殺された。そして、琳菩を逃がすために殿を務めた最愛の姉も──
嗚呼、何故。何故、彼らが殺されなければならかった?無軌道に破壊を振り撒き、愛しき
認めぬ、認めてなるものか。許さぬ、赦さぬ、赦さない、許さない、滅びろ、滅びろ、滅びろ。我が憎悪を知れ、■■■■■■よ。その存在すら許さない。確実に滅ぼしてやる。その罪は重いぞ。我が求道の果てを穢した報いを受けろ。
「許さない。認めない。消えてなるものか」
僅かに生き延びた友人たちと廃墟と化したラインアークに籠り、どれ程の時が経ったか。皆、肉体を捨て、人を辞め、そして消えていった。
「シャル、セシリア、鈴」
名を呼ぶ。もう、何処にもいない彼の宝石たちの名を己に刻み付けるように紡ぐ。
「箒、クロエ、ラウラ、簪、先輩、フランク」
絞り出すように、喉を震わせる。その声色に呪詛を吐いていた頃の負の感情は無い。何処までも真っ直ぐで、曇りの無い声が虚空に流れる。
「本屋、束さん、先生」
数拍置いて、弱々しく最後の名を謳う。
「千冬姉」
血涙を流していた姿は無く、雷がとぐろを巻き、彼の身体に在りし日の
「あなたたちの無念も、怒りも、全て私が背負う。あなたたちの死は無断ではない。その全てを私が晴らそう。あぁ、敗けはしない。勝つのは私だ」
時を経て、完全な復活を果たした守り人は中空を睨み付けた。宣戦布告する。
「感じるぞ、■■■■■■■。貴様の存在を。深淵は近い。もうすぐ、底に到達する」
深淵を握られたあの時から、底への穴は穿たれ、ずっと潜行していた。ネットワークの最奥、電子と量子の無限の大海を肉体と意識を切り離し、底を目指して潜っていた。『開闢者』の残した叡智の全て、世界の全てがある場所。『開闢者』が創り、『全能を騙る者』が改編し、『黒き鋼』と琳菩が守護した極大の拡張次元。
嘗て、深淵へ潜行する為に掛かった時間は大した物では無かった。ほんの少し息を止めている程の時間。体感にして三十秒と少し。だが、今は違う。深淵の主権を握った所有者の力量によって、底の深度は変動する。守り人たちが深淵を守護していた時とは比べ物にならない程の深さに座する怨敵。幾星霜の長きに渡り、潜行し続けてもまだ、辿り着けない。それは敵の絶望的なまでの力を如実に示している。
「私を滅ぼし損なったことが貴様の敗因だ。それを教えてやる。貴様の底を砕いてやろう」
だが、琳菩の瞳には諦念も恐れも無い。彼は一辺の曇りなく、勝利を信じている。
逆巻く雷と粒子が光を増す。深淵に到達すれば、機体ごとそこに引き摺り込まれるだろう。まだ仮初めの肉体も、機体も、物質としてこの世界に存在している。ならば、早く済まそう。懸案事項は早めにクリアさせるべきであると、琳菩は考える。新生し、意識と肉体の結合を済ませた琳菩の思考は明瞭だ。怨敵に滅ぼされ掛けた傷とそれより生じた消耗は皆無。これまでの死人のような、自己防衛の為に纏った何も考えられない程の憎悪の殻を脱ぎ捨てた彼は過去最大の速度で潜行している。時間が無い故に、彼は口を開く。
「なぁ、まだ息はあるんだろう?立てよ。四肢が繋がっているなら、まだ闘えるだろう?」
倒れ伏す人型へ向けて、嘲笑とも取れる笑みを浮かべる。這いつくばる少年を見下し、一見意味の無いように見える挑発を投げ掛ける。
「その程度で救世などと宣っているのか?笑わせないでくれよ、巫山戯が過ぎるぞ」
雷が舞い、周囲の熱が上がっていく。琳菩の赫く淀んだ瞳が燃える。
「来いよ、■の■■■■。お前が立たなければ、私が奴を滅ぼして、深淵を握るぞ?」
瞬間、一つ、動く屍があった。
「まだだ……、まだ、終わっちゃ……いねぇ……」
臓腑が零れ、血が止めどなく溢れる。口元は赤く染まり、肌の色は塗り潰されている。辛うじて四肢が繋がっているものの、到底立ち上がることの出来る状態では無かった。だが、少年は四肢にありったけの力を込める。地を踏み締め、足を震わせながら懸命に起き上がろうとする。
「そうだ、その程度でくたばっているのなら、救世なぞ夢物語に過ぎん。その程度で何が成せる?私の師ならば、その程度の傷で屈する事は無かったぞ?」
「うるせェんだよ……まだまだ、くたばっちゃいねェ……勝手に殺してんじゃねぇぞ……」
艶の無い純黒の機体を纏い、自分を睨み付ける少年に琳菩は懐かしさを覚えた。昔の自分のような目付き、何処となく恩師に似たカラーリングの機体、叩いても叩いても立ち上がる精神。何もかもが幸せだった、在りし日の情景が脳裏を過る。
そうか、と琳菩は一人、胸中で納得する。こいつならば不足は無いだろう。奴を打倒しうる器だ。この少年に付随する要素ではなく、少年自身に対する評価を琳菩は下す。良い戦士だ。義と理想の為に闘う高潔な者だが、師を越え、過去最強と呼ばれるようになってしまった琳菩を越える程の暴威は無いだろう。
『弟君よ、何時か奴の■■■■が現れるだろう。深淵を握るということは、必ずそういうモノを生み出すということでもある。その時は──』
『全能を騙る者』の最後の言葉を回顧する。漸く現れた待ち人。器量は十分。気に入った。だがやはり、少しばかり力が足りない。故に、揉んでやろう後輩。今のお前では些か心許ない。老害になった自分に出来るのはそれぐらいなのだから、と琳菩は口角を僅かに吊り上げる。
少年は本能で察知してしまう。眼前に佇む男の出鱈目さを感じ取ってしまった。一騎当千の征伐軍を片手で全滅させた古き守り人の完全なる姿は見る者に言い知れぬ重圧を掛ける。視線一つで内臓を潰されるような圧が身体を襲う。位階が違うのだ。自分たちと立っている場所が違う。雲泥以上、食物連鎖の最下位に座する生物と空想上、神話の修羅神仏程の差があると言っても過言では無い。
「嘗めてんじゃねぇぞ、てめぇが本気出したぐらいで俺は倒れねぇ。倒れてたまるか。俺は止まれねぇんだよォ……!!」
息を切らし、焦点の合わない目を見開いて少年は叫ぶ。恐怖?痛み?そのような雑念を打ち捨てて、腹の底から吠える。強がりでも虚勢でも無い、自分の勝利を信じ、覇を貫く男の矜持。勝つのは当たり前。勝たねば、幾人もの民をこの末世から救えない。見たところ、征伐軍の仲間は皆微かに息がある。手加減されていたかは兎も角、僥倖だ。
静かに少年を見る琳菩に揺らぎは無い。機体のコアから流れてくる情報を読み取り、敵を分析する。少しずつではあるが、少年の傷が修復されていっているようだ。血中に治療用のナノマシンを仕込んでいる訳でない。コアが少年を生き永らえさせようとしている。大した可能性だ。単一仕様能力でも、コア特有の物でもなく、意思として早期の段階──人格形成以前からパイロットを生かそうとしている。
やがて、機体を光が包み、損傷すら修復されていく。
「大した啖呵だ。だが、それだけか?何の為に進む?私を倒し、この地を荒らしてでも成し遂げるべき理想があるのか?語ってみせろ、塵が」
「てめぇを、ぶっ倒して皆を救う。俺の後ろで倒れてる奴らも、何も知らずにこの世界に苦しめられている奴らも、全員だ。だから、そこをどけ老害。もう俺たちの時代だ、てめぇがのうのうと居座って良い時代じゃねぇんだよ!!皆が心の底から笑える世界を、こんな冷てぇ世界じゃなくて、暖けぇ世界を作るんだ!!」
「ほう、出来るのか?貴様に私を倒せると?道化としては優秀なようだな。ならば、証明してみせろ。貴様が真に奴の握ったこの世界で例外であるとするならば、出来る筈だ。私の師を越える資質の持ち主ならばな……」
だが、と琳菩は続ける。背部に広がる刃が少年へと切っ先を向ける。
「勝つのは私だ。醜悪な■の■■■■である貴様に、この地を渡してなるものか──!!奴を滅ぼし、深淵を握るのは私だ!!」
「勝つのは俺だ。もう悲劇は沢山だ。皆が少しでも幸せを享受出来る世界を!!元凶をぶん殴るのは俺だァッ!!」
憎悪にまみれ、誇りを捨て、化物に堕ち、ありとあらゆる物を破壊したかった。何もかも失い、心も枯れ、穢れの塊になってしまった。嘗ての思い出も磨耗が進み、時たま思い出せなくなることがあった。それでも、心の片隅にこびりついて離れなかった物があった。
彼が愛し、彼を愛した者たちは差はあれど皆、人を愛していた。個人、人類問わずに大小あれど、彼らは確かに愛していた。
『いっくん、私はね。人類はそう捨てた物じゃないと思うんだ』
『弟君よ、その価値観には千差万別、人それぞれの解があるが、私は人類種という総体は愛すべき物だであると思っているよ』
『一夏君、私はそんなに高尚な思想等持ち合わせていないが、クロエとラウラは愛しているよ。義理とはいえ娘だ。大きな括りで見た種への愛なんて、あいつじゃないんだ。明確な物は持ってないと言っただろう?あぁ、でも君は好ましく思っているよ』
『一夏、私は人は愛すべきだと思っている』
「だから、ここに生き恥晒してるんだよォッ!!もう、誰も居なくなってしまったこの世界でなァッ!!」
だから次代に繋げなければならない。彼らが愛した世界を廻さなければならない。自分では相応しく無い。やっと訪れた終わり。最期なんだ。派手に行こう、盛大に。多少、壊しても許してくれるだろう。説教なら後で受けよう。姉に正座させられ、恩師に苦笑いされ、恩師の雇い主に姉を宥めて貰って、友人たちとそれを笑い話にしよう。嗚呼、だから──
「改めて名乗ろう。辺獄が王、琳菩。力の差を教えてやるから掛かって来い、新鋭!!この先は言葉等不要。力こそが全てだ!!」
見せてくれ、お前の力を。
■■■■■■の座する深淵へと長きに渡り潜行し続け、断続的に攻撃し続けた琳菩。その影響は少なくなく、深淵の最大稼働を妨げる一因となり、救世が成される一助となった。
此は外典である。本来、訪れることの無い形の滅びを迎えた可能性の果て。
しかし、どんなに最悪の結末を迎えても、必ず希望は残っている。
正史は今日も廻り続ける。
モッピー知ってるよ。この後、外典主人公と『まだだ!!』しあって、覚醒合戦するんでしょ?
という訳で前回の後書きで書いた一夏君夜刀様ルートでした。
まぁ、年末なので頑張って書きました。少し時間も空いたので。
それではちょこっと解説を……
外典と銘打っている通り、このルートには絶対に入りません。何処かで何かを掛け違えた場合、最悪の結末として猟犬が死にます。
まぁ、トンチキがそんな簡単に死ぬわけ無いので、そこからまずおかしいです。どうせ、まだだ!!って言って覚醒するし……。最悪、某ウルトラトンチキみたいになるので。主人公最強は伊達じゃない。
外典の世界は一度滅んでいます。ACVDよりもヤバいです。コジマ汚染と核汚染で居住出来る場所は極端に少ない感じです。
地下潜ろうぜ→地下も汚染始まってます。
クレイドルは?空なら……→汚染が(以下略
宇宙行こうぜ→宇宙関連はロストテクノロジーになりました
地上は→ヒャッハーがたくさん
ですが、全部が全部本編に関係無いという訳では無いです。これからの本編に大きく関わってくる設定や、単語も沢山出てます。大分ばら蒔きました。これまでも結構ヒントや、こういうのを所々に仕込んできたので、そろそろ結構な数になって来ているという。暇な時、色々想像して考えてくれれば暇潰し程度にはなるかもしれないし、ならないかもしれない。
そんなこんなの番外編でした。これで多分本当に今年ラストです。
ではまた来年、御会いしましょう。
夜刀様かっこよすぎて、もうダメな作者でした。