転生して気が付いたらIS学園で教師やってました。   作:逆立ちバナナテキーラ添え

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 あぁ^~年末忙しいんじゃあ^~

 そんな訳でメリークリスマスですね、トナカイさん。

 作者サンタオルタからのプレゼント兼今年最後の投稿ですよ。

 難産&多忙でしたのでクオリティは保証しかねるゾ。


 皆様、よい御年を。


Dive to swamp

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やりづらい。

 

 更識簪は段々とそう感じるようになった。闘い辛さというよりは、あと一歩が届かない。決めきれない。機体の相性は良い。夢現の高周波ブレードはサイレントゼフィルスに対して十分大きな脅威である。戦況は簪が優勢と言える。相手の苦手とする接近戦へと持ち込み、押し込めている。敵は防戦一方。

 

 だが、仕留めきれない。致命的な一撃を入れる事が出来ない。攻めあぐねる。銃剣(バヨネット)を用いずに、徒手空拳で攻撃を流し、一瞬を突き拳打を打ち込んでくる。ニードルガンも紙一重で避けられる。無理の無い数でビットを運用し、牽制してくる。守りに入っているものの、止めを刺されないように立ち回っている。

 

 巧いな、と簪は敵を評価する。成る程、確かに強い。相手を過小評価していたかもしれない。しかし、簪の想像とは違った。敵は闘い上手だった。力を以て制圧するのではなく、負けない戦闘をする。現に簪は止めをさせていない。戦況に於ける最適解を導いている。結果的に目標を達成出来なくとも、生存し、撤退の後に作戦を継続させられる選択を選ぶ。熱狂に呑まれない、簪と対極の位置にいる相手。

 

 拳を払う。石突きでサイレントゼフィルスの腹を突く。距離を開けてから、もう一度接近する。ビットを掻い潜り、夢現を振るう。上腕部の装甲を掠め、傷を付ける。下からの蹴り上げを仰け反り、回避する。その場で一回転し、返しに蹴り上げる。サイレントゼフィルスのパイロットの顎に鈍い衝撃が走る。生きているシールドビット一基を展開する。

 

 サイレントゼフィルスにロックオンアラート。ミサイル四十八発が至近距離で放たれる。ブラフでは無い。上空へと急上昇。拡張領域からライフル──スターブレイカーを取り出す。速度を維持したまま反転。スコープを覗き、FCSと同期する。二基のビットも展開する。シールドビットは格納する。後退しつつ、息を吐く。四回、引き金を引く。残り四十三発。一発は外れたらしい。ビットを操作。二発撃墜。残り四十一発。

 

 精度の高い機体コントロールと卓越した射撃技術に簪は目を見張った。最高速下での正確な狙撃。酷く不安定な環境下で七十五パーセントの成功率。安定した状態なら、限り無く百発百中に近い成果を叩き出すだろう。つくづく、やりにくい相手だ。

 

 同時に、クラリッサ・ハルフォーフも焦燥を感じていた。

 

 第三世代中期型に対して第二世代四機とボロボロの第三世代前期型。お世辞にも高機動戦に適性のある編成では無い。ある程度の改修(カスタム)を施しているとは言え、ラファールはマルチロール。汎用機だ。全環境適応型では無く、様々な用途に扱えることを想定した器用貧乏。元より機動戦下でのBT兵装の運用を想定されたダイブトゥブルーには及ばない。機体のスペック、世代差もある。パイロットの技量で喰らいついている。ラウラと同じように。

 

 「敵を動かすな、焦らずに数で潰す。囲うように動け」

 

 レーゲンからの砲撃支援を受けながら、四方を包囲するような機動を取る。ダイブトゥブルーの動きを制限する。拡張領域に抱え込んだ両手一杯の兵装を惜し気もなくばら蒔く。空対空ミサイル(AAM)も、突撃型(アサルト)ライフルも、滑腔砲(ハンドグライド)も撃ち続ける。無軌道にでは無く、進行方向へ弾幕を張り、機動性を削ぐ。地上のレーゲンが発するAICがダイブトゥブルーに絡み付き、更に機動を遅延させる。

 

 ビットがラファールに張り付いて離れない。振り切ることは出来ず、撃墜も難しい。その上でダイブトゥブルーからの射撃が機体を襲う。

 

 『損傷率七十三パーセント……やばいです、大尉』

 

 『こっちは八十二パーセントです。ベイルアウト寸前ですね』

 

 『私はまだ六十二パーセントです。まだまだ行けますよ。隊長なんて飛べないのに、闘ってるんだから、まだ降りられないですね』

 

 「相手も無尽蔵に動ける訳じゃない。一発だ、隊長に一発当てて貰えれば仕留められる。踏ん張れよ」

 

 突撃型ライフルを無誘導弾(ハンドロケット)に持ち替えてクラリッサは叫ぶ。勝機が無い訳ではない。目標は撃墜ではない。撃退出来れば、それで良い。ハードルは低い。

 

 地上から熱源反応。エネルギー兵装。IFFに反応あり。一条のレーザーがダイブトゥブルーの装甲を穿つ。

 

 「チェルシー、私はあなたが何を考えているか分からない」

 

 ビット四基が展開される。ラファールを攻撃していたビットを撃ち落とす。

 

 「あなたは何も教えてくれないのでしょうね」

 

 ショートブレード──インターセプターをパージ。拡張領域の余剰分にラファールに搭載されていたハンドガンを二丁、突っ込む。規格やシステムとの親和性を無視した兵装の追加。

 

 「なら、それはそれで構わない。知りたいし、理解したいけど、それをあなたは望んでいないのでしょうから……」

 

 スターライトmkⅢにマウントされていたスコープを外す。FCSとのリンクを解除、再接続。低倍率サイトとFCSをリンクさせる。

 

 「もう、既に言葉が意味を成さないというのなら」

 

 FCSとのリンクは良好。無理に兵装に組み込んだハンドガンも然程システムに負荷は掛けていない。コンディションは良い。

 

 「私があなたを墜としますわ。チェルシー・ブランケット。ここで、果てなさい」

 

 セシリア・オルコットは腫れた目元に力を入れる。的を睨み付ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 部屋に甘い香りが広がる。苺のショートケーキと紅茶。カップに角砂糖をたっぷり入れて、スポンジを流し込む。飲み込むと、すかさずフォークに刺した苺を口の中へ放り込む。

 

 「うまぁ……糖分は良い文明」

 

 黒いソファーに座り、顔を蕩けさせる女性──篠ノ乃束は普段のエプロンドレスではなく、黒のティーシャツとパンツの上に白衣を着ていた。与えられた自分の研究室に籠り、外の戦闘音を音楽で掻き消しながらケーキを貪る。隣にはクロエ・クロニクル。矢鱈と幸せそうにケーキを食べる保護者に苦笑いしながら、ティーカップにおかわりを注ぐ。

 

 「やっぱ、あれだね。月並みだけど、こう、糖分に溺れるって最高だね。糖分至高天だよ」

 

 「あまり糖分を摂り過ぎると、お身体に障りますよ」

 

 「あぁ、まぁ、でも。それなりに摂生はしてるんだよ?こんなにケーキ食べたのは久し振りだし」

 

 ヘラヘラと笑いながら返す束。溜め息を吐きながらケーキを口に運ぶクロエ。束の不摂生は今に始まったことではないが、自分の保護者は二人してそういう面に無頓着が過ぎるとクロエは考える。義父が最たる例だ。下手をしたら束よりも悪いかもしれない。人の事は面倒見良く世話をするのに、自分のことになると全く気を遣わない。大量に煙草は吸うし、酒も飲む。休日になれば映画を見るか、ゲームをやっているかで一日中外に出ない。定時に帰りたいと言う割には、よく残業をしていたりするらしい。食生活も食堂で適当に取ったり、作っても腹に溜まる物を優先する。どうして人に作る時の細やかさを自分に向けられないのだろうか。

 

 「くーちゃん、今いしくんのこと考えていたでしょ?」

 

 どうしてですか、とクロエ。見れば分かるよ、と束は笑う。

 

 「心配?いしくんとらーちゃんの事」

 

 心配では無い、と言えば嘘になる。とても心配だ。義父は連絡一つ寄越さず、戦果のみが情報として入ってくる。小国を滅ぼせる程の兵力を一人で叩き潰し、翌日には更に大きな規模の敵を塵殺する。息をつく間もなく世界中を飛び回っている。太平洋で闘ったと聞けば、半日後にはアフリカで闘ったと聞く。まともに休んでいないのは確実だろう。心配してもそんな気遣いはいらない、と遠ざけられるのかもしれない。だが、父に無事でいてほしいと願う事は悪いことでは無い。

 

 妹も心配だ。現に、今、外で闘っている。機体の損傷が激しいと束は言う。事も無げに、大したことでは無いようにさらりと言った。実際、束にとっては大したことでは無いのだろう。この状況でシェルターに避難もせずにケーキを頬張っているのだ。何かしらの策は講じているのだろう。それでも、姉としては妹が心配でならない。大きな怪我を負わないか、不利な状況になっていないか。胆が冷えっぱなしだ。何とか平静を装い、時折ケーキを口に運んで不安を隠す。

 

 クロエは頷いた。俯く彼女の頭を優しく撫でる束。フォークを弄びながら中空に視線を漂わせる。白衣のポケットからくしゃくしゃになった煙草のソフトパックを取り出して、テーブルに置いた。

 

 「そうだね。確かに心配だね。私も、少しだけ不安だよ。連絡ぐらいくれても良いと思うし、らーちゃんの機体に色々不備が無いか考えてしまう。らしくないのかもしれないけれど、糖分を取ると落ち着くんだ」

 

 昔ね、と言葉を紡ぐ。カチューシャをしていない束の横顔をクロエは見た。

 

 「昔、今外で闘っている連中とね、いしくんが派手にやりあったんだ。ロシアだか何処かの、北極近くでシングルナンバー機と他三機。四対一だったよ。その時も、今みたいに私に一言だけ言ってそこらをほっつき歩いていたんだけど、それは迎い撃ったんじゃなくて珍しくいしくんが頼んでもでも無いのに自分から打って出たんだ。何でだか分かる?」

 

 クロエは頭を振る。ほんの少し、束の口元が緩む。

 

 「ねぐらを荒らされたんだ。その時、拠点にしていたセーフハウスを潰されて怒ったんだ。笑っちゃうよね。全然、そんな理由でやったなんて思えなくてさ。聞いてびっくりしたよ。眉間に皺を寄せてさ、ねぐらを荒らしたシングルナンバー機を追跡して墜としたんだって」

 

 「それは……」

 

 「いしくんらしく無いよね。分かるよ。私だって最初は反応に困ったもの。でもね、これっていしくんらしいって言えばいしくんらしいんだよね。いしくんって自分のベッドの周りを弄られるの大嫌いらしいんだ。リビングとかキッチンは良いんだけど、ベッド周りだけはどうしても嫌だって言ってたんだ」

 

 クロエはそれを知らない。知る筈も無い。義父には遠ざけられてばかりで、彼の嗜好や癖を詳しく知れる環境ではなかった。部屋に行けば、すぐに何かと理由を付けられて追い出される。義父のよく分からないベッド周辺への拘り等、初めて知った。

 

 「そういう訳で、いしくんにはねぐらには少しばかり拘りがあるんだけど、言い様によってはここもねぐらと言えないかな?」

 

 束が人差し指を下に向けて指す。部屋が衝撃で揺れる。籠ったライフルの銃声が爆発音に掻き消される。

 

 「一度、ねぐらを荒らした連中がまたねぐらを荒らしに来たって知ったら、多分怒るよ。すごく」

 

 外で一際大きな音がした。甲高い、大出力のエネルギー兵装らしき起動音、もしくは発射音。束は優しく微笑んだ。ほらね、とケーキにフォークを刺す。

 

 口内で柔らかなスポンジを咀嚼しながら束は思う。口に出さずに、心の中で付け加える。

 

 ──それに、君たちがいる場所を襲う連中をいしくんは許さないと思うけどね。誰よりも君たちを愛してるんだから。多分、私なんて目じゃないくらいに──

 

 「おいしぃー、くーちゃんも食べなよ。流石に一人でホールは無理だからさ」

 

 「じゃあ、なんでホールで作れって言ったんですか?」

 

 「くーちゃんとらーちゃんの三人で食べるためだよ!!あ、らーちゃんの分も残しておいてね?」

 

 もう、騒がしい雑音は聴こえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 サイトのレティクルと紺碧の機体が重なる。トリガーを引く。プルが重い。若干のラグ。システムに負荷が掛かり始めたようだ。回避される。機動を予測しづらい。

 

 ビットが展開される。同数をこちらも展開、迎撃。全弾インターセプト。再びトリガーを引く。やはり回避される。機動性では明らかにあちらが数段上。腕も恐らくあちらに軍配が上がる。マシンスペックも然り。そもそも、機動戦は得手では無い。よくて二流に届く程度だろう。

 

 だが、それがどうした、とセシリア・オルコットはサイトを覗く。二流が一流に勝てないという道理は無い。勝つために足りない物があるなら、他の要素でそれを補え。頭を使え、思考を止めるな、策を講じろ。格上殺し(ジャイアントキリング)なんて大それた物じゃない。計画し、実行し、結果を得るだけの単純な話。しかし、単純故に難しくもある。切り札も、圧倒的な暴威も無い自分に出来るのは簡略化された工程を経て結果を出すことのみ。スコープを覗き、敵を射つ。それと何も変わらない。

 

 状況は不利。(あちら)はそうでもないようだが、こちらが優位性を持っているのは数ぐらいだろう。セシリアの機動を邪魔せずにチェルシーの動きを制限するクラリッサたちをセシリアは高く評価している。素晴らしい腕だ、と称賛を贈る。実戦で鍛えられた一糸乱れぬ連携機動。集団として、部隊としての完成度は舌を巻く。マシンスペックの差に屈せずに、未だに一機も墜ちずに継戦している。これで然るべき機体──専用機をクラリッサに与えたのなら、この状況は全く違う物になっていただろう。

 

 だが、勝てない。クラリッサが第三世代機を駆ろうが自分達はチェルシー・ブランケットを墜とせない。確信する。根拠は無い。酷く不明瞭で、不定形な物。勘がそう告げる。更識簪がこちらに加勢しても恐らくは逃げ仰せる。優秀な戦士であると所感を抱く簪を擁しても、撃墜出来るビジョンが浮かばない。

 

 だからこそ、頭を使え、思考を止めるな、策を講じろ、陥れろ、欺け。高貴なる者に伴う義務(ノブレスオブリージェ)など、ここには無い。確かにセシリア・オルコットは貴族であり、それが付き纏い、それを享受する。しかし、ここにいるのはブルーティアーズのパイロットである、一人の小娘だ。旅を続ける淑女になりきれない少女だ。人生という遥かな旅路を歩む少女は、先を見るために生きねばならない。守る為に、犠牲を払うのも人生なのだろう。納得はしていない。それでも、姉のような人物は少女を裏切り、理由を話すことはない。幼い頃より、長く共に暮らしていたせいか言葉を介さずに理解してしまう。引けない理由があり、彼女が自分に殺されたがっていることを。少女は再び家族を失うのだ。一度目は事故で。二度目は自らが手をかける。

 

 拡張領域からハンドガンをコールする。FCSとのリンクが不完全なせいか、馴染まない。トリガープルが重過ぎてて気持ち悪い。ダイブトゥブルーが反転する。ハイレーザーライフルの銃口が光る。相対し、射線は互いの身体を貫いている。射程も、威力も、精度も、セシリアが勝る者は無い。だが、それで良い。このまま撃ち合えば負けることは明白だが、一向に構わない。セシリアはハンドガンを持つ腕を上げ──

 

 思いっきり投げた。二丁のハンドガンはくるくる回りながらダイブトゥブルーへと飛んでいく。全てが停滞する。その意図を、セシリア・オルコットらしからぬ行動を分析しようと脳が思考を回す一瞬。それがただ一つの光明となり得る。

 

 ダイブトゥブルーのシステムに負荷が掛かる。機体が重い。AIC。セシリアはライフルを構える。レティクルの先は頭。地上のレーゲンが展開する砲身が動く。捉えた。

 

 レーザーとローレンツ力で押し出された砲弾はダイブトゥブルーに着弾した。爆煙が機体を隠す。海中に没さない様子から、まだ生きているのだろう。だが、決して少なくないダメージを負った筈だ。セシリアやラウラはそう想定するが、事は上手く進まなかった。

 

 『敵機健在……いや、何の手品を使ったのよ……』

 

 ラファールの一機が絞り出すように口を開いた。確かに着弾した筈だった。スターライトは装甲を穿ち、レールカノンは装甲を吹き飛ばした。しかし、煙の向こうにはジェネレーターの出力は変わらず、無傷のまま佇むダイブトゥブルー。まるで狐に化かされたようだった。紺碧の機体は輝きを失わずに、セシリアを見据えていた。

 

 防壁か、それとも着弾していなかったか。何らかの不可視の障壁を展開している可能性と、CIWSのような近接防御兵装を搭載している可能性をセシリアは挙げる。否、防壁機構があったとしても、あの瞬間にダイブトゥブルーへと放たれた火力は無傷で防げる物ではない。レーゲンの主砲はそこらの防壁をいとも容易く貫通させる。スターライトも、シールドを抜けるだけの貫通力は備えている。では、近接防御兵装の線はと言われても、否だ。あの瞬間、何かしらの兵装の起動は確認されていない。確かにダイブトゥブルーに動きは無かった。この事から、セシリアは一つの仮説を提唱する。

 

 ダイブトゥブルーには未知の単一仕様能力(ワンオフアビリティ)、恐らく高速修復機構、もしくは装甲の流体金属化が発現しているのではないか、と。

 

 馬鹿馬鹿しい話だ。装甲の流体金属化なんて、一昔前のSF映画のようだ。機体の高速修復だって、どうやっているんだ。与太話もいい所だ。だが、それしか考えられない。頭は冴えている、寝ぼけちゃいない。何故、無傷でいられる?まさか、ワープでもしている訳ではあるまい。

 

 もし、セシリアの突飛な仮説が事実なら、装甲を修復させない程の速度でダメージを与え続けるか、修復不可能な程のダメージを一撃で与えるか。それか、流体化させた金属を一気に焼く。どだい、無理な話だ。そんな出力の兵装は無いし、機体が保たない。状況は混迷の一途を辿る。

 

 だが、この混迷を抜け出すとするなら、何が必要か。セシリアのような策を講じるのも是。簪のように熱狂に酔いしれて立ち向かうのも是と言える。不正解は無い。あらゆる選択が、可能性が、光明へと繋がっているだろう。例えば運の良さもその一つ。天恵だったのかもしれない。暗中模索の闇の中で、赫怒の焔を灯した断頭台と白夜に包まれるという幸運に巡り会えた事は、紛れもなく今日彼女たちの運の良さによる物であるだろう。

 

 もし、影絵のような男が猟犬を呼び出さなければ。もし、初陣を果たした求道者が予備の外装ブースターを持っていってなければ。ラインアークが猟犬のねぐらで無く、彼の義娘たちがいなければ。彼女たちは撃墜されていただろう。

 

 IFFに反応あり、凄まじい速度で交戦エリアへと突っ込んでくる。二機だ。目視で捉える。白と黒。回線が開かれた。

 

 『死にたくなければ、下がっていろ』

 

 酷く掠れた、低い声だった。何処かで聞いたことがあるような、しかし自分たちの知る者とは別人のような声色。

 

 『じゃあ、俺は向こうのを貰いますよ。手、出さないでくださいね』

 

 『勝手にしろ──』

 

 漆黒の機体の背部に搭載された巨大なブースターがパージされ、機体が青白い炎に包まれる。ジェネレーターがオーバーフローしている。エネルギーが溢れている。

 

 展開されたのは形容し難い物であった。無数の棒状の物が夥しく連なり、左右に展開し、三百六十度、全方位に向けられている。そして、それらは上下へ扇状に広がった。その様はまるで、針ネズミ(ヘッジホッグ)のようだった。

 

 その全てはパルスキャノン。十三門が五列。それを左右に展開した計百三十門のパルスキャノンが充填を終える。シュープリスのカメラアイが赭く燃える。

 

 《不明なユ──トが接続されまし──システムに深刻な障害が発生していま──ちに使用を停止してください──不明な──》

 

 規格外兵装──マルチプルパルス

 

 甲高い発射音の後、光が海上を包み、掻き消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 殺意マシマシのSECOM(やべーやつ)乱入。

 居住区でマルプルぶっぱなす猟犬マジ黒い鳥。



 何処かしらのタイミングで猟犬が極大の下衆ポジに負ける→しれっと仲間になっていた本屋が激昂して特効するも消し飛ばされる→千冬姉と束さんも死亡→一夏、夜刀様ルート突入。

 とか考えて、ねーよって一人で思ってました。書ける気がしないです。でも、一夏ニキが亡き猟犬の兵装とか単一仕様能力使ったら燃えない……?


 そんな妄想を垂れ流しつつ、本年度の締めくくりとさせて頂きます。

 改めまして、皆様、良いお年をお迎えください。

 それでは、また次回、来年にお会いしましょう。

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