転生して気が付いたらIS学園で教師やってました。   作:逆立ちバナナテキーラ添え

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 前回までのあらすじ

 ・簪「万歳ァァィ!、万歳ァァィ!、おおおぉぉォッ、万ッ、歳ァァァァィ!!」

 ・一夏「頑張りさえすればできるのだ。ああ、素晴らしきかな人類よ。未来を目指して歩む限り、人の可能性は無限大なのだ!すべては心一つなりッ!」

 ・石井さんトンチキ疑惑

 ・千冬さん、弟に想い人を取られ、想い人に弟を取られる

 つー訳で、サラッと流す文化祭編始まります。(だからお気に入りも評価も減る)

 ほんへ、ドゾー。


祭禍

 

 

 

 

 

 

 文化祭。年に一度開かれる、学生主体の祭り。各々が試行錯誤して出し物を決めて、計画、準備、実行、運営を行う誰しも経験のあるイベントだ。

 

 当然、学生は楽しいだろう。授業を短く切り上げて準備をしたり、買い出しに行ったり、夜遅くまで仲間と共に作業する。そこで新たに育まれる友情。芽生える恋──もっともIS学園でのそれは修羅道に他ならないのだが──。深まる絆。あっという間に過ぎる当日。それは生徒たちの輝かしい青春の一ページとして刻まれるだろう。

 

 では、教員はどうだろう?地獄だ。ことIS学園に勤務する教員は血反吐を撒き散らしながら、人間性を捧げるが如く職務に追われる。整備科は施設管理科の応援に引き摺り出され、総務部──広報科と事務科は毎年必ず誰かがぶっ倒れて医務室に搬送される。そして、数時間後にはやけに明るい笑顔を引っ提げて戦線に復帰する。人呼んで、高速周回(ステラチャレンジ)。お前は間違っちゃいない、という言葉と共に意識を失い、いくぜ、と帰ってくる。総務部の大英雄だ。学園一闇が深い部署の名は伊達では無い。

 

 そんな阿鼻叫喚の教員たちの中で一際異彩を放つのは保安部だろう。平時の際、保安部──警備科は防衛の為にEOSパイロット、ISパイロット、普通警備(戦闘)員、全てが二十四時間体制ローテーションで待機する。EOS、IS共に機体に火を入れたまま、スクランブルに対応出来るように待機所で各自過ごす。文化祭の際は、その待機人員が倍となる。パイロットでなくとも、フル装備でP90やM4を片手に警戒に当たる。本土と学園を繋ぐ橋にもISと装甲車が検問所に配備される。電子科もサーバーの監視人員を増やす。情報管理科はいつも通りのネズミ捕りと対破壊工作活動に勤しむ。

 

 何処の部署もてんやわんやの大忙し。遊ぶ暇など一分も無い状況で警備科の主任と防衛の要は──

 

 「次はたこ焼きだな」

 

 「いや、ケバブでしょう」

 

 ガッツリ遊んでいた。チュロスを食べながら、人混みを掻き分ける石井と千冬。スーツ姿の大人二人はファンシーな柄の包み紙を手に、食べ歩きをする。千冬はそれに加え、メロンソーダも持っている。好物らしい。似合わない、とか言ってはいけない。本人も少し気にしているのだから。以前、少年みたいな好物と称した天災は危うく顎の骨が砕ける怪我を負った。やっぱりチフクレスは最強なんだ!!

 

 しかし、二人もただただ食べ歩きデート──食い気ばかりで色気の欠片も無い──をしてる訳ではない。()()巡回しているのだ。二人とも警備科に所属すると同時に教務科にも所属している。さらに、クラスを受け持っている為、警備科の業務より担任、副担任としての仕事が優先された。そして今は巡回という体の休憩中。同じく一年一組を受け持つ山田真耶の気遣いだった。

 

 『私が見てますから、先輩と石井先生は休憩してください。ここ最近ずっとデスクワークばかりでしたから、少し羽を伸ばしてください!!』

 

 断ろうとすると、泣き出しそうな顔になったので二人は休憩せざるを得なかった。さすが山田先生あざとい。さすまや。大内君はこれにやられたのか。そんなことを考えながら、石井と千冬は教室を出た。その後、バックヤードから戻ってきた一夏がそれを聞き、石井を探しに飛び出そうとしてシャルとくんずほぐれずの取っ組み合いを演じ、

 

 『せんせェェェェェェェェェ!!千冬姉、待っててくれ!!美味い出店を紹介するから!!シャル、離せ!何で邪魔をする?俺は先生と千冬姉の所に行きたいだけなのにッ!!』

 

 『一夏おかしいよ!?どうしたの!?てか、邪魔しちゃいけないよ!せっかく二人きりなんだよ!?』

 

 『くそッ……離してくれ!俺は先生と、千冬姉と文化祭を回りたい……回りたいのに……ッ!いや、この程度の試練……先生なら越えられる……待っててくれ先生、千冬姉!行くぞおおおおおおお!!』

 

 『一夏本当にどうしたの!?』

 

 というやり取りがあったが、石井も千冬も何も知らない。知らない方がいい。

 

 「焼そばもありますよ?どっちにします?」

 

 「たこ焼き」

 

 「焼そば一つ下さいな」

 

 「オイ」

 

 そんなこんなの、ぶらり文化祭巡回旅。広報の忙しさを鼻で笑いながら、学園のやべー奴二人は食べる、食べる、食べる。稀に石井に擦れ違い様に殺意の籠った視線がぶつけられるが、本人は何処吹く風で焼そばを啜る。横合いから千冬が箸を出して焼そばを取ろうとするが、身体を捻って防ぐ。あなたにあげる焼そばは無ぇ、たこ焼き食ってろ。いや、お前が買わなかったんだろうが。知らんな。石井という男は変な所で子供っぽかった。

 

 「あら、デートですか?羨ましいですね。仕事中なのに」

 

 溜め息混じりに言うのは更識楯無。顔色は少し悪く、自慢の不思議な扇子で首元を扇いでいた。

 

 「休憩を無理矢理押し付けられてな……君、顔色悪くないか?」

 

 「簪ちゃんに追い掛けられて」

 

 あぁ、と石井。何の疑問も無く、すとんと納得した。対して千冬の顔は引き吊っていた。最近、近しい生徒たちがおかしくなっている気がするのは何故だろう?主に実弟。本性か、変化か。異常なまでの石井リスペクト。楯無に聞くところ、最近は皮肉まで言い出すようになったらしい。それと愛が重い。友人に相談した所、姉より優れた弟などいねぇ、と言う。全く質問と返答が噛み合ってないが、千冬はそっと通話を切った。自分の交友関係を見直そう、まともな友人を持ちたい、切に願った。しかし、実際は友人のトラウマを千冬が掘り起こしてしまったのである。弟というワードから妹を連想し、大喧嘩した妹を思い出し、友人はクソ不味いタバコに火を付けた。余談だが、翌日職場で助手に呆れられながら、二日酔いに効く栄養剤を飲む友人がいたらしい。妹の名義で金を引き出してやる、との事。

 

 「それで、何か用か?」

 

 千冬は表情を元に戻し、訊く。

 

 「えぇ、電話しようと思ってたんですけど、たまたま見かけたので直接。石井先生の言う通り、()()()()()()()。人員は織斑先生の指示通りに」

 

 「そうか。まぁ、首尾は上々というわけだ。いいことだよ」

 

 「しかし、ここまで読み通りだと気持ち悪いな」

 

 「連中も時間が無いということですよ。送った来たのは末端も末端でしょう。ISぐらいは持ってるでしょうが、当事者には伝えてあるので何とかなりますよ。更識、顔は本物か?」

 

 「マスクを使用している痕跡は無かった。AR(拡張現実)グラフィックを顔に被せてるって訳でも無い。正真正銘、本物の顔よ。照合してみたけど、該当人物は無し。意図的にしろ、そうじゃないにしろ、世界中何処にもネズミさんの記録は無い。消されたか、消したか。まぁ、亡霊らしいと言えばそうだけど。それにしても、警備科の人員じゃなくて情報管理科の人員で良かったんですか?別に織斑先生にケチを付ける訳じゃないですけど」

 

 「私の知る中では、あいつら以上に信頼の置けるチームはいない。こいつの御墨付きもある」

 

 千冬がそう言うと石井も頷く。楯無も、そこまで言うならと引き下がる。家柄上、楯無は情報管理科との折り合いが良くなかった。それも、過去の話になりつつあるが。

 

 「取り敢えず、罠は張れた。楽観では無いが、上手く行くだろう。念のため、君も何時でも出られるようにしておいてくれ。最悪、私と君で制圧することになる」

 

 「あなた一人で充分でしょう?」

 

 「格闘戦は苦手でね」

 

 千冬と楯無の声がハモる。嘘つけ、どの口が言う、と。

 

 時刻は正午を回った。人の入りは衰えること無く、増え続けている。食品を扱う企画には行列が出来ていた。

 

 「そういえば、楯無。昼は食べたのか?」

 

 「いえ、簪ちゃんにスト……追い回されてたので、まだ」

 

 「なら、これをやろう。つぶ餡だが、大丈夫か?」

 

 千冬が差し出したのは鯛焼き。チュロスと一緒に買った物だった。大丈夫ですよ、と言い楯無は受け取った。学園中を逃げ回り、疲れた心身に甘さが滲みた。

 

 「ありがとうございます。ちょうど、お腹減ってたんです。そうそう、さっき一組の前通った時、一夏君がシャルちゃんに羽交い締めにされながら叫びまくってましたよ?」

 

 石井はキャベツを詰まらせて、むせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 「みつるぎ、ですか……?聞いたこと無いですね」

 

 「えぇ、でしょうね。なにぶん、我が社は駆け出しの新興メーカーですから。その為、こうして積極的に売り込みをかけているんです。何人かの代表候補生の方とは既に契約済で、実際に製品をお使いして頂いてます」

 

 へぇ、とホットコーヒーの入ったタンブラーを口にする一夏。燕尾服を脱ぎ、ネクタイを緩めてパンフレットに目を通す。追加装甲、FCS、突撃型(アサルト)ライフルに爆雷。マニアックというか、有澤へのリスペクト溢れるというか、尖ったラインナップだった。強いてまともな物は突撃型ライフルぐらいか。

 

 シフトを終え、休憩に入った一夏を待っていたのは来客だった。茶髪のロングヘアー。パンツスーツに身を包んだ妙齢の女性。外面用の爽やかな笑顔を張り付け、応対すると名刺を渡された。巻紙礼子、と名乗る企業の営業。よくある売り込みだ。自分の価値を見出だし──石井には勿論劣るが──、それに肖ろうとする連中。正直、どうでも良いのだが無下にして印象を悪くするのも良い手とは言えない。自分は所詮石井の二番煎じだが、彼とは違う価値と在り方を有する。それ故、一夏は自分の商品価値を正しく理解する。だからこそ、これまで何度かあった企業の売り込みにも納得が出来た。GAにアルテス・サイエンス。シトニコフやここ最近ヨーロッパで台頭し始めたレオネアグループ。大手の渉外担当者が来ることはあったが、新興のメーカーが来ることは無かった。不文律を破るからだ。新参が古参の顔に泥を塗る訳にはいかない。力が物を言う弱肉強食の業界ではあるが、こと男性操縦者の周りは慎重な動きが要求される。猟犬、天災、戦乙女。ガードが厄介すぎる。しかし、この女はそのリスクを度外視して一夏に接触した。代表候補生との契約を取っているにも関わらずだ。一夏は苦笑する。馬鹿だ、捨て身すぎる、と。

 

 そんな来客と落ち着いて話せるテラスへと向かった。途中、教務科の有志が出店していたコーヒーショップでブラックを二つ買い、話を聞き始めた。一つは自分の分、もう一つは適当な気遣い。聞き慣れない社名と企業の人間らしい喋り方で発せられる甘ったるい世辞。話し半分に聞き流しながら、コーヒーの味と香りを楽しむ。間でそれらしい質問をしてやると、当たり障りの無い返しが来る。何時も通りの、自分の人生に蓄積される無為な時間の一つ。それをクラスメイト連中にやるような笑顔で感心したふりで、無知蒙昧を装う。決してクラスメイトたちに向ける笑顔が偽者という訳では無い。その外面も、虚な内面も等しく織斑一夏という人間を構成する本物だ。もっとも、それを見せているのは姉と副担任の二人のみなのだが。

 

 「それで、俺に何を……?」

 

 「いえ、数少ない二次移行機のパイロットであるあなたに売り込みに来ただけですよ。白式のネックである燃費の悪さを改善する為、スラスターやジェネレーターの交換はいかがでしょう?」

 

 「でも、俺詳しいこととか分からなくて。千冬姉……織斑先生に相談しないと、分からないです」

 

 「そんなに難しいことではありません。これはあなた自身の問題であり、あなたの身を預ける相棒との問題でもあります。そこに他者の入る余地はありません。よく考えてください。あなたの気持ちが一番ですよ」

 

 そんなこと百も承知だ、と喉から出掛かるが無理矢理飲み込む。大体、そんな燃費の悪さとか機体のピーキーさとか、その程度のデメリットを自力で越えられなくてどうする?石井先生ならその程度、片手間で克服するだろう。未だに自分の可能性や答えは分からないが、何時かあの背中に追い付き相対するのだから、そんな些事で誰かの手を借りるなんて笑わせる。それに大事な相棒によく分からないパーツを付けるなんて御免だ。相棒の最適解を捻じ曲げるなんて冗談じゃない。困ったように笑いながら、心中は穏やかでは無かった。

 

 「あぁ、それか此方のライフルなんてどうでしょう?白式には射撃兵装が少ないと聞きました。やはり、一つは積んでおいた方が宜しいのでは?」

 

 「えっと、俺射撃は下手くそで……拡張領域(パススロット)の容量もカツカツだし。あの、取り敢えず一度持ち帰って考えてみてもいいですか?ここじゃ決められなくて……」

 

 「大丈夫ですよ。パンフレットは差し上げますので、どうぞゆっくりと考えてください。よい返事を期待しております」

 

 巻紙はそう言って立ち上がると人混みの中へと消えていった。その背を見送り、見えなくなると一夏は重い溜め息を吐いた。そして、

 

 「あぁ、うぜぇ」

 

 馬鹿かよ、捨て身かよ、みつるぎなんて聞いたこともねぇよ、舐めすぎだろ、子供騙しにも程がある。貰ったパンフレットをぐちゃぐちゃに握り潰して、タンブラーを煽る。流石に自分がここまで馬鹿だと思われているとしたら、少しばかり残念だ。遺憾の意、という奴だ。一夏はそう呟きながら、誰もいないテラスで空を見上げた。

 

 「流行らないテロ屋風情が、自分の不倶戴天の敵の企業の真似事なんて。思想と誇りだけじゃ飯は食えないか……」

 

 一夏はポケットからスマホを取り出し、コールする。相手は石井。

 

 「あ、先生。俺です。来ましたよ、先生の言う通り。はい……今、何処かに行きました。えぇ、茶髪のロングでパンツスーツ。はい、じゃあ手筈通りで。ところで、先生今何処に……切られた……」

 

 スマホをポケットに押し込んで、パンフレットとタンブラーをゴミ箱に投げ入れた。ふと、校舎の方を見ると古い友人とその妹が手を振っていた。

 

 「おーい、一夏ぁ」

 

 「一夏さーん!!」

 

 五反田弾と五反田蘭。燕尾服を羽織り、笑顔を付けて、一夏は旧友の元へと走る。もう少し、無為な休憩を楽しむとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 「おいおい、なんだって警備科じゃなくて俺らなんだ?IS持った女の相手なんざ御免だぜ」

 

 「仕方ないだろう。直々のご指名なんだから」

 

 「何処から?」

 

 「織斑主任だ。あと、石井先生」

 

 「全く、俺たちの所属は情報管理科だぞ?警備科じゃないぜ……あいつらは?」

 

 「準備している所だ」

 

 「お前はどうなんだ?用意出来てるのか?」

 

 「マテバでよければ」

 

 「手前ェのマテバなんざ、あてにしてねぇよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 一夏の本性が現れてくる……

 これも全て石井さんと泰山の店主のせいなんだ!!

 一夏「石井先生見た?」

 簪「お姉ちゃん見た?」

 一夏・簪「何処だッ……!?」

 的なやり取りがありました。














 突如出現した空間転移ゲートによって、地球への侵攻を開始した未知の異星体《絶対天敵(イマージュ・オリジス)》。IS委員会(企業連)主導の元、九機のシングルナンバーコアを搭載したISがゲートの彼方へと《絶対天敵(イマージュ・オリジス)》を押し返した。反撃を開始した人類は、ゲートの先にある惑星ディーヴァに実戦組織アライアンス(企業連)戦術部隊を派遣する。最新型ハイエンドEOS・雪風とともに、孤独な戦いを続けるラインアーク出身、特殊戦の深海澪。その任務は、味方を犠牲にしてでも制空権を支配するレーザー級オリジスを殲滅するという過酷かつ非情なものだった──。



 っていう久しぶりの嘘予告その7。戦闘妖精・雪風風、ぼくの考えたあーきたいぷぶれいかーです。ホラ、地球外生命体との闘いなら絶望が無くちゃね!!

 最後は基地が同化されて、地球への全面撤退なんですよね。主人公は豆とピーチを混ぜて食う。(確信)



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