転生して気が付いたらIS学園で教師やってました。   作:逆立ちバナナテキーラ添え

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入学

 織斑先生の弟さん──一夏君がウチに入学することになった。

 

 まぁ当然っちゃ当然の流れだけど、一夏君は運が良かった。ウチの入試会場で起動させるとはねぇ。私みたいに普通のイベント会場なんかで動かしたら一夏君大変だったろうなぁ。ウチの上層部と織斑先生が手を回さなきゃ、今頃ナニカサレテタね。

 

 そんな訳で本日は入学式です。色々ドタバタしてたけど、やっとこの日を迎えられます。クラスの担任、副担任の先生方はこれからも大変だと思うけど、私はどこのクラスも持ってないからね。いつも通りのペースに戻る訳でございます。やったぜ。

 

 「石井先生、学園長が呼んでましたよ」

 

 はて?学園長が?私何かやっちゃいました?全く心当たりは無いんだけどね。減給とかクビとかじゃ無いよね?再就職先探さなきゃ……。

 

 

 

 

 

 

 学園長室に入ると織斑先生と山田先生もいた。本当に何故呼び出し喰らったんだろう?てか、何で二人までここにいるの?俺、本当に何かした?あぁ、混乱して一人称が俺に戻ってしまったよ……。

 

 「おはようございます、学園長。今までお世話になりました」

 

 「えっ……?」

 

 「いいんです……分かってました……所詮俺は遊びだったって!!」

 

 「石井先生、落ち着いて……」

 

 「減給でも謹慎でも何でも構いません……ただ、そんな処分下されるぐらいだったらやめぐぇむぅ……」

 

 あれ……おかしいな……ひいお祖父ちゃんが河の向こうでシャドバやってる……えっ?

 

 「いい加減にしろ!!学園長がお困りだろうが!!」

 

 「織斑先生……出席簿は人殺しの道具じゃあないんですよ……あと、それ生徒さんにやらないでね?」

 

 死んじゃうから。マジで。

 

 「皆さんお茶が入りましたよ」

 

 用務員の轡木さんがお茶を入れてくれた。学園長の旦那さんだったら事務長辺りやってても良いんじゃないかなぁとか思うけど、「私にはそんな大層な仕事は似合わないですよ」とか言う辺り謙虚ってか何て言うか。ホンマ学園の良心やでぇ……。後は、おしどり夫婦ってこういう人たちのことなんだろうなぁとかね。

 

 「ありがとう、あなた……さて、石井先生。お忙しい中すみません。呼び出してしまって」

 

 「いえいえ、自分暇ですから。で、自分に何か……」

 

 「今日から織斑先生の弟さん、織斑一夏君がこのIS学園に通うことは知ってますよね?」

 

 「それは勿論。この学園に勤務する職員で知らない人はいないでしょう」

 

 「それと篠ノ之束博士の妹、篠ノ之箒さんもこの学園に通います」

 

 「何か豪華ですねぇ、どこのクラスに?」

 

 「1年1組です。担任は織斑先生、副担任は山田先生が」

 

 「いいじゃないですか。一夏君も実の姉が担任なら安心ですね」

 

 「それで、石井先生にも1組の副担任をやってもらいます」

 

 吹きそうになった。口に含んだ緑茶を盛大に宙へ散布しかけた。ザ・グレート・カブキの毒霧が如く緑色の液体を放出しそうになったが堪えた。だが、気管に入った。変な所に入って盛大にむせてアホみたいに咳き込んだ。山田先生に背中をさすってもらったが、なかなかいい気分だった。あぁ、山田先生に背中さすってもらって給料貰う仕事につきてぇな。

 

 とか言ってる場合じゃない。私のお気楽教師生活最大のピンチだ。冗談じゃない。そんな副担任とかやったら帰るの遅くなるじゃないか!!いい加減にしろ!!

 

 「あのぉ……何故自分なのでしょうか……?」

 

 「一夏君もいきなり異性だらけの環境に放り込まれて大変でしょう。ストレスも溜まると思います。石井先生には一夏君の相談相手になって欲しいんです。同じ男性として、世界初の男性適合者として、一夏君を支えてあげてください」

 

 いや、それ副担任じゃなくても良くない?てか、何なら私相談室の先生とかになった方が良くないっすか?健全な男子高校生なんだから女の子いっぱいだぁ、ヒャッハーぐらいのテンションだろ。顔もイケメンだし、すぐに彼女出来てストレスフリーな生活送るだろ。誰だ?何でお前みたいな奴が教師やってるんだっつたの?誰もこんなめんどくせぇ事やりたくないよな……。

 

 「ちなみに副担任になれば給料アップ」

 

 「慎んでお受けしますッ‼この石井、粉骨砕身の覚悟で1年1組副担任、務めさせて頂きます‼」

 

 あぁ、なんたるゴミ。こんな大人になっちゃダメだよー。

 

 《キーンコーンカーンコーン》

 

 おや、SHRのチャイムだ。もうそんな時間だったとは。

 

 「織斑先生、山田先生、もう大丈夫ですよ。ホームルームに行ってください。石井先生はまだお話があるので、もう少しだけ残ってください」

 

 「分かりました。石井先生、話が済んだら1年1組まで来てくれ。では……失礼しました」

 

 そう言って織斑先生と山田先生は学園長室から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 「はぁ……全く面倒なことを押し付けてくれますね、十蔵さん」

 

 「毎度申し訳ありませんね、しかし石井先生しか頼る人がいないので」

 

 「更識に任せればいいじゃないですか。あいつらなら適任だ」

 

 「彼女達では無理でしょう。あなたも分かってる筈ですよ」

 

 「更識は所詮、政府の駒。いくら楯無が生徒を守ろうと尽力しても、大きな流れには逆らえない」

 

 「そういうことです……」

 

 私の前に腰かけた轡木さん──真の学園長である轡木十蔵は一冊のファイルを渡してきた。

 

 「これは……新年度から面倒ですね」

 

 「所属の目星はつきますか?」

 

 「三人の内、プロは一人だけです。カナダ安全情報局(CSIS)かな?最近束にしつこくしてるらしいです。妹狙いで、この辺りをウロウロしてるんでしょう。残り二人はアマチュアですね。女性利権団体が雇った軍人崩れっていった所でしょうか」

 

 「そうですか……この件は()()()()()あなたにお任せします」

 

 「丸投げの間違いでしょう?」

 

 「そう言われるとなんとも言えませんな……」

 

 「何を白々しい、轡木()陸将」

 

 「昔のことですよ。今はしがない用務員ですから……一夏君と篠ノ之さんを宜しくお願いしますよ」

 

 

 

 

 

 

 食えない爺、廊下を歩きながらそう思った。

 

 元防衛省情報本部(DIH)本部長、轡木十蔵。用務員の時は好きなんだけどなぁ。全部お見通しの癖に私に聞いてくる辺り、おっかねぇなぁ。ホントに、こういう厄介事から逃げられない定めなのかね。前世よろしく。やってることが変わって無い辺り、業が深い。下手したら前世の方がマシだったかもしれない。

 

 1年1組に近付くと黄色い歓声が聞こえた。大方、織斑先生の自己紹介でファンの生徒たちが暴走しちゃったんだろう。よくある光景だよね。

 

 「ん……来たか……ではもう一人の副担任を紹介する。入って来てくれ」

 

 あれ?私のお呼ばれですか?んじゃ、失礼しますよー。

 

 うわ、何この視線……まぁ珍獣を見るような視線はもう慣れたけどな!!でも、キャーキャー煩いなぁ。織斑先生に怒られるよー?もう、授業中は静かにしてくれよー?男性教師に対するいじめとか怖いから。

 

 「えー皆さんの副担任を務めることになりました、石井です。まぁ、クラス皆仲良くね。楽しく過ごしてください。IS学園といっても学校ですから、皆さんの貴重な学生時代を有意義に過ごしてください。先生はそのお手伝いが出来ればいいなとか思ってます。よろしくお願いします」

 

 血生臭い奴だけどね。

 

 

 てか一夏君の視線が眩しくて溶けそう。助けて。

 

 

 


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