転生して気が付いたらIS学園で教師やってました。 作:逆立ちバナナテキーラ添え
気圧のせいか、頭が重いし、眠いし、ダルくてキーボードが遠い……
そしてスランプ気味……
そんな中で呼符で来てくれたパールヴァティー
そんな訳で死に体の頭で書いた本編どうぞ
私は朝が苦手だ。遠い昔、前世という時を生きていた頃からどうにも好きになれない。その頃のことはよく覚えていないが、私を燦々と照らす朝日を忌々しく思っていた気がする。
だから私はカーテンを閉めたまま朝の時間を過ごす。毎朝、薄暗いリビングでコーヒーとトーストを腹に入れて出勤する。熱いコーヒーが腹を温める時には眠気も覚めていて、教員寮を出て日光に照らされても別段眩しいと思うだけだ。
もう一度言う。私は朝が苦手だ。
目覚めは良いとは言えないだろう。私を目覚めさせたのは目蓋の裏に感じる淡い光だった。
目を開くと、いつもと部屋の明度が違うことに気付いた。部屋を朝の忌々しい光が明るく照らしている。昨晩、カーテンを閉め忘れたのだろうか?そうして思い出そうとすると鈍い頭の痛みと、首の痛みに襲われた。それでも無理矢理頭を働かせて昨晩の自分の行動を思い返す。
飼い主がボーデヴィッヒを拐ってから数日が経った日、私のスマホに知人から電話があった。内容は簡潔で一分も会話しなかった。頼んでいた仕事が無事完遂されたという報告だった。何かあればまたよろしく、と言って通話を切った私は安堵と共にソファーに座り込んだ。
シャルロット・デュノアの問題は解決した。週明けには転校生扱いで、新たな人間として再編入するだろう。
デュノア社はシャルロットを私に売った。私はシャルロットを買う替わりにデュノア社が喉から手が出るほど欲しいであろう第三世代兵装、イメージインターフェース技術を用いた兵装のデータをくれてやった。飼い主が酔った勢いで作るだけ作っていらねぇからやる、とぶん投げてきたゴミを押し付けただけなのだが。浮遊砲台──ビットでは無い──を用いた高火力ハイレーザー砲撃型兵装。燃費の悪さが凶悪なバカ兵装。飼い主曰く、パンジャンドラム級のバカ兵装らしい。開発者がそう言うのだから、想像を絶する程ピーキーな代物なのだろう。それと、ついでにお望みの白式の機体データをオマケした。私の代理人として交渉した知人が言うには、デュノアの社長はとても嬉しそうな顔をしていたという。それを聞いて私もとても嬉しくなった。彼らは望む物を手に入れ、私はゴミ処理と買い物が出来た。正に互いが笑顔になれる最高の取引だ。
これで有澤先生への手土産が出来た。今はもういないシャルロット・デュノアをどうするかは全て有澤先生次第だ。あの人のことだから悪いようにはしないとは思う。養子にするぐらいはしそうだ。
私も、有澤先生も、デュノア社も円満に事が済んだ。それだけでは無く、爆弾背負ってたフランスも、デュノアを買収しようとしているアルテス・サイエンスも満足行く結果だろう。アルテスはデュノアがシャルロットという爆弾を抱えていることを知っていた。だから一気に買収出来なかった。世界を騙した三人目の男性操縦者なんて核爆弾を自社に抱え込みたくは無い。だが今回シャルロットが有澤の物になり、かつ男性では無く女性として学園に再編入することが決まった。アルテスからすればもう邪魔する物は何も無い。アルテスは委員会側の企業だ。どちらかと言えば機構寄りのデュノアを買収することは機構側の地盤を突くことにもなる。延いては委員会の老人どもも得をする。
そんな訳で問題が解決したので細やかながら祝杯をあげることにした。宅配でピザを頼み、適当にある物でつまみを作ってバドワイザーを開けた。ハラペーニョとマルゲリータを摘まみながらオンラインの映画配信サービスで面白そうな奴をだらだらと見いていた。馬鹿みたいにドンパチする奴と電脳世界にダイブして暴れる奴だった。頭を空っぽにして阿呆のような顔でスクリーンを眺めていたと思う。
飼い主のラボではこんなにゆっくり映画は見れないから、久し振りの静かな自分の時間が堪らなく嬉しかった。作ったつまみが五分と経たない内に無くなったり、興奮して私の肩を尋常じゃない勢いで揺さぶったり、酔いつぶれて私の膝の上で寝たり。気を休めるつもりが余計疲れてしまう。クロエを拾ってからはラボで映画を見るなんてしてないが、飼い主と二人宛もなく世界中を彷徨っていた頃はそんなこともあった。
まぁ、そんなこんなで寝てしまったのだろう。だが、カーテンは閉めていた筈だ。カーテンを閉め、部屋の明かりを消した状態で映画を見ていた。
香ばしい匂いが鼻孔を刺激した。それは油が弾ける音と共にキッチンの方から漂ってくる。痛む首を回し、キッチンの方へ視線を向けた。
「……クロエ……?」
銀髪の少女がキッチンで料理をしていた。後ろ姿しか見えないが、それはラボで料理をするクロエの姿と瓜二つだった。
いや、何故クロエがここにいる?あの子はラボにいるんじゃないのか?私は夢の中にいるのか?飼い主の悪戯か?全く状況が理解出来ない。日曜の朝からこんなに混乱するとか、最悪の目覚めも相まって色々地獄だ。
とりあえず、起きて話を聞こうとするとキッチンにいるクロエらしき少女が振り返った。
「む?おはようなのだ、父様!!」
いやいや、色々聞きたいことはあるけど。何故君はここにいるんだい?ボーデヴィッヒ。
◆◇◆◇
とりあえずシャワーを浴びて、出るとテーブルに所狭しと朝食が並べられていた。その量とボリュームは以前見たフードファイトの大会のようで、驚いているとボーデヴィッヒはドヤ顔で胸を張っていた。
「どうだ、父様!!姉様に教わったのだ!!すごいだろう!!」
「いや、朝からこんなに食べられないから。それと、私は君の父親ではないのだが?」
「む?姉様の父ならば私の父様だろう?」
「姉様って……あぁ、クロエか……」
立ちっぱなしという訳にもいかないので、椅子に座ってボーデヴィッヒが淹れたコーヒーを飲む。するとボーデヴィッヒも私の向かいに座って此方をチラチラ見ている。
「どうだろうか……?口に合っただろうか……?」
どうやらコーヒーの味を気にしているようだった。不味くは無かった。寧ろ私が自分で淹れた物より美味かった。コーヒーの淹れ方もクロエに教わったのだろうか?
「あぁ。美味しいよ」
「そうか!!なら、料理も食べてくれ!!いっぱい作ってみたのだ!!」
やたら眩しい笑顔で言ってくるので適当にベーコンエッグとトーストを口に入れる。食べているとまた此方をチラチラ見てくるので、タイミングを見て美味しいと言うと向日葵のような笑顔がもっと明るくなる。ボーデヴィッヒもトーストにジャムを塗って食べているが、頬にトーストの欠片やらジャムを付けていることに気付いて無い。それを指摘すると私に拭いてくれと言ってくる。自分でやりなさい、と言うと不貞腐れてあーだのこーだの言うので仕方なく拭き取るとにぱぁ~と笑いながら嬉しそうにしている。今までとキャラが違いすぎて混乱してくる。
「いつ束のラボから帰ってきた?」
流れで朝食を取っていて忘れていたが、色々と聞きたいことが山ほどある。
「昨日の夜だ。レーゲンの修復が終わった後、二日間は姉様と博士と過ごした。それでニンジンロケットに乗って帰ってきたのだ」
「なんで私の部屋にいるんだ?どうやって入った?」
「姉様に料理を教わったから、父様に朝ごはんを作ってあげようと思ってな。部屋には博士から貰った合鍵を使ったのだが……ごめんなさい……迷惑だっただろうか……?」
何だその情報?あの飼い主、私の部屋の合鍵持っているのか?私のプライバシーもへったくれも無いじゃないか。いや、これでいつに間にか部屋から物が無くなる謎の怪奇現象の犯人が分かった。
「あのね、私に構ってないでもっと意義のあることをしなさい。せっかくの日曜日なんだから何処かに遊びに行くなり、トレーニングするなり、本を読むなりあるだろう。それと私は君の父親では無いと……」
「意義ならある。姉様に父様を頼むと言われた。それに姉様が父様と呼んでいるなら、貴方は私の父様だ。姉様の恩人なら尚更だ」
「それこそ買い被りだよ。私は君の姉を、クロエを助けてなどない。偶々、偶然、気の迷い。言い方は様々だが、進んで善意で助けた訳じゃないさ」
「それでもだ……それでも……姉様を助けてくれてありがとう……あなたのおかげで姉様ともう一度会うことが出来た。あなたが姉様の命を救ってくれた」
私のおかげ?何を世迷い言を。ふざけるな。私はそんな正義の味方のような、ヒーローのような人間ではない。
それから無言で朝食は続いた。私もボーデヴィッヒも一言も口を開かずに黙々と食事をした。テーブルを埋めていた料理は全て無くなり、私とボーデヴィッヒの腹の中に入った。
皿洗いを引き受け、ボーデヴィッヒを帰らせる時に彼女が私に言った。
「今度、ラボに帰った時少しでも良いから、姉様と話してくれ……頼む」
それに気の籠ってない抜けた返事をして洗い物に意識を向けているフリをした。洗い物を終えて、自分でコーヒーを入れて昨夜と同じようにソファーに体を沈める。
『私は先生が何を見てきたかは分かりません。今、先生が何に苦しんでいるのかも分からない。だけど、ほんの少しでいいんです。セシリアと……周りと距離を詰めても良いんじゃないんでしょうか?』
洗い物の最中も、ソファーに座っている今も、屋上で箒ちゃんが言った言葉が頭の中をぐるぐる漂っていた。
あぁ、カーテンの事聞き忘れた……。
石井さん、性格改善フラグ。
【速報】石井さん未婚で二児の父になる。
尚、認知はしてない模様。
個人的にはこの小説は最後、Thinker-reprise-が脳内再生されるようにしたいです。
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