転生して気が付いたらIS学園で教師やってました。   作:逆立ちバナナテキーラ添え

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石井さんブチギレ度53パーセント

石井さん精神的苦痛度87パーセント

石井さん自己嫌悪度測定不能

まるでセシリアがヒロインみたいじゃないか!!

まだ誰がメインヒロインかは未定です。

もっと石井さんは苦しむからね(外道)


All is fantasy

 誰が彼女をあんな風にした?

 

 誰があんなモノ植え付けた?

 

 どうしてああなる迄放っておいた?

 

 笑わせる。どの面下げてそんなことを言っている。余りに滑稽、愚か、救いようの無い屑だ。

 

 私じゃないか。私だったんだ。あの銀髪の少女に妄執を植え付け、救いの道を絶ち、取り憑き、引きずり込んだのは。それなのに苛立ち、憤って。まるで道化だ。

 

 炎と臓物の中で私を見る少女がいた。私を恐れ、畏れ、立ち竦む眼帯の少女を見た。目を見開き、地獄を焼き付け、過呼吸を起こしそうな小さな子供だった。オーダーを全て消化した私はその場を去った。

 

 それが間違いだったのかもしれない。いや、間違いだった。殺しておけば良かった。あの場で原型など残さず、肉片の一つも残さないで殺せば、彼女をあそこまで追い詰めなくて済んだのだろう。私のせいであの子は歪んでしまった。

 

 思えばミスしてばかりだ。何処かに残ってしまっている甘さが傷付かなくていい人を傷付ける。いっそ、全て壊してしまえばどんなに楽になるのだろう。汚い物を、醜悪な物を、私を含めて全部消してしまえばどれ程綺麗な世界になるのだろう。クロエや束が普通に暮らせる世界、セシリアちゃんが気を張らないで、ありのままで過ごせる世界。織斑先生が自分の肩書きと責務を負わずに穏やかに暮らせる世界。

 

 全て幻想だ。

 

 そんな物、神様が認めない。人は争い続ける。そして可能性を広げ続ける。

 

 言うなれば私は歯車に挟まった小石だ。巨大なシステムの中に生じたバグだ。それはいつの日かシステムに修正され、弾き出される。そういう存在だ。

 

 でも、それなら、その日が来るまで淡い幻想(ユメ)を見るのも良いかもしれない。

 

 全て幻想なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 シャルル▪デュノア。いや、シャルロット▪デュノアの正体が一夏君にバレたようだ。確証は無いが一夏君の様子がおかしい。あからさまに私や織斑先生を避けている。時々、デュノアさんの盾になるように廊下を歩いたり、私がデュノアさんに用があって話し掛けようとすると毎回一夏君も付いてくる。まるで金魚のフンだかSPのようにだ。

 

 なんというか、分かりやすいとかそういうレベルじゃない。色々怪しい。四六時中べったりくっついていて片時も離れない。気持ち悪いぐらいにだ。織斑先生ですら怪訝な表情をしている。例に漏れず一夏君が好きな子たちは面白く無いようで、本気で一夏君がホモじゃないか疑っているようだ。そのせいで不適切な本が出回っているようで、私たち教員がガサ入れする事態になった。箒ちゃんと凰さんが屋上でタバコを吸ってる時に来て、ホモをノンケにするにはどうしたら良いかなんて質問をしてきた時はこのまま飛び降りようと思った。

 

 話を聞くとデュノアさんの方も問題があるようだ。一夏君がデュノアさんをガードしようとすると顔を赤く染めて、一夏君の制服の袖を握っているらしい。しかも、普段なら箒ちゃん、セシリアちゃん、凰さんを含めた五人で昼食をよく取っているようだが最近はその二人きりで食べているという。あれではまるで付き合っているようではないか、とは箒ちゃん談。

 

 この状況、ある意味ではデュノア社の思い通りと言えるだろう。一夏君に取り入り、極めて近い距離にポジションを取ることが出来た。向こうの詳細なプランは分からないが、この事態──女バレする事も計画の一部ならば、一夏君はまんまと掌の上で転がされている事になる。

 

 このまま一夏君の機体、白式のデータを取るのも良いだろう。飼い主は別に取られても構わないと言っていた。倉持がどうかは知らないが、飼い主が良いと言ったのだからそれでいい。

 

 第一、デュノア社が白式のデータを入手出来たとしても実際は何の意味も無いのだ。あれを解析した所でデュノアの第三世代機開発には役に立たない。

 

 そもそも一夏君の白式は現行の第三世代機の中でもかなり特殊な物なのだ。便宜上、第三世代と銘打っているがあれは第三世代後期型、第三・五世代型と呼ぶのが正しい。その所以は主兵装の雪片弐型である。あれには第四世代兵装である展開装甲が試験的に組み込まれている。だから、真っ当なイメージインターフェースを用いた兵装を搭載していなくても第三世代を名乗れるのだ。最も機体自体のスペックも他の第三世代機よりも圧倒的なのだが、パイロットがそれを引き出しきれていないのが現状である。

 

 そんな物をデュノア社が解析した所で連中の役に立つものは何一つとして無い。第三世代兵装すら開発出来ていない連中が第四世代兵装を弄くり回した所で何か掴める訳が無い。それに欧州統合防衛計画(イグニッションプラン)や現在の市場に於ける一つの基準として高い汎用性、つまり誰でも扱えるということが求められている。私のシュープリス、一夏君の白式のような完全なワンオフでは無く戦略的有用性、どのパイロットでも成果を出せる機体が重視されている。故にラファールは売れたのだ。白式クラスの機動性を十全に扱える奴は多くないし、中遠距離戦を想定した機体に超近距離特化(ブレオン)型のデータを流用しても大した物は出来ないだろう。寧ろ白式以上にピーキーな欠陥機が生まれてしまう。

 

 まぁ、飼い主曰く白式から吸い出されたデータは自動的にダミーと刷り変わるらしいからデュノア社が白式のデータを得ることは永遠に無いのだが。

 

 そんなことを考えていると、凰ちゃんからセシリアと何かあったのか、と聞かれた。

 

 あの日、あの夕方の屋上からセシリアちゃんとは話していない。話すこともなければ、話す必要も無いからだ。擦れ違っても挨拶する訳でも無くただ通り過ぎるだけ。授業中はそれなりに指すことはあるが、それだけだ。時たま視線を感じるが、別にそちらを見ようとはしない。

 

 嫌ってくれれば僥倖だ。クロエと同じように私から離れるべきなのだ。さっさと私に愛想を尽かして欲しい。私を一人にして欲しい。飼い主も随分と酷い仕事を任せる物だ。こんなぬるま湯に浸からせて何がしたいんだ、何をさせたいんだ。私のような凡人には分からない。

 

 馬鹿、と言われた。とても悲しそうな顔をしているあの子を見て私がラボへ帰った時に出迎えてくれるクロエの顔を思い出した。私が馬鹿ならば、クロエは大馬鹿なんだろう。何時までも私を父と呼び、拒絶されると知りながら私を笑顔で出迎える。笑いながら、涙を流さずに泣いている。そうさせたのは私で、セシリアちゃんもこれからそうなってもらわなければならない。その先が正しい道なのだから。

 

 凰さんに何も無かったよ、と返す。随分とキツい目で返された。あの日の夕方よろしく私の愛しいマルボロはかっ拐われ、胸ぐらを捕まれた。

 

 「あんた、何なの……?」

 

 「ちょっと、言ってることが分からないな。それより手を離してくれないかな?ネクタイが延びるんだけど」

 

 何か感じる所があったのだろう。私を睨み付けて一向に手を離してくれない。箒ちゃんが慌てて止めに入ってくれたが、あのまま行けば私は顔面にグーパンを喰らっていただろう。それほど彼女は怒っているようだった。

 

 その後、私に散々罵詈雑言を吐いて凰さんは帰っていった。私としてはもっと口汚く言われると思っていたので、何だか拍子抜けした気分だったのだが、別に私はマゾヒストでも被虐性癖を持ち合わせている訳でも無いのでそれで残念というよりは教師という立場上些かの配慮をされたと思った。

 

 ドアを勢い良く閉める音が聞こえ、新しいタバコを出そうとすると箒ちゃんがまだいた。戻らないのか、と聞くと暫くはここにいると言われた。しかしそれでは私がタバコを吸えない。余り生徒の前では吸いたく無いし、制服に匂いがついてしまう。だから帰ることを促した。それでも箒ちゃんはそこに居座った。

 

 「今の先生は姉さんに似てます」

 

 いきなりおかしなことを言う物だからむせてしまった。私とあの飼い主が似ているとは、何処をどう考えてもあり得ない。私のような凡人とあの人の身に余るような頭脳の持ち主に似た点など見つからない。新手の嫌味か何かと当たりをつけようとすると箒ちゃんの言葉が続いた。

 

 「姉さんが失踪する前、よく今の先生のような顔をしてました。私は会う度に姉さんに恨み言ばかり吐いて、気付かないフリをしていました。その結果、姉さんは私たちの前からいなくなりました。その時になって後悔しました。もう少し話していれば、もう少し距離を詰めていれば、私たちが姉さんを少しでも理解しようと思ってたらと」

 

 だから何だ、と思った。束を理解しなかったのはお前らで、その話は私に関係ないだろう。別に箒ちゃんやその両親のミスなんて私からしてみれば順当な結果、当然の帰結としか言えない。

 

 「だからセシリアには私のような思いをしてほしくないんです。セシリアがよく言ってました。先生の顔色が最近悪くて心配だって、先生が最近タバコを沢山吸ってるけど何かあったのかって、最近先生が笑ってないって。私と鈴に相談しに来てたんです。それで、うじうじしてないで突撃して励ましてこいって送り出したら泣きながら帰ってきたんです。それで鈴はあんなに……」

 

 セシリアちゃんは二人に言われて私の所に来たようだ。全くもって余計なことをしてくれた。いや、彼女たちのおかげで自分の本質を再認識出来た。むしろ感謝すべきか。

 

 「戻ってきたセシリアに何があったか聞いたんです。でも何も話してくれませんでした。ようやく落ち着いた時に『先生があんなに辛そうに苦しそうにしているのに私は何もしてあげられない。それがどうしようもなく悲しくて辛い』、とだけ」

 

 「あぁ、そう」

 

 「私は先生が何を見てきたかは分かりません。今、先生が何に苦しんでいるのかも分からない。だけど、ほんの少しでいいんです。セシリアと……周りと距離を詰めても良いんじゃないんでしょうか?」

 

 「それなりに距離は近いと思うけど?」

 

 「そうじゃないんです。そうじゃなくて……」

 

 箒ちゃんはそこで言葉に詰まった。喉の奥に何かがつかえているように、言葉を上手く出せないようだった。

 

 「とにかく、セシリアと少しで良いんです。話をしてあげてください……失礼します」

 

 そう言うと箒ちゃんも戻っていった。

 

 今度こそ新しいタバコに火を付けてぼうっとしている時、昔飼い主が言っていたことを思い出した。

 

 『箒ちゃんはねぇ、私と変なところが似ているんだ。おかしいよね』

 

 全くその通りだ、と思った。飼い主の本質は箒ちゃんと同じだ。私も人のことを言えないが、だから変な甘さが出る。だが、箒ちゃんよりも()の方が色んな意味で弱い。

 

 相も変わらず気分は最悪だ。タバコはさらに不味く感じる。鳥の鳴き声は私を嗤っているようだ。生徒に説教され、何をしているのか分からなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の放課後、セシリアちゃんがボーデヴィッヒと戦闘して医務室に担ぎ込まれたと聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 校舎には誰もいなかった。日は落ちて、廊下は薄暗闇に包まれ形容しがたい気味の悪さを感じさせる。

 

 医務室も同じことで宿直の医師は席を外しており、室内は無音と静寂に包まれていた。

 

 いくつもベッドが並ぶ一角にセシリアちゃんは寝かされていた。腕には包帯が巻かれ、至るところに経過観察用の電極が取り付けられていた。

 

 ISの絶対防御を僅かに貫通した攻撃はセシリアちゃんの柔肌に傷を付けた。白い、絹のような肌に巻かれた包帯は私の目に痛々しく映った。普段ならこの事態の元凶に憤る所なのだろうが、そんなことが出来る立場には無い。セシリアちゃんの腕に傷を間接的に付けたのは私なのだ。ボーデヴィッヒを歪め、セシリアちゃんと戦わせたのは私なのだ。

 

 眠るセシリアちゃんの顔は穏やかで、何の穢れも知らないようだった。思えばこの子だって汚い物を見てきているのだ。企業や社交界といった粘着質な打算と欲にまみれた世界を見てきた筈だ。どうか願わくば、この三年間だけでもただの少女として生きて欲しい。私などに気を取られないでかけがえの無い三年間を過ごして欲しいと思う。

 

 何故私なんだろう。何故一夏君じゃないんだろう。そんな疑問を浮かべながら、寄れていた毛布をかけ直し出ていこうとした。

 

 袖口を捕まれた。振り返るとセシリアちゃんだった。どうやら起こしてしまったようだ。振り払おうとすると強い力で捕まれた。あんなに細い腕の何処にこんな力があるというのだろう。

 

 「待って……」

 

 「寝てなさい。君は怪我人なんだろう、安静にしているべきだ。手を離してくれ」

 

 「嫌です……あの、先日は申し訳ありませんでした……馬鹿等ととても失礼なことを……」

 

 「いや、それは別に気にしていないよ。その程度で腹を立てる程子供じゃない」

 

 そう言う間も私の袖口は彼女に握られている。セシリアちゃんはずっと俯いている。互いに何も話さない。耳鳴りがするような静寂が再び広がる。

 

 「何でだ?」

 

 不思議と先に口を開いたのは私だった。意識したつもりはなかったけれど、ふと聞いてしまった。

 

 「何でボーデヴィッヒと戦った?そんなになるまで、何で戦った?何で逃げなかった?」

 

 経緯は山田先生から聞いた。放課後の訓練中にボーデヴィッヒに喧嘩を売られて凰さんと一緒に買ったらしい。その際機体が深刻なダメージを受け、PICが正常に機能しなくなってもボーデヴィッヒに向かい続けたという。馬鹿だ。一歩間違えば死んでいたのだ。正常に機能しなくなったのがPICだからまだ良かった。絶対防御だったらどうなっていた?現状、絶対防御を僅かに貫通して怪我をしたのだ。この事実は委員会辺りが揉み消すだろうが、今、私の目の前にいる少女はボーデヴィッヒに、私が歪めたボーデヴィッヒに怪我をさせられた。

 

 「ボーデヴィッヒさんに言われたんです。先生を縛っているのは私たちだと。でも、最初は流そうと思いました。でも、でも……あの人は先生のことを……猟犬だと、獣だと……死神だと言いました……。それがどうしても許せなくて……私は……」

 

 何も間違ってはいない。私を縛る云々は知らないが、私は猟犬だし、獣である。死神は何処かの誰かが言ったのだろう。

 

 「セシリア、それは事実だ。私は猟犬なんだよ。ボーデヴィッヒは間違ったことは言ってないよ」

 

 「違います!!先生は猟犬などでは……!!」

 

 「君がそう言ってくれるのはありがたい。だが、変えることの出来ない純然たる事実なんだ。私はどうしようもない奴なんだ。ボーデヴィッヒがあんな風になったのも私のせいだ、そのせいで君に怪我を負わせてしまった」

 

 「違います、これは私が勝手に戦って、勝手に傷付いたのです!!先生のせいではありません!!」

 

 そう言うセシリアちゃんに顔はあの日のように涙に濡れていて、私は彼女をそっと抱き寄せた。

 

 「もう私を理由に戦わないでくれ。お願いだから。どうも私は、私が理由で君が傷付くことに耐えられそうも無い……」

 

 血に濡れて汚れきった手で彼女の頭を撫でる。人の温もりなんていつぶりに感じたのだろうか。こんなに細くて華奢な身体で戦ったのだ。少し力を入れて抱き締めようものなら折れてしまいそうな身体で。

 

 私の背を強く掴んで、顔を胸に埋めて彼女は泣いている。何故泣いているか、私には分からない。それでも目の前で女性に泣かれるというのは良いものじゃない。だからほんの少しだけ強く、彼女の身体を強く抱き締めた。壊れてしまわないように、ほんの少しだけ。

 

 「なぁ……何で私なんだ?」

 

 顔を埋める彼女に聞いてみた。何故、一夏君ではなく私なのか。こんな奴のどこが良いのか。

 

 「それは、あなたが私に道を示してくれたからですわ」

 

 「そんな理由でかい?」

 

 「誰かを愛するには十分すぎる理由ですわ」

 

 全く分からない。そんな理由で私を選んだというのか。なんというか、もっと後先考えた方が良いのではないだろうか。

 

 「あぁ……それと……」

 

 私の胸から顔を上げて、花のような笑顔で彼女はこう言った。

 

 「誰の物にもならないあなたを捕まえたくなりましたわ」

 

 

 

 

 




ARCHIVE#4

・天災の猟犬

 天災の猟犬とは篠ノ之束博士の私兵及びそれが搭乗するISを指す。

 漆黒の全身装甲(フルスキン)IS。既存のISを上回る圧倒的な速度、機体スペック、強力な兵装で現行最新の第三世代をすら凌駕する謎の機体。

 機体周辺には球状の特殊な防御フィールドを展開しており、それを瞬間的に開放することにより周囲に強力な閃光と衝撃を発生させる。

 あらゆる勢力が交戦回避を提唱する世界最悪の暴力装置。これまで行われた拘束、殺害作戦は悉く失敗し全滅している。さらに作戦を実施した勢力は漏れなく報復攻撃を受けている。

 パイロットは現在IS学園で教師をしており、自らを石井と名乗っているが詳細は不明。












 でも石井さんはまだ救われません。まだ擦り切れます。(麻婆)


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