IS―審判の時―   作:Vシネ面白かった丸

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ヒャア、もう我慢できねぇ! 絶版だァ!

※今話はオリキャラ有りです


ゲンム・コーポレーション/取るに足りない凡作

「――諸君、忙しい中こうして出席してくれたことを、心より感謝しているよ」

 

 上座に当たる席に腰を下ろし、十人にも満たない幹部の前でそう言い放った。

 言葉は概ね本心だ、実際我が社は今新作の開発や数々の企業との会談にと、てんてこ舞いの毎日だ。見渡す限り、顔色が悪いのもちらほらと見える。

 我が社は自他共に認めるホワイト企業であるから、定時に上がれているものがほとんどのはずだが、どうやら自主残業をしてくれているらしい。流石は私の認めた商品達だ。素晴らしい活躍を期待していると言ったが、ここまで身を粉にして働いてくれるとは、社長である私も鼻が高いと言うものだ。

 

「社長~、出来れば手短に済ませてほしいな~って思うんだけど~。今結構良いところでさ~」

 

「CKO、社長の御前だ。文句を言うならあの出来損ないを代理にすればよかっただろう。お前よりは態度は有能だぞ」

 

「あ? 出来損ないはどっちだよCSO。無駄に時間長引かせてさ、迅速に行動するようにって社長も言ってたじゃん」

 

「あれも戦略の一つだ。シナリオ一辺倒のお前には分からないかもしれないがな」

 

「迅速の言葉の意味もわかんないのかよ、無駄を戦略と呼べる君の頭の方がよっぽど――」

 

 二人の言い合いはそこで止まった。いや、止まらざるを得なかった。それは二人の首もとには異なる凶器がそれぞれの頸動脈に突きつけられていたからに他ならない。手を軽く上げてそれ以上を止めると、凶器はすぐに彼女たちから遠ざかった。

 

「二人とも。我が社のことを考えてくれるのは、CEOの私としても大変喜ばしいが、会議を妨げるのは少々頂けない。聞き分けが悪ければ……分かるだろう?」

 

「ごめんなさーい」

 

「…申し訳ありません」

 

「良い。ご苦労だったな、CIO」

 

 そう軽く礼を言うと、CIOはらしく頭を恭しく下げた。

 

「さて、今回集まって貰ったのは諸君らに新たな仲間が増えるのと、先のことについての報告だ。まずは顔合わせと行こう」

 

 入りたまえ、と一言声をかけると扉は静かに音をたてながら開かれ、金髪の美女が新品のスーツを見にまとい凛とした佇まいで入室した。

 そう、先日私の右腕としてスカウトしたばかりの商品、シャルロットだ。

 

「シャルロットです。この度、社長の右腕としてスカウトされ、まずは見習いとして本社で働くことになりました。よろしくお願いします」

 

 と、やはり落ち着いた声色で紹介を済ませた。それにしても分かってはいたがなかなかの胆力だ、この場にいる人物は皆そこそこに有名人のはずなのだが、柔らかな笑顔のまま表情筋一つ崩れていない。見習い卒業は、思ったよりも早いかもしれないな。

 

「彼女には次期CFOとして働いてもらうつもりだ。教育は現CFOにしてもらうが、教育の一環、君たちの元に訪れる可能性があることを覚えておいてほしい」

 

 幹部たちはそれぞれのらしい返事を返しながらも、シャルロットの価値を定めるように視線を向けている。素晴らしい、私の目だけを信用することなく自分の目で価値観を測る。それでこそ我がゲンム・コーポレーションの商品だ。

 

「時間もないことだ、親睦を深めるのは後にしてもらおう。さて、諸君らの目覚ましい活躍の成果もあって、デュノア・コーポレーションは見事に絶版された。CKO、君の知識から来るシナリオは素晴らしいものだった。多少のブレはあったものの、当初の通り我が社の勝利に揺るぎはなかった。Good Job」

 

「報酬には期待していいんでしょ?」

 

 もちろんだ、と頷き返す。一番スカウトに手間も資金もかかったが、やはりこれ以上の成果を出すCKOはもはや人類には存在しないだろう。キッチリと手綱を握っておかねばならないな。

 

「CSO、君の戦略は見事に彼らを転がし、最初から最後まで彼らは君の手のひらから抜け出すことは敵わなかった。Good Job」

 

「お褒めに預かり光栄です。ですが先ほどのCKOの言う通り無駄があったのも事実、これからも貴方の元で研磨することを、どうかお許しを」

 

「より一層の活躍を期待しているよ」

 

 その言葉にCSOはまた深々と頭を下げる。盲目的で扱いやすいのは利点だが、こちらの褒めに対して一歩引いて受けとるのは頂けない。謙虚と言えばそれまでだが、そろそろ正面から言葉を受けとるべきだ。今度キッチリと話をつけるとしよう。

 

「CIO、そしてシャルロット。君たちが我々に与えてくれた情報には一寸の狂いもなかった。CKOとCSO、二人だけでも勝利は勝ち取れただろうが、君たちのお陰で我が社にの被害経理は想定を遥かに越えた最低額で済ませることが出来た。Good Job」

 

 言葉を受け取った二人はただ静かに頭を下げた。CIOは相も変わらず無表情だが、シャルロットはどこか嬉しそうな気配を隠しきれていない。彼女の環境のせいだろう、あまり必要とされることも必要以上に褒められることもなかったと聞いている。その点我が社は仕事に対して正当な報酬を与える、これからも慣れずにどこぞのゴミのように慢心しないことを期待しておこう。

 

「デュノア・コーポレーションのラファール・リヴァイヴは我が社の傘下である倉持技研がその権利を持つことになった。そのため彼らの上司に当たるCTOがそのまま管理に当たることになる」

 

「そういえばあのマサコンがいないね、珍しすぎて槍どころか天変地異すら落ちてきそうなんだけど」

 

「彼女には別件の仕事を依頼してある、その用事で今回の会議には出席できないと先日連絡があった」

 

 CTOの発明の成果のおかげで我が社の商品たちへの被害の全てを抑えることができた、その仕事ぶりを褒めたかったのだが仕方ない。また時間のある時に言葉だけ伝えるとしよう。

 

「道理でCIOがカメラを持っていると思った」

 

「っていうかいいの社長、余すことなく撮られてるけど」

 

「……彼女への報酬だ、多少は目をつむろう」

 

 思っていたのだが私の回りの人間はどうしてこうどこかしらネジが外れているのか。スカウトしたのは私だが、誰がこんなダメな人間になることを想像する。しかし商品価値だけはしっかりと示してくる、仕事は完璧に仕上げる。正当な報酬を与えるのが我が社の基本とは言えここまでだと少しばかり嫌になってくる。

 えぇいやめろCIO、私のローアングルのアップなどなんの価値もない、それ以上踏み込んでくるなら絶版にするぞ。

 

「……さて今回の緊急会議はこれにて終了だ。諸君らの変わらぬ奮闘に期待しているよ」

 

 笑みを深めてのその言葉を持って会議の終わりとした。

 世界三位のデュノア・コーポレーションが沈んだからと言って、まだ満足など出来ていない。我が社はこんなところで止まりはしない、ゲンム・コーポレーションは必ず世界一へと上り詰める。

 他でもない、私の商品価値を持ってして。

 

 

◆◆◆

 

 

 IS学園には毎年開催される、全生徒による学年別トーナメント戦がある。

 二ヶ月ほどしか動かせていない一年には少々酷だが、この短い期間で学んだことをどれほど活かせるか、またどんなことが足りていないのか、どれが自分に適した使い方なのか。そういうことを学ぶことが出来、また教師もそれを知ることができる。このトーナメント戦はISの教育上必須事項でもあるのだ。

 二年はこの一年で学んだことをどれだけ発揮できるか、そして三年に向けどのように問題点を解決するのかを学ぶ機会。そして三年は来場者でもある大手IS企業に自身を売り込む、謂わば就職活動の一環でもある。

 去年に比べ今年は専用機持ちが多く、ツーマンセルにしタッグ戦方式としたが、奇数であるため一人余ることになる。

 だがその問題はすぐに解決することになった、クラスでも一人でいることが目立つ檀が一人で出場する旨を申し出てきたからだ。

 

 今まで碌に授業にも参加していない奴が何を言うか、と否定しようとしたが彼以外の大多数は非戦闘経験者であることも相まって教師一人で否定する材料はあまりにも少なすぎた。返事は延期としとにかく会議に持ち込んで解決案でも探ろうかとしたが、それも徒労に終わった。

 賛成の意見を述べる教師があまりにも多すぎたからだ、彼女たちはどれもISという存在のお陰で自らの地位を高めたものばかりで、一夏と違って檀は大きな権力を持ちながらもISを動かしたため、後ろ盾がある。その後ろ盾があまりにも自分の邪魔だから、これを機に恥を晒してあわよくば手を引くことを望んでいるようだった。

 もちろん建前はこれ以上にないくらい綺麗事だ。やれ「彼の腕前を正当に評価することができる」だの、やれ「これからの教育方針にも関わってくる」だの、やれ「これを機にISと真剣に向き合ってくれるかもしれない」だの、やれ「IS学園の一生徒としての自覚を持ってくれるかもしれない」だの。内面に本音を隠しきれていない者ばかりだ。それが生徒の前に立つ教師の思うことか。

 

 否定の意見を上げる者は私を含めて三人ばかり。結論は「やらせてみせて状況判断、明らかに敗けが見えた場合は担当教員が介入して試合を強制終了させる」ということに落ち着いた。

 担当教員は、よりにもよって否定の意見を述べた者の一人だ。私や山田くんが着ければよかったのだが、うちのクラスには檀を含めて問題児が多すぎることもあって、そちらが問題を起こさない、また起きた場合のバックアップに回る担当に着いてしまった。

 

 そういうことを報告しなければならない、ということもあって今朝は頭が痛かった。生徒に正々堂々と恥を晒してこいと平然と言える厚かましい教師などそうそう居ない、少なくとも私はそんなこと言って心を痛ませないほど非情ではなかった。やるからには勝たせてやりたいし、そのための最善の道を示してやりたいと思うのが教師として普通ではないだろうか。

 しかし当の本人は告げられても表情ひとつ変えず、いつぞやの時のように言い放った。

 

『問題ありません。私が勝つに決まっていますからね』

 

 自身の敗けを一点足りとも信じていない、曇りない勝利への自信。驕りとも慢心とも違うその姿に、思わず歳を疑ったが担任としては嬉しく思った。

 

『良いだろう、そこまで言ったんだ。勝ち点の一つでも上げてこい』

 

『えぇ、一点どころかコールド勝ちして見せましょう』

 

 こいつなら出来る、そう思ってはいたが、認識が甘かったと知るのは大会当日のことになる。

 

 トーナメントとは言っているが、その大会表を決めるのは教師の仕事ではなくコンピューターの仕事となっている。つまり誰と当たるかわからない、完全ランダムの状態。誰が一回戦に選ばれてもおかしくないと、どの学年も戦意や恐れ、緊張で満ちていて学園全体が良い空気となっていた。

 そうして選ばれた一回戦の組合わせは、檀正宗とフランスやアメリカの代表候補生のタッグ。

 

「――やられた……!」

 

 最悪の組合わせだった。よりにもよって戦争経験者の二人と檀が戦う羽目になるとは。いや、そうじゃない。これは間違いなく意図的な物だった。

 完全ランダム制と言っても、これは生徒の教育の一環で行われる行事。そこで代表候補生と全くの素人が初戦で鉢合わせしては、互いの教育のためにならない。そのため、どの生徒にも必ずまともに試合できる機会が少なくとも一度だけあるように設定されているのだ。それをするためにコンピューターと生徒の来歴等が入っているデータバンクを繋ぎ、コンピューターにはある程度同じ強さやセンスを持ち合わせたものたちを初戦にぶつけ、自らの力を確かめさせることができるようにしてある。

 

 檀は全くの素人である、ISにはまともに乗ったこともなく、セシリア・オルコットでの試合も何が起こったか正確に把握できていないため、教師側では無効として扱っている。つまりデータ上の戦闘経験は0のままのはずだ。それが戦争経験者のタッグの対戦相手になるなんて、あり得るはずがない。

 今日という日のためにコンピューターはちゃんと今朝にだってメンテナンスを受けている、つまりコンピューターの不調はあり得ない。とすれば間違いなく、データが書き換えられているのだろう。それも檀のデータを。

 犯人など見え透いている、いや心当たりが多すぎて逆に困るぐらいだ。

 既に試合の始まる準備も進んでいる、今さらデータ改竄の疑いがあると止めるには確かめる時間も人員もない。試合は滞りなく進むだろう。教師として、私が出来ることはなんだろうか。無理矢理にでも介入して試合を強制終了させることか、私もあいつも恥をかくことは避けられないがこれからの道を断たれるよりはずっとマシだ。今から準備をすれば、試合が開始するくらいには済むはずだ。

 

 試合が開始する前のインターバル、両者がアリーナの中で見合っている状態。私は準備に手こずっていた。まさかここまで手を伸ばすとは、向こうも随分と本気のようだった。これでは試合開始から数分経たなければ出撃すらままならない状態だ、それほどの時間があればISの試合などもう終盤だ。半ば道は断たれるも同然だ。

 準備を急ぐ私の耳に、生徒の声が聞こえてくる。

 

「残念だったね、よりにもよって私たちと鉢合わせするなんてさ」

 

「これでも戦争を経験しててさ、戦いには結構自信があるんだよ」

 

「そうか、道理で君たちには自信に満ち溢れているわけだ」

 

「アイシャとは二ヶ月ほどの付き合いだけど、考えも似てるし、自分で言うのもなんだが、私達は優勝候補だ」

 

「そのISはISを操作するものみたいだから、対策としてジャミングも装備させてもらってるよ。つまり君はもうただの素人ってこと。そういうわけだからさ、怪我する前に棄権した方がいいよ。絶対防御は痛みまでは庇ってくれないからさ」

 

 好き勝手に言っているが、実際その通りだ。それに対策まで張られてしまっては、檀は自身の腕前だけで勝たなくてはならない。それも、二人を相手に。檀がこの状況で勝利するのは、万が一程度と言える。つまり、一方的になぶられるだけの試合が行われることを意味していた。これが気に入らないという理由だけで生徒にすることか。

 だが絶望的である状況であっても、檀の声色は変わらなかった。

 

「忠告痛み入るよ。だが問題はない」

 

「はぁ?」

 

 こんな状況でさえ、あいつの言うことは変わらない。

 

「私が勝つに決まっている」

 

 虚勢でも、驕りでもないその一言が私の手を止めさせた。二人に負けないほどの自信に溢れたらその一言に、どうしようもない期待を抱いたからだ。こいつなら、きっと一矢報いる。そういう展開はスポーツマンとして嫌いじゃない。

 やってみろ、檀。嬉しく思った私の気持ちを裏切るなよ。

 

「……強がる私カッコイーって感じ? ウザ」

 

「気で負けるようにしないのは戦場でも悪くない。だがこれは戦場でも試合でもない。一方的ななぶり殺しだ」

 

「ああそうだろうな。君たちの意見には全面的に賛成だ」

 

「――今から行われるのは一方的な審判(ジャッジメント)だ」

 

《BUGL UP!》

 

 

◆◆◆

 

 

 戦いは終始一方の有利に進められていた。

 当たり前だ、片方はずぶの素人である私、もう一方は戦争経験者でタッグだ。どちらが有利に思えるかなど火を見るよりも明らかだ。

 当然、始まってからずっと無傷の私が押している。

 

Fuck(どうなってんだ)!」

 

「Fワードを公共の場で使ってはいけないと親に教わらなかったのかね?」

 

 罵倒と共に放たれる数十の弾は対IS用に作られたものなのだろう、弾自体にも相応の加工をしてSEを削り取ることを目的とした形状をしている。当たればISとは言えただではすまないかもしれない、だが相手が悪かった。何故なら、君達の前に立っているのは私というクロノスなのだから。

 時計を模した半透明のシールドが余すことなく銃弾を遮断する。速度に物を言わせ何度も角度を変えては射撃をしているが無意味なこと、襲ってくる弾丸は全て消えては現れてを繰り返すシールドを前に足下に届くことすらなく跳弾してはあらぬ方向へと跳んでいく。

 

「――ッ!」

 

「奇襲のつもりか?」

 

 普通ならば死角である方から迫り来る刃の一撃を、事も無げに弾く。受けてやってもいいが、SEが減らないことに疑問を抱かれるにはまだ早い、クロノスのスペックが判明するのはまだ後々でなければならない。そういう筋書きであるのであれば尚更だ。

 奇襲は無駄と悟ったのか白兵戦に持ち込んでくるが、これもまた無駄だ。私はこういうゲームに対してだけは得意と言い張れることが出来るほどには訓練を積んでいる。割合的にはクロノスのスペックの方が上、というのが多くを占めるのだが。

 

「これでも食らいやがれ!」

 

 振るわれる刃を余裕をもって弾くだけのゲームをしていると、白兵戦役のISが急に下がったと思えば、援護役のISが何かを放り投げてくる。それは間違いなく、パイナップルとも呼べる手榴弾。点は無駄と悟り面での攻撃をしてきたか。

 別段受ける理由もない、それに蝿のように飛び回られるのもいい加減耳障りで目障りだ。

 バグルドライバーⅡのABボタンを押す。

 

《PAUSE》

 

 数瞬後、世界は静寂に包まれ、クロノスに支配される。

 宙に浮いたまま止まってしまったの手榴弾をボールの如く蹴り飛ばし、勝ち誇った顔を浮かべる白兵戦役のISにぶつける。そして爆破の範囲から逃げるように撤退の構えを取るISに近づき、ボタンを押した。

 

《CRITICAL CREWS-AID》

 

「君はもはやゲームとして遊び飽きた」

 

 エネルギーを集中させた拳を顔面へと叩き込む。絶対防御が立ちはだかったせいで直接肌に触れることは敵わなかったが、既にその威力は余すことなく叩き込んでいる。殴打を受けたISは宙で二三回転し、再び止まる。もはやゲームオーバーからは逃れられないだろう。

 

「このゲームは絶版だ」

 

《RESTART》

 

 世界が動くことをクロノスによって許される。それと同時に今までしたことの全てがIS達を襲う。援護役のISは威力の勢いのまま縦に回転、その後地面に墜落し、そして白兵戦役のISには0距離手榴弾の洗礼を全身に受けていた。

 

《……ミーシア・ドゥテルテ、ダウン》

 

「み、ミーシア……? どこ、ミーシア!?」

 

 まだ稼働中のISは何かを探すように、いやまるで狂ったかのように辺りを見渡す。探しているものなら私の足下で土遊び中だ、と教えてあげようとしたがどうも様子がおかしい。

 

「あ……あ? あ、¢¥∞℃¢′%¢≧*∴±◆÷◇≠●☆♀◆♂±!」

 

「……ああ、鼓膜が破れてしまったのか」

 

 そういえばあの手榴弾、結構な至近距離で爆発していたような気がする。絶対防御は威力を殺してはくれたが、突発的な爆音までは防ぎきれなかったのかもしれないな。もしくは、そういう所を削って別の部分を改良したそういうISだったのかもしれないが。彼女のようなゲンム・コーポレーションの商品にもなり得ない者達の情報管理はCIOの仕事だ。私の耳に入らなかったということは、取るに足りない凡作だったと言うことだろう。

 しかも悪いことに、爆破を間近で見たせいか目まで悪くなっているようだ。恐らく一時的な物だろうが、見えず聞こえない状況というのはあまりにも辛すぎることだろう

 

「では君も絶版だ」

 

 足下のISの私物であるマシンガンを拾い、それをクロノスの力でハッキング、使用可能にし発狂したように暴れまわるISを的に見たてトリガーを引いた。

 しばらくするとSEが切れ、見たことがあるようなないような教師たちがアリーナの中に入ってきては彼女達を回収していく。それを見送ってから、つまらないゲームで遊ぶことほど無駄なことはないなと改めて考えに耽った。

 

 

◆◆◆

 

 

 試合は終わった、だが誰一人として歓声をあげることはない。ISのハッキングが出来るIS、檀の専用機に対する印象は正にそれだった。だが蓋を開けてみれば、その性能は圧倒的だった。銃弾を自動的に悉く防ぐシールド武装、本人の高い戦闘技能、そしてハッキングでもなんでもない単一仕様能力。

 あいつの目の前で爆発するはずだった手榴弾は対戦相手のすぐ側に瞬間移動し爆破、もう一人はまるで見えない一撃を与えられたかのように吹っ飛びダウンした。そう、あれはまるで停止結界で受けたダメージが跳ね返った時のような挙動だった。

 理解不能、会場にいる全員がその状態のまま呆けるほどに。私はそれを見てやりすぎだと思う反面、スッキリとした心持ちで眺めていた。そして、アイツの有言実行するその姿勢に、どこか好ましさを抱いてたような気もした。

 

 数分後、檀はこれ以上のトーナメントを辞退する代わりに二回戦目である愚弟対ラウラの試合に参入する許可を携えて、再びアリーナへとやってきた。




・CKO
 最高知識責任者。長老。一番の物知り。

・CSO
 最高戦略責任者。大軍師。石兵八陣とか使う。

・CIO
 最高情報責任者。情報戦略はお手のもの。ある意味忍者。

・CFO
 最高財務責任者。お金の管理する人。色々と大胆。

・CTO
 最高技術責任者。IT博士。筆者は主任的な何かと思い込んでいる。

・CEO
 最高経営責任者。ある意味一番偉いけど、日本では半ば冠になってる。

・マサコン
 正宗コンプレックス。

・ローアングルのアップ写真
 高値で売れたらしい。

・デュノア・コーポレーション
 本社支社問わず謎の組織に襲撃された後、社員のミスによって個人情報がネットに大幅に漏洩。敢えなく倒産した。

・倉持技研
 国から運営の許可をもぎ取った。

・四人とか幹部少なくない?
 発言力皆無なのが何人かいるだけ。

・奇数
 原作で偶数じゃなきゃタッグ戦するなんて言わないだろうと思ったから。

・千冬さん
 筆者が基本的に好き。今思えば生徒のやりたいことをやらせて後々の責任は自分で取っているし有能教師では?(色々なことから目を剃らしつつ)

・ミーシアとアイシャ
 オリキャラ。戦争経験者でISパイロットとか中々苦しいなと思った。けど、もう考えるのはやめた! もう台詞はない。

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