ろりこん ~提督とおかしな建造マシーン~ 作:TS百合好きの名無し
短編だったはずなのに続いてしまった……
平日の仕事が終わり、夜のマンションの自室で今日も俺は艦これをプレイする。
『今日も1日お疲れ様デース!』
『おつかれさまデース!』
母校画面で俺を出迎えてくれるのは艦娘の金剛……と小さなろりっ娘こんごう。あの夢を見てから俺の艦これは明らかにおかしくなっている。そもそも金剛にこんなグラフィックはないし、第一、この金剛たちは……
「部長に改造製品を見つかっちまってひどい目にあったよ……」
そう言って画面をクリックすると、
『Oh……何やってるんデスか……』
『なにやってるのー』
明らかに会話が成立する。ちなみに暁の場合も同じ(なんか母港に暁が増えてた)。信じられないが現実だ。
「機械弄りは楽しくてなあ……」
『もう!テートクが来るのが遅いから待ちくたびれたデース!』
『いつもよりおそいヨー?』
「説教長いんだよあの人」
『テートクと会話する時間が減ってしまいマス!』
『へっちゃうヨー』
「さて、まずはデイリー任務やるから潜水艦隊にチェンジね」
編成メニューで潜水艦たちを選択する。
『『ノオーーー!?』』
「んー!そろそろ寝るかな。2人ともおやすみ」
『『Good nightデース』』
パソコンの電源を落とし、ベッドに潜る。
しばらくして俺は眠りについていく……
ーーーーー
ーーー
ー
「おい、聞こえるかの?」
「ん?」
気がつくとそこは一面真っ白な謎の空間だった。
(何だここ……夢か?)
「夢といえば夢じゃよ」
「え?」
目の前には白い衣をまとった謎の爺さんがいた。
「誰?」
「神様じゃ」
「へえ……夢か」
「一応本物じゃよ」
信じて良いものなのか……
「……金剛たちの事もあるしもう驚かねえよ」
「今回はその事についてお主に話をしに来た」
そう言って爺さんが俺を見つめる。
「俺に話?」
「単刀直入に言う。このままではお主の艦これの世界と現実世界が融合してしまうんじゃ」
「はあ!?」
融合?なんだそりゃ。あ、でもこっちの世界で金剛たちに会えるって事か?
「今ちょっと何か期待したようじゃが話はそんな単純じゃないぞ。融合した場合、現実世界に現れるのは艦娘だけではない。深海棲艦も出現してしまうのじゃぞ?」
「それは……」
「そうじゃ。大変な事になってしまう」
下手すれば世界が滅ぶな。
「ていうか何でそんな事に……」
「お主の艦これ内の金剛の愛の重さ故にかの」
「はい?」
「お主は金剛を愛しておるじゃろう?」
「ええ」
「同じように金剛もまたお前を愛しておる。じゃが、その愛はお主の想像以上じゃ。お主に迷惑をかけたくなくてずっと遠慮していたが耐えきれず、とうとう夢という形でお主と出会った。それがきっかけじゃろう……彼女に自覚はないが2つの世界が融合しかけておる」
「マジか……」
「すでにお主の艦これのシステムに干渉してきておるじゃろう?」
母校画面の金剛たちが思い浮かぶ。
「艦これというゲームはとんでもない数の提督たちの心に触れているゲームじゃ。人の思いというものは時に奇跡を起こす……多くの人々に愛された艦これが変質してもありえなくはない。この世には科学だけで説明出来ない現象などいくらでもあるのじゃ」
「……」
「その現象の先駆けとなったのがお主と金剛じゃ」
「……愛は時に奇跡を起こすってやつですか?」
「間違ってはない」
「それで、俺に何をしろと?」
「彼女は無意識の内に世界の融合を進めようとしておる。ひとえにお主ともっと触れ合いたいという理由でな」
「ホント俺の嫁は可愛い」
「真面目に聞いておくれ……ごほん、とにかく!解決策はただ一つ。お主が彼女を満足させれば良い!」
「……具体的には?」
「お主は以前夢で行ったあの鎮守府へいつでも自由に行けるようにしてやる」
「あそこへ?でもあそこにいるのは小さい金剛のこんごうだぞ?あんたの言ってるのは本来の金剛だろ?」
「あれがお主の嫁じゃぞ?」
「は?」
「お主が資材にランドセルなんぞ入れおった為に、彼女はあの世界に顕現する際、あんな姿になったんじゃ」
「え!?で、でも!母校画面に2人の金剛が」
「どっちも彼女じゃよ。あの世界ではあんな姿になっているだけで、中身はお主が今まで育ててきた金剛じゃぞ」
「じゃあマジの嫁本人と俺は風呂に入っちまったのか……やばい、また恥ずかしくなってきた」
「爆発するがいい」
「すみません」
「まあとにかく、儂からは以上じゃ!あちらの世界に行っている間、お主の世界の時間は止まっておるから安心せい。行く時は行きたいと場所をイメージすれば良い。帰る時も同様じゃ」
「とりあえずは分かったよ」
「頼んだぞ!!」
ーーーーーー
ーーー
ー
「……朝か」
変な夢を見た。内容も全部覚えているがはたして本当に夢だったのだろうか。
「イメージするんだっけか……」
頭の中であの場所をイメージする。
「ろりこんごう……ろりこんごう……」
急に体が上に引っ張られるような感覚がした。
「おっ!?」
マンションの自室の景色が変化し……
「マジか……」
「テ、テートク!?」
変化が収まると、俺は例の鎮守府(俺の鎮守府らしいが)にやって来ていた。
「おう、久しぶり」
びっくりしたような様子の金剛ーーーこんごうが目の前にいて、俺を見ていた。
「びっくりしたか?」
「な、なんで……い、いえ、別に驚いてないデース」
喋り方があの時より若干だが流暢になっている……
「お前は……前から俺が知ってる〈金剛〉なのか?」
「な、なんのことデスかー?」
視線が泳ぐこんごうちゃん。
「俺がお前に指輪を渡したのは?」
「そんなのワタシの進水日の5月18日に決まってるデース!!……あっ」
「……マジか」
「あ、あの、その……」
「愛の重さ故にねえ……俺にとっちゃ嬉しい事だよ」
「え……」
「心配すんな、俺が嫁のお前に会いたくてここに来てるだけだ。お前が気にする事じゃない」
「で、でもテートクには自分の世界での生活が……」
「こっちに来ている間、あっちの時間は止まっているらしいぞ?俺としてはこのままこっちに住んでもいいんだが」
「……」
「というか普通に喋れたんだな」
「きをぬくともどっちゃうヨー……こんな風に」
「ちっちゃくなったせいか……ごめんな」
「気にしてないデス!」
「どっちの喋り方でもいいからな?」
「ハイ!ちっちゃくなっちゃったケド、これはこれで色々甘えられるデス!!」
「カモン!」
「バーニングラァブ!」ドンッ
飛びかかって来たこんごうを受け止める。柔らかい体と体温を感じられ、甘い女の子特有の香りもする。
「仲が良いわねあなたたち……」
と、ここで聞き覚えのある第三者の声。
「暁か……」
「とりあえず着替えたら?パジャマで鎮守府前に立っているとかバカなのかしら」
「あっ、本当だ」
「テートクのぐんぷくはしつむしつにあるデス!」
「執務室ってどこだったっけ?」
「ワタシにまかせるデス!Follow me!」グイグイ
ーーーーーー
「で、結局またこの建造マシーンを試してみようと思う」
着替えを済ませた俺は例の建造マシーンの前へやって来ていた。
「テートクの軍服姿……かっこいいデス……」カアア
「ま、まあまあ似合ってるわ!」プイッ
「こんなの着るの初めてだからよく分からんが、ありがとな」
「「……」」ポー
「さて……」
ろりこんごう爆誕となったこの建造マシーン。どうやらコイツは追加資材というものを入れないとそもそも建造が始まらないらしい(妖精さんの説明)。
俺は普通の艦娘を建造したいんだが……
「出来るだけまともな艦娘カモン!」
「けんぞうするの?」
「新しい艦娘ね!」
端末にデータを入力する。
「うーん、燃料300弾薬300鋼材600ボーキ600でいいか……追加資材は……今回はマイクにするか……那珂ちゃん来たらどうすっかな」
これだけ資材を使うと失敗した時が怖い。というかこの鎮守府の資材は後どれくらいあるのだろうか。
「ええい!気合いだ!マイク投入!」
『『『ガッテン!』』』
妖精さんたちが動き出す。資材が投入され、マイクも投入。バーナーを使用し……
「「「……」」」ワクワク
ゆっくりと建造ドックの扉が開き……
「おおっ!」
短い黒髪のサイドポニー、胸当て、青いスカート、いわゆる弓道着姿のみんながよく知る艦これ最強の正規空母、加賀さんが中から出て来た!
「やった加賀さんだ!……ん?」
と、そこで俺はさっそくおかしな点に気付く。
現れた彼女は背中にスピーカーのような物を背負い、肩には飛行甲板、右手にはマイクを握っていた。まさかとは思いますが、それも艤装とか言わないよね?
「えっと……」
「一航戦の加賀よ。さっそくだけど歌わせてもらうわ」
「「「!?」」」
「無性に歌いたい気分なの」
「あ、はい……」
デデン♪ デデデデ~ン♪ ~~♪
スピーカーから何とか岬が流れて来た。
「一航戦加賀、歌います」
そして始まる加賀の歌。その美しい容姿とも合わさった美声、凛とした力強さを感じさせる歌唱。マイクを握る彼女の顔は戦士の顔であった。
舞を踊る妖精さんたち。
自然とリズムに乗り出す俺たち。
こんごうも暁も驚きに目を見開く。
気分が高揚する。
歌というのはこんなにも情熱的なものだったのか!
まさに彼女は艦隊のアイドル!
「やりました」
《ワアアァーーーーーー!!!!》パチパチパチ
工廠にいる全員で拍手喝采である。
「さすがに気分が高揚します」キラキラ
静かに汗を拭う彼女の顔は最高に輝いていた。
ーーーーーー
「かがのうたはさいこうデース!」
「ありがとうございます金剛さ……この場合、こんごうちゃんと呼んだ方がいいのかしら?」
「どっちでもいいと思うわ」
「こんごうちゃんでいいデス!」
「分かったわ」
『おーい、いつ敵が出てくるか分からないんだ、気を引き締めろよー?』
俺はさっそく加賀を試験運転のためにこんごうたちと一緒に出撃させていた。案の定というか加賀はスピーカーとマイクは艤装なんだとの一点張りでそのままの格好で出撃している。
「私の実力を見せれば良いのでしょう?鎧袖一触よ。心配いらないわ」
『一応だよ一応』
「……!……敵艦隊発見しました」
「りょーかいデス!」
「了解よ!」
しばらくして見えて来たのは帽子のような物を被った深海棲艦のヲ級と魚雷のような黒い体を持つイ級たちだった。
「かがさん、おねがいするデース」
さっそく加賀に航空戦を頼もうとするこんごう。しかし加賀は……
「接続は大丈夫ね。曲の準備もバッチリだわ」
「What!?」
「一航戦加賀、歌います」
「「!?」」
『!?』
戦場で、加賀さんのスピーカーから大音量で流れ出す何とか岬。
デデン♪ デデデデ~ン♪ ~~♪
「ヲッ!?」
「「「「イガァ!?」」」」
そして始まる加賀の熱唱。
「~♪~~!~~♪」
「ヲッヲッヲッ!!」
「「「「イッガッガー♪」」」」
(あれ……?)
(深海棲艦たちが……)
((聴き入ってる!?))
『(……何が起こってるのか分からん!!)』
だんだんとヒートアップしていく加賀。
深海棲艦たちは体を小刻みに揺らしてリズムをとっている。
(Oh……歌とは敵と味方の溝すら埋めてしまうものなのデスネ!!)
(誰もがこの感覚を味わえれば争いなんてもう起こらないわ!!)
『(さっきから加賀が歌っているんだが、一体向こうで何が起こっているんだ!?)』
そして歌が終わる。
「ふぅ……」
「ヲッヲッヲ~♪」パチパチパチ
「「「「ガッガッガッガ~♪」」」」ジャバジャバ
大喜びの深海棲艦たち。
と、ここで加賀が急にマイクをしまい、弓矢を取り出す。
「「……?」」
「鎧袖一触よ」
加賀が放った矢が艦爆、艦攻へと変化し、歌の余韻に浸る深海棲艦たちを容赦なく爆撃した。
「ヲッーーー!?」
「「「「ガガアーーー!?」」」」
ドオオオオン
大きな爆発が起こり、全滅する敵艦隊。
「ちょーーー!?」
「な、なにしてるデース!?」
「やりました」ドヤッ
いい仕事をしたと言わんばかりに加賀が言う。
「最初から戦う気だったの!?」
「うたったいみはあったのデスか!?」
「私が歌いたかっただけです」
「いみわかんないヨー!!」
『マジでそっちの状況どうなってんの!?ねえ、誰か教えて!!』
「あら……?海が光っていますね」
「えっ!?」
「ドロップデース!!」
光が収まると立っていたのは……
「あれ?ここどこ?翔鶴姉?」
落ち着いた緑髪のツインテール、赤と白の巫女装束風色合いの弓道着を身につけ、背中には艦橋と煙突の付いた赤い矢筒を背負い、胸当てを付け、脚には主機と対空機銃の付いたブーツを履き、飛行甲板を肩に付けた……
「瑞鶴デース!!」
「チッ、五航戦ですか」
「なんでそんなに嫌そうなの!?」
現れたのは瑞鶴だった。
『え!?瑞鶴ドロップしたの!?』
「ただの七面鳥です」
「アンタさっきからなんなのよ!!私に喧嘩売ってんの!?」
「……ふっ」
「ぐぎぎ……」
突然始まった一触即発の雰囲気にこんごうが慌てて割って入る。
「お、おちつくデース!」
「……誰このちびっ子」
「こんごうちゃんよ」
「え!?戦艦の!?」
「こんごうデース!」
「なんなのよこれ……なんかいい歌を聴いてたと思ったらこんな所に……」
「……あなた覚えているの?」
「なんでここにいるかは知らないけど、直前まで誰かの素晴らしい歌を聴いていたような気が……」
「あなた見所があるわね」ガッ
加賀が突然瑞鶴の肩を掴む。
「えっ」
「仕方ありません、私があなたを立派な空母へと育ててあげましょう」
「えっ」
「すごいてのひらがえしデース……」
『誰か状況を教えて!』
ーーーーーー
「翔鶴型航空母艦2番艦、妹の瑞鶴です。艦載機がある限り、負けないわ!」
「おう、俺は提督の島崎修一だ。よろしく頼む」
「話は終わったわね。では行くわよ瑞鶴」
「え、ちょっ!どこに連れて行くのよ!?」
どうしようもないので、俺は加賀に引きずられて行く瑞鶴を見送った。
「瑞鶴は大丈夫なのだろうか……」
「少なくともひどい扱いは受けないと思うけど……」
「よくわかんないヨー……」
「ま、まあ2人ともご苦労さま。ありがとな」ナデナデ
「ちょ、ちょっと……」ナデラレナデラレ
「えへへ……」ナデラレナデラレ
「はぁ……」
「よっと」
鎮守府で飯を食べた後、俺は自分の世界へと戻って来た。部屋の時計の時間を確認すると出発前と変わらなかった。
「ちょっとこっちの艦これで加賀がどうなっているのか気になる……」
艦これを立ち上げ、秘書艦を加賀に変えた瞬間、
デデン♪ デデデデ~ン♪ ~~♪
「!?」
『一航戦加賀、歌います』
母校BGMがなんとか岬に強制変更された。
スピーカーにマイクと例の装備の加賀さん。そこでふと俺は気付いた。加賀の後ろに……
「……んん?」
『加賀さーん!』
「加賀love」と書かれた鉢巻を頭に着け、満面の笑みで小さな旗を振る瑞鶴の姿が。
「ず、瑞鶴……」
本人が幸せならそれでいいかと納得する俺だった。
歌う一航戦とそのファン五航戦。
加賀さんと瑞鶴は仲良し。
次回誰にするかな……