Fate/Machina order   作:修司

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番外編 十蔵の屋敷 後編

 

 

 

 

 

 

 

 

ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ・・・・・

 

暗闇に金属の軋む音が聞こえる。

施設全体が揺れる事で機械仕掛けの巨人が軋む音だ。

 

(・・・・・s・・・・傷・・・軽・・・)

 

巨人の瞳にわずかな光が灯る。その瞳は大急ぎで自分達の墓場を走る立華たちを見つめていた。

 

(・・・人・・・ぶ・・・照合・・・)

 

その目線に立華たちは気づかない。上からここに迫ってきている黄金の牛から離れるべく真っ直ぐに廊下を走っていたからだ。

巨人は消えそうな思考の中自らの人工知能を動かす。それがなぜなのかはわからない。

 

(上空・・・・敵襲・・立華・・・・危険・・・・)

 

(危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険)

いや、わからないのではない。理解出来ないのだ。機械・・・マシンである自身のプログラムから湧き上がる、この感覚を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(TITAN System No.28 energer 起動

 

防衛を開始する)

 

 

この燃え上がる感情を・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

番外編 十蔵の屋敷後編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、しっかりつかまっていてください!」

 

現在立華達は大急ぎで先ほど通っていた道を駆けていた。

何が起こっているのかはわからない。しかしあのまま部屋に居続ければ間違いなく生き埋めになる。ロマンからの映像をみたマシュは立華を抱き抱えると大急ぎで来た道を引き返していた。

黄金の牛は現在も凄いスピードで迫って来ているらしく、今も施設全体を揺らしている。

キャスターが思わず声を上げる。

 

「おい!お前の爺さんマジでなんなんだ?!あんなもんに迫られるなんていい加減可笑しいぞ?!!」

 

「そんッ・・なッ・・こと・・・!俺が知りたいわ!!!」

 

揺れる腕の中で立華は言葉を途切れさせながら答える。

確かに自身の祖父はまごう事なき天才だ。その頭脳はこれまでの人類史を見渡しても遜色ないほどのものである事は明らかだ。

しかしこんなものに狙われる程の一体何をしでかしたのだろうか・・・

 

「!兄貴、そこ右!」

 

咄嗟に指示を飛ばし立華達は急カーブを曲がる。その先には階段が続いておりこのまま行けばマジンガーの格納されていた場所に着く。そしたらひとまずは安心だろう。10段程を一気に駆け上がり進んで行くと不意に光が見え始めた。

電力の届いている領域までついたのだ。

 

現在施設は完全には機能しておらず、深いところに潜るほどその配線は届かなくなっていた。つまり灯りが見えるという事は・・・

「もうすぐ・・・!」

 

三人の中の誰かがそう呟く。

格納庫に着きさえすればマジンガーを呼び出すことができる。そしたら出撃ベッドにマジンガーを乗せあの牛首に対抗できる。

 

するとーーーー

 

 

 

 

 

(反応が消えた?!!バカな、さっきまで捉えていたじゃないか?!!)

 

「え?」

 

暗い空間に電子音が混ざったロマンの声が響く。

「ドクター、どうしたの?あの牛首は?」

 

(ちょっと待ってくれ!さっきまで捉えていたはずの反応が途絶えた!訳がわからない?!!突然その場から消えたんだ!!?)

 

「そんな・・・・」

 

不意に動きを止めた立華達も確認する。

確かに先ほどまで凄まじい揺れに襲われていたはずの施設が今は痛いほど静かだ。

 

「・・・・とりあえず上まで登ろう。何にしても格納庫まで上がらないと」

「えっと・・・そうですね。あ、先輩歩けますか?」

 

「ああ、大丈夫だよ」

 

ゆっくりとマシュの腕から降り立華はゆっくり階段を上がる。それを見てマシュも立華の後ろを付いて行こうとし

 

「・・・・・・」

 

「?クーフーリンさん?」

 

 

(可笑しい・・・・あれほどのもんがある姿をわざわざ晒しておいて何もせずに消えるか・・・・?)

 

キャスター、クーフーリンは神話時代を生きてきた大英雄だ。かつて様々な幻想種をも屠ってきた彼は当然神に仕える獣を相手にしてきたこともある。

 

(あの気配は相当古い。それこそ俺自身よりもだ。よっぽどの神秘を重ねてきた証だ。そんなもんが急に消える?いや、姿を消す?)

 

だからこそわかるのだ。今自分自身がとんでもなく嫌な予感を捉えていることを。

 

「マシュどうし・・・」

 

「あの・・・・・」

 

 

そしてその予感はーーーー

 

(姿を消す・・・・透明?いや、透ける・・・見えない・・・・・・転移?!!)

 

「やば

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪い意味で当たる。

 

 

 

 

「うおおおおおおおおッ!!!」

 

「きゃあああああッ⁉︎」

 

「ウィッカーマン!!!」

 

キャスターは咄嗟に立華とマシュを腰に抱き抱え階段を飛び降りた。

いきなり彼らの前方の階段が盛り上がったと思ったら大きく破裂したのだ。何が起こったのかは嫌でも理解できる。ふと見えたあの色合いは

 

「神獣?!!」

 

「ウィッカーマン!受け止めろ!!!」

 

最下層の墓場からから腕だけ現れたウィッカーマンが立華達を優しく受け止める。着地した彼らは咄嗟に走り出し先ほどのことについて把握していく。

 

「頂上までの進路が・・・・」

(みんな!みんなの前にまた反応が!!!)

 

「わかっている!それよりもこの地下のナビゲートを!!」

 

(わ、悪かった。急いで計測する!!!)

 

「急げ!!!逃げ遅れるぞ!」

 

階段があった場所。

 

そこでは未だに轟音が響いておりだんだんと音は近づいている。立華達は先程と同じように曲がり角を進み迷宮の様な渡り廊下を進んで行く。

 

そして二つ目の曲がり角を曲がったと同時に破裂音。おそらく階段の通路を降りきった音だろう。

 

 

 

◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!

 

「来るぞ!!!」

 

「ドクター、なんかどこかに出口は?!!」

 

(すまないもう少し耐えてくれ!)

 

 

再び響く牛首のこの世のものとは思えない叫び。

 

「兄貴、ウィッカーマンで拘束して足止め「ダメだ!さっきからやってんだが手応えがねえ!!!」クッ・・・・!」

 

「先輩!あそこの壁に階段が!」

 

その声を聞いた瞬間立華は急いで階段に向かう。階段は非常用の様なシンプルな作りで壁に張り付く様に設置されている。どこにつながるかはわからないがこのまま上に行ければいずれ外に出られるかもしれない。

ペースを上げて三人は階段へと向かう。渡り廊下はだんだんと揺れを大きくして人間の立華の足で走りにくくなってくる。再びマシュは立華を抱え階段まで走りキャスターは杖を振り渡り廊下が落ちないようにウィッカーマンで固定する。

 

 

 

 

すると次の瞬間

 

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎ッ!!!」

 

「来た!!?」

 

なんと牛首は渡り廊下の壁を突き破り立華達の前に姿を現したのだ。その姿は近くで見るからこそわかる酷いものだった。

剥がされたからなのか顔の半分は黄金で覆われておらず筋繊維が露出しており元は宝石の様なもので保護されていたであろう両目は血走り真っ直ぐに立華達を見ている。顎は砕け半開きでその隙間からは血の混じった液体が垂れ流されあたりに腐臭を撒き散らす。

 

あんまりな光景にマシュは思わず口元を押さええずくのを耐える。それを見たキャスターは

 

「足を動かせ!止まると死ぬぞ!!!」

 

「は、はい!」

 

喝を入れられたマシュは階段を登らず立華を抱えて一番上までジャンプした。キャスターも続き鍵のしまっていたドアを無理やりこじ開ける。

そして三人がドアに入ろうとすると同時に牛首はその頭を立華達が先ほどまでいたであろう所に向け、凄まじい勢いで突進した。

 

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!!!!!!」

 

 

「ガッ・・・・・!」

 

「うあッ・・・!」

「ぐぬッ・・・・!」

衝撃により三人は吹き飛ばされドアの向こうに吹き飛ばされる。 施設の壁の破片が飛び散り多少なりともかすり傷を負ってしまう。

 

 

「ま、まだ走れ!この先続いている!」

 

(解析結果出たよ!!!この先を走るとマジンガーが格納されていた場所に上がることができる!)

 

「了解です。先輩急いでまた・・・先輩?!!」

最悪なことはまだ続く。先ほどの飛び散った破片により立華は気絶してしまっていた。頭から血をうっすら流し真っ青になった顔はとても見ていられない状態だ。

 

「先輩!先輩!しっかりしてください!」

 

「坊主?!!しっかりしろ!このまま倒れたままだと・・・」

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎」

 

そんな事は知らぬとでも言うかのごとく後ろから牛首が口を開けて迫ってくる。そしてその瞬間悟る。

 

これは逃げられない、と。

 

 

 

二人だけなら逃げることもできるだろう。しかしこの場にはマスターで怪我をした立華が倒れている。置いて逃げることなど出来るはずもない。

 

目の前におぞましい顎門が広がる。

 

二人は次訪れるだろう自分達の運命を想像しーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

横の壁を突き破り中から黒い何かが飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(生体反応を三つ確認・・・一人は負傷している模様)

 

(機体を戦闘モードに移行。これより神製生命体3号との接触に移る)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(エネルガースタンバイ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マシュは一瞬何が起こったのかわからなかった。

あの瞬間次に訪れるであろう出来事に瞳を閉じた瞬間、轟音とともに壁から黒い壁が現れ盾となったのだ。

そしてよく目を向ければわかる。あれはーーーー

 

 

「さっきの・・・エネルガー?」

 

「こいつは・・・」

 

キャスターが声をあげてエネルガーに目を向ける。

エネルガーは半壊した両腕で牛首を押さえ込み、どんどん廊下の奥に押し込んでいる。やがて二体は先ほどの渡り廊下の機体デッキに出るとエネルガーが腕を振り上げた。

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!!!」

 

「・・・・・」

 

次の瞬間に叩き込まれるであろうその拳は牛首の放つ魔力砲に寄って吹き飛ばされてしまった。あたりに炸裂音が鳴り響く。

そんな中牛首はエネルガーから逃れようと、その首だけの体で暴れ出す。

 

 

「・・・・うう、」

 

「!先輩、目が覚めましたか!」

 

「ま、マシュ?一瞬何が起こって・・・」

 

「私にもわかりません・・・。先輩が気絶してもうダメだと思ったとき、あのエネルガーが・・・」

 

そして立華も轟音の鳴り響く方に目を向ける。

 

(みんな!!!無事かい?!!モニターが急に動かなくなってみんなの様子が見れない!無事ならどうか返事をしてくれ!!!)

 

「ドクター、わたしたち三人は無事です。それよりも・・・」

 

「学者先生よ、今すぐなんか傷を回復出来るもん持って来てくれ!俺のルーンだけじゃ足りねえ!」

(り、立華くん?!急激にバイタルが落ちて来ている!わかった。ちょっと待っててくれ!!!)

 

わずかに反応するレーダーを見てロマンは悲鳴に近い声を上げる。

キャスターはルーン文字を描き立華の頭の傷を塞いでおり、黄金の果実が届いたと同時にそれを触媒に完全に回復させた。

 

「兄貴、ありがとう。助かった」

 

「おい坊主。あの巨人ってのはひとりでに動くもんなのか?」

 

「それは俺にもわからない。ただあそこに置いてあった大量のエネルガーはどれも操縦席がなかった。人が乗らなくてもいい代物って事は確かだと思うけど・・・・」

 

 

エネルガーはそのまま口の中に腕を指す込みその舌を引っ張り上げる。苦しみに苦悶の声を上げる牛首に対し、エネルガーは体全体を奥に設置してある機体ハンガーに向けて進み始めた。

 

当然その間も牛首は暴れる。エネルガーの腕に対して牙をつきたてようとするが、硬い装甲の前に牙の方がヒビを作っている。

そしてついにエネルガーは牛首を機体ハンガーのところまでたどり着き牛首をハンガーに叩きつけた。重さを感じたハンガーは牛首を機体と勘違いし固定しようとする。

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!!!」

 

あたりに牛首の腐りかけの肉が飛び散りひどい匂いが充満する。その様子を確認したエネルガーは瞳を輝かせ熱線を浴びせる。

威力は弱いがそれはまさしく光子力ビーム。当たった部分は熱によって蒸発し気体となってあたりに四散して行く。

 

「先輩、おそらくこのままいけば我々も巻き込まれる危険があります。早急に離れるべきです。」

 

「嬢ちゃん言う通りだ。色々腑に落ちない事はあるが今はここを離れた方がいい」

 

今まで眺めていたマシュとキャスターが立華に忠告する。

確かにこのままいけば熱によって自分達の身も危ないかもしれない。よく状況を理解できない部分もあるが今は地上に出ることが先決だろう。

 

「わかった。ドクター、また地上までのナビゲートを頼む。一応回収すべきものは大体終わったよな?」

 

(了解だ。先ほどのエネルガーの破壊した通路のおかげで道が出来た。これよりナビゲートを開始する。)

 

立華達は轟音に背を向けてゆっくりと地上目指して進んで行く。

 

 

 

果たして彼らは、無事に地上に戻ることが出来るのだろうか・・・。

 

 

 

 

 

 

 

そんな中立華は己の耳に何か人の声のようなものを聞いた気がした。

 

君と・・・一緒に・・・。

 

 

ー次回 エピローグー

 

 

 

 




次回エピローグです!
遅くなってすみませんでした!
今回の話なんか短く感じる・・・

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