Fate/Machina order   作:修司

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番外編 十蔵の屋敷・前編

 

 

 

 

 

 

「坊主〜?そっちなんか見つかったか〜?」

 

「ちょっと待って、これは・・・・・・・「女性の服だけ吹き飛ぶ爆弾」?」

 

「おう、ちょっとそれ貸してみ?」

『立華くん!是非とも送ってくれ!それはこちらで研究しなければ「お二人とも最低です」マシュ?!』

 

「・・・・・・」

 

なんだこれ?

 

立華は心の中でひっそりと呟いた。

現在彼は仲間になったクーフーリンと一緒に今は亡き「藤丸十蔵」の屋敷に来ていた。

今回の目的は遺品整理、同時に調査である。マジンガーZの開発されていた施設でもあるこの屋敷は未だに人知に収まらないほどの物が眠っている。

なのでそれをカルデアに持っていき今後の戦いの戦力にしよう。ついでに面白い物があるかも!というダヴィンチちゃんの言葉で始まった。

ちなみに今回清姫はお休みである。まだレベル足りないし是非もないよね!

 

「しかし今んとこイタズラ道具みたいなもんしか見つかんねーな」

 

「うん、おじいちゃんよく女子高生のスカートめくったりする人だったからそういう発明多いんだよ。お、これは・・・・・「空中元素固定装置」?ふつーに発明も出てくるな。」

 

『じゃあそれを早速送ってくれ。マシュ?』

「はい。先輩、それをこちらへ・・・」

 

マシュは盾を構えて転送ゲートを発動させる。

手のひらほどの装置はそのままダヴィンチ達のところへ送られて解析されて行く。

 

『ヒャッホーウ!新しいおもちゃだ〜!』

 

「ダヴィンチちゃんがこれまでにないくらい喜んでる・・・」

 

「ずっと引きこもっててストレスが溜まっていたのかと・・・」

 

「それはいいからよ、さっきの爆弾を「ダメ」チッ」

 

クーフーリンが頭を掻きながらさらなる階段を降りて行く。外から見るとただの武家屋敷に見えるがその地下はアリの巣のごとく張り巡らされている。全員で動かなければ迷子になりそうなのでマシュと立華もすぐさまその背中を追う。

階段は薄暗くどこまで先があるのかわからない。反響する足音がそれを物語っている。その上セイバーオルタによる宝具の振動などにより足元には瓦礫や機械が散らばっていた。

 

「しかしさ・・・」

 

不意に立華が声を上げる。

 

「おじいちゃんはなんでこんなところでずっと一人で生きていけてたんだろう・・・」

 

「そうですね。やはり疑問点はそこに着きます・・・」

 

立華が未だ疑問に思っているのはそれだ。忘れているかもしれないがここは特異点。それもサーヴァントが暴れまわっていた場所だ。彼らは人、命の匂いにつられて寄ってくる。にもかかわらずたった一人彼はこの場所で生き残っていた。

「この屋敷自体に魔力の反応はねえ。まるっきり技術のみで作られたと考えていいな」

 

「兄貴もこの場所は分からなかったの?」

 

「ああ、何故かこの場所は生き物の気配を遮るらしいな。キャスターとして召喚されたはずの俺ですらわからんなんて不気味としか言えねえ」

 

『我々は一度繋いだ事もあって反応を拾う事が出来てるが、それまではやはり感知出来なかったよ』

 

「一体どういう事なのでしょう・・・」

 

そうこう話しているうちに階段は途切れ新たな扉が現れる。立華はそれをゆっくりと開き様子を見る。

 

 

 

 

 

「・・・・・・?」

 

「先輩、大丈夫ですか?」

 

とびらの向こうにあったのは長い廊下だった。いや、廊下というには少し違う。立華が開けた向こう側には手すりが付いておりそれが廊下と共に横に続いている。鉄柵、というべきだろうか。

 

「暗くて何も見えないな・・・。兄貴?ルーンで照らすことできる?」

 

「任せな。いま付ける」

 

クーフーリンが空中に指を滑らせルーンを刻む。それはやがて大きな光となって暗かった空間を照らした。

 

そこにはーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおお?!」

 

「!先輩!下がって!」

 

 

視界にそれを入れた立華とマシュは咄嗟に身構える。そこには巨大な物がいくつも積み重なったかのような物が光を反射していた。

しかしそれはーーー

 

「・・・・・マジンガー?」

 

「坊主、落ち着きな。こいつらは動かねえよ」

 

それはマジンガーに似た何かだった。

ある程度の形はそっくりだが、胸の放熱板や頭の形が微妙に違う。そんな代物が廊下の奥の奥まで無造作にいくつも並べられていた。

 

「なんだこれ?マジンガーにそっくりなやつらがこんなに・・・」

 

「ずっと向こうまで続いてますね」

立華はふとその中の一つに近づいてみる。見た所埃っぽいが完成一歩手前で廃棄されたかのように新しい。しかし装甲の一部が露出して中身の機械が見えているものがある。

その部分に目を向けてみるとロボットの名前と思わしき文字が刻印されていた。

 

「energer Z・・・・エネルガーZだって。なんでこんなにたくさん・・・・」

 

『それはおそらくプロトタイプだね。試作段階としていくつかの物を仕上げてたんだろう』

 

ダヴィンチの言葉に立華は十蔵を思い浮かべる。 確かにあの人は中途半端な事が嫌いでよく失敗作を壊してた。

 

(クソッタレめ!またやり直しじゃ!)

 

(おじいちゃんどうしたの?)

 

(これを見ろ!これは光子を物質に浸透させる事で対象を透けて映すことのできるメガネでな!しかし透けすぎて体の中身が見えてしまうという欠陥品じゃ!)

 

(へー、それを使ってどうするの?病院に送ってレントゲンの代わりにに使うの?)

 

(いや、最近できた銭湯で女湯をな)

 

(やめて?!犯罪だよそれ?!)

 

(ああ?!なんてことを?!!)

 

 

 

 

いや、あの時は自分が壊してたか・・・。

 

『こちらで観測した所それは全てジャパニウムで出来てるらしいね。ただちょっとマジンガーより装甲の結合率がゆるいけど。名付けるなら合金Zといったところか』

 

『立華くん、それも送ってくれ。マジンガーの解析にも使えるし何より戦力になる。後で全て回収はするが』

 

「全部?」

 

「大丈夫なのか?その・・・スペース的に」

 

マシュが盾を構えてエネルガー達を転送していく。

側から見るとすごいシュールだ。

『そのことなんだがね、先ほど君たちが送ってくれた空中元素固定装置が解決してくれそうだ』

 

「?あれってどんな装置なの?」

 

『これは流石に私もびっくりした。起動すると空気中やそこらに散らばった元素を増殖、原子変換して別の物質に再構築する。簡単に言えばこれを使うと好きな素材をいくらでも出せるのさ』

 

「え?それってつまり・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『魔法に近い技術ってことだよ』

 

 

 

ダヴィンチが額に冷や汗を流して戦慄するように呟く。

 

 

魔法とは「魔術」とは異なる神秘。魔術師達が目指す最終到達地点である「根源の渦」から引き出された力の発現。

その時代の文明の力では、いかに資金や時間を注ぎ込もうとも絶対に実現不可能な「結果」をもたらすものを指して魔法と呼ぶ。はずなのだが・・・・

 

『これは第1魔法と言われている「無の否定」に近いね。増殖とは言え物質をリスクもなしに増やせるんだ。これが世に出回ったらどのくらいの魔術師が首を吊るだろうね?』

 

こうして出てくる発明品を見るとやはり自分の祖父は天才なのだと思い知らされる。立華は子供の頃から可愛がられその仕事っぷりを見ては来たものの、ほとんどがイタズラやセクハラの為の発明だった。

 

 

しかしここにあるものは全てが違う。違いすぎる。

 

そして立華は再び思う。

一体自分の祖父はなにがしたかったのだろう?と。

一体何とたたかっていたのだろうと。

あの時彼は言った。「臆病な自分の代わりに世界をすくえ」と。

ならばあるはずなのだ。今まで戦って来た彼の記録が。我々の知らない真実が。

 

「ダヴィンチちゃん、ドクター。俺たちはこれから一番下まで一気に降りる。やっぱりおじいちゃんが生きて来た記録を見つけたいんだ」

 

『それがいいかもね。わたしも彼と言う人間に興味が尽きない。探せば日記とかならあるかもね」

 

「先輩。回収終わりました」

 

『来た来た♡それじゃ、なんかあったら呼んでね〜』

 

走る足音が聞こえる。おそらく届いたエネルガーを見に行ったのだろう。

ダヴィンチちゃんぇ・・・と言うつぶやきも一緒に流れてくるあたり観測室は微妙な空気が流れているだろう。

 

「・・・・・・うん、とりあえず、行こうか?」

 

「あのおっさんちゃんとナビする気あんのか・・・?」

 

「ダヴィンチちゃんはその・・・・・好きなものを見ると夢中になっちゃうと言うか・・・・」

 

長い通路を歩きながら三人は呟く。

静かな空間には三人の足音が響きわたっており、ルーンから出る光が隣のエネルガー達を照らす。こうして見ると個々のデザインが微妙に違っており、あるものはスリットではなくマスク、あるものは背中に謎の走路のようなものを背負い、またあるものは黒ではなく赤褐色など様々である。

 

「なんだかお墓みたいですね・・・」

 

「さしずめ俺たちは墓荒らしってとこか?」

 

「そんなことねーよ。こいつらはまだ生まれてすらいないんだ。ダヴィンチちゃんの所に行けばきっと心強い味方になってくれるはず」

 

ふと手すりではなくエネルガーをさすり立華は心の中で思う。

 

(もしお前らが立ち上がって来れたのなら、俺たちと一緒に戦おうな・・・・)

 

「先輩・・・?」

 

「いや、何でもない。先を急ごう」

 

立華は早足で通路を進んで行く。

それを見た二人もペースを上げ後ろをついて行く。

 

 

だからこそ気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・r・・tu・・・・・・

 

 

エネルガーの中の一機の瞳に、僅かではあるが光が灯ったことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

................... キ.......ミトイッ......ショ......ニ.....アクヲ................

 

 

 

ー続くー

 


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