Fate/Machina order   作:修司

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ついに二人が出会います。


デビルマン

俺はいつも泣いてばかりだ。

 

 

 

(まーたアキラくん泣いてるー)

 

(なぜそんなに泣くんだ。アキラ?)

 

 

俺は昔から人の心に敏感だった。

だからこそ、人の顔を見るだけだその人がどんな思いを抱いているのかがすぐにわかった。

 

そんな人達の中には、顔に出さずに心の中だけで涙を流す人達がいた。

 

 

 

なんで顔に出さないのだろう?

 

なんで我慢しているのだろう?

 

 

 

なんで・・・誰にも頼らないのだろう?

 

 

声に出したいはずなのに、顔を覆いたいはずなのに、それでも周りには明かさない。

 

 

そんな人達を見ていると、どうしようもなく悲しくなって、俺の方が涙で溢れた。

 

(馬鹿な・・・俺は泣いてなんかない・・・)

 

 

 

成長して俺は陸上部に入った。なぜ入ったのか理由はいろいろあるが、やはり一番の理由は幼馴染だ。幼馴染に何か1つでもいい、少しでも実力で追いつきたかった。

俺の幼馴染は強かった。男の俺より強く、俺はいつも泣いてばかり。だからこそ俺は同じくらい強くなりたかった。

 

 

 

誰の前でも泣くことのできない奴らのために、変わりに俺が泣いてやろう。そいつらの分まで俺が涙を流そう。

 

それが出来るくらい強くなりたい・・・、そう思った。

 

 

(アキラくんは、決して自分のことでは泣かないんです。彼が泣くときは、決まって誰かのために泣くんです。強いんです!)

 

 

強くなりたい。

 

 

(本当に私と敵対する気か、アキラ?)

 

 

強くなりたい。

 

 

(アキラくんはアキラくんだもん)

 

 

 

強く・・・

 

強く

 

強く!

 

 

(何かあったときは必ず話せよ、約束だぞ?)

 

 

 

 

強く・・・なりたかったのに・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局・・・俺は何も守れないまま・・・

 

 

面白い。異なる世界の観測、かつてラウムの提唱した説もあながち間違ってはいなかったということか・・・。

 

とはいえ、このサーヴァントの力無くしての観測は不可能だったのだが・・・。物語の結晶、実に興味深い。

 

それにこの生き物の生態、これを利用すれば我々は【半永久的なエネルギー】も可能だろう。

 

 

ではロンドンにて行ってみようか。あそこなら、この生き物たちを有効利用することが出来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう、そこにバトンを受け取る人達はいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

題、デビルマン

 

 

 

「急いで兄貴!このままだとマシュが持たないかもしれない!」

 

 

「わかってるよ!担がれてんだから暴れんじゃねぇ!落ちる!」

 

 

蟲達の猛攻をなんとか脱出した立華達は、最初に別れた二人の元に急いでいた。

あの二人はこの蟲とは相性が悪い。マシュ一人ならなんとかなるかもしれない。しかし彼女は必ず清姫を庇いながら戦うはず、そうなれば後は持久戦をせざるを得ない。

シールダーのクラスとはいえ、あの物量を完全に防ぎきるには難しい。

 

 

「ドクター!二人の様子はどう!?」

 

『待ってくれ!霧のせいで反応が薄いんだ!生きてることは間違いないけど・・・!』

 

 

 

「モードレッド!西側のテントには後どのくらい?!」

 

「もう着く!てか、あの盾野郎ならこの程度・・・」

 

 

「む?!リツカ!あの蟲達は!」

 

 

走っていると目の前にいくつもの蟲の焼けた死体が散乱していた。それも10匹20匹という数ではない。立華達の走る先にずっと続いている。

 

(いやまて!なんだこの死体、なんで芯まで焦げてんだ?!)

 

死体は全て芯まで焼き焦げている。おかしい、この蟲達は1匹1匹が自身と同じくらいの大きさをしている。それだけの物を芯まで炭にしてしまおうとするととてつもない時間がかかる。

 

そもそも物を焦がすというのは簡単なことではない。核爆弾でさえ人一人を芯まで焦がすことなど出来ない。せいぜい表面を焦がす程度だ。なのにここの死体はすべて、芯まで焼き焦げている。

 

 

(こんなこと・・・清姫だって・・・)

 

 

「立華よ・・・気づいておるな?」

 

「これって・・・やっぱ清姫でも出来ないよね・・・」

 

「うむ、あやつの宝具でなら出来ぬ事もないと思うが・・・」

 

 

 

「違うだろうな。なんせあの娘の宝具ならこの場所がこんな綺麗なわけがねぇ」

 

死体の周りは確かに所々焦げてこそいるが清姫の宝具ほどの被害はない。テントの布も黒いところはあるがそれも焼けているのではなくはいがついているだけ。

 

 

 

つまりだ。

 

 

 

 

 

「いるな・・・」

 

 

「?モードレッド?」

 

「この惨状は・・・多分奴の仕業だ。ついに見つけたぜ!」

 

そういうとモードレッドは立華達を追い抜いて先の方に飛んで行ってしまった。それに一瞬唖然としてしまった立華達はすぐさま追いかけに入る。

 

 

「待ってモードレッド!そもそも敵か味方かもわかってないんだぞ!それに俺の予想が正しければ・・・」

 

クーフーリンが魔力を込めてスピードを出し始めた。担がれたままの立華は苦しそうにグェっ、と漏らすが、それに耐えて再び前を見据える。

 

暗闇がずっと続いていく。しかしそんな暗闇の中に、だんだんと金属音のような音が響いてくる。その音を頼りに進むと、先ほどまで見えなかった灯ーーー火花が金属音と共に散っている事がわかった。

 

 

「あそこだ!」

 

思わずそう声を上げる。だんだんとはっきり見えて来た火花がはっきり見えてくる。そしてそこに広がっていたのはーーー

 

 

 

 

 

 

 

「グゥッ!!!」

 

 

「・・・・!」

 

 

立っていたのは二人、一人は先ほどすごいスピードで一人進んでいったモードレッド。

 

そしてもう一人、それは人から大きく逸脱した姿をした存在だった。

 

 

体長は2〜3メートルはあるだろうか。全体的に筋肉質でありながら細身という人間では難しい体形をしている。蝙蝠を模したかのような頭部、口は耳までさけ、肩には紅い傷のような模様がある。下半身は体毛で覆われており、腕からはブレードのような骨が突き出ている。

 

(あの姿、やっぱり!!!)

 

そんな存在が、モードレッドの剣を腕をクロスさせる事で防いでいた。

 

 

「オラァ!!!」

 

 

剣を力で無理やり跳ね上げたそれは、そのままモードレッドの腹に拳を突き立てテントの路上販売に叩きつけた。

 

しかしモードレッドは答えてないとばかりに立ち上がり、首を一回こきりとならすと剣を呼び戻し構えた。

 

「一体なんだってんだお前・・・!」

 

それは腕を一度振ると油断なくモードレッドを見つめる。

 

「お前にはあの時の借りを返してもらわなくちゃならないんでな・・・。悪いが嫌でも付き合ってもらうぜ!」

 

「何を訳のわからないことを・・・!」

 

 

 

「・・・兄貴、あれって・・・八つ当たり?」

 

「あとストレス発散だろうな。厄介極まらないなおい」

「えぇ・・・」

 

思わず身構えてしまった立華は呆れたような目線を向ける。

 

そんな中彼は気づいた。そう、あの男の足元・・・そこにいたのは

ーーー

 

「マシュ⁈清姫!?」

 

「!まて、坊主!そのまま飛び込んじまうと!」

 

 

思わず立華は対峙する二人の間に割って入るように飛び込んでしまった。その頃には二人は再び戦おうとスピードを出した状態であったため、このままでは立華は衝突により大怪我を負ってしまうところだ。

 

 

だがーーー

 

 

(あの時の・・・来い!)

 

 

その瞬間、立華の中で時間がゆっくりと進み始める。

 

これはこれまでの特異点で発動した謎の能力である。立華のここぞというべきところで発動していたこの能力。カルデアでの訓練により僅かな時間のみ自身で発動することが可能となっていた。

 

(まぁ、結局これがなんなのかは分からずじまいなんだけど・・・)

 

 

ドクターに聞いても結局魔術的なものは感知されなかったらしく、クーフーリンにも皆目見当がつかなかった。

 

(でも今は!)

 

二人がこちらに近づいてくる。それに対して立華は吹き飛ばないように両足に力を込めると両手を広げて上へとあげた。そしてゆっくりと二人がぶつかるという瞬間、その手のひらを二人の頬に叩きつけた。

 

 

 

「へぶっ?!」

 

「ぶっ?!」

 

 

「そこまでー!!、二人とも、そこまでー!」

 

 

勢いを削がれた二人は思わずよろけてしまう。止まったのを確認した立華はそのまま大声を上げて伝えた。

 

「二人ともそこまで!何出会い頭に喧嘩してんの!まだ敵か味方かもわかってないのに戦ってもしょうがないでしょ!」

 

「っ〜〜!ウルセェ邪魔すんな!こちとらそいつには借りがあんだよ!それ返すまでは「もう!それにしても考えが浅いよ!マシュや清姫も気絶してるんだよ?2次被害が広がれば目も当てられないでしょ!」被せんな!」

 

 

いきなり言い争いを始めた二人に彼らは呆然とする。

 

「いいから落ち着けって。俺も、そして多分そこのあきらさんも色々わかってないところがあるんだよ。ここは一旦矛をおさめてさ。いい子だから、ね?」

 

 

「なんだその言い方?!バカにしてんのか?!」

 

子供に言い聞かせるような言い方にモードレッドは怒りマークを頭に浮かべ立華に怒鳴る。

 

そしてそんな中、先ほどまで黙っていた彼が、驚いたような表情で立華に話しかけた。

 

 

「おい・・・・」

 

「だいたい・・・!ん?」

 

 

「お前は・・・・なんで俺の名前を知っている?」

 

 

その言葉に立華はぽかんとする。だが直ぐにその顔を笑顔に戻すと彼の前に走りーーーーー

 

 

 

 

「握手して下さい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『初対面なんだからそこら辺もっとさぁ・・・』

「いや、本当に驚かせてしまってごめん・・・。俺としても驚きが大きくて・・・」

 

「あ、あぁ・・・気にすんなよ・・・」

 

お互いに落ち着いた彼らは先ほどまで戦っていた場所に腰を下ろしていた。

 

「・・・にしても変な奴だよな、お前。普通なら今の俺の姿を見た奴は怯えるか警戒するのどっちかなんだがな」

 

「いやいや!あんたは子供の頃から俺にとってのヒーローだよ。」

 

 

 

 

「不動明、正義のヒーローデビルマン」

 

 

そういって立華はキラキラした目を向ける。デビルマンーーー不動明はその目線に居心地の悪さを感じて思わず目をそらした。

 

(・・・こんな事も、あるものなんだな・・・)

 

『何で物語の存在がとか、どうやって存在しているかとか今はどうでもいいや!ミスター不動、是非変身するシーンを後でお願いしたい!』

 

 

ロマンはそう言って不動明に興奮した様子で交渉した。それに少し引きながら彼は渋々と言った様子で頷くと、立華もロマンと一緒に喜んだ。

 

 

 

「・・・なんかついて行けねぇ・・・」

 

「なぁキャスターよ、見よあの立華の顔を。ローマ皇帝である余とあった時でもあのような顔はせんかったぞ。もう一度言う、余はローマ皇帝なんだが・・・?」

 

「・・・そこら辺は仕方ねぇよ。ガキっつーのは好きなもんには全力だがそれ以外にはさっぱりだからな」

 

「しかし・・・!しかしなんだこの敗北感は・・・!余だってかつて美少女美少年にキャーキャー言われた事もある!なのになんなのだこの差は!」

 

「・・・俺だってケルトじゃ有名だっての」

 

そんな様子を見たサーヴァント達は多かれ少なかれジェラシーを感じた。

一応自分達も伝説に残るほどの英雄だ。なのにこの明らかな態度の差はなんだろう・・・?

 

「取り敢えずさ、マシュ達を助けてくれてありがとう。お陰で怪我も少なかった。俺の名前は藤丸立華だ。よろしく」

 

 

「ああ、じゃあ俺も改めて。不動明だ」

 

 

そう言うと二人はお互いに握手をした。明はその手をしばしじっと見つめやがてゆっくりと話した。

 

 

 

 

「・・・・・」

 

「?どうした?」

 

「いや、ここまでスムーズに事が進むのは珍しくてな・・・。ましてやあの姿を見た奴が・・・」

 

 

「ああそう言う事、きにしないでいいよ。俺達は慣れてるし何よりあんたが理性的だから通しやすかったし」

 

「・・・変な奴だな、お前は」

 

そう言って不動明はクスリと笑った。それを見た立華は満足そうに頷いて言葉を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ教えてくれ、君の事と、この場所の事。そして一体何が起こっているのかを・・・」

 

 




沢山の感想ありがとうございます!
ちなみに感想の返信にも本編に関わる(かも)しれない情報たっぷりなのでよかったら読んでみてください!

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