かっこよすぎかよ・・・!
千値練の真ゲも頼んだせいで財布はかっこ悪いことになったけどな!
「デビルマン・・・かぁ・・・」
街を歩きながら立華は呟くようにその名前を出した。
「いったいどういう方なのでしょう・・・。これまでの戦いで、私たちは悪魔と呼ばれて来た魔神柱と戦って来ました」
『警戒してしまうよね・・・。目撃証言によると子供を助けたみたいだったけど』
「そもそもとしてあまりに唐突すぎる。これまでの戦いでは何かしらの敵対勢力と対峙して追い詰められたら出て来る、というパターンだった。なのに此処じゃあどっちも死にかけ。戦いすらねぇ・・・」
あれからしばらく情報の交換を行っていたが、ロマンがその広場で調査してみたいと言いモードレッドに案内を頼んでいる。ジキルによると広場は未だ放置されたままらしくその日の風景がそのまま残ってるらしい。
「オレ自身奴を見たのは一度だけだ。いつも昼くらいまではこの街を捜索しているが未だに出会わねぇ・・・」
彼女はいつも午前の時間は街の捜索とパトロールを行なっている。しかしそこで出会うのはゴーストやよくわからない生き物のみ。手がかりはつかめていない。
「・・・」
「旦那様、どうかいたしましたか?ご気分が悪いのであれば休憩を挟みますが・・・」
「・・・え?あ、いや、そうじゃないよ。ただちょっとね、懐かしい響きだな・・・て」
「懐かしい響き?何が?」
「デビルマン、て名前がだよ」
立華の言葉に全員が足を止める。視線が集まった事に気づくと立華は困惑したように全員の顔を見渡した。
「み、みんなどうしたんだよ。そんなキョトンとした顔で見て来てさ」
『立華くん、デビルマンの事を知ってるのかい?』
「英雄かなんかなのか?俺には聞き覚えがねぇが・・・」
「あぁそう言う事。どうしたのかと思ったよ」
どうやら立華はデビルマンについて何か知っているらしい。全員が疑問符を挙げているであろう中、立華は話し出した。
「俺がまだ3歳か4歳くらいだったかな・・・。その頃は父さんも母さんも研究職で午前中にいない事が多くてさ、おじいちゃんの家に遊びに行っていたんだ」
「え、先輩のご両親は科学者だったんですか?」
「うん。それでさ、おじいちゃんがどうしても手が離せないって時には古いビデオデッキをつけてくれて昔のアニメなんかを見せてくれたんだ」
「そんなアニメの中にあったんだよね。デビルマンって名前のやつが・・・・・」
『あ、そうだそうだよ。なんか聞き覚えがあるなと思ったらデビルマンか。懐かしいな〜』
立華の言葉に一同は再び呆然とする。
「あにめと言えばあれであろう?何枚も絵を描きそれをパラパラとすると動くと言う・・・」
「デビルマンは俺の父さんくらいの頃に放送していたアニメでさ、主人公が悪魔の身体を奪って悪い悪魔と戦うって物語なんだけど・・・その主人公もコウモリの羽みたいな頭をしていたんだ」
そう言うと立華は頬をかいて思い出す。
かつて分厚いテレビに映っていたヒーロー。
全ての物語を見たわけではないが悪魔というインパクトのある題材だった為印象的だった。
立華は少し考えるそぶりをするとロマンに質問した。
「なぁドクター、物語のキャラクターって英雄になったりするの?」
口に出すとなんだか恥ずかしい質問だ。まるで子供が「このヒーローって本当にいるの?」とでも聞いてるかのような内容に立華は頬を赤らめる。
そして返ってきた答えは少し予想外なものだった。
『そうだね・・・英霊を英霊たらしめるものは信仰、つまり人々の想念によるものだからにその真偽は関係なく、確かな知名度と信仰心さえ集まっていれば物語の中の人物や概念、現象であっても存在すると思うよ』
「え?!じゃあ有り得ない話じゃないの?!」
『うん。ただし、大抵のサーヴァントは虚構のみで成立するものではなく、基礎(ベース)となる神話、伝説、実在の存在がある。虚構だけで成立し得るには、絵本のように子供を守る概念(ユメ)が結晶化したものなど、それ相応の理由がなければならない・・・つまり伝説としての成り立ちが薄いデビルマンはちょっと難しいと思うよ?』
すると立華は一度上がったテンションを下げて今度はがっかりした雰囲気を出し始めた。
「うーん、そうか。じゃあデビルマンじゃないのか・・・」
「あの、先輩?何故少しがっかりされているのですか?」
「そりゃあファンだったからね。カッコ良かったんだ〜デビルマン。特に歌が好きだったよ。うらぎーりもののー名をーうーけて〜♩って」
『僕もあの作品は好きだったなぁ・・・。知り合いに勧められて見たんだけどよく出来ていたよ』
二人の息が統合して段々と盛り上がってくる。話が脱線し始めたのを感じたモードレッドは二人に聞こえるくらいの音量で声をかけた。
「つまりだ!そのあにめ?とやらは使い物になる情報じゃねえんだな?」
「あ、うん。そうらしいね。手がかりになると思ったのになぁ・・・」
結局何かが進展するわけでもなくそこで話は終わった。
立華はこの時当てずっぽうに呟いただけのつもりだったが、これが後に驚きの真実へと変わって行くことになろうとは、今は誰も分からなかった。
「ここが例のテント街か・・・」
モードレッドに案内されてついた街の中心地。
そこはテントこそぐちゃぐちゃに崩れかけてはいるものの、当時の店などがそのままで残っていた。
テントとはいったもののそれは凄まじい大きさで、数百人程度なら楽に入るであろう程だった。その下もーーー路上市場とでも表現するべきだろうか。そこには野菜や果物、肉魚、生活用品まである。
「勿体ないですね・・・。せっかくの食材もこれでは報われません」
「あぁ?別に持ってってもかまわねぇんじゃねえの?どうせ街の人間なんてほとんど出やしない。置いておいても無駄になるだけだ」
俺もいつも拝借してるしな。そういうとモードレッドは近くにあった林檎を手に取り豪快にかじった。
その言葉に気をよくしたのか清姫は笑顔を浮かべる。
「まぁまぁ!それでは私達も頂きましょう。この間冷蔵庫を覗いて見ましたがもう良いものは残っていなかったのですよ」
そう言ってマシュの手を取り清姫は奥に進んでいこうとする。
「って何故私も?!」
「当然持って帰る為ですよ。ましゅさんの盾に入れればいくら持っていっても構わないんですもの!」
「それはそうですけど!」
せんぱああああああい!とエコーを残して二人はテントの中に入っていった。
呆然とする四人。モードレッドなんかは林檎を口に含んだ状態で硬直している。
「・・・どうしたんだろう清姫。あんなに必死になって」
「そういや最近食料の備蓄が限界らしいぞ。前回の特異点で持って帰んの忘れてたしな」
「え?何気に大ピンチだったんじゃね?それ」
カルデアにはいざという時のために幾らかの食料を貯蓄している。今回の事件が起こってから3ヶ月か、2ヶ月か、貯蓄の数はギリギリのところに来ていた。
レイシフトを使っての補充はある。そしてクー・フーリンも協力の元狩りを行なったり、栽培室での野菜の育成などもやってはいる。
しかし調達のメインとなっているのは特異点での大量補充となる。前回の特異点では人々の営みとなる街がなかったこと。海での魚の採取の時間がなかったことからギリギリのラインを走っていたのだ。
『清姫ちゃんが今のカルデアでの料理人なんだけど、やっぱり少ないことに悩んでいたらしいよ』
「・・・やっぱりいい子だよね、清姫。病んでる事がたまに傷だけど」
「だいぶ大きな問題ではないか?余は美少女が好きだがあの娘には寒気を抑えられんぞ」
「ま、まぁなんだ。好きなだけ持ってけよ。たまにおかしいものもあるけど」
モードレッドはそう言うとテント街の中に入っていく。
(おかしいもの?)
『僕たちも入ろう。立華くん、腕のセンサーから外部の計測を行ってくれ。その場所は異変の大元だ、きっと何かがある』
「う、うん・・・」
(なんだ?おかしなものって・・・)
中の様子は不気味としか言いようのない雰囲気だ。
まずテントそのものが低い位置になってしまったためとても薄暗く閉鎖的な空間となっており、一部地面に幕がついてしまっていることもあるのか、向こう側が見えない。
足元にはさまざまな物がその日のままの形で置いてあり、暗闇の向こう側まで続いている。食材などもそしてネズミか何かがいるのか時折暗闇に二つの目が光を反射して交差する。
悪い夢、ーーーーというべきだろうか。
非現実的な風景に思わずネロが身震いする。
「な、何というか・・・その・・・・あれよな、中々の雰囲気よな。これ・・・これ立華よ。余の手を握っては見ぬか?」
「了解。うっわー、これは怖いなぁ・・・。マシュと清姫大丈夫かなぁ」
「・・・・」
「ここでは日中こうだよ。日も当たらない霧も中までは入らないでいつも冷えている。ネズミどももこの中では生きていけねえから飯も腐らねぇ」
「なるほど、だから新鮮なままなのか。でもさっきからこっちを見ているあれはなに?」
「そいつらはただの低級霊だ。こいつらは例の悪魔に怯えていつもここに隠れてる。それもこの寒さに関係してんだろ」
ま!俺に怯えてんのもあるけどな!
モードレッドはそう言って剣をふるう。すると暗闇に光る目は慌てたようにその場から離れていった。
「ドクター、何か変化はある?」
あれからしばらく調べてわかった事。
一つはここには多くの低級ゴーストが住み着いている事。以前起こった戦いで残っていた霊がここに集まって身を潜めている。
二つ目はこの中までは霧が入ってこない事。何故かは判らないがこのテントの中にまでは霧は入って来ず、人体にも大きな影響が出ないという事。
そして最後にーーー
「放射線?」
『あぁ、そのテントの中は濃度の高い放射線が所々確認できる。人体には特に影響は出ていないがそこに置いてあった食材には大きな変化を起こしていたよ。これを見てくれ』
四人が見守る中空中のホログラムに写真が写される。そこに写っていたのはーーー
「なんだこれ?林檎に魚が刺さってんのか?」
そこには林檎に魚の胴体がくっついたような謎のオブジェが写されていた。
『刺さっているというのは少し違う。これは清姫達が送ってくれたものの一つなんだが、分解してみると魚の頭は林檎の細胞と完全に結合していた。つまり完全に融合していたんだ』
『これだけじゃない、中には無機物と有機物が融合しているものもあった。いや、融合というのは適切じゃないな。溶けて混ざるとでも言ったほうがいい』
立華はそれに冷や汗をかく。もしかしたらここにいれば自分も溶けてしまうのだろうか、と。
『いや、大丈夫だ。さっきも言った通り放射線は所々にしか発生してなくてしかもその濃度の高いポイントに何日も連続で居続けたりしない限りこんなことにはならないよ』
「・・・そっか、良かった・・・」
その一言にホッと一息つく立華。
「しかし気持ち悪いぞ、その林檎。組み合わせも悪いし料理にも使えまい」
「・・・・」
「・・・おい、少しいいか?」
するとここまでずっと黙っていたクー・フーリンが初めて声を上げた。
「?どうしたの兄貴。そういえばここに入ってずっと黙ってたけど・・・」
「なあ、それは長いあいだ一つの場所にとどまり続けりゃとろけちまうんだよな?」
『え?あ、あぁ。その通りだよ。それがどうしたの?』
「・・・・・もしそれが、生きているもん同士の間で起こったらどうなる・・・」
『え、多分生きている脳をメインとして足りない部分を補い出すんじゃないかな・・・』
「どういうこと?」
『生き物というのは自身が異なる姿になると幻の感覚を持ち始める。手足の亡くなった人が幻の手の痛みを訴えるそれはゴーストペインと呼ばれているんだけど、おそらく異なる物と融合を果たした生物は異なる身体を正しい形に戻すため動き出す・・・と・・・まさか!』
「え、なんだ!?どういうことだ!?」
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ
え・・・・?
その言葉を誰が最初に呟いたかは知らない。しかしそれを気にするものは次の瞬間にいなくなった。
先ほどまで静寂そのものだったはずのテント内から何かが高速で這ってくるような音が聞こえてきたためだ。
「な、なんだ?!」
「最初から気になってたんだよ、獣にしちゃ少し違うし殺気とも違う。よくわかんねぇが微弱な気配がこっちを覗いてんのがよ!」
そういうとルーン文字を暗闇の奥に放つ。
しばらくすると破裂音が響くと同時にそれは立華達の前に姿を現した。
「なんだこいつは?!」
蟲
そこにはいくつもの化け物や死体、魚や植物を組み合わせて出来ているような巨大な蟲のような物が、いくつもの生き物の目玉を組み合わせてできた複眼を赤く光らせてこちらを覗いていた。
死界魔霧都市:ロンドン_
ー訂正ー
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第四特異点
融解魔導炉心
シティ・オブ・ロンドン_
開幕