試験も終わり、残りは面接と論文のみ!そしたらまたほいほい投稿できる・・・はず!
はい、ごめんなさい。本当に遅くなりました。
「紛らわしい面してんじゃねぇよ!先走っちまっただろうが!」
「む?!何を言う!余はこの世で一つの至高の芸術。つまりオンリーワンである!失礼なことを言うでない!」
現在立華率いるカルデア一行はロンドンで出会った全身鎧の英霊、モードレットと共に彼女の拠点にいた。
「でもわかる気もするな。アーサー王とネロって瓜二つでそっくりだし」
「あぁ、たしかに。あの騎士王と比べると畏怖っつーの?そういうのが全然ねぇが・・・・」
立華とクーフーリンがネロの顔を見て思い出すように呟く。
時は数時間前に遡る。
霧の中で立華達と遭遇したモードレッドはネロの顔を目にするや否や、戸惑った表情で話しかけてきた。最初はしどろもどろだったのだが情報交換をすると態度を軟化。自分の拠点に連れて行ってくれた。
最初しどろもどろしていたのは どうやら第一特異点で戦ったアーサー王とネロを間違えたかららしい。
「 ああ、もう。セイバー。見知らぬ人にすぐ真名を明かしちゃうんだ、君は。」
困ったような表情をしながらモードレッドに話しかけるのは眼鏡をかけた好青年。
彼の名はドクタージキル。この特異点にてモードレッドと共に事件解決に臨んでいた(人間)である。
「言ったじゃないか。話したじゃないか。名乗るのならばせいぜいクラスにしておこう、って。わかるかい?真名が露呈すれば性能が露見するのと同じだ。だからこそ、通常の聖杯戦争では真名というものは秘匿されるものなんだ」
そう言うと言い争っている二人に近づきモードレッドの前に指をたてる。
「それなのに、君というひとは比較的気軽に真名を明かしてしまって……」
「しょうがねぇだろ、そこにいる父上そっくりのニセモンを見たら話さずにはいられなかったんだよ」
「だから偽者とはなんだ無礼者!そういう貴様こそ余とキャラが被っておるではないか!そちらこそ余の偽者みたいではないか!」
「誰がお前の偽者だコラ!」
「あ、確かにお互い赤いセイバーだよな・・・」
世の中には自分にそっくりな人物が3人はいるとどこかで聞いたことがある。しかしこんなわずかな間で簡単に3人揃ったところを見ると、まだまだ増えそうな気がしてならない。
「とりあえず二人共、今回の件については一旦置いておこうぜ。お互いまだ情報の交換もしっかりしてないし・・・」
「いいや!ここで引き下がるわけにはいかんのだリツカよ!余の中の何かが叫ぶのだ、「時代は青より赤!」と!」
「あ?青って父上の事かてめぇ・・・!父上をバカにしていいのは俺だけだぞ!」
そういうと再び二人は睨み合う。それを見た立華とジキルは溜息を吐くと二人の間に入りお互いのセイバーに語りかけた。
「モードレッド、そもそも最初に間違えたのは君だろう?ならば最初に言うべきことがあるんじゃないか?」
「なんだてめぇ!そっちの肩を持つっていうのかよ!」
「肩を持つ持たないじゃありません。君だっていきなり勘違いした後に偽者扱いなんてされたら怒るだろう?自分の立場になって考えてみなよ」
「うっ・・・」
冷静になって考えると相手の方に罪はない。こちらがいきなり突っかかってきたようなものなのだ。
「ネロ、もうそのくらいにしておこう?確かに間違えられた後に偽者扱いはひどかったと思うけどさ・・・」
「ならばこそ決着はつけるべきであろう!リツカはあちらの肩を持つとでもいうのか!」
「肩を持つ持たないじゃない。それにネロも同じように偽者なんて言っちゃっただろう?お互い様になってどうすんのさ」
「ムグ・・・」
確かに言い争う最中に同じように偽者扱いをした。これでは相手を偽者扱いするなと言ってもブーメランになってしまう。
「ひどいだろう?だからこそ君も折れるべきだ。これから一緒に戦う仲間なんだから」
「自分に自信があるのならもっと心を広く持とうよ。受け流す事もこれからはきっと大切なんだしさ」
「「君たち大人だろう?」」
言葉が被ったと同時にわずかな静寂が走る。
そしてジキルと立華はしばらく顔を見合わせると無言でお互いに握手をした。
「・・・・謎の友情が芽生えました」
「てかなんだよこの変な空気は」
『えぇ・・・・・?』
「先輩、一体何が通じあったんですか・・・?」
ネロとモードレッドもお互いにしばらく睨み合ってはいたが、ジキルと立華が睨みを効かせたことで渋々という感じに握手をした。
「さて、早速だけど情報が知りたい。この街は今どんな状況かわかる?」
ここまでにたどり着くまで立華達は感じていた疑問、それはあまりにも街が静かだった事だ。
これまでの特異点では何かしらの争いや戦争といった特有の空気があった。それはただの一般人である立華ですら『あれ?なんかへんな空気』とわかるもの。そのおかげでこれまでも心構えが出来ていた。
しかしこの特異点ではそんな空気が一切なく、周りには人影どころか敵の影も見当たらないという始末。同様にサーヴァント達もその違和感に疑問符を浮かべており、妙な不気味さを感じ取っていた。
「さっきも言った通り自分達はこれまでに4つの特異点を攻略してきた。それらはどこも殺気とかで溢れてて自分ですらも把握できるほどだった。でもここは敵意とかが全くない。暗殺とかそんなんがあるとかも考えたけど一向に何もない・・・」
『君達に出会うまでに軽く2時間はこの街を彷徨ったと思う。街自体には毒の霧が漂ってこそいるがそれだけだ』
ロマンはここにくるまでに解析班に特異点の映像を見張らせていた。だがやはりというべきか影や生き物の気配もない。
「・・・・・・突然の出来事だった」
やがてジキルは重々しく口を開き語り出した。
「あれは今から三週間くらい前の出来事だ。その頃はまだ雨が酷い梅雨の時期でさ、昼間なのに夜と同じくらいの暗闇を雨雲が作っていた。」
そう言ってジキルは街の地図を取り出し街の中心部を指差す。
「傘や雨具なんかも全く効果がなくて、街の人たちは中心部の広場に大きなテントを張る事で物資の流通を行なった。そんな時だ。あのおかしな現象が起こったのは・・・」
「その日はいつものごとく雨だった。しかし空を見上げた誰かがその日の天気は異常な状態だと気づいた」
「異常な状態?」
「ああ、例えるのなら渦というべきか・・・街のテントの真上を中心に空全体が巨大な渦を巻いていた。風はその日吹いておらず、台風の目というわけでもない。なのにまるでタイヤの回転の様に凄まじい速さで雲が空に螺旋をえがいていたんだ」
「やがてそれはだんだんと小さくなっていった。あたりには久しぶりの青空が広がってはいたがそんな事は誰も気にしていなかった。当然さ。その雲は小さくなって行くというよりは、圧縮されていくという様に灰色を強い黒へと変化させていったんだから。街にいた誰もが不気味さを感じていたよ」
すると次の瞬間、集まった黒い雲は槍の様に地上へ向けて落ちていった。その場にいた人々は風圧に吹き飛びテントは完全にバラバラになっていた。
やがて雲は街全体に広がり霧となって覆い尽くした。
「君達の司令官も知っている様にこの霧には魔力が含まれている。その影響でロンドンはまるで神代の頃の様に幻想種が闊歩する街になってしまった・・・」
「アァ、まさか魔猪をこの時代で見ることになるなんてな。オレの時代ならともかく・・・」
モードレッドはその事を思い出したからなのか眉をひそめる。
「ん?ちょっと待って?ならなんで今はこの街に何もいないんだ?少なくとも俺たちが来た時は何も出会わなかったぞ?」
そう、それならこの街は今頃大混乱となっているはずである。なのに街の人たちは引きこもるだけになっている。
「・・・本来ならね。呼ばれていたのは幻想種だけじゃない。魔力に惹かれたためか、はたまた何か別の理由か、サーヴァントの出来損ないとでもいうべき存在も多数召喚された」
「モードレッドの様にこちらに味方してくれるものもいたが多勢に無勢、とてもじゃないけど抑えきれるものじゃなかったよ」
それを聞いて立華はますますわからなくなる。だがそれを察していたのかジキルはすぐにこう続けた。
「悪魔だ」
「悪魔?」
カルデアの面々が最初に思い浮かんだのは魔神柱である。あれも一応はソロモンの悪魔と呼ばれていた存在だ。
「サーヴァントも少なくなり、我々が劣勢を強いられている中霧の中からそれは現れた・・・」
「あの野郎・・・オレの獲物を横取りするどころか場にいるやつらを全て片付けやがった」
二人はそう言ってあの時の様子を思い浮かべる。
(な、なんだあれは!幻想種達をいとも簡単に⁈)
(退がれもやし!巻き込まれるぞ!)
そう言ってモードレッドに抱えられる中彼は見た。霧の中を何かが動いているところを。それは背中と頭を蝙蝠の羽のような形をしており、わずかな光を反射して鋭い瞳を鈍く輝かせていた。
「それが味方かどうかはわからない。けれどその存在は街に迫っていた脅威をことごとく殲滅し、ひとまずの落ち着きをもたらしてくれたよ」
戦いの後も幻想種やサーヴァントの出来損ないは召喚され続けてはいた。だがそのことごとくが召喚されたそばから悪魔の手に寄って叩き潰されたらしい。
「その存在を見た子供によるとその悪魔は涙を流して自分を殺そうとしたナイフのサーヴァントを倒していたという。子供は泣きながら悪魔が助けてくれたといい、街の人々はそれ以降彼の事を親しみを込めて「デビルマン」、と呼んでいる」
「僕たちもお陰でこの街の異変に落ち着いた対処が出来てとてもありがたい。そんな時に君達がやってきた、というわけさ」
暗い街の中、黒ずくめの格好をした男が歩いている。
「やっぱりそう簡単に尻尾を出すわけねえか・・・」
手に持った骨つきの獣のあしを豪快にかじり辺りを見渡す。
「・・・くそったれ、あの目玉ども次こそ全滅させてやる」
そう言うと彼は腰につけた水筒から豪快に水を飲み喉を潤す。
せっかく、悪魔に打ち勝って、人間をやめてまで戦ったと言うのに、奴らは途中から全部台無しにしやがった。
「待ってろよ・・・ミキ、了。必ずあいつらから俺たちの全て、取り戻してやるからな」
そして彼は再び歩き出す。
異なる世界からの新たなる来訪者、彼はカルデアに、この世界に、いったいどのような影響を残すのだろうか・・・。
続く