Fate/Machina order   作:修司

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そろそろクライマックスです!
ゆっくり読んでってね!


海の決戦「前半」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・で、なんとかここまで来た、と」

 

「・・・・・・」

 

「わ、私はかっこ良かったと思いますよ先輩!」

 

立華達は現在とある島にて新たなサーヴァントと話をしていた。

 

あれからどうなったのか説明せねばならない。

立華達はあの後戦闘を続けバーサーカーヘラクレスをなんとか殺したのだが、その直後宝具「ゴッドハンド」によって全快。後11回別の方法によって倒さなければならずそんな事は船の上では不可能なため一旦離脱することに。

 

 

 

当然ヘラクレスは追いかけて来ようとする。

だがそこは相手の船底にロケットパンチを浴びせることで怯ませその隙に離脱。

 

 

 

とりあえず誰も欠けることなく逃げることができた。

 

「あんだけカッコいい事言ったのに仕留めきれないて・・・・」

 

「ま、そういう空回りする時もあんだろ。そんな気にすんな」

 

「ううううう・・・・・!」

 

立華は顔を抑えながら体育座りをしている。そんな様子をみてマシュは慰めるがあまり効果はない。

 

 

 

「アタシ達はそっからなんとか仲間を増やせないかと思ってね。島から島を探してたらアンタ達を見つけたというわけさ」

 

「弓が頭に刺さった時はマジで焦ったよ・・・」

「それに関しては本当にすまない。私もだいぶ焦っていてな」

 

そう言い動物の耳をつけた狩り人「アタランテ」は頭を下げる。 立華達は島から島を巡っていた際船に向けて矢文が飛んで来た事によりアタランテ達と出会った。

 

 

『・・・・試すような問いかけをしてすまなかったな。わかってはいたのだが念のためだ。何しろ我々はこの海の最後の希望だ。』

 

『アタランテ---でよろしかったでしょうか?』

 

『ああ、そういえばフランスで顔を合わせていたな・・・。今回は一応汝らの味方側という認識だ』

 

『ありがとう。俺は藤村立華。こっちはマシュでこっちは船の船長のドレイクとエウリュアレ』

 

『こちらはクー・フーリンさんとネロさん。清姫さんにアステリオスさん。そしてフォウさんとオリオンさんとアルテミスさんです』

 

『うむ、よろしくたの・・・え?』

 

ちなみに出会いの最初は色々混乱があったりしたが、オルレアンでの出来事もありそこまで取り乱すことはなかった。

「それはそうと戻らないなあいつ・・・・」

 

「ダビデ・・・・・だったかしら?その箱を持つというサーヴァントは」

 

エウリュアレがアステリオスの膝の上でアタランテに問う。

 

この島にはアタランテの他にもう一人サーヴァントがいた。

サーヴァントの真名はダビデといい、古代イスラエルにて巨人を打ち倒したという王の一人である。彼は立華達と出会った後森の中に食べ物を探しに行くと言ったっきり戻って来ない。

 

するとそこに

 

「いやー、お待たせお待たせ。ちょっと仕留めるのに時間かかってしまってね」

 

「遅いぞ。皆話を聞けずに待ち惚けではないか」

 

「いえ、そこまで気にしてませんよ」

 

ダビデは石の上にどっこいしょ、と座ると立華達を見回し口を開く。

 

「さて、それじゃあみんな集まったところで話に入ろうか」

 

「ああ、そんじゃ聞かせてくれ。その「契約の箱」ってもんの話を」

 

クー・フーリンがダビデの獲ってきた猪を捌きながら見据える。

「まず「契約の箱」ってのは僕、ダビデの宝具だ。」

 

「契約の箱は宝具として見ると三流の宝具でね。この箱に触れさせれば相手は死ぬ、それだけ。悪用は・・・・うん、出来るだろうね。あの宝具は僕のものという訳ではない。あれは神が人間に与えた契約書のようなものだ。容易に奪えるものでもないが奪われれば最悪だ」

 

ダビデは一旦口を閉じドレイクからもらった酒をあおる。

そして喉を潤すと再び話し始める。

 

「おまけにこの宝具は霊体化が出来ない。僕は契約の箱と一緒に召喚されるサーヴァントだ。僕が死んでも誰かが所有していれば残り続けるだろう」

 

「箱の中には十戒が刻まれた石板があると伝えられてますが・・・」

 

「それだけじゃない。あれは比喩でもなく『死』をもたらすものだ。ともかく・・・・・イアソンが契約の箱を狙っていると聞かされた僕は彼女と共に森に隠れて機をうかがっていたわけだ」

 

あたりに肉の焼ける匂いが漂う。

そんな中アタランテが口を開く。

 

「私はアルゴノーツの船員として召喚されたが、ヘラクレスのように自意識を奪われることはなかった。元々生前からイアソンを嫌っていたせいか、あるいは単独行動可能なアーチャーとして召喚されたせいか・・・・・。ともかくイアソンは召喚されてからすぐに契約の箱を求めていた。」

 

「それがあれば海域の王になれると公言していた」

「ちょっと待って。今聞いていた話からするととてもじゃないが王になんかなれなさそうなんだが?」

 

 

 

 

火の温度を調整しながら立華が疑問符を上げる。触れたら死ぬなんて物騒なものがなぜ王の資格となるのか。

 

だが帰ってきたのは首を振る仕草である。

 

「その通りだ。あれは王が持っていたというだけであって資格という訳ではない。だからなぜ彼が求めているのか疑問だったんだ」

 

「ふむ、あの者は女神であるエウリュアレを捧げると言っておった。それと何か関係しているのではないか?」

 

「それは私も知りたい。イアソン達はそれを目的としているようだったし・・・」

 

二人の言葉にダビデは顎に手をやる。

「エウリュアレ、だったね。本来神霊である君が契約の箱に捧げられるとなると---」

 

「うん、この時代そのものが死ぬだろう」

 

『はあ・・・やっぱりそうか』

 

そこに今まで黙っていたロマンの声が響く。

立華達はその言葉に顔を険しくしダビデを見る。

 

「なんと言うか・・・ある程度ろくなことにならないとは考えていたが・・・」

 

「どれほど低ランクであろうと神が生贄にささげられたらこの箱は暴走する。だって神が死ぬんだ。つられて世界も死ぬだろう。えーと、特異点だっけ?そいつの崩壊を待つことなくこの時代は消え去ってしまうだろう」

 

「するってぇと何かい?その箱を使い女神さまを捧げればその時点で全てが終わるってワケかい?」

 

ドレイクの質問にダビデは肯定する。

契約の箱はいわば風船のようなもので、神霊という大量の空気を吸ってしまい周りも吹き飛ばすというワケだ。

清姫は立華の汗を拭いながら考える。

 

「・・・・あの者はなぜそこまで世界を滅ぼしたがっているのでしょう」

 

「・・・・もし、かして、しらな、い?」

 

「確かに。契約の箱にエウリュアレを捧げればいいのだと、誰かに言い含められているのかもな」

 

「---ともかく」

「あとはどうやって彼らを倒すかですが・・・・」

 

そう言ってマシュは全員を見渡す。

こちらのサーヴァントはセイバー、キャスター、海賊が一人。アーチャーが三人にバーサーカーが二人。そして自身であるシールダーとマスター・・・・・。

そこまで考えたところで立華が言葉をあげる。

 

「どうなんだろう・・・・戦力的には優れていると思うけど?」

『いいや、ちょっと難しいよ。イアソンによるとバーサーカーヘラクレスはあと11回斬り殺す以外の方法で倒さなければならない。そうなるとアーチャーに偏っている我々は数に優っても難しい・・・』

 

「そもそも俺たちも含めて遠距離出ないと本領発揮出来ない連中ばっかだしなー」

 

「契約の箱に触れてくれれば多分一発で昇天してくれると思うんだけど」

 

「そんなに簡単に触ってくれるものなの?」

 

アルテミスの言葉に全員が口を紡ぐ。

理性を失っているとはいえ大英雄。対峙したからこそわかるが技量そのものも曇っていない。全員が焼けた猪を食べながら対策を練る中、立華は顎に手をやり何か考え事をする。

 

「・・・・・・」

 

「せめてヘラクレスただ一騎を引き離せれば---」

 

『・・・・ここはひとつしばらく契約の箱を持ったまま隠れてチャンスを伺うというのは』

 

「ドクターは賞味期限切れのゴマ饅頭でも食べててください」

 

「篭城戦などどうだ?この近くに城などはないのか?」

 

「ないね。あるのは異教の狭い地下墓地くらいだ」

 

「もっとも?やつの攻撃食らって耐えられる城なんてそもそもないと思うけど」

 

 

「・・・・・・・・」

 

「フォウ?フォウ、フォウ、フォウ!」

 

そこでフォウが立華の様子に気づく。

マシュはそのまま目を向けると立華が目を瞑って瞑想していた。

 

「先輩?どうし「あーーーッ!!!」?!」

 

「そうだよ、あんじゃねーか。城!!」

 

クー・フーリンが突然声を上げ立華を指差す。

そしてダビデを除いた全員がある事を思い出し目を見開いぎながら立華を見た。

立華は目を閉じたまま口元をニヤケさせると、マシュに向かってこう言った。

 

 

 

「あるじゃねーか。とっておきのが・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの島ですね」

 

メディアはとある島を指差しイアソンに言う。

 

 

彼らは逃げた立華達をメディアの魔術により追跡していた。ロケットパンチを喰らった船底の穴は、ヘラクレスが支えている間に塞ぐことができた。

 

「よし、エウリュアレは殺されていないね?」

 

「ええ、生きておりますわ」

 

「・・・・狙われているのがわかっていながら、ねえ・・・どんな判断なんだか」

「・・・・ま、いいでしょ、あっちの選択だ。こっちの判断はこっちの船長に任せよう」

 

船は島に向けて進んで行く。そんな中イアソンは彼らに命令する。

 

「よし、いいぞ!天運はやはり我らにある!ヘラクレス、メディア、ヘクトール!あの島に上陸して契約の箱とエウリュアレを奪え!」

「散々やってくれたんだ!タダでは殺すな!私は---」

 

 

 

 

「おっと!」

 

その時一筋の矢がイアソンの額に向けて飛んできた。

近くにいたヘクトールは飛んできた矢を槍で弾く。

 

「何だ、矢か?・・・・馬鹿な奴らだ。この程度の矢がヘラクレスに効くとでも---」

 

「・・・・・ッ!違います。これは---イアソンさまを狙っています!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

すると次の瞬間、イアソンに向けて雨と言っていいほどの何かが降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!みんな撃ちまくれ!そのままヘラクレスがこっちに来るまで撃ち続けるんだ!」

 

立華はサーヴァント達に指示を送り弓を引かせ続ける。

 

 

いや、弓だけではない。 カルヴァリン砲、火の玉、銃弾に木製の槍までがアルゴノーツに向けて放たれている。

 

「やはり一点に向けて集中攻撃というのは気分がいいな!」

 

「あんな奴にはもったいないけど送ってあげるわ!宝具---「女神の視線」!」

 

「いやあ、モテモテで羨ましいなイアソンくん」

 

「そうか?俺ならこんなアプローチ、絶対御免さね!」

 

「それもそうだね!」

 

「旦那さまを貶した罪・・・・・その身で味わいなさい」

 

『立華くん!準備は出来ているよ!』

 

そんな中ロマンが立華に向けて言う。

立華は腕のパネルを操作すると敵の船を見据える。

 

「さあ、来い・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方船の上では大混乱が起きていた。

 

「うわお、宝具の集中攻撃だ。ったく煩わしい、なっと・・・・・!」

 

「Aランクの攻撃も混じっています・・・・・・!隙が出来ません・・・・・!」

 

二人のサーヴァントがイアソンに向けて飛来する武器を時に打ちはらい、時に逸らす。

そんな集中攻撃に晒されたイアソンは混乱しながら呟く。

 

「な、なんだよ!なんで俺ばっかり---この、卑怯者め!」

 

「どうか冷静に、イアソンさま。あなたは私が守ります!」

 

「あ、ああ、ありがとうメディア。・・・・・しかし未熟なお前だけじゃ・・・・・」

 

イアソンはしばらく迷った末にヘクトールに命令し、ヘラクレスを立華達に向かわせる。

 

「よし、ヘクトール!サーヴァントらしく私を守れ!」

「ヘラクレス!どうせアーチャークラスだ。お前の一撃で挽き潰せ!」

 

命令を受けたヘラクレスは雄叫びをあげて海へ飛び込む。

凄まじいスピードで島へと泳いで行くヘラクレスを見てメディアはため息を吐く。

 

「・・・・・ここまでは敵さんの思惑通りか。だがヘラクレス相手にどうする気だ?何か手段が?あの時の飛んできたドラゴンも気になる・・・・・」

 

 

ヘクトールは島を眺めると一人の魔術師を思い浮かべる。

そしてメディアと同じくため息を吐いて誰にも聞こえないように呟いた。

 

「・・・・・ま、なんでもいいさ。とにかく、お手並み拝見だ。未来の魔術師さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

島に着いたヘラクレスは辺りを見回すと、生き物の痕跡のある方向に向かって駆け出した。

 

 

ヘラクレスが前に進むたびに周りの木々が吹き飛んで行く。

暗い森の中で彼は目を凝らす。 指示された命令を遂行するために。

 

 

そして彼が辿り着いた先には---

 

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎・・・・」

 

そこには何もなかった。

確かに人の痕跡に向けて走ったはずだ。

しかしそこにあるのは海。

島の反対側まで走り抜けた証だった。

おかしい、理性のない頭で彼はそう考え再び敵を探そうと後ろを向く。

 

 

 

 

次の瞬間---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『隙を見せたな!!!』

 

海の中から黒鉄の巨人が現れヘラクレスを掴んで海のそこまで引きずり込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいねいいね、いいじゃないか!さっすがアタシの見込んだ男だよ!」

 

ドレイクは笑いながら立華の背中を叩く。

そんな中ダビデは信じられないものを見るかのように立華を見る。

 

「・・・・・正気かい?そんな作戦してもしも君の身に何かあったら---」

 

「そうですよ先輩!?私は反対です!いくらなんでも・・・・」

 

マシュもその提案を却下した。

そんな二人に立華は大丈夫、と言い腕をまくる。

「覚悟の上だ。それに俺がやれば戦力をヘラクレス以外に絞ることができる。それに心配要らないよ」

 

「?」

 

「あの野郎には散々やられたんだ・・・。こっちも度肝抜くくらいの事を見せてやらねえと気がすまねえ!」

 

立華はカルデア戦闘服に着替えフォウを肩に載せた。

マシュはそれを見てもやはり不安なのか立華の手を握る。

 

「俺はこんな時どんな言葉を言えばいいのかわからない。気の利いた言葉が言えればいいんだけど今の俺にはこれしか言えない・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マシュ、みんな。俺を信じて欲しい。俺の信じる俺を・・・」

 

それを言われた彼女は目を閉じ周りのサーヴァント達に聞く。

 

「・・・・みなさん、みなさんはどう思いますか?」

 

「俺はいい考えだと思うぜ。こいつならやってくれそうな気がするしな。それにあいつは一度振り回される苦しみを味わった方がいい」

 

「余も別に構わん!むしろ安心して背中を預けられると言うものだ!」

 

「私は待ちますよ。だってそれが嫁の役割ですもの」

 

その答えにマシュは再びもう一人に問う。

 

「ドクターはどう思いますか?」

 

『・・・・・僕としては反対したい。だってたった一人のマスターなんだ。サーヴァントの指示だってあるし極力リスクのある事はさせたくない。でも・・・』

 

「でも?」

 

『でも彼の決めた事なんだろう。ならば信じてみるよ。幸い安全制は保証してるしね』

 

そう言ってロマンは困ったように笑った。

その様子を見たマシュは立華と目を合わせ両手で彼の手を握った。

 

 

 

 

 

「わかりました、先輩。くれぐれもお気をつけて下さいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎ー◼︎◼︎ー◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!!!!!!」

 

 

ヘラクレスは一瞬の判断が遅れてしまい、巨人の腕に捕まってしまった。何とか踠いて脱出しようとしているがその力の前にビクともしない。

 

「フォウフォーウ!」

 

「悪いなヘラクレス・・・・!お前の相手はこの俺だ!!」

 

 

 

マジィィィィィンッ!ゴオオオオオオオオッ!!!

 

立華の叫びと共に両目に光を灯したマジンガーは、そのままヘラクレスをつかんだまま海底へと進んでいった。

 

 

 

ー続くー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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