アンケートの結果選ばれたのは、一番でした!
「先輩!見えてきました!おそらくあの船が!」
立華達の船は凄まじいスピードで目的の場所まで進んで行く。本来ならバラバラになるはずの船はワイバーンの素材によりビクともしていない。
しかし
「せせせせせせ船長おおおおおッ⁉︎」
「お、お助けえええええッ!!」
「オボロロロロロッ!」
しかし海賊達はそのスピードについて行けない。あるものは助けを呼びあるものは胃の中の物を全て吐き出している。
海賊達だけではない。
「オオオオオオオイ?!絶対!絶対離すなよ⁉︎ふりじゃねえぞ!」
「いやああああああッ!?」
「えう、りゅ、あれ、つかま、る!」
カルデア組以外のサーヴァントもそのスピードに参っている。 あのアステリオスも船の上でなんとか吹き飛ばないようにエウリュアレを抱えている。
「・・・・俺たちよく平気だよな」
「もはや慣れた!立華よ、もっとスピードを出さんのか?」
「ああ!旦那様私も立っていられません!」
「いや、メッチャしっかりした足取りでこっちきてんじゃん・・・」
カルデア組のサーヴァントはもはや慣れた事からなのか余裕のある感じである。散々特異点において同じような目にあっているため、この程度の物ではなんて事はない。
そしてマシュの言った通り聖杯を持ち去ったと思われる船が見えてきた。
「よし!このままロケットパンチを奴らの船に叩き込む!」
『いや待って!?このスピードで船を離したらスピードが激減してひっくり返るぞ!!」
ロマンの声が響くがもう遅い。二つの拳の一つが船を離れ目標に向かって飛んで行く。 船は急激なスピードダウンにより大きく傾く。
しかし
「もう一つのロケットパンチで押さえつける!」
その瞬間もう一つのロケットパンチは船の鎖を全体に巻きつける。
そしてそのまま鎖を船の反対方向へ引っ張る。
本来ならGにより吹き飛ばされるはずの乗組員達は、ロケットパンチが一つになったことにより余裕をもってそのスピードを落として行く。
敵の船に向かったロケットパンチはどんどんスピードを上げて迫って行く。
このままいけば船に風穴をあけることが出来るだろう。
だが・・・・
「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!!!」
そんなパンチは、船の上に居た鉛色の巨人の手により押さえつけられた。
「?!」
「なんだと?!! 」
立華は驚愕した。
今までありとあらゆる物を貫いてきた鉄拳。
あの魔神柱でさえその力により吹き飛んだ拳が。
止められた。
しかもたった1人に。
「よ、よーしよくやった!まさかこんな一撃を打ってくるとは。悪の軍団だけに不意打ちは派手にやってくれるな」
すると灰色の巨人の後ろから金髪の男と薄紫色の髪をした少女が現れる。ゆっくり止まった立華達の船を見下ろし男は口元に笑みを浮かべた。
「さて、早速この有象無造たちと決着をつけようか。
君たち世界を修正しようとする邪悪な軍団と---
我々世界を正しくあろうとさせる英霊達」
「聖杯戦争にふさわしい幕引きだ!」
その言葉に立華は反応して男に問いかける。
「お前達は何者だ!」
「へえ・・・・前に出てくるとはなかなか勇気があるじゃないか。塵屑の分際で」
男は自分の隣にサーヴァント2人を並べると立華の質問に答えた。
「私はこの船、「アルゴノーツ」の船長イアソン。そしてこっちは私の妻にして魔女、メディアさ」
「私たちの目的はそこの落ちぶれた女神ととある箱を探していてね、そのためにヘクトールを差し向けていたんだが・・・・どうやら君たちの方が上手だったらしくてね。仕方なく私自らが出向いたというわけさ」
「キャプテン?ちょっと体治してくれませんかね?こんままじゃちょっと難しくてね・・・」
「ハッ!失敗してきた分際でよくもまあ要求できたものだな。まぁ許そう。聖杯の方は持って帰ってきたしね。メディア?」
そういうとイアソンは少女「メディア」に指示しヘクトールの傷を治させる。 それを見た立華達は一気に警戒態勢に入る。
「アルゴノーツといやぁ黄金の毛皮を求めて旅立った冒険者達の船。人類最古最強の海賊団と言っても過言じゃねえ・・・・」
「という事はあちらの巨人は・・・・!」
マシュはそう言い灰色の巨人の方を見る。 巨人の瞳は爛々と輝いており今にもこちらの方に襲いかかってきそうだ。
「さて、先ほども言った通り我々の目的はそこの怪物に守られている女神でね。見た所君たちは渡してくれそうもないしね・・・・」
イアソンは腕を上げて乗組員達に合図を送る。
そして振り下ろされた時アルゴノーツの乗組員達はこちらに襲いかかってきた。
「力ずくで奪わせてもらうよ!」
「いきなり来るか!」
「えうりゅあれ、さがれ」
ドレイクの銃が火を吹き相手の牙を寄せ集めたような魔物「竜牙兵」を吹き飛ばす。しかし竜牙兵はメディアの手により着々と生み出されておりあまり意味をなしていない。
アステリオスはエウリュアレを背中に隠し二本の斧を振り回し進行を阻止している。
「このやろう!この骸骨の群れといいそっちの方が悪役むいてんじゃねえか!」
立華は借りたサーベルを振り回し竜牙兵を蹴散らしている。
マシュと背中合わせに戦う事でお互いの身をささえあっているのだ。そんな中ドレイクの部下達も、先ほどの揺れに酔いながら懸命に戦っている。
・・・・・今更ながらやめておけば良かったと考える。
「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎・・・・!!!」
ふと立華達が相手の船を見ると灰色の巨人は態勢を低くしているのが見えた。
「オイオイオイオイ!まさかあの野郎?!」
「!先輩!一旦引きます!」
「来るか!」
クー・フーリンが立華を抱えてその場を離れる。ネロとマシュはこれから来るであろう衝撃に備え身構えている。
巨人はそのまま大きな巨体を空中へと飛ばし、船の甲板の上に着地した。
「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!!!」
「マシュ!さっきなんか言いかけてたけどこいつって・・・・!」
「はい・・・、アルゴノーツはかつて数多の英雄豪傑が集いましたが、その中でなお英雄と呼ばれた破格の存在・・・・!」
マシュのその言葉に向こうの船の方からイアソンが答える。
「そうさ!こいつこそかつて我々が憧れ挑み勝てなかった究極の英雄!ヘラクレスさ!」
「あらゆる場所であらゆる怪物と戦い、敗北なく最後には神にまで至った男!それがヘラクレスだ!」
巨人、「ヘラクレス」は船を揺らすほどの雄叫びを上げ、一番近くに居たネロを手に持った石斧で吹き飛ばした。
「!!!か、ッハァ・・・・?!!」
「ネロ?!!」
立華は咄嗟に令呪を使いネロを回復する。
しばらく腹部を抑えながら咳き込んだネロは、なんとか立ち上がる。
「ネロ、大丈夫か?まだ行けるか?」
「ケフッ・・・。問題ない。リツカよ、指示を!」
「清姫!君はアルテミスと一緒に奴の揺動を頼む!ネロはアステリオスと一緒に遊撃戦で翻弄して兄貴とマシュは船長と一緒にエウリュアレを守る!」
「「「「了解!」」」」
その声とともに清姫とアルテミスはヘラクレスの顔の付近を狙って視界を奪おうとする。しかしヘラクレスは体を見事に翻し2人の攻撃を避ける。
石斧をふり被り2人の元へと向かおうとした瞬間
「ウオオオオオオオオオオオオッ!!!」
「行かせはせんぞ!」
そこへネロとアステリオスの下段切りがぶつけられる。
2人の武器はそのままヘラクレスの身を切り裂くかに思われたが、鎧のごとき皮膚の前に弾かれる。
「勝てないさ!勝てるものか!君達二流三流とはわけが違う!無造作に引きちぎられるのが雑魚敵としての運命さ!」
「もっとも、今の彼には二つほどかけているものがある。知性と品性さ。今のこいつはどう猛な野犬に過ぎないん言い様だとは思うがね」
イアソンは笑う。
こちらを見下しながら。
彼は立華の方を向くと問いかける。
「さて、そこのマスターらしき者よ。女神を引き渡せ。そうすれば・・・・・ヘラクレスを止めてやってもいい」
どうする?と問いかけるイアソンに立華は、なんの迷いもなく答えた。
「笑わせんな!何が止めてやってもいいだ!さっきから何もしない案山子野郎!」
「・・・・・」
「先輩・・・・!」
「ヘラクレスだ?敵わないだぁ?!リスクが怖くて戦えるか!」
「俺たちは!決して仲間を見捨てない!どんなにボロボロになろうが!死にかけようが!最後は必ず勝利を掴む!!!」
立華はイアソンに指を突きつけ言い放つ。
お前には絶対に渡さないと言うように。
その瞳には絶対に惹かないという強い闘志が見えて取れた。
「この俺!藤丸立華をなめるな!!!」
立華のその言葉にイアソンは笑い声を上げる。
「ハッハー!そうかそうか!君は勇気があるな!とてもとてもとても気に入ったよ!」
「おまけにそんな可愛いサーヴァントまでついている。いいよ、いい!英雄みたいだ!」
するとすぐにその笑顔を歪ませると、隣にいたメディアに指示を出す。
「---ったく塵屑風情が生意気な。サーヴァント共々消えてくれる?メディア!私の愛しいメディア!私の願いはわかるよね?あいつらを粉微塵に殺して欲しいんだ!」
「君が弟をバラバラにした時みたいにね。ああ大丈夫大丈夫。私は反省したから!もう君を二度と裏切らないとも!」
「弟を、バラバラ、ですか?イアソン様は時々妙なことをおっしゃるのですね」
そう言うと杖から魔法陣を形成してそこから無数の魔力弾を浮かび上がらせる。
「ヘラクレス!お前もやってしまえ!私はここで君達を見守ろう」
イアソンの言葉に、三人のサーヴァントは立華達を打たんと立ち向かう。
「わ、あれ知ってる。DVって言うんだよね」
「そんなもんじゃねえ。あの二人どっちも相手を見てねえっぽい!」
「先輩!」
「おう!目に物を見せてやる!!!」
それと共に立華達も立ち向かう。
戦いは今、最終局面へと向かおうとしていた。
-続く-