やっぱり戦闘シーンは楽しい!
「・・・・・こりゃ随分キテレツなのを連れてきたねボンベ」
広場の真ん中で海賊の声に応えたのは、顔に大きな傷のある女性だった。
「へぇ、でも見所はあるっスよ。あっしらの命を助けたばかりか、船長に会いたいとか何とか」
「ふ〜ん、アタシに会いたいねぇ・・・・」
そう言ってこちらを見る。
彼女がおそらくマシュの言うドレイク船長だろう。
「・・・・あの、先輩。わたし、驚きで声が出ないのですが・・・・」
「そうか?よくあることなんじゃないか?」
立華はそう言ってネロの方を見る。
彼女も歴史上では男性と記されていたらしいし冬木の特異点でもアーサー王が女性だったし、結構こういうことは多いのかもしれない。
ちなみにネロはドレイクの顔を見てなんか唸っていた。
「・・・あやつの顔、何処かで見た気がするのだが・・・」
「?まぁいい、下りなボンベ。話は私がする。」
「それで、あんたら何者だい?」
部下を下がらせ立華達に問う。
その様子を見てマシュと立華が前に出る。
「あなたがフランシス・ドレイクですね。我々はカルデアという機関に所属するマシュ・キリエライトと申します。こちらは私達のマスターのーーー」
「藤丸立華だ。よろしく」
立華達が自己紹介するとドレイクは訝しげな顔でこちらに聞いてきた。
「カルデアぁ?星見屋が一体何の用だい?新しい星図でも売りつけに来たとか?」
『うわっ、意外に博識だぞこの酔っ払い・・・・!カルデアの起源を知ってるとか!』
ロマンが驚きに声をあげる。
するとドレイクは眉をひそめ辺りを見渡した。
「・・・・・な〜んか薄っぺらい気配がするねぇ」
「アタシが一番嫌いな、弱気で、悲観主義で、根性なしで、その癖ねっからの善人見たいなチキンの匂いだ」
その言葉に立華達は驚く。
ロマンの人間性を声を聞いただけでここまで把握できるとは。
「か、完璧です。先輩、この人の分析、と言うより直感は完璧です!」
マシュのそんな言葉にショボーンとするロマン。
しかし自分も確かに、と感じてしまうため何も言わない。
「まぁいいや細かいことは。面倒だし。それで、カルデアとやらはあたしに何の用だい?」
「・・・・・・はい、私達はこの時代の異常事態を修正するため、さる場所から送られて来たものです」
「・・・・はぁ」
「フランシス・ドレイク船長、あなたなら気づいているのではないですか?この時代、この世界は何かがおかしいと言うことを。あなた達が過ごして来た海と、今広がっている海は別のものだと言うことを」
そう伝えるとドレイクの目つきが鋭いものに変わる。
「・・・・・ふぅん、世界だの時代だの言われても無視を決め込むハラだったが・・・・・海の話をされちゃあ無視出来ない。確かにあたしもおかしい、とは思っていた」
その言葉を聞き、案外上手く事が運んでいるんじゃないか?と考える。
しかし
「・・・・ですよね!では、私達がその原因を説明しまーーー」
「ーーーだがね、そのおかしいは異常って意味じゃない。こんなに面白おかしい世界は他にないってことさ!」
そうだな野郎ども!とドレイク船長が叫ぶとあちこちからヒャッハー!、という声が聞こえてくる。
その反応に立華はえぇ・・・・またこのパターン?と呆れた反応をする。
「なんと言うか懐かしいなこの雰囲気。影の国の連中を思い出しそうだ」
「兄貴ってどんなところに住んでたの・・・・?」
「いや、今はそんな事を言っておる場合ではなかろう・・・・立華よ、あやつ恐らく戦うつもりだ」
そうしてドレイク船長は一呼吸置いて腰の銃を構えた。
「というわけだ!あたし達海賊は自由の為ならあらゆる悪徳を許容するんでね!どうしても話がしたいってんなら、まずは腕試しといこうじゃないか!」
「またかよ・・・・初めから話が全然進んでない・・・」
「まぁいいじゃねえか!こっちはわかりやすくてありがてぇ!」
「仕方ない・・・・清姫、ネロ、マシュ、兄貴!準備はいい⁉︎」
その声にサーヴァント達は肯定すると、戦闘態勢に入った。
最初に仕掛けたのはやはりドレイクだった。
「そらよッ!!!」
彼女は高くジャンプしてに持った2丁拳銃で、全員に満遍なく銃弾を撃つ。
「マシュ!防御」
「はい!ステータスアップ、これで堪えます!」
その攻撃にマシュがスキルを使用し全員の防御力をあげる。
撃たれたと同時にネロがドレイクの前に出て剣を振り上げるが、その攻撃をドレイクは銃の砲身の部分で受け止め鍔迫り合いになる。
「・・・・ッ!むう、お主・・・・ドレイクとやら。やはり余と何処かで会ってはおらぬか?」
「はあ?・・・・あいにくあんたみたいな赤いの、見た事ないね!」
そしてドレイクは銃弾で剣を弾き距離を取る。
そしてこちらを捉えようとして視線を向けるとその顔の前を二つの火の玉が通る。
「こっちも忘れてもらっちゃ困るぜ!」
「焼きつくします・・・」
「兄貴、矢避けの加護で肉弾戦に!清姫はそのまま援護をお願い!」
そしてクー・フーリンは杖にルーン魔術を描き槍の代わりに振るう。
それにドレイクは銃弾を浴びせるが当たらない事を悟ると、清姫の方に攻撃を加えようと近づく。
しかし
「やあああッ!!!」
「!へぇ、やるねぇ・・・。大人しそうな顔して結構攻めてくるじゃないか」
そこにマシュがシールドバッシュを仕掛け清姫の前に立つ。
しかしドレイクはシールドにわざと近づきそのままヤクザキックてマシュごと吹き飛ばした。
「うああ?!」
「だがまだ勢いが足りないよ!」
「マシュ!?」
その様子を見た立華はクー・フーリンに援護を指示する。
「おっと、あんたには肉弾戦がキツそうなんでね・・・・悪いが避けさせてもらうよ!」
「そう言うなよ!もっと俺のや・・・杖さばきを味わっていきな!」
そうして徐々にクー・フーリンが追い詰めていく。
しかしその時
「うおぁ?!!」
「兄貴?!」
「へへっ、あんたの運も足りなくなって来たんじゃないかい?」
ドレイクの銃弾がクー・フーリンの頬を掠る。
掛けておいた矢避けの加護が切れ始めたのだ。
そうしてドレイクは近くにあった大砲に火をつけてマシュ達の近くに砲撃した。
「藻屑と消えな!」
「あぶない!」
とっさにマシュが前に出て全員の盾になる。
いくらデミサーヴァントといえど、砲撃の直撃を間近で受けたことで大きなダメージを負った。
「マシュ?!大丈夫か?!!」
「・・・・っ!!!は、はい。まだ大丈夫です、先輩!」
その言葉にホッとする立華。
そこへネロ達3人も集まり状況は振り出しに戻ってしまった。
ドレイクもネロ達も動かない。
お互いに自分の距離を図っている。
(困った・・・!生きた人間だから宝具を放つのは難しいし、だからと言って手加減してたらこっちがやられる!)
立華はこの戦いにやりにくさを感じていた。
生きた人間と戦うことは何回かあったが、ここまで英霊と互角にやりあえる人とは初めてだったのだ。
(どうすれば・・・・!)
「ラチが開かないねぇ・・・・」
そこにドレイクの声が響く。
彼女は立華を見て何かを思いついたかのような顔をする。
「あんたらを相手にするのは骨が折れる・・・・ならばこっちの指示するボウヤを狙うってのはどうだい!!!」
「!先輩!あぶない!!」
「坊主!逃げろ!」
ドレイクはマシュ達の間を潜り抜けると一直線に立華の元へ迫ってくる。
立華はその状況を見て焦る。
しかしドレイクは立華の目の前に銃口を向け、引き金の指を動かす。
(や、やばい?!!)
しかし次の瞬間
「?!」
世界が再び止まった。
これって、あの時の!?
セプテムでサーヴァントアルテラとの戦闘の際に起こった現象。
立華以外の動きは遅くなり、目の前のドレイクの動きもゆっくりとなる。
でも・・・!好都合!!!
立華はドレイクの腕を取り、肩の上に乗せる。
そしてそのまま体重を前の方へと移動させドレイクを投げ飛ばした。
再び動きが元に戻りだす。
「「「「な!?」」」
「なんだって?!!」
ドレイクには何が起こったかわからない。
気がつけば銃を向けていたボウヤはいなくなり、自分の体はそのまま空へと投げ飛ばされている。咄嗟のことにドレイクは反応できずろくに受け身も出来ぬまま立華の一本背負いをもろに受けてしまった。
「がはぁッ?!!」
肺の中の空気がいっぺんに抜ける。
このままではまずいとドレイクはそのまま立ち上がろうとして
「俺たちの勝ちです・・・!」
立華はドレイクの落とした銃を向けている。
ドレイクはその光景に目を見開き、しばらくすると
「あぁ、あんたらの勝ちだね・・・・」
と呟いた。
その光景に彼女の部下たちもマシュ達も口を大きく開けて呆然としていた。
ー続くー