インフィニット・レギオン   作:NO!

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会議

「…………」

 

 あれから数時間後、此所は周りが暗闇に包まれた、とある空間。そこには大きなテーブルがあるが正面には一人の男性がふんぞり返る様に座っていた。

 その人物は三上でった。刹那、三上は軽く指を鳴らすと、テーブルの周りから立体映像が映し出される。物ではない――人である――それも、四人の男性達。

 年はバラバラであるが全員、黒のスーツを身に纏っている。二人は十代後半に差し掛かる青年達、後の二人は大人であるが、その四人とは壱夏、拓陸、肆狼、玖牧。彼等は三上の命により集合せよとの招集されたのである。彼が集まったのは他でもない――これは会議であった。

 沈黙は無かったが三上が肘を突きながら腕を絡めると不敵に笑いながら口を開いた。

 

「良く集まった俺の直属の部下達よ」

 

 刹那、彼の言葉に其々、思惑があるような表情を浮かべる。壱夏は眉間に皺を寄せ、拓陸は軽く瞑目し、肆狼は「あっそう」と下らない様に思っており、玖牧は辛そうな表情を浮かべながら下唇を噛る。

 彼等は三上を快くは思っていない物の、直属の部下であって確かな実力はある者達で構成されている。それでも三上は言葉を続ける。

 

「お前達を招集したのは他でもない――これから計画の最終段階に……その前に壱夏、ご苦労だったな」

「……はい、ですが彼との食事は会話が進まず、逆に疲れました」

 

 壱夏は淡々と何かを語り始める。それは彼が数時間前、十蔵と食事をしたのである。が、会話は一向に進まず、食事を進めただけであり、食事が終わった後に彼をIS学園に送り帰した以外、結果は変わらなかった。

 

「ですがIS学園の件は話しましたが彼が、理事長がどう動くのかは向こうが決める事でしょう――ですが、拓陸」

 

 壱夏は拓陸の方を見る。参流を除き、周りも拓陸を見やるが彼は眉間に皺を寄せながら視線を下の方へと向ける――彼が拒絶している仕草か、それとも彼が何かを思っているかは判らないが前者が正しいだろう。

 何故なら――否、彼が自ら答えた。

 

「何故俺を学園に入れる? 俺は群れるのは嫌いなのは知ってるだろ?」

「そう言うな、一番の適任はお前しかいなかったからな?」

 

 三上はそう言うと、彼は不意に歯軋りすると彼、壱夏の方を見る――その瞳には怨みが籠っている。――何故、お前ではなく、俺が行くんだ? ――。彼は壱夏にそう訴えかけていた。

 普通なら彼が行くべきなのだがある人物が助け舟と言う形で、助言する。

 

「落ち着いて下さい拓陸君、壱夏君を睨んでも何も変わりませんよ?」

 

 玖牧であった。彼は拓陸を優しく論し、壱夏の助け舟として横槍を入れてきた。彼なりの気遣いであるが逆に彼の逆鱗に触れさせてしまう。

 

「何を言ってるんだ玖牧さん? 俺は一人の方が良い――それにこんな場所に呼ばれた方が溜まった物ではない」

「おいおい小僧よ? 牧師さんはお前を思って言ったんだぜ? それに俺達は三上に呼ばれたんだぜ? ――まあ、伍は兎も角――」

 

 今度は肆狼が指摘するが彼は不意に不愉快そうに顔を歪めながら腕を組むと微かに呟いた。――アイツ、参の野郎は来てないみたいだからな? ――。

 刹那、彼、肆狼の言葉に壱夏、拓陸、玖牧の間にピリッとした空気が流れる。と言うよりも肆狼の「参の野郎」と聞いた直後であった。

 参の野郎――それは参流の事であり、ここには居ない伍を含めた彼等が苦手とし、嫌っている者。

 ここには居ないと言う事は、彼は会議に出席する気は毛頭ない、と言う事だろう。

 壱夏は歯軋りし、拓陸は不貞腐れながら舌打ちし、玖牧は辛そうに目を逸らす。彼等なりの嫌悪を示しているが肆狼もまた、その一人である。

 同時にまた、彼の実力は壱夏の次に強く、壱夏がいない場合、彼等が共闘しなければ勝てない相手でもあった。そんな中、三上が軽く手を叩く。

 

「おいおい貴様ら、俺はお前達を会議に呼んだんだ――そんな私情の事で話をしにきた訳ではない」

 

 三上は不機嫌そうに指摘すると周りも三上を見やる――彼等は全員、それを意味する様に不愉快そうな表情を浮かべるが三上は気にもせずに言葉を続ける。

 

「お前らを呼んだのは他でもない――これから、計画の最終段階に入る」

 

 三上の言葉に彼等は表情を険しくする。――いよいよか――。彼等はそう思うのと同時に今までの計画を思い出す。

 最初の第一段階は拓陸のIS学園襲撃、第二段階は三上の全世界への中継と共に軍事基地へのILの一斉配布。第三段階は彼等による街の様子の報告。第四段階は十蔵に拓陸へのIS学園を向かい入れるお願い。

 そして、計画の最終段階は何だろうか? 壱夏達はそう思うのと同時に三上の言葉を待っている。が、三上は何故か鼻で笑うと、不意に歪んだ笑みを浮かべる。

 不愉快そうにも思えるが彼等は三上の計画の最終段階を待っていた。刹那、三上は歪んだ笑みを浮かべながら言う。

 

「計画の最終段階――それは、お前達に自由を与える」

 

 ――はっ? ――。三上の言葉に肆狼の惚けた声がし、壱夏、拓陸、玖牧の三人は瞠目した。が、誰一人、三上の言葉に理解出来なかった。

 自由を与える? それは壱夏達にとって元から与えられている。逆にまた三上の言葉に不信感を露にしている。自分達は直属の部下なのに、何故自由を与えると言ったのだろうか?

 彼、三上の言葉に反論する者がいた。肆狼である。

 

「おいおい何かを言うかと思えばそれだけの理由で俺達を呼んだのか?」

「その言葉の通りだ――お前達は自由だ――好きな所へでもいけ」

「それが気に入らねえんだよ? 何故俺達を自由にするんだって事だよ?」

 

 肆狼の言葉に三上は軽く瞑目すると、直ぐに目を開け、それを話す。

 

「お前達は最初、其々俺の為に動いてくれた――が、それはもう今日で終わり」

 

 三上は理由を話し始める。三上は部下である彼等は自分の為に一生懸命に働いてくれたのと、それをお礼と言う意味でも解放すると。

 無論、ILは与えてあげるが自分達が何をしても良いが代わりに出来るだけ、自分の力に溺れて欲しくない事を願っていた。

 彼は淡々と語るが彼等、壱夏達の視線は良くない――彼に向ける視線は疑惑と不信感が孕んでいる。と言うよりも、彼の慈悲ある優しさに何処か恐怖を感じた。

 彼はこんなに優しい訳ではない――普段の彼はとても無慈悲で計画の為なら自分達を駒の様に使う。そんな彼が自由を与える等不信感しか沸かない。

 壱夏達は三上に不審に思う中、肆狼は嫌そうに髪を掻きながら口を開く。

 

「あんたがそう言うなら、別に良いが……自由はとっくにあるけど、まあ、俺はアンタのお陰で世界は変わったし感謝もしている」

「肆狼さん!? 本気ですか!?」

 

 玖牧は驚くが肆狼は少し寂しそうに笑う。

 

「なあ牧師さんよ? 俺この前言ったろ? 『俺は男共を救う為にILを使って、女尊男卑に染まった女共に一泡吹かせたい』って」

「まさか、あれは本気で!?」

「ああ……でもよ、俺はアンタを信用した訳じゃないぜ三上?」

 

 肆狼は三上を怪訝そうに見た後、壱夏達を見る。

 

「じゃあな皆、俺ちょっとやる事あるから」

 

 肆狼はそう言うと、姿を消した。玖牧は何かを言いかけていたが今度は別の人物が「じゃあ、もう用は無いな?」と言い残し、姿を消す。

 ――拓陸君!? ――。姿を消したのは拓陸であった。玖牧は拓陸が姿を消した事に驚く中、壱夏は三上を睨み続けていた。

 三上は壱夏の視線に気付いているが何処か勝ち誇っている様な笑みを浮かべていた。

 ――チッ――。壱夏は舌打ちすると彼も姿を消した。

 

「壱夏君!? ――っ!」

 

 玖牧は三上を見る。玖牧は三上を見て何かに気付くが何処か怒りを感じていた。

 

「……っ、私もやる事がある為、此所で失礼します……」

 

 玖牧は辛そうに頭を下げると彼も姿を消した。彼等が居なくなった後、そこに残っているのは三上だけであった。彼はテーブルの周りを見る。

 さっきまで彼等が居たが今は虚しいだけの寂しく空気が流れていた。彼はそれでも見続けていたが突然、微かに笑い始める。

 

「くくく……あははは――――っ!!!」

 

 今度は狂う様に笑い始めた――彼が何故笑い出したのかは判らない――否、理由があった。それはさっき話は嘘であったからだ。彼は彼等に自由を与えるつもりは無かった。

 それは、彼等にはもう一仕事をさせるつもりであった。その仕事とは、ある人物を追いつめるのと同時に、追い詰められる事を意味させている。

 勿論、壱夏を除いて他は追いかけられるだろう――それも、自分の居場所を吐かせる為に……。そのせいか彼は彼等が追い詰められる未来を想像していた。

 狂気――そうとしか言いようが無かった。それでも彼の笑い声は空間内に木霊し続けた。




 次回、再会

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