インフィニット・レギオン   作:NO!

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瞬殺

 ――ッ!? ――セシリアはISらしき物を纏っている者を見て瞠目するが、ISらしき物を纏っている者はセシリアの直ぐ近くまで来ると、彼女の首を掴む。

 ――ウグッ!? ――。セシリアは首を掴まれ悲痛の声を上げながら苦痛で顔を歪める。しかし、彼女は手に持ってた大型狙撃銃を落としてしまう。

 ――キャァァァッ!! ――。刹那、アリーナ席に居る者達は一斉に悲鳴を上げながら逃げ惑う。彼が不気味だからではない――彼女達は殺されると思い、逃げ始めたのである。

 

「オルコット!? っぐ!!」

 

 ピットに居た十春達はモニターを観て驚く中、十春は白式を動かし始める。

 

「何をしている十春!?」

 

 千冬が慌てつつ訊ねると、十春は答えた。

 

「決まってんだろ!? アイツを助けにいくんだよ!」

「何を言ってるんだ!? 相手は正体不明な奴なんだぞ!? そんな未完成な状態で戦えるのか!?」

「やってみなきゃ判んねえだろ!?」

「止めろ十春!! 千冬さんはお前を心配して言ってんだぞ!?」

 

 千冬と十春が揉める中、箒が割って入る。が、彼等は食い違っていた。十春はセシリアを助けにいこうとし、千冬と箒は十春を心配し止めようとしていた。

 真耶は彼等を見て慌てていた。どうすれば良いのだろうか? 止める事は出来ない上、今はそれを言ってる状況ではない。早く何とかしなければセシリアは危ない。

 

「み、皆さん!? そんなことを言ってる場合ではありません!! 早くしなければオルコットさんが危ないです!」

「あっ……ぐっ!!」

 

 十春はモニターを観る。セシリアはピンチである事には変わりなかった。

 

 

「っグ……喰らいなさいまし!!」

 

 セシリアは苦痛を感じながらも自分のウィングスラスター達をISらしき物を纏っている者へと向けようとした。刹那、ISらしき物を纏っている者は彼女を地面目掛けて放り投げる。

 セシリアは驚く物の、ISらしき物を纏っている者はセシリア目掛けて足蹴りした。――ガハッ!? ――。刹那、セシリア声を上げるがそのままISらしき物を纏っている者に押される形で地面に直撃した。

 刹那、煙が発生する。アリーナの地上全体を覆うが、煙は消えない。――オルコット!? ――。モニターで観ていた十春は声を上げるがく無理は時間が経つに連れ、徐々に消えて行く。

 煙から何者かの影が見える。しかし、それは宙に浮いており、下にはクレーターが出来ていた。クレーターの中央にはボロボロになった状態で重傷を負ってるが気を失っているセシリアがいた。が、彼女は手も足も出ずに瞬殺されてしまった……。

 

 

 

 

 

 その頃、ここはロシアの首都、モスクワ。今は昼前だが人は居た。そんな中、此所は五階建てアパートにある、壱夏と伍が住んでる部屋。

 住人である壱夏は伍は居るが二人は伍の部屋に居た――何故なら、伍は今、自分の使ってるベッドで横向けになりながら寝息を立てていた。

 そんな彼を壱夏は微笑ましそうに見ており、そして見守る様にも見ていた。彼は伍を昼食だから呼ぼうとしたが彼は寝ていた為、仕方なく起こさない様にしていたが不意に微笑ましそうに見てしまったのだ。

 本当なら起こしたいが寝る子は育つ、と言う意味でも起こさず、見守ってやろうと壱夏は思った。昼食の時間はずらせば良いし、温め直せば問題ない。

 ――伍――。壱夏はそう呟きながら伍の頭を撫でる。伍は気持ち良さそうなのか笑うが壱夏は更に笑みを零す。彼は大事な義理の弟――否、それ以上に大事な弟だ。

 彼はISにより変わった世界を変える為に死に物狂いでILを扱い、三上の右腕としても、三上の次に強い者としても認められた。肆狼、玖牧、参流、拓陸とも出逢ったがその中で伍は特別だった。

 言い方は悪いがスラム街での出逢いは最悪な形に近かったが今は苦い思い出としても片付けるしかない。伍から見れば辛いが仕方ない事だろう。

 彼が子供であるが故にスラム街で捨てられた。両親の顔は知らない物の彼は辛い思いをしてきた。だからこそ今は、消す事は出来ない物の良い思い出を沢山作ってあげよう。

 壱夏はそう思いながら伍の頭を撫で続けていると、不意にポケットに違和感を覚え、ポケットに手を入れると、ある物を取り出す――スマートフォンであった。

 違和感はスマートフォンの振動音であった。が、壱夏はスマートフォンにある文字を見て顔を引き攣らす。そこには、ある文字が映し出されていた。

 ――三上――。そう二文字が映し出されており、壱夏は立ち上がると伍の部屋を出る為に歩きながら画面をタップするとスマートフォンを耳に当てる。

 

「もしもし、どうかしましたか?」

『壱夏……拓陸が学園を攻めた――まあ、少しだけだがな?』

 

 三上の声が彼の、壱夏の耳に響く。三上の言葉に壱夏は少し黙った後、「そうですか」と答えた。彼は何とも感じなかった――あそこには自分の姉と弟が居るが彼は前者の者に対して憎悪しか沸かなかった。

 それ以上にあそこは、IS学園は関係ないのと、皆無に等しい。あそこが火の海になろうとも、多数の死者を出そうとも何の関係もない。

 壱夏はそう思いつつも、三上に訊ねる。

 

「それよりも本題は何ですか? まさか、それだけを言う為に教えてくれたんですか?」

『そうむずかるな――本題は別にある』

 

 三上の言葉に壱夏は眉間に皺を寄せる。

 

『壱夏――これよりお前には計画の第二部を与える――無論、肆狼、拓陸、玖牧、参流にも伝えるがお前は私の右腕――故に真っ先に報告したかったからな」』

「そうですか――有り難きお言葉、勿体なくも感謝します」

『フッ……そう固くなるな。それよりも計画の第二部だが、お前は伍と共にロシアを拠点にし続けろ」

「と言いますと? 計画に支障が発生したのですか?」

『否、ILの存在は世界に伝えるにはまだまだ宣伝が要る――故に女尊男卑に浸った世界に革命を起こすのは難しい――お前ならどうする?』

 

 三上は壱夏に訊ねる――彼は判りきっているが敢えて壱夏に訊ねたのである。壱夏なら、彼ならどうするかを? 彼は気に入ってるだけでなく、参謀でもある。

 この危機的状況をどう打開するのかを。三上の言葉に壱夏は俯く――彼は考える。

 

「……方法は、一つしか無いか」

 

 方法は一つしか無い――が、あれをすれば世界中の男達は暴動を起こす。勿論、三上から見れば範囲内だろうが壱夏は危惧してはいない――否、危惧していた。

 

「三上さん……お願いがあります」

 

 壱夏の言葉に三上は『何だ?』と聞き返すと、壱夏は顔を上げる――表情は険しかった。何かを決意し、それを三上に言おうとしていた。

 彼の願いは一つしか無い――そう、彼はそれを三上に言う。

 

「俺が何とかしますが――代わりとして、俺と伍を作戦から外してくれ」

 

 壱夏の言葉に三上は「へへっ」と笑う。彼はどんな表情をしているのかは判らない――判るとすれば、計画の一部に穴が開く事を危険視している――訳ではないだろう。

 彼は歪んだ笑みを浮かべているだろう――理由は彼とはに年間も行動を共にして来た。彼の表情は嫌と言う程、見て来た。歪んだ笑みを浮かべる時は好都合の時だけ。

 自分がそれを言う事は彼は察知したのだろうか? 壱夏はそう思いながらも言葉を続ける。

 

「俺がこれからやろうと――否、アンタが野郎としている事は俺達は知ってる――だが、それは暴動を起こし、危険を意味する……アンタはそれを知りながらも俺に訊ねて来た――俺なら

伍を巻き込まない意味でも計画から降りようとしている事に気付いている――だろ?」

「――ご名答、お前の言う通り、俺はお前の言いたい事を知っていた――だからこそ、お前に訊ねた」

「まあ良い――アンタはアンタなりで計画を進めろ――だがこれだけは言っとく」 

 

 刹那、壱夏は目つきを鋭くした。

 

「伍には手を出すな――手を出せばアンタを殺す――俺は暴動が起きるであろう未来を知りながらも俺は伍を守る……!」

 

 壱夏は三上に言い切った。それは伍を思い、三上に対しての裏切り行為とも捉える事が出来る発言。しかし、彼は裏切るつもりは無いが三上に対しては恩人でありながら危険人物としても認識している。

 伍を思ってなのか、否、それが彼自身の『愛憎』と言うILを与えられただけでなく、愛憎と言う名を与えられたのも頷ける。

 愛は伍を守り、愛情を注いでいるが故――憎は元家族を憎むが故――何方も似ている様にも思えるが正反対とも摂れる様な一文字。

 しかし、今は壱夏の言葉に三上は笑う。

 

『ハハハ! 最高だ……! 良いぜ! お前らは計画から外す! 何をしょうがお前らの自由だ! アハハーーーーッ!!』

 

 三上は笑う。狂気的な笑い声にも思える。が、それを訊いた壱夏は瞠目するが直ぐに恨めしそうに俯くと強く歯軋りした。

 スマートフォンから三上の笑い声が木霊するが彼は何も言い返さなかった。




 次回、中継

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