インフィニット・レギオン   作:NO!

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練習

 IS学園が入学式と言う日を済ませてから丸一日が過ぎた頃、今の時間帯は放課後であるのか夕日が沈みかけており、橙色の空にその上には黒掛かった紺色の空が見え始める。

 学園は橙色の空の影響か学園全体が橙路に染まっていた。学園自体は勉学の時間は終わった物の、生徒達は翌日に備える為に寮へと戻る者、一週間の間だけは帰宅する事が出来る為に帰宅する者や、部活動に励む為に頑張る者達が見受けられる。

 ――タアッ!! ――。そんな中、此所は学園にある道場。そこは柔道でもなく空手でもない――剣道専用の道場であった。そこには二人の、剣道着を纏い、剣道専用の防具を纏っている者達がいた。

 一人は手に持ってる竹刀で相手の頭を叩く。相手は頭を叩かれたが頭にも防具の一つでもある面を被っている為、問題は無いが微かに痛みは走る。

 彼は尻餅をつく物の竹刀を落としてしまう――そして竹刀で彼の頭を叩いた者は竹刀を彼に向ける。

 

「だらしが無いぞ十春!? ずっと剣道をしてないみたいだな!?」

「そう言うなって……僕は久しぶりとも言えるから仕方ないだろ、箒」

 

 竹刀を向けている者は尻餅をついている者に対して呆れながら怒る。そう――尻餅をついてる者は十春であり、竹刀を向けているのは箒であった。

 二人は二人っきりで、この道場で練習をしていた――部活動とかの関係ではない、久しぶりに二人っきりで練習していたと言い替えれば良いだろう。

 

「全く、私が居なくってから練習を怠っていたのか?」

「ち、違うって」

 

 十春はそう言いながら面を取る――彼の素顔が晒される。が、頭には布が巻かれており、汗を流している。一方、箒は十春の前で屈むと竹刀を隣に置き、面を取る。

 彼女の素顔も晒されるがあの腰まで伸びる長い髪までもが晒される――布で巻く様に隠していたにも関わらず晒される。同時に汗を流しているが凛々しい――大和撫子を沸騰させるだけであって流石としか言えない。

 しかし、彼女は怒っていた――練習を怠っていた十春に対してだ。

 

「十春――お前は剣道を最後にしたのは何時だ?」

「う〜〜ん、最近は受験とかで時間が無かったからな〜〜」

「……そうか、なら仕方ない――だがこれでは近い内にやるクラス代表戦に負けるぞ?」

 

 箒は呆れながら言った後、溜め息を吐く。十春は苦笑いする物の理由があった。それは十春が入学式の日に、セシリアとクラス代表を賭けて戦う事になったのである。

 その為、十春はそれまでの間、ISの知識を身につけ、頭に叩き込まれなければならなかったが不幸な事――否、自業自得と言う意味でもISの知識が詰め込まれた教科書を電話帳と間違えて捨ててしまい、千冬に出席簿で頭を叩かれ、今は箒にISの練習と称して剣道の練習をしていた――が。

 

「それよりも箒、剣道を練習してもISの戦い方が身に付くの?」

「当たり前だろ? 相手にはダ〜ン! とズガン! と叩けば良い」

 

 箒の擬音とも言える発言に十春は「え〜〜っ」と言葉を失いそうになった。そんなのではISの戦い方を身につける事は出来ない――こんな事なら、千冬の現役時代での戦い方や、他のIS操縦者達の戦いを記録したDVD等を借りて、それを観て、盗む意味でも身につければ良いのと実戦と言う意味でもISを借りて練習すれば良いと、十春は思った。

 それだけではない――自分は箒と練習しているだけでなく、日常生活でも箒と一緒なのだ。理由は簡単に述べよう――彼等はルームメイトなのだ。

 政府の差し金か、または束の差し金か、学園側の単なるミスかは判らない――判るとすれば、全てに当てはまるのかも知れない。

 

「それにしても箒、剣道の腕上げたね? 隙がないよ」

「何を言ってる――私は今日この日まで鍛錬を怠った日は無いからな」

「そうなの? 風邪引いたりした日とかもしたの?」

「……それはない」

 

 箒は少し怒っていた――彼は何故失礼なことを言うのだろうか? 風邪引いた日に鍛錬等、自殺行為に等しい。ましてやその発言は失言に等しく、彼は女心を判っていないのだろうか?

 箒はそう思ったが彼は前日、気付いていないのだろうか? 彼はシャワー上がりの自分の裸を、否、タオルを巻いていたから問題は無いとは言い切れないがその事には疑問も無いのだろうか?

 箒は十春の鈍感さに気付きながらも、当人は道場を見渡す。

 

「それにしても篠ノ之道場とは違うけど、此所は設備がいいよね〜〜」

「それはそうだ――此所はIS学園、設備がいいのは、何処の名門校にも負けないだろうな?」

 

 箒はそう言いながら防具を外す。十春も防具を外す物の不意に言う。

 

「そう言っても懐かしいよね――良く三人で――あっ……」

 

 刹那、十春は何かに気付き、そこから先は言えなくなり哀しそうに俯く。一方の箒も十春の言葉で何かに気付き、不意に哀しそうに俯くと、呟いた。

 

「あいつも、一夏もいたらもっと楽しかったのかも知れないな……」

 

 箒の言葉に十春は無言で頷く。一夏――十春の兄であり、箒のもう一人の幼馴染み。既に死亡しているが三人で何度も鍛錬した。時にはいざこざがあり、時には誰が一番強いかを競った。

 しかし、それはもう二度と出来ない――三人は二人になってしまった――一人欠けてしまった。出来る事はもう、二度とないだろう。十春と箒は一夏の事を思い出す中、十春は防具を身につける。

 

「箒、悪いけど今暫く練習に付き合って欲しい」

 

 十春の言葉に箒は「えっ?」と言いながら顔を上げる――十春は怒りと哀しみに満ちた表情をしていた。哀しみは一夏を喪った事、怒りは十春自身への怒りとも思える。

 そんな彼を観て箒は何も言えず哀しそうに目を逸らすと「うむ」と言いながら頷き、防具を身に着け始めた。再びと言えば良いだろうが二人から見れば、そう思えざるを得なかった。

 一夏の分まで生きよう――そう再び決意すると共に彼の分まで練習しょう――彼に良い報告をする意味でもそう考えていた。彼等は再び防具を付けると、竹刀を持って立ち上がり、構える。

 目的はセシリアに勝利する為だ。十春は一夏に勝利した事を報告する為、箒は十春の勝利を願って協力する為に――二人はそれぞれ違う思いをしているがセシリアを倒すと言う意味でも同じ意味でも共通している。

 刹那、二人は互いの相手に対して竹刀を振り上げ、攻めた――そして、道場内に竹刀の叩き合う音が何度も響き渡った……。

 

 

 

 その頃、ロシアの首都、モスクワ――今の時間帯は昼だが、此所はとあるトレーニングジムにある地下室。そこはとても広く、辺り一面が穿く銀色で染まっている。

 しかし、そこには一人の青年がいた――壱夏であった。彼は私服であるが近くには伍は居ない――伍は肆狼に頼んで預かってもらっている。

 彼がここに居る理由は一つ――彼は此所でILの練習をしょうとしていた。此所は外部とは遮断されており、漏れる心配は無い――。そして衛星からも見える心配も無い。

 安全かつ、安心して練習に励む事が出来る。壱夏はそう思うのと同時に早く練習を終わらせて伍の元へと戻りたい気持ちを抑えつつ、眉間に皺を寄せると左腕を高らかに上げた。

 ――愛憎……! ――。彼は微かに呟く。刹那、彼の身体に何かか展開される。彼の身体には白い機体が彼の身体を纏う――が、途中、黒い霧が現れ、彼を包む。

 そして、壱夏は霧を腕で払拭すると、彼は機体を纏っていた――それは白い機体であった――が、それは顔を覗かせる程度であり、今は黒く禍々しい機体と化していた。

 それは憎しみを表している様にも思えたが壱夏自身の憎しみをも意味させている。そんな機体を纏った壱夏は機体を気にもせずに右腕を横に伸ばす。

 刹那、右腕から何かが展開される。黒く禍々しい、骨で出来た様な刀であった。壱夏はそれを掴むと、軽く振り、そして練習に励んだ。

 全ては三上の為、女尊男卑によって苦労している男達を救う為に、彼は女性達を倒す為に、そして憎き姉を倒す為にも練習を始めた。

 彼は専用機であるIL、『愛憎』と共に練習を始めた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして数日後、IS学園はクラス代表戦の日を迎えた――。

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回、乱入

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