日本国本土・福岡県博多港。
大陸方面から一番近い日本本土の港である博多港にS.O.N.G.と自衛隊の揚陸艦やイージス艦は停泊していた。
弦十郎「大敗…だな…」
腕を組んで発令室にいた弦十郎は言う。
先の日本国大陸州戦での敗北で、日本本土が帝国軍の本格的な爆撃と上陸の危機に晒されている。
加えて、インドなどの東シナ海のも帝国軍は地上部隊を派遣しオーストラリア方面の帝国軍と挟撃できる状態にあるのだ。
日本の現状ではかなり厳しいが、S.O.N.G.自体もさらに厳しい状態にあった。
それは初代怪獣王 ゴジラことガウの忘れ形見とも言える妻のエルザと娘のエウルが帝国軍に攫われてしまったのだ。
加えて、2人を助けようとした響の父親である洸が侵入した帝国兵に撃たれて意識不明の重体であった。
この一連の出来事は装者、特に一番関わり深い響とリルに衝撃を走らせた。
響の心情を考えて弦十郎は響とリルを洸が入院している病院へ向かわせていた。
他は待機として休ませていた。
ユウコ「すみません、私の機体がもう少し早く調整できていれば…」
まだスペルグフW型が自身用に調整が済んでいなくて参戦できなかったことを悔やみ、ユウコは謝罪する。
弦十郎「いや、君のせいではない。帝国軍の指揮官の技量を我々が見誤った結果だ」
日本国大陸州方面軍兼帝国陸軍総司令官であるザウラーの技量を見誤っていたとして、弦十郎は言う。
藤尭「それで、これからどうするんですか?」
友里「大陸方面を奪われて本土上陸と爆撃の危険に晒されてるのよ、防衛に回るしかないんじゃないかしら?」
日本は大陸州を失って帝国軍が本格的な戦略爆撃、本土上陸作戦などを敢行できる状態に晒されていた。
弦十郎「今、閣僚会議を開いて今後のことを検討してるだろうが…お前たちもともかく今は休息を取るのを最優先にせねばなるまい」
まだ戦争が終わっておらず、まだまだ続くとして弦十郎は3人に言う。
宇宙大怪獣帝国軍銀河方面地球攻略大本営冥王星基地・プラート。
このプラート基地に1隻の軍艦が着陸しようとしていた。
次元潜航艦 IEX-004であった。
エルザ「ん…ここは…」
目が覚めたエルザはベッドに寝かされ、見慣れない天井が視界に入った。
エウル「あう~」
声が聞こえて見るとエウルが座ってエルザを見ていた。
エルザ「エウル!」
最愛の娘の姿を見て、エルザは起き上がって抱き締めた。
抱き締められたエウルは嬉しそうに"きゃっきゃっ"していた。
エルザ「よかった、無事で…」
?「目が覚めたようですね」
母子ともに無事だったと分かり、安心していると聞きなれぬ女性の声が聞こえてきた。
エルザ「貴女は…」
声の方を見ると薄ピンク色の長髪で、野戦服を着た女性が立っていた。
サリア「申し遅れました。私は帝国宇宙軍特殊陸戦軍所属、サリア・ラミエーア軍曹です。本日付でお2人の警護を任せられました」
薄ピンク色の長髪で、野戦服を着た女性―『サリア・ラミエーア』は名乗る。
サリアはエルザとエウルを浚い、エルザに薬を染み込ませた布を嗅がせた張本人である。
エルザ「私たちをどうする気でありますか?」
エウルを守るように抱き締めながらエルザは聞く。
サリア「殿下にお会いしていただきます」
エルザ「で、殿下?」
"殿下"と聞いてエルザは嫌な予感がして聞き返した。
サリア「我々宇宙大怪獣帝国皇帝 スペース殿下です」
エルザ「!?」
やはりと思いながらもエルザは驚きを隠せなかった。
サリア「間もなく本艦は着陸します。その時は私たちと共に降りてもらいます」
驚いているエルザにサリアはそう言って降りる用意を促した。
数十分後、IEX-004はプラート宇宙軍事港に着地した。
エルザ「!」
着地したIEX-004のハッチが開き、艦長のクラーケンを先頭に副官ハイニや艦の各セクションの人間たちが降り、最後にエルザと抱かれているエウル、サリアが降りた。
するとIEX-004のハッチに道を作るように帝国軍兵士たちが敬礼し、整列していた。
兵士たちが作った道をエルザはエウルを抱えて歩き始めた。
ヴィズ「お待ちしておりました皇后さま、姫さま。私は宇宙大怪獣帝国副総統を仰せつかっております、ヴィズと申します」
続いた道の端にある基地入口にて、『帝国副総統』である『ヴィズ』が出迎えた。
ヴィズ「奥で殿下がお待ちです」
出迎えたヴィズはエルザを基地内へ招き入れてスペースの待っている部屋まで案内する。
十数分歩いて、スペースのいるであろう部屋に着くとヴィズは部屋のドアをノックした。
部屋の中から「入れ」と聞こえてきた。
それを聞いたヴィズはドアを開けてエルザに入るように促した。
促されたエルザは警戒しながら入るとヴィズは部屋に入らず、ドアを閉めた。
スペース「分かっている。七色星団方面軍の一部をそっちに向かわせる。奴らが領域を侵犯するなら容赦するな、あそこは我々の領地だと知らしめろ」
エルザが入るとデスクに備え付けられた通信機にどこかと通信しているスペースがいた。
スペース「待たせて申し訳なかった。ささ、そこへお座りください」
通信を終わらせて、スペースはエルザの方を見て謝罪し、来客用のソファーに座るように言う。
スペース「お初にお目にかかります、母上」
来客用のソファーに座ったエルザをデスクから立ち上がり、反対のソファーに座ったスペースは母と呼ぶ。
エルザ「母上って…私はお前を生んだ覚えはないであります!」
最愛の人やその家族や仲間たちが必死になって守っている星を攻め落とそうとしている人物に母と呼ばれたくないとエルザは言う。
スペース「でしょうな。ですが、私は貴女の夫であり、現地球怪獣王 リルの父、ガウの血を引く者」
エルザ「それはお前の言っている戯言…」
エルザにとって最愛の人であるガウの息子だと名乗るスペースにエルザは耳を貸さなかったが、スペースは気にする素振りなど見せずに続けた。
スペース「戯言などではない。私は正真正銘、初代地球怪獣王 ゴジラ、ガウの遺伝子を引き継いでいる」
エルザ「それはどういうことでありますか?」
その言葉にエルザは少し驚きを見せて聞く。
スペース「貴女の腕の中で気持ちよさそうに眠っている妹と似たようなものだ」
地球に宣戦布告した時とは打って変わってガウに似た優しい眼差しをエルザの腕の中でスヤスヤと眠っているエウルに向けながら言う。
スペース「私は宇宙空間にて千切れた父上の体の一部から生まれた存在…いわば直接の血族だ」
視線を自身の手のひらに移しながら語りだした。
スペース「かつて地球に飛来した宇宙怪獣 バガン、そいつを倒すために地球の守護神は父上をこの
手のひらを握り、スペースは真剣になりながら言う。
エルザ「それじゃあ、貴方は本当にガウの…」
そこまで話を聞いてエルザはスペースが本当にガウの血を引く子であり、ガウ本人であると確信してしまいそうなるが、絶対にあり得ないと考えて確信を振り払う。
スペース「分身体、息子、どちらを取っても構わない。だが、これだけは事実としてとらえていてほしい。私は正真正銘、ガウの血を引き継ぐ一族の者であると言うことを……」
そんなエルザの心情を感じたのか、念を押すようにスペースは不適に笑いながら言うのだった。