戦姫絶唱シンフォギア PROJECT G   作:ダラケー

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惑星間弾道弾を月の手前で破壊した響きたち。

だが、直径1000Mにもなる超巨大質量兵器は帝国軍が誇る二大猛将の1人、航宙艦隊総司令官『ガッツ星人・ヴァロルド』の作戦『オペレーション・ケルベロス』(以後、ケルベロス作戦)の囮に過ぎなかった。

ケルベロス発動後、帝国軍第四・第五・第七大艦隊総勢3000万隻の襲来で、イギリス・ロンドン、ロシア・モスクワ、オーストラリア・キャンベラの3ヵ国の首都が攻撃を受けてしまう。


第708話 リュグローの策

帝国軍の攻勢作戦『ケルベロス作戦』の標的国オーストラリア・首都キャンベラの市内ではオーストラリア陸軍によるゲリラ戦が行われていた。

 

だが、帝国軍の三連装砲搭載戦車であるSRV-5と人型汎用強襲兵器『SBF-08J』こと『スペルグフJ』の前に目立った成果は挙げられないでいた。

 

濠司令官「くっ、このままではこの首都キャンベラが堕とされてしまう…」

 

オーストラリア軍防衛司令部にて司令官はそう言う。

 

帝国軍の攻撃の前にオーストラリア軍はジワジワと追い詰められていた。

 

防衛線を共に張っていたオーストラリア方面の地球怪獣軍団は何とか首都前で敵の右翼と中央を抑えているが、中央を突破されてしまい瓦解するのも時間の問題だった。

 

濠軍兵士「司令!帝国軍の攻撃機が避難民を乗せた船の護衛をしていた艦隊に攻撃を開始しました!!」

 

司令部に1人の兵士が入ってきて報告する。

 

濠司令官「なんだと!?」

 

報告を聞いて司令官は驚愕していた。

 

キャンベラは現在戦場と化しており、帝国軍から逃れるために避難民が太平洋へ避難していたのだ。

 

濠司令官「空軍はどうした!」

 

濠軍兵士「すでに防空隊がスクランブルしましたが、帝国軍の戦闘機に苦戦しているとのことです!」

 

濠司令官「くそ!!」

 

制空権も最早敵の手に落ちかけていることを察して机を殴る。

 

濠軍兵士B「司令!緊急事態です!」

 

濠司令官「今度は何だ!!」

 

別の兵士が新たな報告をしに来たのを見て司令官は半ば苛立ちながら叫ぶ。

 

濠軍兵士B「救援が着ました!」

 

濠司令官「救援?どこからだ?」

 

兵士の報告を聞いて司令官は一気に冷静になり聞き返した。

 

濠軍兵士B「レジスタンスです!レジスタンスの艦隊が救援に駆けつけてくれました!!」

 

濠司令官「なに!?」

 

報告の真偽を確かめようと司令官は兵士を押し退けて外へ出る。

 

外にはオーストラリアの空を蹂躙していたハズの帝国軍艦隊が反対側から放たれたビームに撃ち抜かれ爆沈していた。

 

帝国軍を攻撃しているビームを見ると黄土色をした宇宙船が艦隊を組んでいた。

 

濠司令官「よし、全軍に通達!我々の宇宙(そら)から来た友人が助けに来てくれた!一気に押し返せとな!!」

 

現れたレジスタンス艦隊を見て司令官は士気を取り戻せると判断して、そう指示を出した。

 

濠軍兵士「ハッ!!」

 

司令官の指示を聞いて兵士は敬礼して通信を開始する。

 

 

 

リュグロー「無理に攻撃するな!敵をこの地域から蹴落とすだけに専しろ!」

 

レジスタンス艦隊旗艦『宇宙戦艦 ムサシ』の艦橋にてリュグローは艦隊に指示する。

 

レジスタンス艦隊はムサシを除けば、オーストラリア本土には数隻の『宇宙重巡洋艦 ファルケ級』と『宇宙標準戦艦 スペランツァ級』のみで機動戦力は皆無である。

 

数少ない機動戦力である『多層式宇宙空母 クラーニヒ級』と『宇宙軽巡洋艦 アードラー級』、『駆逐艦 シュペルリング級』は民間人を乗せた船の護衛をしている濠海軍救援に向かわせているため、機動戦に持ち込まれれば勝ち目は無かったからだ。

 

リュグロー(あとは、アイツらがうまくやってくれればいいんだがな…)

 

帝国軍の動きを見ながらリュグローはそう思っていた。

 

 

 

イギリスはロンドンが陥落して、英国王室を避難させ、臨時政府は首都を一時インヴァネスへ移し、全軍に各要所の徹底死守に徹しさせていた。

 

しかし帝国軍の攻撃は苛烈で、南側は帝国軍に占領されつつあり、さらに反対側のキングストン・アポンハルにも帝国軍は空母を中心とした機動部隊を投入、インヴァネスにも爆装した攻撃機が飛来していた。

 

護衛「閣下、すぐに防空壕へ避難しましょう」

 

インヴァネスの町に響き渡る空襲警報を聞いて護衛の兵士が首相に避難を促す。

 

首相「いや、国を支えるトップが国民を見殺しにして先に避難など出来ん」

 

葉巻を加えて落ち着きながら首相は護衛に言う。

 

首相「しかし、この地にまで帝国軍の攻撃が及ぶとは…我が軍の防空網はどうなっている?」

 

護衛「帝国軍の艦載機とSBFによる攻撃で我が英国海軍と空軍は壊滅状態。まだ制空権を奪われてはおりませんが、時間の問題かと…」

 

首相に聞かれて護衛は海軍と空軍は壊滅状態であると報告する。

 

首相「むぅ、仕方あるまい。国連に援軍を送ってくれるように依頼しよう」

 

咥えた葉巻に火を付けて首相は言う。

 

 

 

首相「なんですって!?」

 

しかし、英国首相の願いは聞き入れられなかった。

 

理由は既にカスピ海・黒海と北米大陸穀倉地帯を占領していた帝国軍が戦闘準備に入っており、国連は各国に迎撃態勢を取る様に指示しており、とてもイギリスに救援を送るだけの余力はなかった。

 

首相「こうなれば、今こそジョンブル魂の見せ所ということか…」

 

受話器を戻して首相は覚悟を決めようとしていた。

 

護衛「閣下!」

 

そんな首相に護衛の兵士が駆け足で来た。

 

首相「どうした、帝国軍が防衛網を突破したか?」

 

駆け足で来た兵士に首相は少し冗談交じりに聞く。

 

護衛「いいえ、救援です!」

 

首相「救援?残念ながら先ほど断られ…」

 

からかわれているのかと思い、首相は言っている時だった、兵士が遮りながら言った。

 

護衛「それが来たんです!国連直轄のタスクフォース・S.O.N.G.が!」

 

首相「なんだと!?」

 

兵士の言葉を聞いた時、爆発音が外から聞こえて窓を覗くと爆装した帝国軍の攻撃機 シュラハトをロケットに乗った鎧を身に纏った少女たちが攻撃して次々に撃墜していた。

 

首相「おぉ!ワルキューレの到着だ!!」

 

少女たち―響を見て首相は葉巻を落としながらも叫んだ。

 

 

 

ロシア首都モスクワは帝国軍の完全支配下に置かれていた。

 

零下50度という極寒に耐えられず、ロシア軍は既に撤退し、もぬけの殻となったモスクワを帝国軍は悠々と占領した。

 

帝国軍兵士A「はははは!我が帝国軍は連戦連勝だな!」

 

帝国軍兵士B「全くだ!地球人どもも情けないなぁ!」

 

モスクワのとある居酒屋で帝国軍兵士2人がウォッカを飲んで騒いでいた。

 

ほぼ無敗で地球軍を圧倒している状態で戦勝ムードになっていた。

 

すると獣のような鳴き声が聞こえて来た。

 

帝国軍兵士A「なんだ?」

 

帝国軍兵士B「また宇宙怪獣どもが、喧嘩でも始めて暴れてんだろ」

 

獣の鳴き声を聞いて兵士たちはウォッカを飲んでいたその時だ。

 

?「ゴガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

 

明らかに宇宙怪獣ではない鳴き声と蒼白い閃光が瞬いたかと思いきや爆発音と爆風に襲われた。

 

帝国軍兵士A「今のは!?」

 

慌てて状況を確認しようと外へ出る。

 

外に出ると破壊されたスペルグフJとSRV-5の地上兵器が黒こげになった兵士の死体と共に転がっていた。

 

帝国軍兵士B「あ、あれはぁ!?」

 

一緒に飲んでいた兵士が叫んで見るとそこに1体の黒い怪獣がいた。

 

ミレニアムゴジラ「ゴガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

 

雄叫びを上げる黒い怪獣―地球怪獣の王 ミレニアムゴジラ率いる地球怪獣軍団総勢3000頭がロシア首都ロンドン奪還に現れたのだ。

 

これがリュグローの立てた作戦である。

 

彼はヴァロルドが3000万隻三個大艦隊を差し向けただけでなく、カスピ海・黒海、北米大陸穀倉地帯を占領した軍が戦闘準備に入ることを予期していた。

 

だが、カスピ海・黒海、北米大陸穀倉地帯を占領した軍は国連を引き付ける罠であり、補給や援軍を送れないようにしていたのだ。

 

ならば、逆手に取ることにしたのだ。

 

3ヶ国を攻撃している帝国軍は援軍は来ないことを前提にしているハズであり、そこへ僅かながら援軍が現れれば混乱するである。

 

勝ちはしないが帝国軍も新たな援軍が現れると警戒して侵攻を遅らせることができる。

 

その隙に各国の軍を立て直させ、民間人の避難を行うことが目的である。

 

案の定、帝国軍は僅かながらの援軍来援に混乱していた。

 

リュグロー(さあ、ここからどう動く、帝国切っての二大猛将の一角 ヴァロルド!!)

 

混乱する帝国軍を見てリュグローはそう思っていたのだった。


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