しかし、帝国軍はすでに次の一手を用意しており、惑星間弾道弾破壊とグレイの艦隊全滅の報と同時にその作戦は開始の号令が発せられた。
作戦名は『オペレーション・ケルベロス』。
弦十郎「みんな、よく頑張ってくれた!これ帝国軍もロングレンジによる攻撃はしばらくしてこないだろう」
作戦終了後、発令室に集まった響たち(リルは怪獣島へ、モスラとバトラはヒオとマナと共にインファント島へ帰還している)に弦十郎は労いを言う。
クリス「ロングレンジは無くなっても、また直接艦隊を送り込んでくるんじゃねーのか?」
弦十郎の言葉に引っ掛かってクリスは疑問ぶつける。
弦十郎「それについては心配ない」
マリア「何か確証でもあるのかしら?」
自信満々に言う弦十郎にマリアが聞いた。
弦十郎「リュグロー氏曰く、帝国軍は地球人と地球怪獣のみを相手にした作戦しか考えてはいない。それは予めいくつかの工作部隊を送り込み、情報を収集していた為だ。それで帝国軍にこちらの戦力が筒抜けだった。だが、リュグロー氏率いるレジスタンスの介入で帝国軍はその対策を練り直さなくてはならなくっている」
響「えっとつまりどういうことですか?」
弦十郎の言っていることが分からない響。
翼「つまりは事前に策を準備していたが、レジスタンスという予想もしなかった敵が新たに現れた為にその策を練り直さなくてはならず、しばらくは動くことはないということですか?」
弦十郎「まあ、そうなる。帝国が動くを止めている間にこちらも戦力を整えた上で、占領されたカスピ海・黒海と北米大陸の穀倉地帯奪還を図る。それまで皆はゆっくり体を休めてくれ」
翼の解釈を肯定していると警報音が突如として発令室に鳴り響いた。
弦十郎「何があった!」
藤尭「司令!中井防衛大臣のから第一級緊急通信です!」
原因を聞いた弦十郎に藤尭が自称大和事件で自衛隊の指揮を執った『中井』から通信が来たことを伝える。
弦十郎「繋げ!」
中井『風鳴司令!緊急事態です!!』
通信が繋がると焦った様子の中井がメインスクリーンに映るなりそう言う。
弦十郎「何があったのですか?」
中井『先ほど、帝国軍約3000万隻が突如月面の裏から出現!地球へ侵入し、三個艦隊に別れ、オーストラリア・ロシア、イギリスの首都に同時攻撃を開始したと連絡が!!』
弦十郎「何ですって!?」
中井の報告に弦十郎だけでなく、響たちも驚いていた。
ロシア首都・モスクワでは白色で塗装された艦が多く配備されている艦隊-帝国軍第七大艦隊による攻撃は行われていた。
同時にモスクワ一帯は現在ホワイトアウトとも言える猛吹雪と零下50度という極寒とい異常寒波が襲っていた。
この異常寒波の中心部には1体の宇宙怪獣がいた。
マーゴドン「ブブァオォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
白い体毛に覆われたマンモスのような外見をしており、2本の牙を持った宇宙怪獣は宇宙大怪獣帝国六王第六位『冷凍怪獣 マーゴドン』が全身から発する冷凍ガスである『スティファフロワー』を放って周辺を極寒の零下50度にしているのだ。
迎撃に出たロシア軍だが、異常寒波により装備や人は凍り付き、寒波外の基地から発射されたミサイルもマーゴドンの冷凍地獄の前には動力や起爆装置などのシステムはダウンして、不発のままモスクワの町に落下してしまう。
対する帝国軍はロシア以上の極寒対策が施されているのか、全く不調や故障を起こすことはなく、一方的にロシア軍を攻撃した。
極寒はロシアの歴史で、ナポレオンやナチスドイツの侵攻から守ってくれたが、今回は極寒の寒さ自体が祖国を守ろうとするロシア軍や逃げる国民を襲っていた。
いや、ロシア軍人や国民だけではなかった。
ラゴラス「がっ…ぐっ…」
地球怪獣軍団ロシア方面軍指揮官である『冷凍怪獣 ラゴラス』ですらマーゴドンの冷凍攻撃に耐えきれず体が氷始めていた。
他の地球怪獣たちも寒さに耐えきれず凍え死ぬ者が現れ始めていた。
だが、帝国軍所属の宇宙怪獣たちは全く平気なのか一方的に地球怪獣たちを倒していく。
ラゴラス「くっ、このままでは全滅か…全軍退けー!!」
一方的に殺られる状況で、ラゴラスはそれが最善と判断して撤退を指示した。
帝国兵士「グロウ艦長!マーゴドン大将の冷凍攻撃で敵軍瓦解!」
グロウ「好機!全軍突撃!一気にこの国の首都を奪い取れ!!」
マーゴドンのスティファフロワーにより瓦解したロシア軍と地球怪獣軍団に突撃を指示し、襲い掛かった。
オーストラリア首都・キャンベラも帝国軍の攻撃に晒されていた。
攻撃しているのは灰色に塗装された艦が配備されている第五大艦隊による攻撃が行われていた。
地球怪獣軍団もオーストラリア軍と共同戦線を張り、何とか防衛線を構築しているが帝国軍の圧倒的物量の前にその戦線は崩壊寸前であった。
パンドラ「ガルガオォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
地球怪獣軍団オーストラリア方面軍指揮官『カンガルー怪獣 パンドラ』がガルシア級揚陸艦とガレアツァ級大型揚陸艦の両宇宙揚陸艦から出てきたスペルグフJとSRV-5、宇宙怪獣たち相手に手勢を率いて交戦していた。
だが、聞いていた情報よりも多い戦力をいきなり投入してきた帝国軍への恐怖の為に部下の怪獣たちは浮足立ち、思うように反撃の手が打てずにいた。
パンドラ(くそ!数が多すぎるッ!!)
スペルグフJを破壊してパンドラは続々と降下して、着陸したガルシア級とガレアツァ級から新たに降りてくるスペルグフJ、SRV-5、宇宙怪獣たちを見て毒づく。
?「ほう、なかなかいい気配だなぁ…」
パンドラ「!?」
声をかけられ振り向くと無惨な肉塊に変えられた自身の配下の怪獣の死体を引き摺る1体の宇宙怪獣がいた。
ガモス「他の連中じゃあ話にならなかったんでな。少しは楽しませてくれるかな?」
そう言うは宇宙大怪獣帝国六王の一角第四位『殺戮怪獣 ガモス』はであった。
パンドラ「貴様一体…」
ガモス「俺か?俺は宇宙大怪獣帝国六王の一人!殺戮怪獣 ガモス様だぁ!!」
堂々と名乗りを上げるガモス。
パンドラ「六王!?帝国最強と言われる六体の宇宙怪獣の1体か!」
名乗りを聞いて、リュグローたちから聞いた六王が目の前にいることに驚く。
ガモス「レジスタンスとかいう連中からだいぶ話は聞いてるみてーだな。そうだ。さあ、俺は名乗ったんだ!テメーは誰だ?」
パンドラ「私はこのオーストラリア防衛を任せられた将!パンドラ!!」
ガモス「パンドラか…いいぜぇ、楽しませてくれやァ!!!!!」
パンドラの名を聞いてガモスはそう言って向かって行く。
イギリス首都・ロンドンにも帝国軍の攻撃は行われていた。
攻撃を行っているのは黒一色に統一に塗装された艦が多く配備されている大怪獣帝国軍第四大艦隊である。
すでにロンドンの象徴である『ビッグ・ベン』は破壊され、テムズ川に掛かるロンドン橋、ウェストミンスター橋、タワーブリッジも堕とされて市民や軍などが孤立。
孤立したところを帝国軍は徹底的に攻撃を加えた。
さらにロンドンの一角には黒い煙に覆われていた。
その煙の中には咳き込んで苦しむ軍人や民間人、ドロドロに溶かされた戦車やバスなどの車両に、マンションなどの建物があった。
シーゴラス「グウォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
黒い煙に覆われた地域に地球怪獣軍団イギリス方面軍指揮官『竜巻怪獣 シーゴラス』がさっきまで戦っていた相手を探していた。
するとシーゴラスの周辺に粉が舞い落ちてきた。
その瞬間、シーゴラスの体が痺れ始めていた。
シーゴラス「!?」
訳が分からないでいると背後から気配がして振り向くと自分がさっきまで戦っていた相手がいた。
ムルロア「ジュリャアオォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
シーゴラスの背後を取ったのは宇宙大怪獣帝国六王の一角、第三位ムルロアは口から強力な溶解液『ホワイダースプレー』を放った。
シーゴラス「グウォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
ムルロアのホワイダースプレーを顔面に受けてしまったシーゴラスは後ろへ後ずさりして、足を踏み外してしまいテムズ川に落下してしまった。
テムズ川に落下してしまったシーゴラスはブクブクと泡を出しながら沈んでいった。
ムルロア「ふん、他愛もない。全軍、一気にこの地を征服だ!!」
シーゴラスを倒したと判断したムルロアは全軍にロンドン制圧を指示するのだった。
3ヶ国首都同時攻撃はさながら三つ首を持つ地獄の番犬、ケルベロスの如く行われていった。
調「三ヵ国の首都が同時にって!?」
切歌「帝国はしばらく攻撃してこなくなるんじゃなかったんデスか!?」
話が違いすぎて調と切歌は言う。
中井『こちらも状況はまだハッキリとは分かっていませんが、帝国軍の攻撃ですでにモスクワ、キャンベラ、ロンドンは陥落寸前とのことです!』
クリス「おいおい、冗談だろ!?」
3ヶ国の首都が陥落寸前であると聞いてクリスは言う。
?『いや、奴ならあり得ることだ』
クリスの言葉に答えるように1人の人物が中井の隣に映し出された。
弦十郎「リュグロー氏!」
映し出されたリュグローを見て弦十郎は叫ぶ。
リュグロー『話は聞いている。これの攻撃は恐らく奴の仕業だ』
弦十郎「奴とは?」
奴とは誰のことか分からず、弦十郎は聞く。
リュグロー『宇宙大怪獣帝国軍二大猛将の一角、航宙艦隊総司令官 ガッツ星人・ヴァロルドだ!』
宇宙大怪獣帝国軍二大猛将の一角、航宙艦隊総司令官である『ガッツ星人・ヴァロルド』の名を出すリュグロー。
弦十郎「航宙艦隊総司令官 ヴァロルドですか?」
リュグロー『あぁ、奴は宇宙の鷹と異名を取るほど指揮能力は高い。奴がいるなら今回の3ヵ国首都同時攻撃にも納得がいく』
弦十郎「それほどの者なのですか?」
リュグローの説明を聞いて弦十郎は冷や汗をかきながら聞く。
リュグロー『奴なら惑星間弾道弾を囮として今回の作戦を考えることなど造作もないことだ』
響「わ、惑星間弾道弾が囮!?」
直径1000Mにもおよぶ超巨大質量兵器を囮として使ってきたと聞いて驚く。
リュグロー『あぁ。くそっ、奴のことを失念していた!』
リュグローたちもヴァロルドのことを失念していたらしく、焦っていた。
マリア「司令、これからどうするの?」
これからの指示を仰ぐマリア。
だが、3ヶ国首都同時攻撃などと言う経験したことのない状況に、流石の弦十郎も考えが纏まらないでいた。
リュグロー『それなら一つだけ提案がある』
弦十郎「それはいったい…」
リュグロー『それは…』
弦十郎にリュグローはある提案を口にすると、弦十郎たちは驚くのだった。