戦姫絶唱シンフォギア PROJECT G   作:ダラケー

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第700話 宇宙戦艦 ムサシ、抜錨!

マリア「これは!?」

 

案内されたドッグで一際巨大なドッグの中には1隻の戦艦がそこに鎮座していた。

 

主砲と思われる巨大な三連装砲を上甲板中心線に沿って前部に2基、後部に1基を備え、さらにその内側に副砲と思われる三連装砲を前後に1基ずつ備え、左右にはハリネズミのごとく配置された多数の各種高角砲塔は艦橋部を取り巻くように艦中央上部に集中している戦艦。

 

それはマリアたちが一度はかつて遭遇したある艦と同じ姿だった。

 

ユウコ「や、大和型戦艦!?」

 

戦艦を見てユウコは驚いて声を上げる。

 

そう、この船はかつて初代怪獣王 ゴジラことガウと互角に渡り合い、南海トラフトによる大規模地震及びその影響で200年振りに噴火する富士山から祖国・日本を守った巨大戦艦-自称大和と同型艦大和型戦艦であった。

 

リュグロー「こいつはシブヤン海の深海1000Mから回収した。地球名で大和型戦艦2番艦 武蔵、今は宇宙戦艦 ムサシだがな」

 

『大和型戦艦 武蔵』、それは第二次世界大戦時に旧日本海軍(大日本帝国海軍)が建造した大艦巨砲主義の集大成にして、世界最強の不沈戦艦と謳われた戦艦である。

 

マリア「どうしてわざわざ回収を?」

 

70年以上も昔に沈み、錆びだらけとなり屑鉄と成り果てた戦艦をわざわざ引き上げて修理・改造したことを疑問に思い聞いた。

 

ベロニカ「私たちは地球へ降り立ったまでは良かったけど、何隻かの船が帝国軍の攻撃で航行不能になっての。全員をもう一度避難する時、その代わりとなる新しい船を造らないといけなかった」

 

タイニー「でも、私たちには新しい船を造る余裕のある物資は無かった。そこで地球の沈んでいる船を回収してそれを元に改造を施したの。それで出来たのがこの宇宙戦艦 ムサシだよ」

 

マリアの質問にベロニカとタイニーがそれぞれ言って答える。

 

リュグロー「立ち寄ったシブヤン海に沈んでいたこいつを回収し、航行不能になった船のパーツを流用して宇宙戦艦にした。戦闘力は帝国軍の最強宇宙戦艦 ガルバスターに匹敵する。コイツで奴らに目にものを見せてやる!!」

 

気合いの入った目で握り拳を握るリュグロー。

 

翼「気合の入っているところ悪いのだが、こちらの戦力はどれくらいなのだ?」

 

ふと疑問に思ったのか、翼はリュグローに聞く。

 

リュグロー「俺たちの戦力と言えるのは旧型の宇宙戦闘艦が数十隻とこのムサシ、機動兵器も旧型の空間戦闘機が40機、偵察機と攻撃機がそれぞれ50機ずつ。それと帝国軍から奪ったSBF スペルグフが1機だけだ。残りは輸送船だな」

 

聴かれてリュグローは現状の戦力を教える。

 

切歌「SBF?」

 

その中でも聞きなれない単語に切歌が反応する。

 

ザッカル「帝国軍が機動兵器としている18M前後の一つ目の人型ロボットの事じゃ。正式名は『スペースバトルファイター』じゃな」

 

SBFのことをザッカルがざっくりだが説明した。

 

調「なんだがガン〇ムのザ〇みたいな兵器だね」

 

マリア「調、それを言ったらお終いよ」

 

不穏なことを言う調にマリアはツッコミを入れて言う。

 

リュグロー「ともかくこれから出撃準備に入る。帝国軍はすでに攻撃を開始している頃だ。こっちもできるだけ急いで準備に取り掛かる」

 

マリア「私たちも出来るだけ手伝うわ」

 

リュグロー「あぁ、助かる」

 

そう言うリュグローたちは出撃準備に取り掛かり始めた。

 

マリアたちも地球外の技術で開発された艦であるムサシに四苦八苦しながら準備を手伝った。

 

途中、帝国軍による第一次と第二次降下作戦が開始され、第二次降下作戦の北米大陸攻防戦にて米国が味方を巻き込んで発射した『改良型反応兵器』による作戦が失敗したことが伝えられた。

 

同時に巻き込まれた地球怪獣軍団が怒り、人類との同盟破棄を示唆したことを聞いたがマリアたちはリルは絶対に人類を見放さないと言いきると翌日には同盟破棄は無くなり、人類と地球怪獣たちの同盟は継続されたことが伝えられた。

 

そして数週間後、第三次降下作戦開始時に宇宙戦艦 ムサシを含む全宇宙戦闘艦艇の出撃準備が整えられた。

 

マリアたちは旗艦となるムサシに乗艦、リュグローたちと共に出撃することになった。

 

リュグロー「全員聞け。これまで多くの仲間たちが奴らの手にかかり命を失った…そして俺たちは奴らから尻尾を巻いて逃げるしかできなかった。だが、それも今日までだ!俺達には今までとは違うことがある!!それは俺たち異星人を受け入れた地球人、宇宙怪獣と互角に戦える地球怪獣、そして神を殺せる聖女たちシンフォギア装者と最強の怪獣 ゴジラがいることだ!!!今こそ彼らと共に立ち上がり、帝国を…俺たちの故郷を奪った奴らに目にものを見せてやれ!!!!」

 

旗艦となるムサシ艦橋の艦長席にて全艦隊に通信を繋げて激を飛ばすリュグロー。

 

『オォーーーーー!!!!!!!!』

 

リュグローの激を聞いて兵士たちの士気は一気に上がる。

 

マリア「なんだか恥ずかしいわね…」

 

翼「あぁ、そうだな…」

 

自分達がまるで『聖女 ジャンヌ・ダルク』に思われて少し恥ずかしくなりながらマリアと翼は言う。

 

リュグロー「全艦、発進!!!」

 

激を飛ばしてリュグローの合図と共にドッグで待機していた艦が次々に動力へエネルギーを回し、各艦のスラスターに火が噴き出す。

 

火が噴き出た艦は各自微速で上昇を開始、同時にエアーズロックの天井が開いて青空が広がり太陽の光が艦隊を照らす。

 

各艦が出ると最後に港中央部が左右に割れるように開き、アンカーロックで固定されたムサシがせり上がってきた。

 

もエネルギーが動力へと回り、スラスターに火が噴き出る。

 

スーノ「エネルギー、エンジンに伝達完了!」

 

ファンタス「レーダー、各武装異常なし!」

 

ベロニカ「全艦隊、所定位置に付いたわ」

 

リュグロー「よし、アンカーロック解除!宇宙戦艦 ムサシ抜錨・発進!!」

 

艦橋にてムサシの各機器の異常がないことを聞いたリュグローは指示を出すとムサシを固定していたアンカーロックが外され、ムサシが微速前進し高度を上げ、エアーズロックのドッグから外へ出る。

 

宇宙戦艦 ムサシとして戦艦武蔵が現代に復活し、今度は生まれた国の為ではなく故郷の星を守ろうと地球の空へ飛翔したのだった。

 

リュグロー「全艦とのリンク準備!目標、日本国大陸州北京市!」

 

エアーズロックから飛翔したムサシが先に出た艦隊と合流するとリュグローはすぐに指示を出す。

 

宇宙戦艦 ムサシは他の艦と違う特徴が1つある、それは惑星内でのワープが安全に使用できることである。

 

本来ワープは空間を歪ませる事で近道を作り上げ、光年単位の遠方さえも一瞬で移動する航法だが、失敗すれば歪ませた空間に周辺のモノは飲み込まれて消滅してしまう。

 

しかしムサシはそれらを自動で回避する機能があり、安全に惑星内ワープが可能としている。

 

また周辺にいる艦とデータリンクすることで同時に惑星内ワープすることが出きることである。

 

ベロニカ「全艦隊とのデータリンク完了!同時ワープ準備いいわ!」

 

リュグロー「よし、ワープ!!」

 

ベロニカからの報告を聞いて言うとムサシを筆頭に全艦がスラスターに青い光を帯びながら加速した瞬時に姿が掻き消えた。

 

そして搔き消えた艦隊は北京市へ到着、第三次降下作戦参加艦隊の先遣攻撃艦隊を奇襲。

 

見事に同艦隊旗艦 ムルファシス級宇宙戦艦空母2199番艦 ランバルミを撃沈し、勝利を呼び込んだのである。

 

 

 

マリア「以上が私たちの経緯よ」

 

話終えてマリアは言う。

 

弦十郎「そうだったのか。報告ご苦労」

 

マリアたちの経緯を聞いて弦十郎は言うとリュグローたちの方を向いた。

 

弦十郎「改めて皆さんのご協力で何とか勝利出来ました。ありがとうございます」

 

深々と頭を下げて弦十郎は言う。

 

リュグローたちが来てくれなければ帝国軍により日露怪は敗北し、日本国大陸県(旧中国大陸)は奪われて地上部隊が大挙として押し寄せて来ることが出来るようになる危機であった。

 

リュグロー「気にするな。共通の敵を前にしているんだからな」

 

弦十郎にリュグローは言う。

 

リュグロー「それより今は戦力の建て直しを図るのが先決だ」

 

弦十郎「分かっています。現在日露怪は急いで体勢の建て直しを図っています」

 

リュグロー「そうか、間に合えば良いが…奴らは機動性に重きを置いた戦略を行う。すでに次の手を打っているハズだ」

 

日露怪が体勢の建て直しを図っていると聞いてリュグローは安心と帝国軍が次なる手を打ってくる不安が入り交じっていた。




日露怪が体勢を建て直していると帝国軍大本営冥王星基地・プラート、宇宙大怪獣帝国スペースのいる政務室。

政務室にはスペースの他に、ヴィズがいた。

スペース「ほう、第三次降下作戦が失敗したか」

日本国大陸県制圧作戦である第三次降下作戦が失敗した報告をヴィズから聞いたスペースは呟く。

しかし、その声に不思議と冷静であり、焦りや怒りは全く無かった。

ヴィズ「はっ…我が軍は日本国大陸県にて優勢でしたが、途中からレジスタンスを名乗る不敬の輩たちの奇襲を受けて第一陣先遣艦隊は旗艦を喪い敗走したと…」

敗北した理由をヴィズは報告する。

スペース「レジスタンスか…ふっ、そうこなくてはな。将兵達も面白くなかろう」

報告を聞いたスペースは少し嬉しそうな声で言う。

ヴィズ「それとヴァロルド提督より作戦の立案書がございます」

そう言ってヴィズは端末をスペースの前に差し出すとスペースは受け取り、起動させるとヴァロルドが立案した作戦の書類が写し出された。

スペース「ほう…あの冷静沈着であり、我が軍の猛将 ヴァロルドが珍しいな。ヴィズ、すぐに立案書通りに作戦準備に取り掛からせろ」

意外な顔をしながらスペースはヴィズに指示する。

ヴィズ「はっ!」

スペースの指示を聞いてヴィズは敬礼すると踵を返して政務室から出ていった。

スペース(さあ、兄者…この手はどうする?)

まるで子供のように楽しみな顔をしながらスペースは思っていたのだった。

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