戦姫絶唱シンフォギア PROJECT G   作:ダラケー

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第695話 宇宙(そら)からの難民

北京州攻防戦が終わり、日露怪による戦いの後始末が行われていた。

 

北京州はかつての中国の首都である北京だが、4年前に発生したパヴァリア光明結社統制局長にして先史文明以前に「造物主」と呼ばれる存在によってヒトのプロトタイプとしてつくられた人形『アダム・ヴァイスハウプト』の放った『超古代怨霊分解翼獣 ノイズシビトゾイガー』が合体した『超古代分解怪獣 ノイズゾイガー』と『破滅分解魔虫 ノイズドビシ』が合体した『破滅分解魔虫 ノイズカイザードビシ』により軍は壊滅。

 

トップは生きてはいたが国民を見捨てて海外へ逃れようとしていたために失脚。

 

その後に就任した大統領が何とか国を立て直そうとするも政策が失敗しさらに悪化、最終的には廃国が決定し、北京を中心とした海に面した地方と黒竜江、吉林、河南、湖北、雲南、四川、チベット自治区などの内陸部の地方までを日本、残りをロシアがそれぞれ分割で併合して領地とした。

 

日本の領地となった後は空気汚染で有名であった中国時代とは変わり、日本のように澄んだ空気がある州へと変わり、肺炎などの呼吸器系の疾患などに苦しむ者は激減したと言われる。

 

さらにノイズ怪獣たちと地球怪獣たちの激突で華北と日本海が繋がってしまい、それにより日本国大陸方面海上自衛隊基地と一般港湾施設が作られている。

 

S.O.N.G.本部と海上自衛隊の艦船に交り、武蔵を旗艦とした艦隊『宇宙戦艦 スペランツァ級』、『宇宙重巡洋艦 ファルケ級』、『宇宙軽巡洋艦 アードラー級』、『宇宙駆逐艦 シュペルリング級』、『宇宙空母 クラーニヒ級』レジスタンス艦隊も停泊していた。

 

弦十郎「4人とも、よく無事だったな」

 

S.O.N.G.本部の発令室にて、弦十郎は無事に帰還した4人-マリア、切歌、調、ユウコに嬉しそうな声で言う。

 

マリア「えぇ。みんなには心配をかけてごめんなさいね」

 

心配かけてしまったことにマリアは4人を代表して謝罪する。

 

弦十郎「無事だったなら構わない。それで彼らが?」

 

マリアの謝罪を聞いたあと、S.O.N.G.本部発令室入口に待機している3人に視線を移した。

 

リュグロー「レジスタンスのリーダー・リュグローだ」

 

ベロニカ「その妻のベロニカです」

 

タイニー「整備班長のタイニーバルタンだよ♪」

 

メガネを掛けた細身の男声は北京州攻防戦にて艦隊旗艦だった武蔵(日露側によるコードネーム)に乗艦し、艦隊を指揮したレジスタンスのリーダー『変身生命体 リュグロー』。

 

髪をポニーテールに纏めた女性はリュグローの奥さんにしてレジスタンスのサブリーダーを務める『変身生命体 ベロニカ』。

 

そしてショートヘアの少女、整備班長を務める『子供の超科学星人 タイニーバルタン』は名乗った。

 

弦十郎「国連直轄のタスクフォースS.O.N.G.司令官 風鳴 弦十郎だ。今回の救援を防衛軍代表としてお礼を言わせてくれ。それとうちの装者たちが世話になった」

 

先の北京州攻防戦で、地球軍側が初の勝利を掴めた起因がリュグロー率いるレジスタンスの来援であることを言いながら礼を述べる。

 

リュグロー「礼などまだ早い。奴らはすぐに新たな降下部隊を送り込んでくる。それまでにこちらも戦力を整える」

 

弦十郎に礼を言われたリュグローはまだ終わってないと言う。

 

それもそのはず、いまだに帝国軍の戦力は強大。

 

片や地球軍は北京州攻防戦にて勝利を掴めはしたが、それはレジスタンスが来援したからであり、地球軍は圧倒的に劣勢であった。

 

もしレジスタンスが来なければ北京州は奪われてしまい、広大な大陸を利用し本格的な地上侵攻作戦が行われるところであったのだ。

 

弦十郎「おっしゃる通りだ。それでマリアくんたちはどうやって彼らと接触を?」

 

マリア「今から話すわ。私たちがレジスタンスに会ったのはオーストラリアでの調査をしていた時よ」

 

弦十郎に聞かれてマリアは語る。

 

自分たちがどうやってレジスタンスに出会い、協力体制を取り付けたのかを。

 

 

 

それは今から数日前、宇宙大怪獣帝国が宣戦を布告する少し前、マリアたちはオーストラリアでベロニカの乗るハンバーガーショップを追い、エアーズロックにたどり着き、何者かに気絶させられた時だった。

 

マリア「ん…こ、ここは……」

 

目を覚ましたマリアはベッドの上で起き上がった。

 

身の回りを探るとコンバーターユニットと通信機が無くなっていた。

 

マリア(やっぱり取られてるか…)

 

武器などは取られていると大体は予想していたからあまり驚きはせずに、周囲を見ると周辺にはベッド以外の家具などの物は無く、隣に同じくベッドに切歌、調、ユウコの3人が寝かされていた。

 

マリア「切歌、調、ユウコ!」

 

ベッドから降りて、マリアは3人を起こした。

 

調「ん~…マリア?」

 

ユウコ「あれ?私たち…?」

 

切歌「ふわ~、何だか良く眠れたデス」

 

マリアに起こされて目を覚ます調たち。

 

マリア「呑気なこと言わない!どうやら私たち、捕まったみたいよ」

 

呑気に起き上がる調たちにマリアは言う。

 

調「あ、そうだ!確か毛むくじゃらの怪人に打たれて…」

 

ユウコ「そのままここに運ばれたみたいですね」

 

意識を失う前のことを思い出しながら調とユウコは言う。

 

マリア「最悪なことに、コンバーターユニットも通信機も取られてる。どうにかして取り戻さないと」

 

切歌「そうはいいますけど、どうやって取り戻すデス?」

 

マリアの言葉に、切歌は聞く。

 

マリア「そうね。出入口っぽい道があるけど、電磁バリアか何かで塞がれてる可能性が…」

 

ユウコ「あの~…」

 

そう言っているとユウコが割って入ってきた。

 

マリア「どうかしたのかしら?」

 

ユウコ「いえ、その、電磁バリア、無いみたいですよ?」

 

マリア「え?」

 

ユウコに言われて入口に手をやると電磁波どころか電撃すら来なかった。

 

調「あ、ほんとだ。何ともない」

 

切歌「間抜けデスね」

 

マリア「間抜けって言っていいのかしら?」

 

電磁バリアを設置しなかった相手にそう言う切歌と調にマリアは言う。

 

ユウコ「どうします?わざと逃がしてっていう罠の可能性もありますけど」

 

マリア「罠でも、行かなくちゃいけないわ。外でみんなが待ってるんだから」

 

罠かもしれないと思っていたが、外とどうしても交信しなくてはならないから行動あるのみとマリアが言った時だ。

 

?「やれやれ、疑り深いの。地球人は」

 

マリア「貴方は!!」

 

入口の奥から1人のモフモフの紫色の毛に覆われた姿をしており、目つきは子犬のようにやさしい姿をした宇宙人が現れて身構える。

 

ザッカル「そう警戒しなさんな。儂はザッカル、L85星人のザッカルだ。元宇宙Gメンと呼ばれていおったの」

 

身構えて警戒するマリアたちにザッカルは名乗った。

 

ユウコ「う、宇宙Gメン?」

 

聞いたこともない言葉にユウコは聞き返した。

 

ザッカル「宇宙の凶悪怪獣を逮捕するための宇宙警察っといったところだ」

 

宇宙Gメンについて、ザッカルは簡単に説明する。

 

調「その宇宙警察がどうして地球に?」

 

ザッカル「それについては、儂らのリーダーから直接聞くのがよかろう。ついてきなさい」

 

調に聞かれてザッカルはそういうと背中を向けて歩き出した。

 

それを見てマリア達はすこし警戒はしていたが、ザッカルの後についていく。

 

数分して、マリアたちが寝かされていた場所へ続く道を抜けるとそこには巨大なドーム状の空間に、外の世界とは変らない街があった。

 

マリア「これは!?」

 

街の姿を見て、マリアは驚いてしまう。

 

いやマリアだけでなく、調たちも驚いて開いた口が塞がらなかった。

 

ザッカル「ここはコロニーだ」

 

街をコロニーと言う。

 

ユウコ「コロニー…人工の居住空間…」

 

かつて、異星人と製造した移民船を知っているユウコだが、人工的に暮らすためのコロニーを見たのは初めてらしく、唖然としていた。

 

調「なんで、そんなものを地球に?」

 

?「それは私たちが地球に亡命したからよ」

 

ザッカルにコロニーを地球に作ったのかと聞くと女性の声が代わりにこたえてその方向を見るとハンバーガーショップの女性がいた。

 

切歌「あー!貴女は!!」

 

女性を見て切歌が叫ぶと、マリアたちの頭に前のカーチェイスのことが蘇ってきた。

 

ベロニカ「初めましてって言うのも変か。改めて、私はベロニカ。このコロニーのリーダーの1人よ。よろしく」

 

ベロニカは敵意が無いと含めた意味でマリアたちに名乗る。

 

マリア「あ、私は国連直轄のタスクフォースS.O.N.G.所属マリアよ」

 

調「同じく月読 調です」

 

切歌「暁 切歌デース!」

 

ユウコ「S.O.N.G.研究員のユウコ・タニです」

 

名乗られたなら自分たちも名乗らないと失礼と思い、マリアたちも名乗った。

 

マリア「あの、さっき亡命したって言ってましが…貴方たちは宇宙大怪獣帝国の関係者じゃないの?」

 

名乗り終えて、すぐにマリアはベロニカたちのことを聞くとベロニカは首を横に振って暗い顔をした。

 

ベロニカ「違うわ。私たちはその逆、宇宙大怪獣帝国から逃げてきたの」

 

ユウコ「逃げてきた?」

 

その言葉を聞き、ユウコは首を傾げて聞いた。

 

ベロニカ「奴らは武力で宇宙を支配しよとしている。自分たちに服従する者は属領とし傘下に加え、逆らう星や敵勢勢力は容赦無く次々に滅ぼしているの。私たちは故郷を滅ぼされたり、服従を拒んで宇宙へ逃げてきたの」

 

暗い表情で答えながらベロニカは無意識に拳を強く握る。

 

ユウコ「……」

 

それにユウコは気づき、自身も似た体験をしたことを思い出した。

 

マリア「そんなことが…でも、なんでこの星に?」

 

逃げるだけならば太陽系の…ましてや(恐らく)故郷から何万光年離れたこの地球へ移り住むことなく近くの星に行けばいいのではとマリアは聞く。

 

ザッカル「すでに帝国は強大な軍事星間国家にまで膨れ上がっておった。そのせいで、ワシらを受け入れてくれる星が近くに無かったんじゃ」

 

ベロニカ「それでも長い放浪生活を耐えてようやくこの地球に辿り着いた」

 

相当苦労していたのかさっきよりも声を弾ませてベロニカは言う。

 

ベロニカ「私たちは降り立つ前に地球人の惑星の調査を行ったわ。結果、地球人は私たち宇宙人を侵略者として認識している。だからこうして隠れて生活の場を作ったの」

 

ユウコ「確かにそうですが…」

 

ベロニカたちがこのエアーズロック内部に居住区を作って暮らしていたことを聞いて納得する一同。

 

調「勝手に人様の土地に住む場所を作る方も悪い気がするのだけど…」

 

事情は分かったが、無断で地球の土地に住む場所を作ってしまうのはどうかと調が言った時だ。

 

?「それだけ、お前ら地球人が信用できないんだ」

 

突如車のランプが光ったかと思いきや男性の声で喋り出した。

 

切歌「く、車が喋ったデス!!」

 

突然のことに切歌は驚いて声を上げる。

 

ベロニカ「驚かせてごめんなさい。彼はリュグロー、私の旦那でこのコロニーのもう1人のリーダーよ。私とリュグローは様々なモノに変身できるの。私は地球人に、リュグローはこの車に変身してるわ」

 

車に変身しているリュグローを紹介しながら自身の能力について話すベロニカ。

 

リュグロー「余計なことを言うな、ベロニカ!コイツらなんてとっとと追い出してしまった方がいいに決まってる!!」

 

ベロニカ「彼女たちは大丈夫よ。話せばきっと分かってくれる」

 

マリアたちを追い出そうと言うリュグローにベロニカは言う。

 

リュグロー「地球人なんか信じられるか!きっと俺たちを手土産に帝国の連中に尻尾を振るに決まってる!!」

 

マリア「そんな一方的な…」

 

リュグローの一方的な決めつけにマリアは反論しようとしたが…。

 

リュグロー「どうせ、ここに来たのも俺たちが帝国の連中と内通していると思っていたからだろ!!」

 

マリア「それは…」

 

図星を付かれてしまい反論が出来なくなってしまった。

 

確かにマリアたちはこのオーストラリアから発信された謎の電波を追ってきた。

 

実際には違ったが、それは帝国軍がすでに地球に侵入しているのではっという疑いがあったからだ。

 

ベロニカ「それは仕方ないじゃい!まさか帝国がここまで来るなんて誰が予想出来たのよ!」

 

ザッカル「そうじゃな、ベロニカの言う通りだ。敵になるやもしれん相手が現れたのと同時に不可解なモノを見つければ、誰だって不安になるだろう」

 

リュグローの言葉にベロニカとザッカルがマリアたち側に立って言う。

 

リュグロー「だが・・・」

 

?「それ以上は止めた方がいいよ、リュグロー」

 

思わぬ反論にリュグローは食い下がろうとした時、突如まだ幼い少女の声が響いてきたかと思いきや面々の近くにある石に小さなセミにも似た姿をした宇宙人が現れた。

 

マリア「なにあれ、可愛い!」

 

現れた宇宙人にマリアはいつぞやのウサギを可愛いっと言った感じで言う。

 

タイニー「それはどうも。僕はタイニーバルタン。バルタンの中でも穏健の良識派だよ」

 

可愛いとマリアに言われて、お礼を言いながら現れた小さな宇宙人、『子供の超科学星人 タイニーバルタン』は名乗る。

 

リュグロー「しかしタイニー…」

 

タイニー「君も知ってるだろ?ベロニカは一度こうって言ったら聞かない人だって」

 

反論しようとするリュグローにタイニーは言う。

 

リュグロー「それはそうだが…」

 

タイニー「はい、話はこれでお終い。僕たちはこの人たちをコロニーを案内しないといけないから」

 

リュグロー「待て、まだ話は…」

 

タイニー「バルルン♪」

 

話が終わっていないといいかけたリュグローに、タイニーは両手の鋏を合わせてそう唱えると、リュグローの姿が一瞬にして消えてしまった。

 

ユウコ「き、消えた!?」

 

突然消えたリュグローに驚いて、声を上げるユウコ。

 

タイニー「すごいでしょ、バルタン星の超科学♪」

 

切歌「え、あれって魔法じゃないんデスか?」

 

バルタン星の超科学と言うタイニーに疑問に思う切歌。

 

調「たぶん、その辺りは突っ込んじゃダメなところだよ、切ちゃん」

 

それを調は突っ込んで言うのだった。

 

ベロニカ「それじゃ、私たちの住んでるコロニーを案内するわ」

 

邪魔がいなくなったという風に清々したベロニカは明るくマリアたちにそう言うのだった。


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