戦姫絶唱シンフォギア PROJECT G   作:ダラケー

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第676話 人類怪獣同盟―地球連合軍発足―

響「世界がすっごく大変だっていうのに…なんで普通に学校の宿題が出てるわけ!?」

 

リディアン音楽院の図書室にある机でノートと教科書を広げている響は悲痛なる(?)叫びを上げながら言う。

 

未来「しょうがないでしょ、寮に帰ったら響はずっとエウルちゃんと遊んでばっかりなんだから」

 

響と向かい合う席で同じくノートと教科書を広げている未来が言う。

 

実は最近の響はガウとエルザの娘(リルからしたら妹、怪獣軍団からすれば姫)のエウルと遊んでばかりいるのだ。

 

育児と家事で忙しいエルザからすれば子供の相手をしてくれるのは嬉しいが、それで元から低い響のリディアンでの成績がさらに下がってしまうのではと心配されていた。

 

そこで未来が放課後に図書室で勉強することを思いつき、今に至るのである。

 

響「だって~…エウルちゃんがすっごく可愛いんだよ、昔のガウくんみたいで」

 

未来「そうだけど、それで勉強を疎かにしちゃったらエウルちゃんとも遊べなくなるよ?」

 

響「それは困る!」

 

未来「うん、それじゃあ頑張ろう」

 

響「分かったよ、未来!」

 

未来に言われて気合いが入る響。

 

その時だった。

 

クリス「んな、暇あるかぁ!!」

 

響「デュークッ!!」

 

やる気を出した響の頭にクリスが空手チョップを叩き込んだ。

 

未来「クリス。どうかしたの?」

 

大親友(恋人)の頭にチョップを叩き込んだクリスを見て、未来は何事もないように聞いた。

 

クリス「だんだん冷静に対処しだしたな。それより、勉強とか言ってる場合じゃなくなったぞ」

 

冷静に聞いてきた未来にクリスは少し引きながらも要件を言う。

 

響「ふえ?どういうこと?」

 

頭を抑えながら、響は聞き返した。

 

クリス「マリアたちと連絡が途絶えてた」

 

響「え!?マリアさんたちに何かあったの!?」

 

マリアたちと連絡が途絶えたと聞いて驚く響。

 

クリス「それはまだ分かんねーけど今先輩が向かってる」

 

響「じゃあ、私たちもオーストラリアに…」

 

クリス「先走んな。アタシらは別件だ」

 

響「別件?」

 

クリス「さっきおっさんたちから連絡があった。宇宙大怪獣帝国と、戦うことになった」

 

響「!?」

 

未来「クリス、それって…」

 

クリス「あぁ、アタシら3人に召集が掛かった。すぐに本部に向かうぞ!」

 

クリスに言われて2人は頷いた。

 

 

 

その頃、リルは怪獣島である多々良島に一部の怪獣たちと集まっていた。

 

理由は国連からS.O.N.G.に通じて出された人類と怪獣による地球連合を受けるかどうかである。

 

リル自身は響たちと戦えればそれで良かったのだが、他の怪獣たちはそうではなかった。

 

ラドン「反対だ!地球人ごときと連合など組めるか!」

 

マンダ「そうだ!奴らと肩を並べるなどまっぴらごめんだ!」

 

ラドンとマンダの空と海の総司令官の怪獣が声を荒げて言う。

 

ラドン「地球人どもは我々の生活の場を散々荒らしてきたのです!そんな奴らと連合を組むなど言語道断!!」

 

空や海を主な縄張りをとしているラドンやマンダたちからすれば、自分たちの住処をガスや工業廃水などで汚してきた地球人類とは何が何でも自分たちと肩を並べて戦うなど精神的に受け入れられなかった。

 

アンギラス「落ち着け、お前ら!」

 

マンダ「お前は不満じゃないのか!?お前ら陸軍だって、土を汚されてしまっただろ!!」

 

反対するラドンとマンダを落ち着かせようとしたアンギラスにも2体は矛を向ける。

 

アンギラス「確かにそうだが、今はそんなことを言っている場合か!?今は一丸とならなければ奴らには…」

 

マンダ「そんなこと(・・・・・)だと!?聞き捨てならんぞ、今の言葉は!」

 

ラドン「そうだ!元々この星は我々の先祖たる恐竜が支配していた!隕石の落下や疫病で大半が死んでしまったが、それでも生きながらえ、再びの繁栄を望んでいた!だが、後釜に収まったのは爪も牙もない、ずる賢いだけの連中ではないか!!」

 

アンギラスの言葉を聞いてさらに激怒するマンダとラドン。

 

陸海空の中で海と空は特に環境破壊が酷く、海にはゴミが溢れ、空は排気ガスやオゾン層が破壊されて降り注ぐ紫外線などにより病気などを引き起こす子怪獣が多発していた。

 

親はある程度耐性はあるが、子供はそうはいかず耐性の無い子怪獣は病気を患っては苦しんでいるのだ。

 

マンダとラドンも自分たちの子供が地球人の出したゴミや排気ガスで病気を患っており苦しんでいるのだ。

 

子を思う親からすれば、苦しむ原因を作った地球人を許すわけにはいかなかったのだ。

 

アンギラス「お前たちの言い分は分かる。しかし今は協力すべき時なんだぞ!?」

 

マンダ「知らん!地球人とは絶対に手を組まん!」

 

ラドン「そうだ!手を組むなら陸軍だけ組んでいろ!」

 

アンギラス「な、なんだと!?」

 

売り言葉に買い言葉となり、互いに争い始める。

 

その時だった。

 

リル「うるせぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」

 

『!?』

 

それまで沈黙していたリルがらしくない怒声を上げ、尻尾で近くの木を粉砕して最早会議どころでは無いその場を黙らせた。

 

リル「マンダとラドンの言い分も分かる。先王だった父がそうだったように簡単に人間を、地球人を信用しろと言われて信用なんかできない」

 

先王である初代怪獣王 ゴジラことリルの父であるガウもまた地球人の身勝手な兵器で家族を奪われた経験があり、怨み、憎み、復讐しようとしていた。

 

リル「でも僕は知ってる。地球人の中には今の状況をどうにかしようと必死に模索している人もいる。確かに地球人の中にはどうしようもない人もいる。だけど、それは一部の人間たちだけ。こっちの一方的な感情論で、沢山のそうじゃない人を見殺しにはできない!」

 

ガウや他の怪獣たちより地球人と長く交流してきたリルだからこそ言える言葉だった。

 

地球人は怪獣を悪の化身だと思い、地球怪獣たちは地球人を自分たちの縄張りを荒らして破壊する邪魔者であると思っていた。

 

だが、それは一部の地球人たちだけでありほとんどがリルのように地球怪獣たちとの共存を望んでおり、自分たちからまず変えようと自然の復活や環境汚染による対策を講じていた。

 

リル「それに、そろそろ僕たちも勇気を出して一歩を踏み出そう。地球は僕ら地球生命のモノだ。外から来て奪いに来た奴らを許すわけにはいかない!」

 

ラドン・マンダ「「…………」」

 

リルの言葉にラドンとマンダの2人は黙ってしまう。

 

リルの言っていることは理想論だということは分かっているだが、先王がそうだったように"理想を現実にする"、それがゴジラ一族がしてきたことだ。

 

"通常では絶対に勝てないだろう敵に勝つ"と証明した先王。

 

そして、リルも"宇宙人とだって、手に取り会える。友好的に成れる"と証明していた。

 

だからリルの理想論も現実に感じられていた。

 

マンダ「そこまでおっしゃるなら」

 

ラドン 「我らはあなた様を信じます」

 

リルの言葉を聞きマンダとラドンは言う。

 

リル「ありがとう。2人とも」

 

2人の賛同を得たリルは笑顔で言う。

 

この会議から3日後、ミレニアムゴジラ率いる地球怪獣軍団と地球人の国連軍は正式に同盟を調印。

 

ここに人類怪獣同盟軍である『地球連合軍』が発足され、世界中で報じられたのだった。


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