戦姫絶唱シンフォギア PROJECT G   作:ダラケー

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第513話 治療と捜索

シンカリオンたちの案内で新幹線超進化研究所の地下ドックにミレニアムゴジラは来ていた。

 

ミレニアムゴジラ「グルルルルルル……」

 

地下のドックに来たミレニアムゴジラは喉を鳴らして周囲を威嚇する。

 

山口「ほ、本物のゴジラ…」

 

癖っ毛で厳つい強面の大男―この新幹線超進化研究所のシンカリオン整備長『山口 ナガト』はミレニアムゴジラを見上げて言う。

 

他の整備士たちもミレニアムゴジラを見て見上げて空いた口が閉まらないでいた。

 

キントキ「お前らぁ!何サボってやがる!とっとと仕事しねぇかぁ!!!」

 

怒声を上げながら1人の小柄の老男性―元新幹線超進化研究所整備長で、一番の古参『小田原 キントキ』が現れた。

 

キントキの声を聞いて整備長である山口や他の整備士たちは慌ててシンカリオンの整備に向かう。

 

ミドリ「どいたどいた!患者はどこ!!」

 

そこへ担架を持った数人の白衣を引き連れた女性―新幹線超進化研究所の女医『久留米 ミドリ』が言う。

 

ミレニアムゴジラ「グルルルルルル…」

 

ミドリを見てミレニアムゴジラはミドリたちから病院でよく嗅ぐ匂いを感じ、姿勢を低くし、手の中にいる響を差し出した。

 

差し出された手の中に苦しそうにしている響を見てミドリは急いで駆け寄る。

 

ミドリ「酷い傷ね…出血もかなりしている…輸血が必要ね。ねぇ、この子の血液型…って怪獣になに聞いてるのかしら…」

 

響に輸血が必要だと診断したミドリはミレニアムゴジラに聞くがすぐに訂正する。

 

ミレニアムゴジラ「グルルルルルル…」

 

ミドリの言葉が聞こえていたのかミレニアムゴジラは床に血でOと書いた。

 

ミドリ「まる?…O型のこと?」

 

ミレニアムゴジラ「グルルルル!」

 

ミレニアムゴジラの書いた文字をすぐに理解したミドリが言うと頷いた。

 

ミドリ「直ぐにO型の血液を用意して!輸血するわよ!!」

 

頷いたミレニアムゴジラを見てミドリは響を担架に乗せて他のスタッフたちに指示を出す。

 

指示を聞いたスタッフたちは響の乗った担架を持って急いで医務室へ向かう。

 

ミレニアムゴジラ「グ…グルルルル…………」

 

医務室へ連れていかれる響を見てミレニアムゴジラは力なくその場に倒れ込んだ。

 

リル「かう~……」

 

倒れたミレニアムゴジラはリルに戻ってしまう。

 

ハヤト「に、人間になったぁ!?」

 

アキタ「ま、全く話が読めない…」

 

ツラヌキ「どうなってんだ!?全くもってどんな体してんだ!?」

 

シノブ「変化の術…なのか?」

 

リルになったミレニアムゴジラを見てシンカリオンから降りたハヤト達は驚く。

 

他のスタッフたちも驚いていた。

 

リル「かう…かう~…」

 

響の側に行こうと痛む左脚を引きずる。

 

だが、不安定な体勢でいたため転倒しそうになった。

 

ミドリ「おっと」

 

そんなリルをミドリがキャッチした。

 

ミドリ「貴方もすごい傷ね。手当してあげるから一緒に来なさい」

 

血を流しているリルの左脚と右肩を見てミドリはそう言うと有無を言わさず連れて行ってしまった。

 

リル「かう…ゕぅ………」

 

ミドリに抱えられてリルは限界が来てしまったのか意識を手放してしまったのだった。

 

 

 

一方、消えた響たちを捜索していたクリスたちは一旦捜索を中断して本部に戻っていた。

 

現在は自衛隊と緒川たち諜報部が動いて捜索している。

 

クリス「おい、響たちはまだ見つかんねーのかよ!!」

 

S.O.N.G.本部にてクリスの荒げた声が響く。

 

つばさ「焦るな雪音。自衛隊や緒川さんたちが今必死になって探してくれている」

 

荒れるクリスを翼が諫める。

 

クリス「そうだけどよ…響の奴、腹を…リルだって脚や肩を撃ち抜かれてただろ!!」

 

キングシトエル戦で2人が腹部や脚、肩をそれぞれレーザーで撃ち抜かれてしまったこと言う。

 

マリア「落ち着きなさい!1番2人に近しい彼女だって取り乱さないでいるのよ!!」

 

未来を指さししながらマリアは言う。

 

クリス「……悪かったよ、取り乱して…」

 

マリアに言われてクリスは少し冷静になって言う。

 

切歌「それにしても、2人ともどこに行っちゃったんデスかね?」

 

調「うん、何の痕跡も無いまま消えるなんて…」

 

先に戦線を離脱したミレニアムゴジラが何の痕跡も残さない内に消えたことでどこへ行ったのか話す。

 

未来「それでも私は信じてる。2人は絶対に無事だって」

 

2人の生存を信じる未来。

 

その時だ。

 

?「がうがうーがうがう」

 

訳:それは僕だって信じてるよ

 

『!?』

 

聞き覚えのある鳴き声と共に車いすに乗った少年とそれを押す犬耳と尻尾の少女が入ってきた。

 

クリス「が…」

 

『ガウ/くん、エルザ/ちゃん!?』

 

入ってきた車いすに乗った少年初代怪獣王で現在の怪獣王であるリルの養父、ゴジラこと『ガウ』と車いすを押す犬耳と尻尾の少女はその妻である『エルザ』に驚く。

 

翼「なぜ2人がここに!?」

 

マリア「新婚旅行中じゃなかったの!?」

 

新婚旅行に行っているハズの2人がここにいることに驚いて聞いて来た。

 

エルザ「少々、こちらによる用事がありましたので」

 

ガウ「がうがうがうー」

 

訳:とりあえず切歌と調はこっちね

 

2人の質問にエルザが答えてガウは車いすの後ろに引っ掛けていた袋を出して切歌と調に手渡した。

 

中を見ると大量のカップラーメンが入っていた。

 

切歌「およ~!カップ麺がいっぱい入ってるデス!」

 

調「どれもご当地限定のラーメンばっかり」

 

袋を開けて中に入っている大量のご当地限定ラーメンを見て喜ぶ。

 

エルザ(本当にアレで喜ぶんでありますか…)

 

ラーメンを見て喜んでいる切歌と調を見てエルザはそう思っていた。

 

ガウから「切歌と調のお土産はご当地限定のカップラーメンでいいよ」っと聞いてどうかなとは内心思っていたからだ。

 

クリス「そんで2人は何しに来たんだよ?」

 

本題がずれてしまいクリスが話を戻した。

 

エルザ「実は最近怪獣ではない怪物が現れたと聞き少し気になることがあったのであります」

 

未来「気になること?」

 

ガウ「がうがう」

 

訳:詳しくは発令室まで行こう

 

エルザ「っと言っているであります」

 

エルザとガウに言われて全員が発令室に向かうことになった。

 

 

 

弦十郎「来たか。待っていたぞ、2人とも」

 

全員が発令室の来たのを確認して弦十郎は言う。

 

翼「司令、ガウとエルザから何か聞いているのですか?」

 

弦十郎「あぁ。ガウとエルザくんから話を聞いてあるモノの存在を検知した」

 

マリア「何?そのあるモノって」

 

弦十郎「新幹線だ」

 

切歌「し、新幹線って…」

 

調「あの鉄道の新幹線ですか?」

 

弦十郎「そうだ。だが、現状存在する新幹線ではない新幹線が線路を走っていた」

 

弦十郎が言うとメインスクリーンに1両の新幹線が映し出された。

 

漆黒の色をし、全体的に紫色のオーラを纏った新幹線であった。

 

クリス「なんだよ、この新幹線…」

 

弦十郎「JRなどの鉄道会社に問い合わせたところ現状、これと同じ新幹線は存在しないそうだ」

 

マリア「じゃあ、この新幹線はなんなの?」

 

弦十郎「分からん。在来線がどこでどのように走っているかは鉄道司令部に把握されているはずだがこの漆黒の新幹線に至っては走行記録すら残されていなかった。我々もガウとエルザくんから聞くまでは全く存在を把握していなかった」

 

謎の漆黒の新幹線の存在を2人に言われるまで把握すらしていなかったと弦十郎は言う。

 

翼「漆黒の新幹線…それでこれが先の怪物騒ぎと何の関係が?」

 

弦十郎「ガウとエルザくんから話を聞いて調査を進めてみたところ、あの怪物が出現するほんの数分前にこの新幹線が熱海駅付近の線路に出現していることが判明した」

 

『!?』

 

弦十郎の言葉を聞いて驚く。

 

弦十郎「さらに響くんを連れたリルが消えた時もこの新幹線が出現していることが判明した」

 

未来「それって!?」

 

エルザ「そうであります」

 

ガウ「がうがうがーう」

 

訳:この漆黒の新幹線が今回の事件の鍵を握ってる可能性があるってことだよ

 

最初からこの新幹線をにらんでいた2人が弦十郎より早く言う。

 

クリス「つまりこの新幹線を追えば!」

 

調「響さんとリルくんの居場所が分かる!」

 

切歌「それなら早速探すデスよ!」

 

弦十郎「よし、これより我々は諜報部と共に漆黒の新幹線の捜索に当たる!いいな!!」

 

『了解!/デース!』

 

弦十郎の指示で漆黒の新幹線の捜索が開始されるのだった。




リル「…かう?」

目が覚めたリルはベッドに寝かされていた。

リル「………」

上半身を起こして周囲をキョロキョロして、自分の体を見た。

キングシトエルに撃ち抜かれた右肩と左脚はガーゼで塞がれ、包帯で固定されていた。

ミドリ「あら、お早いお目覚めね」

声の方を見るとミドリがいた。

報告書か何かの書類を目に通していたようでリルが起き上がるなりそれを置いて近づいて来た。

ミドリ「感染症の症状は無いようね」

リルの額に手を置いてミドリは言う。

リル「かうかう、かうかうーかうかう!」

ミドリを見てリルは何かを聞くように鳴く。

ミドリ「もしかしてあの子のこと?」

リルの言っていることが分かったのかミドリは後ろを指さした。

その方向を見ると手当され、腕に輸血された響が寝かされていた。

リル「かうかう!!」

響を見てリルはベッドから降りて近寄る。

ミドリ「まだ、眠ってるわ。もう少し遅かったら危なかっ…あら?」

リルに響が無事であると言うミドリだが直ぐに切った。

理由はリルが響のベッドに乗り、真横で体を丸めて眠り始めていたのだ。

そんなリルの姿を見たミドリはほくそ笑むとベッドの周囲にあるカーテンを閉めた。

ミドリ「今はゆっくりお休みなさい」

そう言ってカーテンを閉めて机に戻るとまた書類に目を通し始めたのだった。

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