語り・調:最近、切ちゃんの行動がおかしい気がする。
いつも一緒に帰るのに最近になって1人で帰ることが多くなった。
最初は司令かマリアに呼ばれてると思ってたけど、2人に聞いたけど知らないと言われた。
怪しい…そう思ってこっそりと切ちゃんの後を追いかけたけど…。
ガウ「がうがう!」
訳:見ちゃダメ!
調「きゃっ!!」
追いかけていたらガウくんがさらっと現れては邪魔をする。
その隙に切ちゃんはどこに行ったか分からなくなっちゃう。
最初はたまたまガウくんが邪魔をしただろうと思ったけど何度も…何度も…何度も何度も何度も切ちゃんを追いかけようとするけど、そのその都度ガウくんが邪魔をする。
何でガウくんが邪魔をするのかは分からないけど、切ちゃんが何をしているのか、ますます分からなくなった。
調「何をしてるのかな?」
切ちゃんのことを考えると何だかモヤモヤする。
調「切ちゃん…」
今日も1人で帰路につく調は寂しそうに歩いていた。
いつも切歌と一緒に帰ってただけに1人で帰ると寂しくて仕方なかった。
調「………」
夕陽が調の背中を暖めるが心は寂しく寒かった。
F.I.S.時代からずっと一緒にいたのに…片時も離れることもないのに…。
そう思うだけで調は目に涙が浮かび上がる。
調「………」
家に着いて鍵を開けて中に入る。
廊下を通ってリビングに入った瞬間だった。
切歌「調ー!happybirthdayデース!!」
クラッカーを鳴らしながら切歌が出迎えた。
調「へ?」
ポカーンとして調は目をパチクリさせていた。
切歌「だから、今日は調の誕生日デスよ!忘れてたデスか?」
調「ううん…じゃあ、切ちゃんが今まで1人で帰ってたのって…」
切歌「そうデス!調の誕生日を祝うためにとある人に作り方を教えてもらってたデス!」
テーブルに置かれたローソクの刺さっているケーキを見せながら切歌は嬉しそうに言う。
調「ケーキの作り方を教えてもらったって……」
切歌「天の道を行き、全てを司る人デス!」
調(天の?)
切歌にケーキの作り方を教えた人物がよく分からない調。
切歌「それより調!早くこっちに来てくださいデス!」
調「うん。待ってて手を洗ってくるから」
切歌に言われて調は少し嬉しそうに言いながら洗面台のある脱衣場に手を洗いに行く。
切歌「では、改めて。調、お誕生日おめでとうデス!」
調「うん、ありがとう。切ちゃん」
手を洗って着替えて来た調は切歌に祝われながらローソクの火を消した。
調(あ、もしかして…ガウくんが私の邪魔をしたのって…)
今までガウが調の邪魔をしていたのは切歌のしていることに気付かせないためだと察した。
切歌「どうデスか、調!」
火が消えたローソクを抜いて切り分けたケーキを食べた調を見て切歌は聞く。
調「うん、凄く美味しいよ。切ちゃん」
それを聞いて切歌は嬉しくて満面の笑みを浮かべた。
調(本当にありがとう、切ちゃん…)
調にとっては欠けがえのない日になっていた。
立派な豆腐が入ったボールを持って歩く、割烹着の男性がいた。
天の道を行き、全てを司る者「おばあちゃんが言っていた。唯一無二の友と食べる物は家族の団らんと変わらない、欠けがえのないものだとな」
人差し指を天に向かって伸ばしながら言うのだった。