彼は、助けてくれたのだがその日以来明らかに私を避けるようになっていた。
なにやら私のお母さんとも何か相談しているようだ。
これは、捕まえて話をしないと。
私は、いつもの通学路で彼と向き合っていた。彼は私に向かって言葉を放った。
「お別れだ。」
咄嗟のことで、私は何を言われたか分からなかった。でも彼は、そんな私を無視して背を向け歩き始める。私は、こんがらがった頭でとりあえず言葉を発する。
「何で‥ねえ!待って!待ってよぉぉぉ!」
私は自分の声で私が泣いているのに気がついた。
けれども、彼は見向きもせずに去っていく。私は、走った。けれど、どれだけ走っても追いつけない。私は手を伸ばす。しかしそれも空を切る。
私はもう一度叫ぶ。
「待ってよぉぉぉ!」
私は、自分のベッドから跳ね起きた。
ベッドは、私がかいた冷や汗でぐっしょり濡れている。
「はぁ。夢かぁ。」
だけど私には、なぜだか分からないがこの夢は夢ではなくなる気がした。そんな不吉な予感を振り払うように、私は汗で濡れた寝間着を脱ぎ、下着姿になるとそのまま脱衣所へ。脱衣所で、裸になるとシャワーを浴びる。鏡の前に立つと、肩の部分についてしまった傷をみてしまう。先日攫われる時に、男達に付けられたら傷だ。恐らくこの傷は、もう消えないのだろう。でも、私はそれがよかった。だって、この傷を見ると、彼が助けてくてたあの時のあのスーパーヒーローのように格好いい彼の姿が思い出せるのだから。それから、少し彼のことを考える。すると、すごく顔が熱くなる。心臓も大きく跳ね上がる。あの日以来、彼のことを考えると心が高鳴ってくる。こんな事は、初めてだった。私は、シャワーからあがると自分の部屋に戻り制服を着る。そして、お母さんが作ってくれていた朝ご飯を食べ、終わると、部屋に戻って学校の準備をする。すると、家のインターホンがなった。
「はーい」
(彼かな。彼が迎えにきてくれたのかな?)
そんな期待をしながら扉をあけると、
「ヤッホー。ことりちゃん。」
「おはようございます。ことり。」
そこに居たのは、同じμ'sのメンバーで私の幼なじみの明るく活発な高坂穂乃果ちゃん。そして、おしとやかなこれぞ、大和女子という感じの園田海未ちゃん。
「うっ…うん。おはよう。二人とも。」
(彼じゃなかった)
そんな残念な思いを抱いていると、その事が顔にでていたのか海未ちゃんが、
「何ですか、ことり。私達では何か不満でしたか?」
と不満そうな声で言ってくる。その声に私は慌てて首を振る。
「ううん。そんなことないよ。ただちょっとね。」
それが、分かっているのか、海未ちゃんは、私に向かって言った。
「ことり。彼のことで、少し相談があります。みんな集まっているので、部室に行きましょう。」
私は、その言葉を聞いて驚いたが、すぐに返事をする。
「ちょっと待って。すぐ用意するから。」
そして、私はものの一分で用意を終え学校に向かって走り始めた。学校に着いてから真っ先に部室に向かうと、もうみんな集まっていた。
右から、
一年生の西木野真姫ちゃん
同じく一年生の星空凛ちゃん
これまた同じく一年生で小泉花陽ちゃん
次に、三年生の矢澤にこちゃん
同じく三年生の東條希ちゃん
同じく三年生の綾瀬絵里ちゃん
最後に、二年生の穂乃果ちゃん、海未ちゃん、そして私の9人。この9人が、私達μ'sのメンバーだ。
そして今日、そんな私達が話し合うのは、
「みんな来たわね。今日、こんな朝早くに集まってもらったのは、他でもない彼が最近私達どころか学校にもこなくなっていることについてよ。」
そう言って、ホワイトボードを引っ張ってくる。
「みんな何か知っていることはない?」
絵里ちゃんが、みんなに問いかける。
それに対して最初に発言したのは、海未ちゃんだった。
「最初に彼が私達を避けるようになったのはことりがさらわれた次の日です。」
その言葉に絵里ちゃんは頷く。
「そうね。確かにあの時からだわ。」
「そして、その日を境にだんだんと彼の噂がたち始めています。彼が、この学校から転校しようとしているという噂が。」
「それなら、私も聞いたことがあるわよ。」
そう言ってきたのは真姫ちゃんだ。
「なかなかに酷いものがあるわよ。そうね。例えば、その日以来ことりちゃんが暗い顔をするようになってしまったから、『ことりとの一線を越えてしまったので、逃げようとしているのではないか。』とか『何かの犯罪を犯してしまって隠れようとしている。』などね。」
それを聞いて私はつい、
「あの人は、絶対にそんな事しない!」
今まで出したことのないような声の大きさで、叫んでしまう。
真姫ちゃんは、そんな私をみて驚いたのか少し慌てて
「そんなこと知ってるわよ!」
そんな私達をみて希ちゃんが、
「はいはい。二人ともその辺にしとき。」
その言葉を聞いて私は熱くなっていたことに気づき誤る。
「ごめん。」
「私の方こそごめん。」
絵里ちゃんは、私に問いかけてくる。
「ことり、一体あの日何があったの?」
私はそれに対して、
「あの日、倉庫で閉じ込められて…そしたら彼が扉を開けて、入ってきて…そしたら男達が銃を撃ってきて…」
「銃を撃ってきたぁ。あなたよくそれで生きているわね。」
「失礼ね。彼が飛んできた弾を撃ち落としたのよ。」
「「「「「「「「撃ち落としたぁ。」」」」」」」」
「でも、彼の銃も弾がなくなって、男達がチャンスとみて撃ってきたけど彼はそしたら次は、弾をナイフで斬り始めて…」
「「「「「「「「弾を斬ったぁ。」」」」」」」」
「でも、遂に一発だけ私の方に飛んできたんだけど彼は私の目の前で弾を素手でつかんだのよ。」
「「「「「「「「なにぃぃぃ。」」」」」」」」
「そしたら、私に睡眠薬的なものをかがして、それから…」
「それから、どうしたの?」
「そうだ。そうだ!そうだ!」
私は彼が私達を避けつづけていることの答えにたどり着いた気がした。それに気付いたときには、勢い良く立ち上がり部室の扉を開け走り出した。後ろで、みんなの呼ぶ声が聞こえるけどそんなものは、完全に無視をして突っ走る。勝手に考えて、私達のことを分かった気になっている人に向けて、私は目標に向かって一直線に走り出した。
初めてこのシリーズを読む人は、はじめまして。
二回目の人は、お久しぶりです。
暁幸村です。
刊行が遅れてすみません。
リアルの方が忙しくてなかなか書けませんでした。
さて、今日は現在1時眠いのでとっとと後書き仕上げます。
恐らくこのシリーズpart6ぐらいで終わると思います。
それより、長くなるかもしれませんし、短くなるかもしれません。
これからも、お付き合いいただけたら幸いです。
よろしくお願いします。
なぁ、みんなってツンデレとデレデレどっちが好き?