ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~   作:疾風海軍陸戦隊

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第210話「麗央よ涙とともに滝を斬れ」

麗央が疾風の空戦技を会得するため滝の流れを斬る特訓をする中、疾風たちの素の異例のウィッチ殺しのネウロイが静岡の焼津湖に現れたとの連絡があった。

そして疾風は基地に戻り、その場にいた。虹野、宮辺とともに出撃し、先に出撃した鈴仙や森、椛を追う

 

「隊長。鳳隊員は今・・・・」

 

零戦に乗る疾風に宮辺はインカムで訊くと疾風は

 

「麗央は今、あのネウロイに対抗するための空戦術の特訓をしている。その技を会得するまでは出撃しないよう言ってある」

 

「やっぱり麗央さん。特訓をしていたんですね!」

 

「虹野さん?どういうこと?」

 

疾風の言葉に麗央と仲のいい虹野がそう言うと宮部は彼女の言葉に反応し、そう訊くとゆりかは

 

「はい。麗央さん。今朝から稽古着に着替えてトレーニングルームで特訓していたんです。昨日の夜何かあったのかなって思っていたんだけど、ネウロイを倒す特訓をしていたんですね」

 

と嬉しそうに言うゆりか。その表情に宮辺も疾風も少し笑う。するとインカムから

 

『こちら森中尉!こちら森中尉!!例の土星型ネウロイとの交戦にて犬走曹長、鈴仙少尉含め被弾!!敵さんすごく速い!!一瞬にして後ろを取られた!!』

 

「森中尉大丈夫か!!」

 

『体は何ともないですが、私を含め三名ユニットに被弾して戦闘継続は不可能です!』

 

「分かった。無理して戦闘するな。すぐに他の二人を連れて離脱しろ!!」

 

『了解!!何とか振り切って見せます!!』

 

疾風はすぐに被弾した三人に戦線離脱を命じた。素早い動きをするネウロイに対し、被弾で動きが鈍くなったウィッチは格好の的になる。

 

「隊長!焼津港です!!」

 

宮辺の言葉に疾風は焼津港を見ると、そこには煙の上がった港に例の土星型で・・・しかも先ほどの二メートル級ではなく10メートルと巨大化していた。その土星型は被弾し離脱しようとしている森中尉たちに襲い掛かり、森たちは機銃を撃ち応戦するがよく見ると三人ともジェットストライカーが片方破損し、ふらふらと飛んでいる状態だった

 

「まずいです!このままじゃ。三人ともやられてしまいます!!」

 

「わかっている!虹野、宮辺は三人の救出に行け。俺が奴をひきつける!!」

 

「えっ!?でも隊長!!戦闘機ではネウロイは倒せませんよ!?」

 

「倒すとは言っていない。三人が無事に地上に降りれるまで時間を稼ぐ。安心しろ。伊達に無敵の戦闘気乗りなんて呼ばれてはいない……行け!!」

 

零戦に乗る疾風は無線で厳しくそう言う。悪魔で敵を倒すのではなく時間を稼ぐのだと・・・・それを聞いた宮辺は

 

「隊長・・・・・・わかりました。ですが無茶だけはしないようにお願いします。行こう虹野さん」

 

「はい!隊長…どうかご無事で!」

 

そう言い二人は疾風の元を離れ三人の救出に向かった。そして疾風は戦闘機のゴーグルをつけ

 

「・・・・・このままむざむざとやられてなるか・・・・・・見てろ!」

 

そう言った瞬間、どこかの宇宙の恒点観測員の戦闘曲が流れ、そして疾風の戦闘機は急降下し、そして疾風は20ミリ機関砲の引き金と翼に取り付けられたロケット弾の引き金を引いた。

そして零戦の翼内から20ミリ弾、翼からロケット砲が一気に飛び出し、全弾、土星型ネウロイに命中する

その時、土星型ネウロイは標的を森から疾風の乗る零戦に変え、素早い動きで襲い掛かり疾風の乗る零戦はロケット弾を撃ち終えると急加速で左に旋回し、そしてネウロイも追いかける。しかし時速500キロの零戦にジェットの動きについてこれる土星型ネウロイはどんどんと距離を縮めてくる。

 

「よし、着いてきたな、なら!!」

 

そう言い疾風は操縦かんをグイって横に倒したとき、ネウロイの前にいた零戦の姿がパッと消える

 

「っ!?」

 

急に目の前にいた零戦が消えたことに驚いた土星型ネウロイは奇声を上げると

 

「ここにいるぞ・・・・」

 

突如、土星型ネウロイの背後に疾風の乗る零戦がまるで瞬間移動をしたかのように現れる。そして疾風はまた20ミリ機関砲でネウロイを撃つ。

その攻撃に慌てた土星型ネウロイは、これ以上は負けると思ったのか一目散に逃げて行ったのであった

 

「逃げたか・・・・・・」

 

疾風がそう言うと

 

『隊長!大丈夫ですか?』

 

そこへ宮辺がやってくる

 

「ああ、奴は逃げて行ったよ・・・・それで森中尉たちは?」

 

「はい。無事に避難することができましたが、犬走曹長、鈴仙少尉が肩と腕を負傷したとのことです。実際深い切り傷がありました」

 

「そうか…シールドを破りウィッチを殺すあのネウロイの攻撃でそのくらいの怪我だったのは幸運だったな。すぐに基地に戻って永琳先生に診てもらうように伝えろ」

 

「わかりました。今回の敵・・・・・手強いですね」

 

「ああ。シールドを破壊することのできるネウロイ。確かに厄介だ。それに戦闘機でも撃退するのがやっとだ。もし倒せるとするならウィッチの力が必要だ。だが通常戦法は効かない」

 

「それで鳳隊員に特訓をですか・・・・確かに今の飛行技術ならおおとり隊員は私より上です。ですがたった一日で倒すほどの力を身に着けられるのでしょうか?」

 

「大丈夫だ。麗央ならきっと会得できる。それは宮辺さんも彼女に期待しているんじゃないのか?」

 

「アハハ・・・・わかりますか?確かに私も彼女が強くなるのがうれしいですよ。上官にとって仲間にとっても仲間が強くなるのは嬉しいものですから、それは虹野隊員の姿を見た隊長もわかるでしょ?」

 

「はは。その通りだな。宮部さん。宮部さんたちは先に基地に戻ってくれ俺は少しよるところがあるから」

 

「はい。わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃、麗央は滝の流れを斬る特訓を続けていた

 

「はぁ!!やあぁぁぁ!!!」

 

だが、麗央は焦っていた。すぐにでもあのネウロイを倒さなければならない・・・そのための技燕返しを覚えるために滝の水を斬ることに・・・・

だが、焦れば焦るほど完成が遠のいていく、そんな悪循環が麗央に降りかかっていた。

 

「なんで・・・何で切れないの!!隊長には出来てなんで私には出来ないの!!・・・・私には無理なの?」

 

絶望感が彼女を襲い涙が流れてくる

 

「私には扶桑を・・・・世界を守ることなんて・・・・そうだ。ここには隊長や宮辺さんたちがいる・・・・・わたしなんて必要ないんだ・・・」

 

涙を流し絶望する麗央。すると背後から杖を突く音が聞こえ、そして彼女の真後ろの方でピタッと止まる

 

「っ!?」

 

麗央は振り向くとそこには疾風がいた

 

「ネウロイの襲撃があってな・・・・・何とか撃退はできたが、戦闘のせいで零戦が壊れてな、ナツオ整備長の説教でここに宇来るまでに時間がかかってしまった・・・・」

 

「そう・・・・ですか」

 

「それで麗央。お前はさっきなんて言った?自分が必要ないと聞こえたけど?」

 

疾風は静かに聞くと麗央は

 

「・・・・だって事実じゃないですか!!隊長は私よりも強い!欧州で数々のネウロイを倒している!私よりもはるかに上じゃないですか!!」

 

そう自分の感情を疾風にぶつける麗央

 

「切れないんです!どう頑張っても、どんなに時間をかけても切れないんです!!」

 

「・・・・・・」

 

「私には無理なんです!あのネウロイを倒すなんて!!飛行技術も一日でできるわけじゃない!!隊長の技だって何年かけてやっとできる技なんです!私が半日で修業をした程度でできるわけが・・・・・・」

 

麗央がそう言いかけた時

 

「かつて……馬鹿な戦闘機乗りがいた」

 

「え?」

 

「そいつは幼いころ大切な家族を戦争で失っている。そしてもう二度とそんな悲しい思いを他の人にさせまいと軍人の道に入った」

 

「それが何なんですか?」

 

「そいつは母艦乗りになった・・・・だが、最初の戦闘で敗北した・・・・それも大切仲間を大勢失い、そして本土にいた住民を敵に殺されたのにも関わらずあいつは負けたんだ」

 

「っ!?」

 

「あいつは必死に訓練を重ねた。そしてその戦闘機乗りはお前と同じよう半日程度であの技、燕返しを会得したんだ。彼は勝たなければいけなかった。これ以上かつての自分と同じように親や家族を失い悲しい思いをする人を生み出さないようにな・・・・・」

 

「それって・・・・・」

 

「麗央・・・お前ならできる。体の弱かったそいつでもできたんだぞ?」

 

そう疾風は静かに言うが麗央は

 

「でも・・・・まるで・・・できる気がしないんです・・・・」

 

「・・・・・・麗央」

 

涙を流す麗央に疾風は

 

「その顔は何だ?・・・・その目はなんだ!?・・・・その涙は何だっ!!!!!

 

【挿絵表示】

 

疾風は涙を流し絶望する麗央に厳しく言い始める

 

「泣けば強くなるのか?泣けば過激派ネウロイは地球を破壊しに来なくなるのか?他人の力ばかり当てにするな!自分の大切なものは自分の手でしか守れないんだ!!」

 

「・・・・」

 

「虹野はお前の帰りを待っている。宮部さんもお前が修行をしていると聞いて楽しみにしていた。お前を必要としている者は少なくとも二人いる!なのにお前はその二人に背を向けて逃げる気か?自分が必要ないと言う気なのか!?」

 

「・・・・・・」

 

疾風の言葉に麗央は何も言わず聞いて涙を流していた。

 

「麗央!戦う者は時に背中にいる者の涙を背負って戦わなければならない時がある。その戦う者が涙を流してどうする!!お前ならまだ守れる!!お前はもう大切なものを失ってはいけなんだ麗央!!」

 

疾風は厳しい口調で麗央に言う。疾風は麗央の気持ちを理解していた。第二の故郷であるこの扶桑を守りたいと。そして疾風も第二の故郷であるこの地球を守りたい。その気持ちは麗央と同じだ。だからこそ疾風は麗央にかつての自分と同じ思いをさせないように厳しい言葉を浴びせる

 

「で・・・でも」

 

麗央がそう言うと疾風はホルスターからワルサーP38拳銃を取り出す。

 

「た、隊長!?な、何を!?」

 

「麗央!滝の前に立つんだ!!」

 

「で…でも私には・・・」

 

「俺を信じろ!!俺もお前ならできると信じている!」

 

疾風の真剣な言葉、真剣な目を見た麗央は

 

「・・・・わかりました」

 

そう言い滝壺に入る。そして疾風は

 

「流れる滝を斬るのは簡単なことじゃない。まず流れに目標を決めろ!!」

 

「流れに・・・・目標?」

 

麗央がそう言うと疾風は頷き

 

「お前は戦士としてはまだ未熟だ。今のお前だけの力では何も守れない!だから俺が・・・・お前が戦士になれるまでの道標になる!麗央!これが今のお前への道標だ!!」

 

疾風が拳銃で滝の上に生えている気を撃ち抜く。すると落ち葉が滝に飲まれる

 

「その落ちる葉が流れの目標だ!麗央!!行けぇっ!!!」

 

「・・・・はい!!!うおぉぉぉぉーーーー!!!!」

 

疾風の言葉に麗央は滝に流れる葉を標的とし、手刀で横一文字に切る。するとどうだろう。一瞬だが、滝の流れを斬ることができた

 

「っ!?・・・・で、できた・・・」

 

「その感覚を忘れるな!麗央、もう一度行くぞ!!」

 

「は・・・はい!!」

 

疾風はそう言い再び拳銃を撃ち、弾丸は木に当たりそこから落ち葉が滝に飲まれる。そしてその落ち葉めがけて麗央はもう一度、手刀で横一文字に切ると再び滝の水を断ち切ったのだった

 

「で・・・・出来る・・・・私にも出来る」

 

と麗央は涙を流すと疾風は

 

「その涙は嬉し涙か?麗央」

 

「はい…これで守れる。私にも・・・・私にもみんなが守れます!これで胸を張って基地に帰れます!!」

 

嬉しそうに言う麗央に疾風は

 

「そうだな・・・・よく頑張ったな麗央」

 

と、優しい笑みを浮かべてそう言うと

 

「あ・・・あれ?」

 

突如、麗央は滝つぼに倒れる

 

「大丈夫か麗央?」

 

「あいたたた・・す・・すみません…その…水が冷たすぎて足の感覚が・・・・」

 

「滝の水を斬ることができて気が抜けたか?」

 

「アハハは・・・お恥ずかしい限りです」

 

「しょうがない奴だな」

 

その後技を完成させた麗央は疾風に背負われ山を降り、NAC基地へと向かうのであった。

彼女を待つ基地に・・・・・


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