ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~ 作:疾風海軍陸戦隊
麗央に特訓を言い渡した疾風は、山を下り、NAC本部に行くための港に向かっていた。すると・・・・
「・・・・・」
杖を突きながら歩いていた疾風の足が止まる。そして疾風の背後から何者かが襲い掛かり、何かを振りかざす。疾風はその攻撃をすらっとかわし、杖の先を相手に向けると・・・・
「ほお・・・・・足に怪我をし魔力を失ったと聞いたが勘だけは健在か。黒の剣士」
「俺も、まさか生きていたとは思わなかったよ。キーラ」
かつてクリス・キーラと名乗っていた女性工作員が拳銃を疾風の眉間に突きつける。
「ふふ…驚いただろ?」
「ああ。そしてお前がガリアからの助っ人だということもな」
「おや?知っていたのかい」
「ガリアで諜報に長けた元ウィッチと考えるとお前しかいないからな。それで、なぜ・・・・」
「なぜ生きているか?」
疾風の言葉にキーラはそう言うと疾風は頷く。あのガリアの戦いでキーラは死んでいたことになっている。そのキーラがなぜ生きているのか疾風はそれを知りたかった。するとキーラはいたずらな笑みを浮かべて
「私もお前のように往生際が悪い方でね」
不適の笑みでそう言う彼女に疾風は
「・・・・・・・・・なるほど、詳しく聞くなってことか。まあいい。誰にも言いたくないことの一つや二つはあるからな。本当は聞きたいが」
「まあ、ガリアで迷惑をかけたお詫びに一つだけ教えておこう。私をここに送ったのはジーナ・プレディ中佐だ」
「プレディ中佐が?」
「ああ、今私は彼女にやとわれ諜報活動をしている身でな。私が生存していることを知っているのは中佐と傍付きの軍曹だけさ」
「クハネック軍曹のことか・・・・・」
俺はジーナ中佐のそば付きをしていた彼女を思い出す。あったのは数回だが優秀な人だとマリアンから聞いたことがある
「それでジーナ中佐がなぜ、君をここに送った?」
「ガリアでの借りを返すためさ。別の任務もあるが、それは企業秘密でね」
と指を口に当てウィンクするキーラ。内容は気になるがこれ以上訊くのは野暮だと思い訊くのを辞めた。
「それで・・・・・キーラさん。あんたは正式にNACの隊員になるのか?」
「いいや。私はあくまで表では死んだ人間とされている。死んでいた方がこっちもいろいろと動きやすいからな。だから表舞台には立つつもりはないさ、影で活動させてもらうよ」
「そうか。じゃあこれを持っていた方がいいな」
キーラはそう言い笑うと疾風はキーラにあるものを渡す
「・・・・・・・これは腕時計か?」
「ナックシーバー。技術省が製作した新型通信機だ。何か情報を掴んだなら教えてくれ。こちらも協力は惜しまない」
疾風が渡したのは、にとりが開発した腕時計型携帯式の通信機であるナックシーバーであった
「・・・・・」
疾風の言葉にキーラは少し怪しむ目をする
「なぜそこまでする疾風村正。少し前まで私は敵であるネウロイ側にいておい前の命を狙い、そしてお前が足を負傷する原因を作った女だぞ。わたしは?」
キーラがそう言う。確かに彼女の言う通り、彼女はかつてガリア王党過激派に所属し、第506統合戦闘航空団『ノーブルウィッチーズ』A部隊の格納庫を爆破させ、そしてガリア諜報員クリスキーラ少佐の名をかたり、そしてその爆破事件の調査と偽り潜入。そして彼女のいた組織は過激派ネウロイ、ヤプール軍団と同盟を結んでおり、彼女の手引きにより、ネウロイの襲撃の際、疾風は生死の境をさまよう大怪我をし、そしてガリアでの戦いによって彼の右足は杖なしでは歩けないほどの重傷を負っただけではなく、魔法力を失ったのだ
その原因を作った人物に、なぜ疾風は疑わず、通信機を渡し、彼女が協力することをキーラは理解できなかった
すると疾風は
「確かにあんたは、ヤプールと手を組み、ガリアを崩壊に陥れようとした・・・・だが、黒田から聞いたよ。あの時のミサイルはお前が文字通りに命懸けで放ってくれたんだとな」
「黒田が・・・・?」
「ああ。俺の怪我については別にどうこうなんて思わない。俺は軍人・・・戦う人間だ。任務の仮定で怪我はもちろん命を落とすことは覚悟の上。俺は今回足一本の怪我で済んだと思っているよ。魔法力は失ったが、今は前の世界と同じ戦闘機のパイロットとして戦っている。案ははただ自分の仕事をしただけだ。別に恨みなんか持っていない」
「だが、それで私のことを信用することができるのか?」
「信用するしないは今後のキーラさん次第だ。それに俺はあなたがいい人だと信じていますので」
「私が・・・・いいやつだと?」
「ああ、キーラさん。あんたはガリアで俺を抹殺しようとしていたらしいけど、俺を殺すことはいつでもできたはずなのにそれをしなかった…いいや。それ以前にお前は黒田を助け自分の命を犠牲にしてまであのミサイルを放った。それにあんたの目を見ればわかる。お前の目は瞳の奥に優しさを持っている感じがした。だから俺はあんたを信じるよ。お前は悪い奴じゃないってね」
そう言う疾風にキーラは少し目を丸くし、驚いた表情をするがやがて軽いため息を吐き
「・・・・・ふぅ。黒田と言いお前と言い、扶桑人は皆、お人よしぞろいなのか?本当に変わった人種だよ。お前たちは」
「扶桑人が皆、お人よしかはどうかはわからないな、後、俺は日本人だ」
「そうだったな。忘れていたよお前は異世界人だったな。本当にお前という奴は変わったやつだな」
と、肩をすくめるキーラ。そしてキーラは腕にナックシーバーを装着する
「じゃあ、この通信機。ありがたくもらっておくよ」
そう言うと疾風のナックシーバーが鳴り出す。
「こちら疾風!」
『隊長!静岡の焼津港に例の土星型ネウロイが出現しました!』
「分かった。すぐに本部に向かう!」
宮辺の通信に疾風は答えると
「仕事かい?」
「ああ。キーラさん。一緒に来るか?」
「いや、先ほど言った通り私は陰で活動させてもらうよ」
「すまない。では先を急ぐので」
「ああ、幸運を祈るよ大尉」
そう言うと疾風は急いで山を下り、それを見送ったキーラは
「さて・・・私も動くとするか。もし何かあれば・・・・」
そう言いキーラのポケットから、キラリと黒いスティック状のものが輝いていたのだった・・・・・・・
「ああ。