ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~   作:疾風海軍陸戦隊

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第182話「クリス・キーラ、涙を忘れた少女」

暗い闇夜の中、瀕死の状態にもかかわらず疾風は最期の力を振り絞ってパ・ドカレーに向かっていた

 

『またっく、お主というやつは、私の忠告を無視しで出るとは本当の馬鹿者じゃな・・・・・』

 

「宗近・・・・・」

 

使い魔の宗近の声が疾風の頭の中に響いた

 

『お主の相棒である紫電改も、出撃するのは嫌じゃと言っておるぞ。お主をこれ以上危険な目に合わせたくないとな・・・・』

 

宗近の言葉に疾風はちらりと紫電改を見ると、紫電改のエンジン音はまるで悲しそうなそれでいてまるで主である疾風を心配しているかのように少し煙を出す

 

「紫電改・・・・・宗近・・・・すまない。だが俺はこの事態を放っておくわけにはいかない」

 

『たとえ死んでもか?妻と娘を残してお主は一人、消えていくつもりなのか?』

 

「この世界は・・・・・エイラの故郷であり、俺の第二の故郷だ。その故郷が危険に冒されているのにただじっとしていることなんて俺にはできない!!俺はこの世界の平和のために戦うんだ!」

 

『村正・・・・・そこまでこの世界のことが好きになったんだな・・・・・・・・フフッよろしい…ならばわしももう少しだけ付き合おう』

 

「すまない宗近」

 

『じゃが、さっきも警告したようにお主の能力はもはや飛ぶだけでやっとの体だ。あのキングジョーダークとかに勝つ勝算はあるのか?』

 

「はっきり言ってない。もしあるとすれば・・・・・・」

 

『二刀流は禁じてじゃぞ。それにお主の現在の体力では発動することは不可能じゃ、仮にできたとしても力がもはや一割以下しか出ないお前が放ってもあのキングジョーダークに通用するとも限らんからの。下手な博打は止めておけ無駄に命を縮めることになるぞ』

 

「わかってる。だがこうしている間にも黒田たちやパ・ドカレーの軍港が危ない。もしスキルコネクトが通用しなければ・・・・・」

 

『二刀流を使えば間違いなく主は死ぬぞ?』

 

宗近が真剣になってそう言うと

 

「黒田やキーラをほおっておくことはできない。あのヤプールだ。きっとあの二人を殺すだろう」

 

『黒田はともかく。なんでキーラまで助けようとする?お前の命を狙った女だぞ?』

 

「・・・・・・・」

 

確かに宗近の言う通りキーラは506を解散させ貴族中心の部隊を作ろうと暗躍する組織の一員であり敵である過激派ネウロイと接触し俺の命を狙った。だが疾風は初めてキーラと会ったときに何か感じるものがあったのだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だせー!!ここから出して!!」

 

何処にあるかわからない暗い空間の中、ヤプールによってとらえられた。黒田が見えない壁を叩きそう叫んでいた

 

「無駄だ黒田・・・・・・叫んで出してくれるのならとっくに我々は解放されている」

 

傷口を押さえてそう言うキーラ。そう言われ黒田は

 

「キーラさんは何でそんな冷静なの!」

 

「冷静・・・ね。慌てて解決できるなら私だってそうする。今は無駄に体力を消耗したくはないからな。お前も無駄だとわかったら大人しくして色、私がつけた傷が広がり、死ぬぞ?お前はまだここで死ぬつもりはないんだろ?」

 

キーラのその言葉に黒田は黙って座ると、キーラは

 

「・・・・ふっ。王党派のスパイでありウィッチである私も大馬鹿なことをした。あんな奴の口車に乗せられるとはな・・・・あいつは最初からこのガリアを狙っていたというのに」

 

自らの行動を皮肉り苦笑を浮かべるキーラに黒田は

 

「ねえ、キーラさん。本当にこれがキーラさんのやりたかったことなの?」

 

黒田は傷口を押さえて、そう言うとキーラは

 

「黒田。お前はどうかは知らないが、生き方を自ら決められる人間がどれだけいるかわかるか?・・・・・これは私の人生であり義務なんだ」

 

「でもキーラさんはそれを望んではいなかったんだよね?何でこんなことを・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

黒田の言葉にキーラはちらと黒田を見るとキーラは黒田の姿がある少女と重なって見えた。

 

「今から話すことは下らない妄言であり独り言だ。黙って聞き流せ・・・・・・」

 

そう言うと黒田は黙ってうなずきキーラは語りだしたのだった

 

 

 

 

 

ある所にみすぼらしい少女がいた。そいつは貴族の娘ではあったが愛人の子だった。母親が死に、父親に引き取られた彼女であったが、両親が少女にしたのはまさに犬猫のような家畜同然の扱いだった。

掃除に洗濯などはまだいいが、服はボロボロで食事もめったに出ず、良くて硬いパンとスープが出るだけだ。

そんな地獄のような日々の中で彼女に一つの小さな光が差し込んでいた。それは両親の実の娘であった。年齢は少女よりも下であり彼女は父親の愛人の娘である少女に対し、とても優しく、少女のことを「お姉様」と呼んで慕っていた。

そんな彼女に少女は自分に対しての同情か、それとも自分が優しいと他人に思わせたいのかと思い不信感を持てはいたが、次第に彼女は本当に少女のことを慕っていたことを知ると次第に仲が良くなり、両親がいない日は・・・・・

 

『お姉さま、一緒に遊ぼう?』

 

『え?・・・・でも私がお嬢様と一緒に遊ぶなんて・・・・・それに今私は・・・・』

 

『お父様もお母様も今日はロンドンに行ってしばらくは帰ってこないわ。それに私と一緒に遊んでくれる人、いないもん・・・・・』

 

『・・・・分かった。でもこの掃除が終わった後でいい?』

 

『うん!あ、私も手伝うお姉さま』

 

『え?いやでもお前に掃除させるには・・・・』

 

『私がしたいからするだけ。それに一緒にやったら早くお姉さまと遊べるもん!』

 

『やれやれ・・・・困った妹だな・・・・』

 

『えへへ・・・・』

 

毎日辛い日々を送っていた少女だったが、妹と一緒にいるこの時間だけが唯一の幸せな時間だった。少女もこんな日々が一生続いてほしいと願ったに違いない。だが、幸せは続かなかった。

数年後、10歳くらいになった少女に魔法力がありウィッチであることが発覚し、そして貴族の実娘にも魔法力があることが発覚した。しかし貴族の男は隠し子がウィッチになり軍に入れられるとその子が愛人との子であり自分の家に名が傷つくのを恐れ、軍が来る前によく邪魔物の政治家や富豪たちを消すために暗殺依頼をしていた暗殺組織に少女を売り渡し、軍には自分の実娘を渡したのだった。

 

暗殺組織に売り渡された少女は、幹部たちに暗殺術や諜報のすべてを叩き込まれ、そして彼らの組織が掲げる、貴族中心の社会、王党派などの教育も施された。

少女は暗殺者になり、多数の命に手をかけた。一生、日を見ることのない闇の仕事に彼女はただ無心になって仕事をこなしていた。

だが、そんな冷酷な暗殺者になった彼女にも唯一の楽しみがあった。それはひそかにとあるウィッチの訓練基地を訪問し自分の妹を見ることであった。あれ以来あっていない妹が元気な姿でいるのを見て少女は安心した表情をし、彼女を見守っていた。

そしてある時だ。暗殺の仕事を終え、町の中をふらついているとき・・・・

 

『・・・・・お姉さま?』

 

「・・・・ん?」

 

ふいに一人のウィッチに声をかけられた。それは妹であった。それは数年ぶりの再会でもあった。そして二人は喫茶店に入り、いろんなことを話した

 

『そうか・・・・・少佐になったのか』

 

『形だけだけどね。ねえ、お姉さまはどんな仕事を?もしかしてウィッチとしてどこかの空軍に所属しているの?』

 

『いいや・・・・私は軍には入っていないさ。まあいろんな情報を集めたりする仕事かな?』

 

『じゃあ、探偵さん?お姉さま、昔探偵に憧れていたから』

 

『アハハ・・・・まあ、そんなものかな?』

 

と、そんなふうに昔に戻り仲良く話をする二人、

 

『ねえ、お姉さま。また会える?』

 

『さぁ?仕事柄なかなか会えないとは思うが、互いに空いた時間があればまたこうして話そう』

 

『うん。じゃあ私はそろそろ帰るよ。久しぶりに話せてよかったわ』

 

『私もだ・・・・・お前が元気で本当によかったよ・・・・』

 

そう言い二人は別れた。これが最後の会話になることも知らずに・・・・・

 

 

 

数日後、カールスラント撤退戦が起きた。その時、パリにいた少女はそこで信じられないことを聞くのだった・・・・

 

「なっ……妹が……死んだ?」

 

上司から告げられた言葉に少女は目を見開き思わず手に持っていた書類を落とした

 

『ああ、そうだ。カールスラントで起きた撤退戦でな。部隊は全滅。生き残りはゼロだそうだ』

 

その言葉に少女は

 

「な・・・なぜだ!なぜ!あいつの部隊は物資や武器そして人材にも強者ばかりだ!なぜ全滅したんだ!!』

 

我を忘れ、上司の襟首をつかみそう言うと上司は

 

「最初はネウロイによって多勢に無勢で全滅したという報告がされたが詳しく調べた結果、後方にいたリベリオンの軍がお前の妹のいた部隊に援軍を出さず代わりに同じリベリオンのウィッチに援軍を送ったそうだ。その結果、物資弾薬が尽き、しかも援軍のないお前の妹の部隊は全滅したのだ・・・・お前の妹は民主主義だ共和だとほざく連中に見殺しにされたのだ」

 

「り、リベリアンが・・・・・・」

 

上司の言葉に少女の何かが崩れた。そしてそれと同時に少女はリベリオンや民主主義派の人間に対し激しい憎悪を抱いた。自分にとって唯一大切な存在であった妹の命を奪った連中が憎かったのだ。

 

「妹の仇を取りたいのかね?」

 

「ああ・・・・もちろんだ。貴族中心の世だったら、リベリアンがいなければ妹は死なずに済んだ。なら私はガリアをかつての古き良き貴族社会に戻すためになんだってやってやる。たとえ悪魔に魂を売っても必ず妹の仇を討つ!!」

 

その瞬間彼女は変わってしまった。かつて妹が慕った心優しい姉である少女の面影はもはやなかった。今の彼女はただ復讐に燃える悪魔となったのだった。

その後、彼女は次々と組織に邪魔な共和派の政治家たちを始末し続けた。そしてある時、ガリアがネウロイの手によって解放され数か月後にパリを防衛するため、新たな統合戦闘航空団が設立された。それが506ノーブルウィッチーズである。貴族中心で結成されるはずの部隊であったがそこでリベリオンの介入があり部隊は貴族中心のA部隊、リベリオン中心のB部隊に分かれた。これを快く思わない組織は506を解散させるために動き出した。そしてその作戦に少女は自ら志願した。妹を見殺しにしたリベリオンの復讐のために・・・・

そして同じころにヤプールと名乗る者がその作戦の協力を申し出た。そいつはネウロイではあったが組織はそのヤプールを歓迎する。少女は本来敵であるネウロイとの同盟に嫌悪感を抱いたがそれで妹の仇をとてるのなら組織の目的を達成できるのならと納得した。

そしてその後、少女はある諜報員の女性に成りすますためその女を始末した。無論誰にも見つからないように念入りと始末した。

そして506に行きやすいように仲間の一人が格納庫を爆発し、少女はその事件を調べる諜報員として506に潜入したのだ

 

「初めましてグリュンネ少佐」

 

「お目にかかったことがあったかしら?あなたは?」

 

「私はガリア諜報部のクリス・キーラ少佐だ・・・・・」

 

 

 

 

 

「・・・・・・・」

 

キーラが一通りの独り言を言い終えた時、黒田は何も言えなかったが

 

「ねえ、・・・・その貴族のウィッチのお姉さんってもしかしてキーラさ・・・・」

 

そう言いかけた時、急にサイレンが鳴る

 

「えっ!?なに!?」

 

「・・・・・・・」

 

黒田が驚くと二人の前に映画のモニターのように映像がうつりだした。そこに映し出されたのはガリアのパ・ドカレー港で、その港にキングジョーダークが襲撃していた。

 

「パ・ドカレー港が・・・・・」

 

「奴らめ…いよいよ本格的に侵略を始めたな」

 

二人がそう言った瞬間、キングジョーダークは軍艦に向けてレーザーを放とうとした。だが、その瞬間、何者かがキングジョーダークに体当たりした。それは黒い服黒いコートを着た少年であっった

そう、それは疾風であったのだった

 




クリス・キーラと名乗る女性スパイは506キャラで個人的に好きなキャラです。第三期にも506と一緒に出てほしいと思っています

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