ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~ 作:疾風海軍陸戦隊
ED「鋼鉄ノ鳥」
劇も終わりセダンへと戻った506のA、B両部隊。彼女らは今室で先ほどの劇のことを話していた
「いや~子供たち喜んでくれてよかったですね。今日の演劇は大成功でした!」
「確かにの。去年のアレに比べたら大成功じゃな。のうカール大尉?」
「確かにな。劇の内容はともかく。子供たちを喜ばせたなら成功だな」
「確かにクライマックスのキーラさんの変身姿は見ものでした!」
「これ以上言うな。なぜ私があんな変な格好を・・・・・・」
皆はそれぞれに面白かったところを言い始めた。
「それに疾風さんのジュリエット姿も可愛かったですよ!!」
そして黒田は疾風に向かってそう言うのだが、とうの疾風は部屋の隅っこで壁に向かって体育座りをしていた
「だ、大丈夫ですか疾風さん?」
「アハハ・・・・大丈夫だよジェニファー」
「ジェニファー気にするなあいつの黒歴史が一つ増えただけだ。すぐに元に戻るだろ?」
「それにしても疾風の演技すごかったな。カメラで記録してみたかったな」
「それなら心配ないわアイザック。このスマホで録画してたから」
「へ~それ、携帯機能じゃなくて録画もできるの。未来、もとい異世界の技術恐るべし」
「ほかにも記者さんのカメラを借りて数十枚撮ったわ。これを出版社に売れば高く売れるわ」
「ちょっと待てエミリア!?」
すると先ほどまで体育座りをしていた疾風が顔色を変えてエミリアにつかみかかり
「い、今お前、録画と言っていたけど、まさかそれってエイラたちに見せる気はないだろうな?あと写真も!!」
「え~いいじゃない。彼氏、もとい夫の迫真の演技、奥さんに見せたいと思わないの?」
「いいから、や・め・ろ!!」
「はいはい。わかったわよ。まったくあなたは照屋さんね」
「誰が照れ屋だ。それと写真も撮ったって言ってたが・・・・」
「ああ、あれ?記者の人に渡す前にバルクホルン大尉が全部買い占めたわよ。ものすごいニヤニヤした表情で。正直言ってちょっと引いたわ(実はこっそり一枚だけペテルブルグに送ったことは黙っておこう。なんか面白いこと起きそうだし)」
「義姉さん・・・・・」
疾風は頭を抱えてそう呟くと
「へ~結構仲がいいじゃないか。噂ではAとBは仲が悪いと聞いたんだが、噂は当てにならないな」
突如ドアがノックされ銭形刑事と同じトレンチコートを着た小柄な女が入ってきた
「えぇっと・・・・あなたは?」
「おっと、悪かった。俺はサマンサ・スペード、ニューヨーク市警の2級刑事だ。ジーナ・プレディと疾風村正大尉はここにいるか?」
「「ニューヨーク市警の刑事?」」
帽子をくいッと挙げてそう言うスペード刑事。
「疾風なら俺だけど?」
「おお、君が疾風大尉か。お前のことはサチコから聞いていたよ」
「サチコ?・・・・・・・ああ、銭形さんか。と、すると君が前に銭形さんの言っていたリベリオンの刑事のサムさん?」
「ああ、そうだ。それにしても想像していたのよりは背が小さいし女の子っぽい顔つきなんだな。もっと背が高くてかっこいい感じだと思っていたんだが?」
「余計なお世話だ。ちょっと気にしているんだ」
「あ、すまない悪気はないんだ・・・・・」
申し訳なさそうにサムがそう言うと黒田が
「うわわわ…すっごい!本物!?バッジ見せて!バッジ!」
「なんなんだ、その喰いつきようは?」
「だってアドリアーナさん!よく映画で見るじゃないですか!西部劇の保安官とメジャーリーガーに並ぶリベリアンヒーローですよ!」
「そういえば黒田さん映画好きだったね」
「ヒーロー・・・・・・お前、よくわかってるじゃねえか!ほれ」
映画でよく見るヒーローの登場に大興奮の黒田にサマンサがバッジを自慢げに見せた。
「それで、その刑事さんとやらが一体何か用かな?」
「キーラさん?」
「確か、市警からはガリア警察にも軍にも正式な協力依頼は届いていない。そもそも、本当に市警の刑事なのか?そんなバッジなどいくらでも偽造できる」
「捜査・・・・それはセダンの爆破事件のか?・・・・・・あんたは506の人間じゃなさそうだな」
「ご名答、私はガリアの諜報部の者だ。まずは私を通してもらおうか?」
キーラが目を細めてそう言うとサムは警察手帳をしまうと
「俺は市警の命令で海を渡ってきたわけじゃねえ。俺個人の調査で…」
「遅くなりました」
サムが話し始めると同時にジーナが入ってきた。
「おかえりなさい、中佐」
グリュンネ少佐に言われ気がついたサムは振り返ると目の前に立つジーナの傍に行きそして
「お前がジーナ、いやG・Pか?」
「!」
彼女の言葉にジーナは目を見開くしばらく無言であったが
「私をそう呼ぶのは…マーフィの知り合いか?」
「ようやく会えたぜ、マーフィは、俺の親友のマーフィは先日死体で発見された・・・俺はその黒幕を追っている」
サムの言葉にジーナは驚く中、
「「「マーフィー?」」」
「マーフィーって、マイロ・・・・」
「エミリア。話がややこしくなるから黙っていろ」
周りのみんなは訳がわからず首をかしげる。するとジーナはいつもとは明らかに違う暗い口調で返事した。
「ここでは落ち着いて話せそうにないな。B部隊の基地に戻りながらでもいいか?」
「ああ、構わないぜ」
「ならば私も同行しよう。こちらの捜査に関わっている可能性があるからな」
と、そう言いキーラは準備をすると言って部屋を出るのであった。そしてキーラは廊下を歩いていると
「やあ、なかなかの演技だったよ」
廊下の隅の柱によりかかっている白衣を着た女性が現れニヤッと笑いながらそう言うとキーラは
「余計なお世話だ同志よ・・・・・・それでなんの用だ?」
「なに?あいつらと過ごすうちに、あんたが心変わりしていないかちょっと見に来ただけさ」
「その心配は必要ない。あんなのタダの表面的な物だ。私の決意や信念は変わらないさ」
「そうかい。それを聞いて安心した。それよりあんたあの刑事と一緒にディジョンに行くみたいだがあの刑事に来た内容を知ったらどうする?」
「内容によっては口を塞ぐ。あの記者同様にな・・・・・・」
「それはあまりお勧めしないわね」
「・・・・・なぜだ?」
「あんたが手を出せば。ボロが出るし、何よりあんたはまだあの両部隊隊長に警戒されている。変な行動は慎むべきだ」
「なら、やめろと?」
「あんたが手を出すのはな。あいつらを始末するのは私に任せな。ただ、ちょっとあんたの力は借りるけどな」
「ほぉ?どうやってだ?」
「それはおいおいとわかるだろう。あいつらがここを出るのは何分後だ?キーラ」
「そうだね~今すぐ・・・と言いたいところだが早くて5分だろうね」
「ふっ・・・・・5分のあれば何でもできる。後はあいつ、疾風を誘き出すか・・・・・キーラ。貴様、ユニットのことは詳しいか?」
「ま、人並み程度にはな。もう、もう一人の仲間に頼んで準備はできている。後はタイミングだけだ」
「さすが諜報員となると仕事が速い。タイミングのことなら問題ない・・・・・・プロジェクトペダン及び黒い狼の処刑の発動だ」
と、彼女がそう言うとキーラはにやりと笑うのであった。
そして数分後、B部隊はディジョンへと向けてジープに乗り出発した。その中の一台ではマリアン、疾風、エミリア、カーラ、ジェニファーそして邦佳が乗っていた。
「いきなりやってきて何者なんだあの刑事は…」
「さあ、何か物騒でしたね?」
「面倒事じゃないといいけどなぁ」
「そうだな、これ以上増えるのは勘弁だ」
「え?」
そう言うとマリアンは後部座席に座る邦佳を見る。後部座席は本来5人乗りなのになぜか6人乗ったため4人が座ってすし詰め状態だった
「良く、グリュンネ隊長の許可が下りましたね」
「だってもっと刑事さんみたいじゃないですか!」
「Aで厄介払いされたんだろ」
「酷い!」
「黒田、コーラ飲むか?」
マリアンは面倒そうだったがカーラは暢気にコーラを渡していた
「ごめんなマリアン。無理を言って」
「い、いや、別に疾風たちを責めているわけじゃないんだ」
「む~マリアンさん私に比べて疾風さんだとなんか優しいですね?」
「お前の場合は、日ごろの行いだろ?」
「またも酷い!」
と、そんな会話がされている中、前を走るジープではジーナとキーラ。そしてサムことサマンサが乗っていた
「さて自称刑事殿、詳しく話を聞かせてもらうか?」
「なんで取り調べみたいになってるんだよ」
「先ほどセダンでもいったろ?そちらの捜査に関わっている可能性があるっと話を戻すが、まずマーフィーというのは何者だ?」
と、キーラが説明するとサマンサの代わりにジーナが答えた
「彼は私と同郷のリベリオンの記者だよ。よく仕事を頼んでいたが、少し前から消息を絶っていた。」
「ほほう、つまり中佐はその彼が消息を絶つ前に何かを依頼していたという事かな?」
「俺が知りたいのは奴に何を負わせていたかだ。教えてくれ」
ジーナは後ろのキーラをちらりと見ると答えた。
「まあいい、これには何の確証もないが彼に探らせていたのは506の解散を目論む動きだ。水面下で動くそれを察知した私とグリュンネ少佐はリベリオン政府の動きの他、あると仮説を立てマーフィに探らせた。そして何かを掴んだと連絡してきた数日後…」
「冷たくなって見つかった・・・・・というわけか」
そう言うとサマンサは胸ポケットから何枚かの書類みたいなのを出す
「ここに奴の遺産がある」
「レポート?」
「ああ、これによればセダン基地内に内通者がいる可能性が指摘されている。爆破事件を起こしたのもそいつかも知れいない。それだけじゃない。このレポートには内通者だけじゃなく殺人鬼ジャックザリッパーに殺人を依頼した人物についても書かれていた」
「なぜ、君が国家機密であるその事件を知っている?」
「サチコから、聞いた」
「サチコ・・・・・ああ、あの疾風の付き添いだった扶桑の刑事か。今は入院中だったな。彼女と知り合いなのか?」
「ああ、互いに刑事になる前からの古い友人だよ。とにかく俺はマーフィを殺し、サチ子に怪我をさせた奴を許せない。内通者を必ず見つけ出し黒幕を突き止めるつもりだ」
強い意志でそういう彼女に二人は沈黙するとサマンサが
「なあ、しばらくあんたの基地にいてもいいか?この二つの事件とマーフィー殺しと繋がっていてそうだしな」
「私はかまわないが・・・・・キーラ少佐の方はどうだ?」
「私の捜査の権限はセダンに限られたものだ。従ってその質問に意味はない」
そうこうしているうちに二台のジープはディジョン基地に到着する。そして到着するとジーナはマリアンに
「カール大尉。こちらの刑事さんが滞在することになった、できる限りの便宜を図ってくれ」
「どうして私なんです!?」
「消去法で行くならカール大尉しかいない」
「・・・・・」
その言葉にマリアンは返す言葉が無く。マリアンは了承したのであった。するとサマンサはその場を去ろうとするジーナを呼び止める
「最後に一つ、マーフィはあんたにとってただの情報屋だったのか?」
聞かれたジーナが振り返る。
「前に取材を受けた時に同郷という事が分かって意気投合したんだ。友人、と言った方が近いだろうな」
「そうか、友情に殉じるなんて古いタイプのブン屋だぜ」
「そう言う男の事件を追って海を渡るのも古いタイプの刑事だ。」
「ふ、違いない。ありがとよ」
と、礼を言う中、遠くの方ではマリアンが
「はぁ・・・・何で私が…私隊長に嫌われているのかな?」
「むしろ一番信頼されていると思いますよ?」
「大丈夫だマリアン。俺も手伝ってやるから」
「私もできる限りのことはするから・・・・・」
と、落ち込んでいるマリアンを黒田と疾風とエミリアが励ます。その後、基地の隅で4人はサマンサから事情を聞いていた
「「506を解散させる動き!?」」
「一大事じゃないですか!」
「ああ、マーフィを消した黒幕を暴くためにもまずはその内通者を炙り出す。地道だが聞き込んで回るしかないだろうな」
「この広い基地をか?」
「・・・・・・」
マリアンの突込みにサムは黙ると
「そのレポートを渡して貰えれば情報部でも分析できるが?」
「キーラさん」
いつの間にやって来たのかキーラがいた。するとサマンサは
「いや、これは俺の事件だ。あんたの手は借りないよ」
「孤立無援での調査で成果が上がるかな?」
「そんな事ありませんよ!」
キーラの言葉に黒田は否定し
「マリアンさんや疾風さん、エミリアさんが便宜を図ってくれますし私だっているし、それにキーラさんだってもう一緒に劇をやって仲間だしね!」
「・・・・・・」
黒田の言葉にキーラは珍しく目を丸くし、
「そうね黒田の言う通りね。ねえ、ジュリエットにキーラギドラさん?」
「「その呼び名はやめろ」」
エミリアの言葉にキーラと疾風はジト目で嫌そうにエミリアに言う。そして黒田は話題を変える
「それにしても何で506を解散させたいんでしょうね?」
「、今の506は貴族派のブリタニアと貴族抜きを考えるリベリオンの揉め事によって生まれた部隊だからね。今の部隊が気に入らないんでしょ。まあ、簡単に言えば都合のいい506を設立させたいんでしょ?その内通者さんという人は」
「エミリアさん。詳しいですね?」
「私も斯くいう似たような立場だったからね」
「確かにお前元テロリストだったもんな。でもお前の率いる部隊の連中を中立地帯で見かけたことがあったが、なんかお嬢様風で?そうには見えなかったな?」
「革命家と呼んでほしいわね疾風。それにそれを言うならあんたが率いていた501戦闘隊の方がよっぽどテロリストっぽかったわよ。なんか噛みついてきそうだったし」
「まあ、俺の部隊の連中、問題児とか血の気の多い連中が多かったからな。次第には他の同僚から『空の暴走族』なんて言われる始末だったし」
「あんたも大変だったのね」
「まあ、杉田がいろいろアドバイスしてくれたおかげで何とかなっていたけどな。まあ、けどあいつら結構気がいい奴らだったし、仲も悪くなく楽しい生活だったぞ?」
と、そんな話をすると、キーラはコホンと咳ばらいをし
「まあ、どちらにせよまだ犯人は捕まっていない。そのマーフィのレポートにしたところでただのアルコール中毒者の妄想かもしれず証拠能力はゼロだ。」
「う~!だんだん映画みたいになってきた~!」
と、喜ぶ黒田
「何喜んでいるの黒田さん?・・・・・というより疾風。お前大丈夫か?」
「え?何がだエミリア?」
「いや、あんたの顔。なんかやつれているうえに顔色悪いし、劇で疲れたのか?」
「そ、そうかもしれないな・・・・・」
と、乾いた笑みをする疾風。その表情に疑問を持つエミリア。すると
「どうかしたんですか、皆さん?」
そこへジェニファーがやってくる
「ああ、ジェニファー・・・実はな」
マリアンはジェニファーに基地に内通者がいることを説明した
「内通者…ですか?内通者の名前のイニシャルとかなかったのか?」
「ああ、あったみたいんだが、このレポートを見たんだが何枚か抜き取られた形跡があってな。恐らく犯人はマーフィーを殺した後自身の名やそれに関する手掛かりになる書類を抜き取って逃げた可能性があるな」
「もし、内通者が本当にいたとして、あくまで仮設の話すなんですけど。内通者なら、目立たないようにして外に情報を流すものでしょう?どうしてあんな派手な破壊工作や殺人鬼を使って行ったのか・・・・・」
「内通者がいたとしても爆弾騒ぎとは関係ない可能性もあるってことか?」
「・・・・あるいは」
ジェニファーがキーラをちらっと見て
「事情が変わって、内通者自身が動かなくてはならなくなった・・・・とか?」
「それも一つの可能性だ」
ジェニファーの言葉にキーラはふっと笑う。そしてサマンサは帽子を深く被り
「ふーむ、まずはセダンの捜査から始めるのが常套か。明日にでも向かってみるか」
サマンサは立ち上がり言うとマリアンが反応した。
「え?おい、まさか私にもセダンに行けって言うんじゃ?」
「みんな歓迎してくれますよ?」
「な訳ないだろ!なあジェニファー頼むから変わって…」
マリアンがそう言いかけた時、突如、基地からサイレンが鳴り響く。そのサイレンに皆が驚く
「なっ!?まさかネウロイ!?」
「あ、あそこ!!」
皆が驚く中、黒田があるところを指さす。その場所には基地の真正面の所から、四つの円盤形のネウロイが飛んで現れる。
「なっ!?あんな近く!観測班は何をしていたんだ」
「あれ?あのネウロイ動きがおかしいよ!?」
黒田の言う通り、その円盤ネウロイは基地の数百メートル前で合体を始めた。
まず、二股に分かれた円盤ネウロイが着地して足になると、その上から小型ネウロイが合体し、腰になり、その上に半球状になった円盤ネウロイがドッキングして腹と胸になり、最後の円盤が最上部で頭と腕になって、ついには中型クラスのロボットのようなネウロイの姿に変わり始める。それは、以前にブリタニア空軍のマロニーがネウロイのコアを利用して作ったウォーロックに似たロボット型ネウロイに変身したのであった。そしてそのロボット型ネウロイは不気味な機械音を発しながら基地へと近づくのであった