ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~ 作:疾風海軍陸戦隊
506のイメージアップの為に始まった506の慰問演劇。遂に幕が上がり、部隊の前には男装をしたハインリーケ。そしてその横には語り部であるアイザックがいた。
そして語り部であるアイザックは語りだす
「その昔・・・美しき都ヴェローナには『古くからたいへん仲の悪い二つの名家がありました』」
アイザックの言葉に子供と来賓の人たちが興味津々に見ている中、ペリーヌは
「(『真†ロミオとジュリエット』!?以前の見に来た演劇に比べてはシンプルな題名ですが・・・・・それよりもロミオ役が疾風さんじゃなくてハインリーケ大尉・・・・・じゃあ、疾風さんは一体何の役なの?)」
と、疑問に思う中、演劇は続く
『だが、何たること!!運命の導きでこの敵同士の家から恋が生まれようとしたのです!』
アイザックがそう言うと
「ロミオよ!貴様は今何と申した?」
照明が上手の方を照らすとそこにはタキシードを着て付け髭を付けたキーラがいた
「我が宿敵の息子であるお前に我が愛しの娘ジュリエットをやるわけにはいかん!!」
迫真の演技でそういうキーラだったのだが・・・・
「ブフッ!!ちょ…ちょび髭」
キーラの付け髭姿を見たハインリーケは思わず吹き出してしまう。それを見たキーラは恥ずかしさと怒りでギロッっとハインリーケを睨み
「(ちょっと姫さん。笑ったらだめだよ)」
「(す、すまない・・・・これも子供のため506の存続にかかわる事案じゃからな!)」
アイザックの小声にハインリーケは頷き笑いを堪えて
「で、ですが伯爵殿!私は貴殿の娘に恋をしてしまったのです!どうか、愛しきジュリエットの交際を認めてください!!」
「ふっ・・・・恋だと?くだらない妄想もたいがいにしたまえ。そんなにジュリエットが欲しいのなら、明日の夜力づくで奪いに来るがよい!だがお主がこの屋敷に来た時は容赦なく貴様の命を取るだろう。今夜はジュリエットとの最後の別れを楽しむがいいロミオよ」
そう言いキーラが退場するのと同時に舞台にある大道具のバルコニーに照明が当たると、バルコニーの窓から黒い長髪できれいなドレスを着た女性が出てくる
「おお、ロミオ。愛しきロミオ様・・・・早く、あなたに会いとうございます・・・ああ、ロミオ様。なぜ私たちの両親はこれほどまでに憎しみ合うのでしょうか。本来なら私たちのように手を取り合い想い合うこともできるのに!私もロミオ様を思う気持ちを半分でも理解できればきっと・・・・」
ジュリエットの迫真の演技にハインリーケは
「(おおっ!さすがじゃ大尉。練習の時でもそうじゃったがこれほどの才とは・・・・これはわらわも負けてはおれぬな!)おお、愛しきジュリエット。必ず・・・・必ず明日の夜。君を迎えに来る。だからそれまでの間辛抱してくれ!」
「いつでもお待ちしております。ロミオ様・・・・・」
と凛とした声でハインリーケにそういう少女、そして観客席では
「うわ~奇麗な人!」
「可愛い!」
「誰でしょうかあの美少女は?」
「506にあんなウィッチいたか?」
と、子供たちや来賓がそう話す中ペリーヌは目を丸くし唖然としていた
「(あ、あれって・・・・・疾風さん!?)」
眼鏡にひびが入るほどの衝撃を受けるペリーヌ。そうジュリエットを演じている人物は疾風であった。髪は鬘を被り、エミリアに化粧をさせられて今舞台に立っているのだ。因みに声は彼の得意技の一つである声真似で自身の亡くなった姉である疾風圭子の声を真似て喋っているのである(疾風は何度も姉の霊に出会っているため声真似ができる)。疾風の演技を見ている506メンバーは
「うわ~疾風さん。完璧に女の子ですね。それに演技も上手い」
「もともと顔立ちが女性よりだからねあいつは」
「でもすごいですね疾風さん。声も女性っぽくできるなんて」
「なんでも大尉の知り合いの声を真似ているらしい」
「一種の才能だな」
と舞台裏でそう話す中、観客席にいるペリーヌは不意に疾風と目が合う。その時の疾風の目は僅かに光の無い目をしていた。そして
『すまない、ペリーヌ。何も言わないでくれ・・・・・あと・・・・』
『わかってます。わかってます。大丈夫です疾風さん。エイラさんたちには言いませんので・・・・・・大変ですね疾風さんも』
『すまない・・・・恩に着る』
と、捨てられた子犬のような目でそう語っていてペリーヌも同情した目でそう返事していた。そんな中、演劇は続く。
『ロミオは屋敷に閉じ込められているジュリエットと再び会うため、屋敷を飛び立とうとする。召使の制止も聞かず愛するジュリエットの元へ行こうとします』
アイザックのナレーションにハインリーケの前にメイド姿をしたジーナ中佐が
「本当に行ってしまわれるのですか?」
「・・・・・・」
誰から見てもひどい棒読みに一瞬、ハインリーケは固まり。舞台裏では
「まるで腹話術人形が喋ってるみたいな棒読みね・・・・・」
「プレディー隊長・・・・・ここまで来て直せなかったのか・・・・・」
「本人も頑張って練習していたんですけど・・・・」
と、苦笑で見守る中
「ジュリエットさまの家の物があなた様のお命を狙っております」
「すまない。例えどんなに危険な道だとしても、私はいかねばならないのだ。今も彼女はあのバルコニーの部屋で閉じ込められている。一刻も早く迎えに行かなければならぬのだ」
とそう言い先に進もうとするハインリーケ。すると
「お待ちになってロミオ様」
ジーナが止め、そしてハインリーケにある物を渡す。それは筒状のカプセルみたいなものであった
「・・・・・これは?」
「あなた様の家に代々伝わるものです。もしピンチになった時はこのカプセルについている赤いボタンを押してください」
「・・・・・・わかった。感謝する」
『そう言いカプセルを受け取ったロミオは愛するジュリエットへと向かう・・・・』
と、そう言うとアイザックは舞台裏にいるエミリアの顔を見て
「(じゃあエミリアさん。そろそろ始める?)」
「(ええ、本当のショーはこれからよ・・・・)」
とアイコンタクトをとった瞬間
「お待ちくださいロミオ様!!」
「っ!?」
その声にハインリーケは驚くと舞台から黒田が出てくる
「(く、黒田!?なぜお主がこんなところに?まだお主の出番じゃないはず・・・・・!?)」
ハインリーケは驚く中アイザックは
『おっと!ここで謎の少女が登場!果たして誰なのでしょうか!?』
「私の名はジョセフィーヌ・・・・・・・ロミオ様の本当の恋人です!!」
「「「「「っ!?」」」」」
その衝撃の言葉に皆は目を丸くしアイザックは
『なんと!まさかのロミオの二股疑惑!?これは一体どういう事でしょうか!?もしこれが本当なら純愛どころではありません!まさに女の敵です!!』
「て、おい!?バーガンデール少尉!!なんじゃこれは!?台本と違うぞ!?」
余りの衝撃佐にハインリーケがアイザックに詰め寄ると
「これはエミリアさんの提案で~」
「なに?」
ハインリーケはジロリとエミリアを睨むと
「ふふ~物語にはアクシデントという者が大切なのよ。と、言うわけでここから後半はアドリブ演劇になるわよ~♪」
「きさまっ!?通りで練習の時、台本の後半のセリフがあやふやなのと最後に書かれた『後半は想像で』というのはこのことか!?もしやおぬし最初から仕組んでいたな!?黒田中尉はまだしもまさか疾風やカール大尉も!?」
「いや、今回疾風さんとカール大尉は関係ないよ。この台本の最終整理をしたのは僕とエミリアさんだからね~」
と、ハインリーケは周りを見ると、舞台裏にいるジェニファーやマリアンはもちろんバルコニーにいるジュリエットこと疾風も何が何だかわからい表情をしていた。恐らく二人の言っていることは事実であろう
「おぬしら・・・」
「はははっ!大尉。人生も物語もすべて台本通りに行くことなんてないのよ。自分の人生や物語は自分自身で演じないと。ともかくここからはあなたの本心で演じなさい。ほら早く戻ってお客も子供たちも見ているんだから」
「うっ・・・・・」
ハインリーケはちらっと観客席を見ると子供たちや来賓たちがじーとジト目で見ている。それを見たハインリーケは・・・・
「これは・・・・・やるしかないようじゃの・・・・・」
苦笑し、アドリブで演劇を続けることを決意する
「い、いったい何のことだジョセフィーヌとやら?君は何か誤解をしているようだが?」
アドリブでそういうハインリーケ。すると・・・・・
「ちょっとまたぁー!!」
「なに!?」
と突如、お嬢様姿のカーラは乱入し
「ロミオ様の恋人は私です!!」
「なっ!?」
「えっと・・・・あなたは?」
「わたくしはマリアンヌ。ロミオ様の婚約者ですわ~」
『おーッと!!まさか、まさかの新たなロミオの浮気相手!二股どころか三股をするとは!男の風上にも置けません!!』
「(なぜ、カーラルクシック中尉まで!?)」
と驚くハインリーケ。そして黒田とカーラは
「(あれ?カーラはなんで出てきたの?)」
「(それはもう。アドリブ演劇なんだからいいじゃんそんな細かいこと。強いて言えば姫さんを思いっきり揶揄うことかな~黒田は?)」
「(私はエミリアさんに。この役やってくれればアルバイト代出すって言われたから。しかも三倍だよ!!)」
「(は、はぁ・・・・まあ、良いか。よし黒田。思いっきりロミオを追い詰めるぞ!)」
「(了解カーラ!)」
と、何やらアイコンタクトをとる二人にハインリーケは
「君たち。何やらおかしなことを言っておるが、わたしは君の恋人ではない」
「まあっ!何と言うことなの!私をベットで押し倒してあれほどのことをしておいて・・・・・」
「結婚まですると約束したのに~」
『おおっっと!!ロミオと浮気相手二人の関係はかなりそこまで行っていたのでしょうか!?どう責任を取るのでしょうかロミオ!!』
「(うう・・・・二人とも後でお仕置じゃな#しかしどうやってこの状況を打開する・・・・・・・・っ!そうじゃ。その手があったか・・・・)」
と、何かひらめいたのかハインリーケは咳ばらいをし
「やれやれ、ジョセフィーヌ。マリアンヌ。君たち二人はそうやっていつも私を困らせる。結婚なんてできるわけないだろ。なぜなら・・・・・・・」
とハインリーケの言葉に観客たちは注目し。そしてハインリーケは一息入れ
「私と君たちは血のつながった兄妹ではないか」
と、どや顔で言い返すハインリーケにナレーターのアイザックが
『おーッと!ここで衝撃の事実!何と浮気相手かと思えた二人はなんとロミオの実の兄妹であった!確かにこれは結婚できません!!』
「「(うう・・・やるな大尉・・・・しかし!!)」」
「「たとえ兄妹だったとしてもかまいません!結婚しましょロミオ兄様!!」」
と、二人はグイっとハインリーケに迫る。するとハインリーケはみんなに聞こえないほどの小声で
「なあ、お主たち。もしもここで引き下がったら黒田中尉にはエミリアから受け取るバイト代を倍。カーラルクシック中尉にはコーラを一年分プレゼントしようと思うのじゃが、どうかな?」
「「っ!?」」
その言葉に二人は雷に打たれたような衝撃を受け
「た、大尉!?本当ですか!?」
「コーラ一年分というのも!?」
「本当じゃ。交渉に嘘はつかぬわ・・・・・で、どうじゃ?飲むか二人とも?」
と、にやりと笑うハインリーケに二人は
「「どうぞ、お通りくださいませお兄様!!」」
条件を飲んだのか二人はすかさず道を開ける。
「すまない二人とも!」
「いいですよ。でも・・・・・」
「約束は守ってくれよ姫さん・・・いやロミオ」
とそう言うとハインリーケは
「ジュリエット!今すぐ君の元へ行くぞ!」
そう言うと、照明はいったん消えるのであった。そしてそれを見たペリーヌは
「・・・・・前と同じくらいすさまじい設定の話ですわね・・・・・後半はどうなるのでしょうか」
心配と不安の表情でそう呟くのであった
何とか書き終えることができました。尺の都合上、劇の前半しか書けませんでした。因みに疾風のジュリエットの声は疾風の姉疾風圭子のイメージキャラである西住みほの声です
因みになぜ疾風をロミオにしなかったのは・・・・・悩みに悩んだ末、疾子を出したかっただけです
次回は演劇後半。頑張って書きたいと思います。そしてこの後半戦でエミリアの呼んだスペシャルゲストを出したいと思います