ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~   作:疾風海軍陸戦隊

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OP「悲しい時はいつも」


第106話「成層圏気流(中編)」

「・・・・で、貴様らを襲ったのはイギリスのスピットファイアだな?大尉」

 

「ああ、私を追撃したのは翼端を切った奴・・・・・グリフォンエンジンを積んだ航空性能の高い機体だ」」

 

あの後、私はあの湖の近くにあった飛行基地に拾われ今、上官にさっきの戦闘のことについて尋問されていた。因みにあの戦闘の失態で私は少佐から大尉に降格された。まあそれはそれで私は助かった。書類仕事とか面倒だったからな

 

「私のヴュルガーは高度七千以上では速度や機動性が落ちる。だが、それはカタログでのことで実戦ではそれほど差はない。しかし高高度となれば話は別だ。ましてやレーダーで誘導された敵機と夜間で戦うなど銃口の前の鴨、またはドイツの七面鳥よ」

 

「・・・・・・大尉、貴様は偉大なフォッケウルフを鴨や七面鳥呼ばわりして侮辱するつもりか?」

 

と、書類を読んでいた上官が私を睨む。

 

「いや・・・・・フォッケウルフは優秀な戦闘機だ。スピットファイアなど目じゃない。フォッケの一番の敵はアメリカのP51と日本の紫電改ぐらいだ。私が言いたいのは使い方のことだけだ」

 

そう言い私は机の上に置いてあるワイン瓶を取りボルトを抜く。うん。いい香りだ

 

「高高度戦闘ではフォッケより向こうの方が上だ。ヴュルガーはもともと夜間哨戒に向いていない。そう言うのはJU88かFWTa154Aの方がいい。そんなヴュルガーを高高度の夜間哨戒に使う事こそヴュルガーへの侮辱だ。馬に乗った騎士を海で戦わせるようなものよ中佐殿?」

 

「・・・・・・今までの戦歴が無ければただでは済まないぞ。例えお前が女性最多の撃墜数を持つパイロットでもな」

 

「ふ、言っとけ。粛清が怖くて戦闘機パイロットが務まるか」

 

と、ワインを飲みながらそう言う私に上官が睨みながらそう言う。だがそんなのは全然怖くはない。すると外から轟音がし空を見上げると何かが飛んでいるのが見えるあれは・・・・

 

「あれは・・・・ロケットか?」

 

「ああ、Ⅴ2ロケットだ。あのふざけた規定のせいで誘導ミサイルが使えないのが残念だが第二次大戦中に弾道ロケットが使われていたのは唯一の救いだな」

 

「ちっ!何が唯一の救いだ。人間の戦争は弓と剣での戦い辺りでやめておくべきだったんだ」

 

私はグラスに注いだワインをグイっと飲む

 

「今更、後戻りはできないよ。時は常に前に進む。無論我々人類もその時とともに進み続けるしかないのだ。大尉、貴様に汚名返上のチャンスを与えよう。ついてきたまえ」

 

と、そう言われ私は上官についていくのだった。そしてついた場所は格納庫で会った。

 

「ここだ」

 

「この中に何があるんだ中佐?」

 

そう訊くと中佐はシャッターを開ける。そしてその中には一機の戦闘機があった

 

「・・・・これはヴュルガーか?」

 

「ああ、新型試作機fw190Ex見た目はfw190A8だが性能はけた違いだ。まさに最強のヴュルガーとも言えよう」

 

「性能は?」

 

「平均速度は800キロ、高度一万二千で700キロ以上、機種に13㎜と翼内に20ミリが4問だ」

 

「30㎜じゃなくてか?」

 

「30㎜は威力があるが弾数が少ない。それなら20ミリの方が良い。話を戻そう、そのような高高度を飛べるドイツ機はジェットのMe262(シュバルベ)やTa152があるがジェットは機動性に欠けTa152はジェットよりはいいが格闘戦に欠ける。それを比べるとExの方が遥かに性能がいい。貴様にはこれに乗ってペーデミュンメまで飛んでもらう」

 

「ペーデミュンメ?何の目的で?」

 

と、そう訊くと

 

「貴様にはあれを護衛してもらう」

 

中佐はくいッと格納庫の外を指さす。私は外を見ると滑走路に大型爆撃機があった。それは我がドイツの爆撃機ではなかった

 

「あれは・・・・・B17か?」

 

そう、その滑走路にあったのは漆黒に塗装され鉤十字の描かれたアメリカの重爆撃機のB17爆撃機であった

 

「ああ、そうだ。不時着した完全品だ。あれであるものをペーネミュンメまで運んでもらう」

 

「あるもの?なんだそれは?」

 

「それは貴様の知ることじゃない。お前はただ護衛すればいいのだ。出発は0時ちょうど、言っておくが今度はエンジン不調なんて言い訳は通用しないからな。いいな」

 

と、そう言い中佐は格納庫を出るのであったそして私は新たに乗る機体fw190Exを見るのであった。そしてしばらくして私は護衛をする機体、B17の方へ向かう。

 

「さすが空の要塞の異名をとるB17でかいな・・・・」

 

と、そう呟くと私の目にあるものが写った。

 

「B17の12・7ミリの弾薬ちゃんと積んでいるか?それと弾薬は爆弾庫には詰まないでよね」

 

「はっ!」

 

それは整備士と何か話している将校の姿だ。その将校の姿に私は身に覚えがあった。

 

「テア・・・・・」

 

とそう呟くとその言葉が聞こえたのかその将校は私の方を向き、そして整備士に何か言い別れ、私の方へ行く。そして最初は無表情だったがやがて彼女はふっと笑い

 

「・・・・・久しぶりだなミリア。元気そうで何よりだ」

 

「・・・・・・そうだなテア、いや、今は大佐殿と呼べばいいのかな?」

 

「いや、今は上官部下の関係ではなく昔みたいに幼馴染として接してくれ」

 

と、彼女はそう言う。彼女の名はテア・クロイツェル。同じ士官学校の同級生であり、幼い頃からの親友だ。しかも彼女は幼い頃から成績が良く頭の切れる奴で軍人よりも科学者に向いている奴だった。

 

「どうしてここに?」

 

「このB17に積んである荷物の付き添いさ。これでペーネミュンメまで行く。最初は断ろうとしたがミリアが護衛についてくれると聞いてな。一緒に飛ぶことになった。・・・・・・・そうだミリア。久しぶりに話さないか?まだ時間もあるしな」

 

と、そう言われ私は断る理由もなく頷きそして私とテナはとある個室でコーヒーを飲んでいた

 

「まさかテアが大佐になっていたとは、えらい出世ね」

 

「あんな階級、ただの飾りだ。私の家が軍人の名家だったから向こうが勝手につけたにすぎない。逆にエミリアの階級が上がらないのが不思議だ。『漆黒の悪魔』と恐れられているあんたの腕と才能なら一気に大佐に昇進してもおかしくないのだがな?」

 

と、テナはコーヒーを飲みそう言うと私は

 

「私は・・・・・卑怯者の烙印を押されたわ」

 

「その話は聞いたが、あれは別にミリアのせいじゃないし、卑怯者とまで言われることはお前はしていない。大体エンジン不調の中、夜間の高高度で高高度型のスピットファイア3機相手に良く戦った方だ。陸上で戦っている連中は空の戦い方を知らない。陸には陸の・・・空には空の戦いがあるのにな」

 

「そうだな・・・・」

 

と、ため息をつきそう言う。そしてテアは窓の外に浮かぶ月を見て

 

「あの頃の私たちの祖国はドイツ連邦とナチスとに分かれず一つの国として平和だった・・・・・ミリア。子供のころのことを覚えているか?まだ小学生くらいの時は近所にあった小川でよく遊んだものだ」

 

「ああ・・・・はっきり覚えているわテア。よくあそこの小川で水遊びをしたりザリガニ釣りをしていたわね・・・・あの頃は楽しかった・・・・」

 

と、思い出話をする中、私はB17の方を見て

 

「テア・・・・あのB17には何が積んであるんだ?」

 

と、そう訊くとテアは暗い表情をしてだまる

 

「・・・・・・・いや、やっぱりいい。言わなくなければ言わないでいいどうせ私には関係ないことだ」

 

と、そう言いコーヒーを一口飲むとテアは

 

「いいや、ミリア。あなたにはあの積み荷を知る権利がある。ちょっと来てくれ」

 

「?」

 

私はて何言われるがまま彼女についていくのであったそして私は護衛対象であるB17の中にいた

 

「いいのかテア。こんなこと・・・・」

 

「私はお飾りとはいえ大佐だ。そこらの下士官が士官ましては佐官の命令を断れるわけないでしょ?」

 

とそう言うと彼女はどんどん機体の奥に進む。そしてついたのはB17の爆弾倉であった

 

「これが私たちの運ぶ積み荷だミリア・・・・・」

 

と、そう言われ私は爆倉を除くとそこには原子力を示すマークが掘られた大きな爆弾が入っていた・・・・

 

「テア・・・・これはまさか核弾頭か!?」

 

「ああ・・・・・ナチス科学研究所が極秘に制作したものよ。無論使っている材料は第二次大戦で使用されたもので作動法もアメリカのファットマンを参考にしているわ・・・・」

 

「バカな!?核の使用はあの交戦規定で禁じられているはずだぞ!総統閣下はその条約を破るつもりなのか!?」

 

「覇道を目指した総統閣下はバルジでの敗北から・・・・いや、あのレッドファイター疾風の登場から変わってしまった。戦争に勝つためならありとあらゆる方法を実行しても厭わない。たとえその方法が悪魔に魂を売り渡す行為でもね・・・・レッドファイターがいなくなった後でも連合軍の力は強まってナチスは滅ぶかどうかの瀬戸際にある。そこまでナチスは追い詰められているのよ」

 

「狂っている・・・・それが人のするべきことなのか・・・」

 

私は落胆した。核に手を付けた我がナチス。その時点で私はもうナチスは終わったのだとそう確信した。するとテアが

 

「私も、もう人ではない。なぜなら私はこの爆薬の怖さ、恐ろしさを知っているのを承知でこいつを運ぶ手伝いをしようとしている」

 

「テア・・・・・」

 

「こんな爆薬、ペーネミュンメまでつかなければ・・・・・途中で爆散してしまえばいいのにな・・・」

 

と、どこか悲しい顔をする幼馴染に私は声を掛けれなかった。そしてテアは私の手を取り

 

「頼むミリア!お前の・・・・親友であるお前の手で・・・・私の乗るB17を・・・・悪魔の手から救ってくれ!!」

 

と、涙をためそう言う彼女、彼女は元来軍人には向いていない心優しい性格だ・・・・だから今自分のしようとしていることが許せない・・・だから彼女は私にそう頼んだのだ。そして私は私の胸で泣くテアを抱きしめ

 

「すまないテア。私にはできない。親友であるお前を撃つなんて・・・・それに私の任務はこいつの・・・お前を護衛することなんだから・・・・・」

 

テアの気持ちはわかる。だが私はこれを守るという任務がある。そんな葛藤が私の心の中で渦巻いているとテアが

 

「・・・・ごめんミリア。今のは忘れてくれ・・・・私がどうかしていたんだ・・・・今はナチスが滅ぶかどうかだもんな・・・・」

 

と、そう言いテアが私から離れ軍帽を被り

 

「・・・久しぶりに話せてよかった。ありがとうミリア・・・」

 

そう言い彼女は機体から降りた。その時私は彼女の頬から一筋の涙が流れ落ちるのが見えた。そして私はB17に積んである弾頭を眺め

 

「・・・・・・疾風、本当に私はこれでよかったのだろうか?」

 

と、私は今は亡き、宿敵でありもう一人の友人である彼のことを思い出しそう呟くのであった・・・・

 


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