ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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 深海棲艦、ボスラッシュどころでは無いぐらいに、ボスが集まってたよ?

 さらっと、前代未聞の深海棲艦との一時的な停戦協定。

 


【過去話】怨霊艦隊~ゴーストシップ⑫

 深海鶴棲姫は。

 

…………ググググググ))))))ズイ₍₍(ง˘ω˘)ว⁾⁾ズイ₍₍(ง˘ω˘)ว⁾⁾ズイ

 

 なぜそのような踊りを踊りながら無人島拠点にやってきたのかわからない辺りが謎であったが、とりあえずゲシュペンストの

 

《高速修復剤ぶっかけろ》

 

 の一言で、解決してしまった。

 

 高速修復剤のバケツを見た深海瑞鶴は、首をうんうんと縦に振り『カモ━━━━щ(゚Д゚щ)━━━━ン』

 

 どばっしゃーーーっ!!と土方が高速修復剤をぶっかけたら、その身体のあちこちから、いきなり煙がジュォォォォォ、と噴き出し、なにやら甲殻を持ちあちこちに触手を生やしたヤツメウナギのようなものがいくつも出て来て地面に落ちて行く。

 

 地面に落ちたその謎の生物群は、煙を出しながらのた打ちまわり、どんどん溶けて消滅していく。

 

 深海瑞鶴はなおも『カモ━━━━щ(゚Д゚щ)━━━━ン!!』とジェスチャーを続けたので、

 

ゲシュペンストの

 

《もっとぶっかけろ!!》

 

 の言葉通りに、大淀と土方はどばっしゃーーーっ!!どばっしゃーーーっ!!と、バケツを深海瑞鶴にぶちまけまくり、計四回ぶっかけて、その正体不明のヤツメウナギが出ることは無くなった。

 

 その様子は液晶モニターのカメラであぎょう丸にいるゲシュペンストの所にも送られており、近藤達も液晶タブレットでそれを見ることになった。

 

「……酷い目にあったわ」

 

 深海瑞鶴はようやくカモ━━━━щ(゚Д゚щ)━━━━ンも、ズイ₍₍(ง˘ω˘)ว⁾⁾ズイも止め、肩をがっくり落としてゼーハーゼーハーと肩で息をしながら言った。

 

 どうやらこの深海鶴棲姫こと深海瑞鶴は会話が出来るタイプの深海棲艦のようである。

 

 しかしそれならばなぜ今まで、ズイ₍₍(ง˘ω˘)ว⁾⁾ズイ₍₍(ง˘ω˘)ว⁾⁾ズイなどと踊っていたのか。

 

「……ええ、話せば長くなるけど、さっき駆除してもらった寄生虫みたいなののせいよ。脳みそに巣くわれて言葉を出せなくなっちゃって、なんとかジェスチャーで何とかこちらの意思を伝えようとしたけれど、あの動きしか出来なかったのよ……。よくアレでわかったわね、あなた達」

 

 つまり、脳みその言語野やそういう部分にまで寄生生物に巣くわれてしまって脳が正常に働かなくなってしまっていたが、なんとかそれでも助けを求める為にこの無人島拠点まできたらしい。

 

「あんな変な踊り、恥だわ。この私が……」

 

 頭を抱えつつ苦悩する深海瑞鶴。しかし、もしも艦娘側の瑞鶴が聞いたらどう思うだろうなぁ、と大淀や土方達は思った。

 

 なにしろ瑞鶴は五航戦のすぐ踊る方などと言われており、なにかあれば先ほどのズイ₍₍(ง˘ω˘)ว⁾⁾ズイの振り付けそのままに踊るのである。

 

「ええっと、で、高速修復剤をかけるのが正解、だったと?」

 

「そうよ。助かったわ。フィリピンのあの研究施設に捕らえられた仲間を助けに行ったのだけど、化け物に群がられてね。襲いかかって来る奴は倒したのだけれどその身体の中に巣くっていた寄生虫にやられちゃったのよ。途中、まだ生き残っていた艦娘が高速修復剤で寄生虫が寄り付かないように予防してたのを見たから、基地の一つに入ってそこの高速修復剤を使ったのだけど……。そこの修復剤はニセモノだったの。むしろ身体に取り付いた寄生虫が増えちゃって、あんな状態に……」

 

《ふむ、これで『造田博士のオリジナルレシピ』の修復剤の効果と縞傘の修復剤のろくでもなさがわかったわけだが、ふぅむ。ちょっとすまないが、君は瑞鶴でいいのかな?》

 

 大淀の持つ液晶モニターでその様子を見ていたゲシュペンストが深海瑞鶴に話しかける。深海瑞鶴は、その声の出所を探し、それが液晶モニターからであると気づいた。

 

「……誰?というかその声は、その板から?」

 

《ああ、それは無線機みたいなものだ。こちらも状況をモニターしているし、話も聞いているぞ?》

 

「……こんな薄い板が無線ねぇ。技術の進歩って奴かしら。そうよ。私は瑞鶴よ」

 

 モニターを覗き込みながら深海瑞鶴はへぇーっと感心しつつ、そのモニターに向かって挨拶をした。

 

 この瑞鶴、深海棲艦にしては友好的というのか、礼儀を知っているというのか。物怖じせずに理性的に対応しているな、と玄一郎は思い、そしてひょっとしたらこちらの要望などを交渉してみるのも良いかも知れないな、と思った。

 

《うん、初めましてと言うべきかな。俺はゲシュペンストと言う。単刀直入に聞くが、深海側で他に寄生生物に感染している者はいるか?》

 

「……山城が感染してるわ。そちらの呼び方だと『海峡夜棲姫』かしら。姉の扶桑があの研究施設に捕らわれてるのよ。ここに連れてくれば良かったかも知れないけど、敵の拠点に連れてくるのはリスクが大きかったから」

 

 玄一郎は、モニターの向こう側、つまりあぎょう丸で、うぐっ?!となった。チラリとあぎょう丸の甲板にいる扶桑姉妹を思わず見てしまう。

 

 じぃぃぃぃ、と扶桑姉妹もゲシュペンスト(=玄一郎)の見ており、目が合った瞬間に二人とも首をコクコクコクっ、と頷かせた。つまり高速修復剤を上げてくれ、と言っているのだ。

 

《……そっちにも扶桑型っているのな。つか……。いや、とりあえず高速修復剤を必要なだけ持って行ってやってくれ。深海側だとしても扶桑型と聞いてはやはり放っておけん。それに感染の拡大は防がなければならんからな》

 

 け、けして扶桑姉妹の名前が出たからじゃないんだからねっ!あと、扶桑姉妹に頼まれたからじゃないんだからねっ?!と、心の中でツンデレ風に言ってみる。

 

「助かるわ。……ところで、扶桑型になにか思い入れでもあるのかしら?」

 

 君のような、勘の良い子は嫌いだよ。そんなことを言うもんだから扶桑姉妹がやたらと機嫌が良いじゃないか。ワクテカしてるし。 

 

《…………いや。まぁ、縁がある程度、だな》

 

 なんとか控えめに言う。

 

「なーる。まぁ男から見れば放った置けないってとこ?」

 

 おそらく、玄一郎に口が有ったなら、吐血しているのではないかと思うような強烈な言葉のボディブロウだった。

 

 ぐふぅっ?!何故だ、何故そこまで勘が良いんだこの子?!遠く離れているのに、つかこっちの状況を見てんじゃねぇよな?!

 

《……黙秘権を行使する。それより周りへの予防も考えてくれ。寄生生物は海水を嫌うらしいが、先ほどの駆除を見る限り、体内に潜り込んだ奴は修復剤でしか駆除出来ないようだ。念のため、出来れば全員に使って欲しい。それにはどれぐらい必要だ?》

 

「……ドックで一斉に浸かれれば、30個、かしら。そうね、艦娘側には入渠施設っての、あるんでしょ?それを借りれればいちいち一人バケツ数杯って必要無いけど、それでもちょっと多い、かな?」

 

《……上陸出来る深海棲艦に関してはそれで有効だろうが、イ級とかその辺は?》

 

「この周辺海域には居ないわ。というかこの近辺で展開していた仲間はみんな上陸出来る上級者ばかりよ」

 

《そう言えば、駆逐艦あまりは見なかったな。何故だ?》

 

《あの研究施設に捕らえられた『扶桑』は研究施設で何かの実験台にされてるわ。死んではいないけれど、その強い念で寄生中に取り付かれた化け物を統率するために利用されてるのよ。その念は、化け物一体一体を強化して、攻撃を中和する作用があるみたいで、まず、それを中和しなければでは生半な攻撃はまず通じないわ。だから、その念に対抗出来る仲間達に来て貰ったのよ》

 

 深海瑞鶴の話によれば、深海扶桑、つまり海峡夜棲姫の片割れである扶桑の霊力は深海棲艦の中でも随一を誇るほどに強いものであり、その扶桑が発する念を抑え込むには各海域のボス達を集めてやっとである、と言う。

 

 そして、効率良く中和するために、フィリピン周辺海域に幾重にも円形に布陣して念の結界を展開し、その結界を構築するボス達の周辺をそれぞれの部下の中でも強い深海棲艦に護衛させていたらしい。

 

 つまり、フィリピン泊地へと向かおうとしていた艦娘達やゲシュペンストに攻撃して来た深海棲艦の艦隊は言わば各海域のボス達の親衛隊のようなもので、そりゃあ強かったわけである。

 

《……各海域のボスって、お前、どんだけ集まってんだよ?!》

 

「陸上型以外ね。頼んで集まってもらうの大変だったのよ?パラオの赤城さんは二つ返事で快く受けてくれたけど、トラックの加賀さんなんてもう、五航戦の子はこれだから、とかなんだの言ってそりゃあもう、イヤミばかり言われたわ。いやんなっちゃう!それに、大和さんでしょ、長門さんも遠路遙々来てくれたし、あとはいろいろね?」

 

《…………ソウデスカ》

 

 つまり、フィリピン周辺海域には深海棲艦のボスだらけである事が、今判明した。

 

 深海瑞鶴が愚痴なのかそれとも自慢なのかどちらともつかないように言ったその話を聞いていた全員の顔が青ざめた瞬間である。

 

 しかもそれらの鬼姫級の正体までサラッとばらしている辺り、もうね。

 

 例えばパラオのボスは海軍では空母水鬼と呼称されている個体であるが、深海瑞鶴はその空母水鬼を『赤城』と呼んだ。また、トラックの加賀はおそらく空母棲姫の事だろう。しかも、大和の深海棲艦までいるのだと言う。

 

 その通信内容を聞いて、あぎょう丸の近藤と土方はお互いの護衛をしてくれている大和と加賀を思わず見てしまったほどである。

 

《あー、結界を維持せにゃならんというのなら、全員その島に来ると言うわけにはいかんのだろう?》

 

「うん、とりあえず交代って事になるわね」

 

《いや、まず、寄生生物に感染しているかどうかはともかく、高速修復剤をいくつか持って帰って駆除出来るだけやって人員に余裕を持たせた上で入渠に来させて、んで入渠終わった奴にも高速修復剤を持たせて帰らせて、って方法でどうだ?その方が早いだろう?》

 

「でも、あんたたちにとって高速修復剤って貴重なんじゃないの?こっちでもそうだけどさ?」

 

《感染が広まれば、そちらだけではなく、世界滅亡の危機なんだよ。それを食い止める為ならなんぼでも用意してやる。そちらはそちらで寄生生物を全滅させる事を考えてくれ。ああ、あとは、高速修復剤をやる代わりと言ってはなんだが、こちら側の艦娘や人間に攻撃しないでくれ。この事態が収まるまででも良いからさ?》

 

「そうね、まぁ、扶桑さんをなんとか出来るまで、私達もそちらをどうこうするのもかなりの負担だし、高速修復剤、使ってくれたしね。そちらからの攻撃が無いなら、こっちも今まで通り攻撃はしないわ」

 

 深海瑞鶴はそう言い、高速修復剤を幾つか大淀達から受け取ると、また海へと帰って行った。

 

「とりあえず、次の仲間を寄越すからよろしくねー!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「……各海域のボスが、この近海に集結してるってマジカヨ」

 

 ここはあぎょう丸の甲板である。

 

 近藤はまだ真っ青な顔のままである。

 

「まぁ今回、一時的な停戦協定を結べたわけですし……というか、深海棲艦との停戦協定なんて、前代未聞ですけど、いや、いいのかしら?というか、上を通してませんけど?!」

 

 土方も混乱している。

 

「……じゃあ、ボスだらけん中、あんたら喧嘩売って来るか?つか、正直言って、無理だろ。俺だって無理だわ。あの瑞鶴っての一体だけならなんとか出来るかも知れねぇけどよ、それに赤城?加賀?しかも大和までって、そりゃ死ぬわー。ムサシにやられて死にかけてんだぞ、俺。無理だわ~」

 

 玄一郎はお手上げ、とばかりに手を上げる。

 

「……でも、深海側にも私達がいるなんて」

 

 扶桑が少し目を伏せ、すすすっ、とゲシュペンスト(=玄一郎)の隣に来てそう言う。

 

「というか、深海のねぇさまが捕らわれている、ってあの瑞鶴が言ってたわね、ゲスロボット?」

 

 山城も扶桑とは逆の方向からゲシュペンスト(=玄一郎)の隣にささっ、と来る。

 

「ええっと、とりあえずなんでチミ達、俺の隣に来るかな?」

 

「……助けるんでしょうね?向こうの扶桑ねぇさま」

 

「その、出来ましたら……、たしかに、いずれは敵として合間見えないといけないかも知れませんが、私と同じ『扶桑』なのでしたら。それに深海側の山城も、きっと悲しんでいるはず。そう思うと……」

 

 うるうるうる、と扶桑姉妹は瞳を潤ませつつ玄一郎を見上げるように見つめる。

 

「……うううっ、君らそれズルいぞ?!つか、くぅぅぅっ」

 

 扶桑型のゲシュペンスト限定最大必殺攻撃、泣き落とし、であった。

 

「わかった!わかったよ!というかどのみちあの研究施設には行かなきゃいかん。出来るだけの事はするが、だが……。いや、助ける方針でやるけどさ」

 

 がっくり、とゲシュペンスト(=玄一郎)は頭をうなだれさせつつ、どうも、捕らえられた深海側の扶桑を救出せねばならない羽目になったようである。

 

 

「……あのな?今回の作戦指揮官、俺なんだけどな?」

 

 近藤がそう呟くも、しかしながら事態はすでに近藤達の手に負えない所まで来てしまっている。

 

 それに、ゲシュペンストはおろか、深海棲艦のボス達にも手も足も出ないのだ。

 

 もう、傍観する以外、彼らには方法がなかったのであった。




 深海瑞鶴は寄生生物に感染していたわけで。

 まぁ、深海側のボス達は集まっていますが、ムサシはまだ眠ってますので加わってません。

 さて、次回、ゲシュペンストの新兵器が炸裂するぞぉ?(嘘)でまたあおう!

 

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