ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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 ご無沙汰しております。

 なんというかリアルが大変で安定するまで書けませんでしたm(__)m

 とりあえず再開、ですかね。はい。


【過去話】怨霊艦隊~ゴーストシップ①

 

 ゲシュペンストがまだ『アンノウン』と呼ばれていた頃。まだ『カーウァイ・ラウ』が数年間の沈黙をする前の話である。

 

 そう、これは丁度今から10年ほど前の事である。

 

 小島基地壊滅事件後、扶桑姉妹達と別れたゲシュペンスト(=玄一郎)はその後、元の世界へと帰還するための方法を探して世界のあちこちを旅して回っていた。

 

 その旅路の中でゲシュペンストは様々な者達との出逢いと別れを繰り返し、そして、立ち寄る国、場所、様々な所で厄介事や戦闘に巻き込まれ、そして戦ったり逃げたり隠れたりする日々を続けており、ある国では破壊の権化、ある国では正義のロボット、ある国では農業ロボット、ある国では英雄、ある国では人民最大の敵などなど様々に呼ばれてマークされたりなんだりしていた。

 

 それでも捕捉されずに旅を続けられていたのはこの世界のレーダーや電探等の性能がゲシュペンストのいた未来世界の水準からするとやはり性能は劣っており、ジャマーやステルス迷彩を使用すれば見つかる事は稀であった。

 

 たまに旅の途中の海上で艦娘達に遭遇しても大抵は見て見ぬふりをしてくれるどころか手を振ってくれたり、顔見知りの艦娘だったならお話も出来たりと、友好的な対応をしてくれたりする事が多かった。

 

 この頃、まだまだブラック鎮守府は多く、その被害にあう艦娘達は後を絶たない状態で、そんな艦娘達を救助したりしていた為に、艦娘達の間でもゲシュペンストはヒーローのように思われていたらしい。

 

 そういったブラック鎮守府にいた艦娘達が話を広めていた事もあり、この頃から正体不明のロボットの噂は艦娘達の間で良く話される話題の一つだったようだ。

 

 と、そんな感じなわけなのだが。

 

 話はいきなり、ゲシュペンストが深海棲艦に襲われている艦娘達を助けている場面から始まる。

 

 台湾とフィリピンのちょうど中間辺りの海域、おそらくはその艦娘達は日本~上海~台湾を経由してフィリピンの前線基地へと向かう途中だったのであろう。

 

 重巡の高雄を旗艦とし、軽巡、駆逐艦で構成されたその艦隊はどうもまだ連携がとれておらず、まだレベルも浅いようで、急拵えの艦隊のように見えた。

 

 ゲシュペンストはちょうど中国大陸からオーストラリアへ南下する途中、その上空を飛行していたが、砲撃音と若い女の子の悲鳴をキャッチしたので雲の上から降下し、様子を見、「あ、こりゃいかんわ」と助けることにしたのである。

 

 けして練度が低い艦娘達では無いようだが、いかんせん敵深海棲艦の数が多く、艦砲の飽和攻撃を受けている。このままでは全滅しかねないとゲシュペンストはすぐさまに急降下しつつ、深海棲艦達の後方から突撃してミサイルをばらまきつつ、アサルトライフルをぶちかました。

 

 深海棲艦の艦隊からすればレーダーにも捉えられない上空からの完全な奇襲。

 

 気づいて退避しようにもマルチロックオンミサイルの追尾からは逃れられず、運良く直撃を食らわなかったとしても、アサルトライフルの一斉掃射が降り注ぐ。

 

 戦闘とももはや言えない一方的な攻撃に数十体もの深海棲艦達はたった20秒足らずで全滅してしまった。

 

「……チート感パないな、こりゃあ」

 

〔全敵の掃討を確認。通常モードに移行する。負傷者六名、修復剤の使用を提案する。〕

 

 お堅いゲシュペンストの口調に内心苦笑いしながら、玄一郎は背部のラックにM950アサルトライフルをしまうと、上空から降下しつつ、代わりに緑色の蓋付きのバケツを取り出した。

 

 この五年間の旅の中でゲシュペンストと玄一郎は高速修復剤のレシピを入手しており、その精製をズフィルードクリスタルによって行えるようになっていた。

 

 高速修復剤は希少で高価な材料を幾つもの精密な作業工程を経て作られるものであり量産する事が難しい薬剤ではあるものの、ゲシュペンストに搭載されたズフィルードクリスタルならば、材料も工程も要らずに、ジェネレーターのエネルギーのみで簡単に作る事が出来た。

 

 もちろん、ズフィルードクリスタルの薬剤への混入も全く無い精製方法をとっているので、投与された艦娘への影響は無い。

 

(……日本海軍に大量に持って行ったら艦娘達に修復剤が行き渡らないかな?)

 

 などと玄一郎は思ったが、

 

〔横流しで儲けようとするバカ共が湧くだけだ〕

 

 と、ゲシュペンストの辛辣な意見が返ってきた。しかし概ね玄一郎も同じ意見である。

 

 日本海軍の腐敗はこの五年間で散々見てきたからだ。

 

 確かに見所のある現場指揮官もいたし、艦娘達を救おうと働いている者達も多くいることは知っていたが、それでもろくでもない連中の多さは未だそれを上回っていたのである。

 

 だが、ゲシュペンストも玄一郎もそれをなんとも出来なかったのである。

 

 理由はいくつかあるが、

 

 海における深海棲艦の分布状況とその数の多さ、ゲシュペンストがいかに強力だとしても単騎で全てを撃滅出来ない事、さらにはブラック鎮守府に殴り込みをしても焼け石に水で、しかも壊滅させた後のその海域の防衛力は、低下し、近隣の一般市民に深海棲艦達による被害が生じかねない。

 

 何より、ブラック鎮守府に殴り込みをかけるとその鎮守府なり基地なりの艦娘達は逆らえない提督の司令により、ゲシュペンストに攻撃をしてくるのだ。

 

 艦娘には反撃出来ないし、たまにゲシュペンストの装甲すら貫通してくるような強力な能力を持っている艦娘もいたりするのでゲシュペンストだとしても危険だったのである。

 

「うーん、助けたい相手に攻撃されるのは、心が折れるしなぁ」

 

 たとえ効かなくても可愛い女の子達に攻撃されるのは心が折れそうなくらいに辛く悲しいものである。

 

〔全くだ。要救助者達を視認。海上、前方200の位置だ〕

 

 バシューッ、バシュッと背部ブースターを断続的に軽く噴かして、ゲシュペンストは艦娘達の艦隊に向かって行った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 助けた艦娘達は、高速修復剤で回復させたものの体力的にも精神的にも疲弊しており、これ以上の航行は危険な状態だった。なにより武器弾薬は尽きかけており、ゲシュペンストはそんな彼女達を放っておく事は出来なかった。

 

 ちょうど彼女達の目的地であるフィリピンの基地までの途中、だいたい台湾とフィリピンの中間地点に小さな無人の島があり、深海棲艦の反応も無かったので、艦娘達ゲシュペンストは近くにあったその島に彼女達を連れて来ていた。

 

 艦娘達は皆、一様にぐったりして砂浜にへたり込んでしまった。

 

 (無理も無い。話を聞くにここまで連戦してたって話だからな)

 

 軍務上の事なので彼女達はあまり多くは話すことが出来ないようだったが、状況を見ればだいたいわかる。

 

 おそらく、フィリピンの付近で大規模な作戦があり、集結するために彼女達はそこへ向かっていたのだろう。

 

 しかし深海棲艦もまたそれを察知し、フィリピン付近、それも広範囲に防衛線を幾重にも張り巡らせてフィリピンの基地に集結しようとする艦隊の数を減らす作戦に出ており、玄一郎は心の中で眉をひそめた。無論、身体はゲシュペンストであるので表情は変えられないが。

 

 (……おそらく、このままでは日本海軍は敗退するな)

 

 深海棲艦が組織立って動いているのは別に不思議な事では無い。

 

 海の亡者であるマヨイやどこのグループに属さないハグレならば目的もなく本能のままに動いたり、勝手に彷徨いたりするだけだが、深海棲艦とて知能があり、リーダーとなる者が居れば団結し、戦術や戦略を駆使して戦うのだ。

 

 おそらくは日本海軍が思っている以上にフィリピンの海域にいる深海棲艦達は知略に優れ、統率力の高さからかなりの強さを持っているのだろう。

 

(……どうすっかねぇ。日本海軍の作戦なんぞに関わる気はさらさら無いが、しかしこのままこの子達を行かせちゃまた無駄死にさせるだけ、と来た。助けたけど結局死ぬのを先延ばしにしただけ、ってのは寝覚めが悪いしなぁ)

 

 玄一郎は彼女達のリーダー、つまり旗艦の黒髪の重巡の子を見た。

 

 名前は高雄、と言い、非常に真面目そうな感じである。また、体格的に重巡というだけあってなんというか、むちむちでおっぱいも大きい。

 

(このおっぱいが、死んでしまうのはもったいないよなぁ)

 

「……あの、なにか?」

 

 ゲシュペンストの視線を感じたのか、座っていた高雄が立ち上がろうとしたが、玄一郎は彼女を手でそれを止め、

 

「いやいや、疲れてるんだから座っててくれ。ただこれからどうしたものか、と考えていただけだ」

 

 と押し留めた。

 

 彼女達も正体不明のロボットであるゲシュペンストに対して最初は警戒心を持っていたが、やはり海軍に出回っているゲシュペンストの噂話などで知っていたのと、敵では無いのをわかってくれたのか、島に辿り着く頃にはある程度は普通に接してくれるようになった。

 

 まぁ、へたり込んで動けない彼女達の為に焚き火を用意したり、マットを出してやって座る場所を作ってやったり、タオルケットを用意してやったり、といそいそと休憩する用意をしたりした事で、無害どころか友好的な存在だと認識してくれたようである。

 

「はぁ、しかしこのままこうしていても……」

 

「いや、もうすぐ日が暮れる。フィリピン付近の海域は奴らに封鎖されているも同様だ。夜に囲まれれば確実に今の君達では辿り着けないだろう。今日はここで体力回復に努めたまえ」

 

 ゲシュペンストのレーダーには海域のあちこちに敵の艦隊の反応があり、それはフィリピンを囲むように展開されていた。

 

 つまり、外から来る者も中から出る者も必ず壊滅させるというえげつない包囲網が構築されており、おそらく、外から来る艦隊が途切れれば深海棲艦の軍勢は内、つまりフィリピンの基地に攻勢をかけてそれを討ち滅ぼすだろうと思えた。

 

 完璧な兵糧責めの構えである。

 

 えげつないが、正直なところかなり有効な軍略であり、そこまで頭がまわる深海棲艦がいるというのは正直な話、脅威だった。

 

……ぐぅっ。

 

 微かに、どこからか腹の虫の鳴く声がした。

 

 玄一郎ははて?とそちらを見ると。高雄が顔を真っ赤にしていた。

 

「……とりあえず、飯だな」

 

 兵糧責めにあっているフィリピン基地には申し訳無いが、とりあえずゲシュペンストにはこういう時の為に非常食を様々収納してある。

 

玄一郎はそれを出してやり、艦娘達に配ってやることにした。

 

「……本当に何から何まですみません」

 

 高雄は消え入るような声で、恥ずかしがりながらそう言いつつぺこりと頭を下げた。 




 大淀さんの登場はまだ。

 この高雄さんは、パラオに在籍する事になる高雄さんとは別の高雄さんです。

 パラオの高雄さんとの違いは性格が真面目でまともであることと、全高雄の中でおっぱいのサイズが普通サイズ寄り(それでも大きい)である事です。

 

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