ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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 テロリスト達の目論みがわからなくなり、焦るという回です。

 人の心や記憶というのは人に解らない方が何かと平和なのかも知れませんね?

 なお艦隊の活躍全く無し。

 


記憶共有と暴露合戦

 高速キャリアー船へ「要救助者を保護、一時そちらに救助者を連れて向かう」との連絡を取り、プリズムファントムを展開しつつカルディア少尉を抱え、ゲシュペンストは低速で海面スレスレの低空で飛行し、高速キャリアー船へと向かった。

 

 とはいえ、島からはとくにレーダーなどは設置されておらず、電波等の発信も無い。こちらのセンサーによる走査でもテロリスト達の反応はかなり少なく明石の報告による警備兵や見張りすらも居なかったぐらいである。

 

 別に明石の報告を疑うわけでは無い。それどころか玄一郎が考えているのは『では連中はこちらの監視の目をかいくぐってどうやって逃げたのか?』と言うことである。

 

 空路ならばドローンはすぐさま見つけるだろう。

 

 では、海路で各々バラバラに逃げた?いや、それでも何かしらドローンのセンサーに引っかかるはずだ。

 

 そう、海中にもソナードローンはぶち込んでいたし、どう考えてもおかしかった。

 

「カルディア少尉、君はあの倉庫に隠れていたが、テロリストの警備兵の数はどうだった?多かったか?」

 

「私があの場所で目を覚ましたのは昨日の早朝ぐらいだ。だが警備兵の数は多かった。交戦して、かなりわいてきたので、海に飛び込んでやり過ごしたのだが、溺れかけて必死にあそこのドックにたどり着いたのだ」

 

「……明石がドローンで確認してたのは午前中、か。しかしどうやって逃げたのか」

 

 どうも後手後手に回っている感がする。

 

 ふぅむ、と玄一郎は唸るも、海上に浮かぶキャリアー船の『天上天下唯我独尊丸』(命名・土方中将)と書かれた文字が見えてきて、少し高度を上げた。

 

 ランディング高度まで上がり、ゲシュペンストに抱えられているカルディア少尉の乳が、ぽいん、と揺れた。

 

(……うむ、眼福)

 

 考え事をしつつもやはりサービスは大事である。いずれカットインとかでお色気乳揺れは必ずあるのである。シリーズが進むとさらに揺れは進化するのである。

 

 そう、乞うご期待、なのである。

 

「私も逃げるのに必死でその辺はわからない。すまないでごんす……ごほん!」

 

(しかしなんで語尾が変になるんだ?この子)

 

 玄一郎にはわからない事だが、これは異世界から転移してきたアンドロイドの宿命である。某対グノーシス用人型掃討兵器しかり、カルディアの妹機しかり。語尾が変にならなかったアンドロイドはいない。そしてそれをネタにしない作品も無い。

 

 ゲシュペンストはゆっくりと『天上天下唯我独尊丸』の甲板へと降り立つと、キャリアー船待機組の白雪が出迎えてきた。

 

「お疲れ様です、司令官」

 

 白雪は待機班の駆逐艦隊の旗艦としてキャリアー船に詰めているのだが、かなり有能な子である。

 

 吹雪型の二番艦であるが、あのフブキチのように『あっさりーしっじみーはーまぐーりさーん』などとはやらない。改になれと言われて『私は貝になりたい』とか言わない(言っていないが)。『パンツ!パンツです!』とかパンツネタでいぢられる事もない。

 

 大人しく真面目で優等生なクラス委員のような安心感がある艦娘である。

 

 ちなみに待機組の駆逐艦はあと雪風と戦場を経験させるために連れてきた神風型の神風、朝風、春風、松風である(四隻ともに練度30)。

 

「うむ、待機任務ご苦労、白雪。彼女が連絡にあった要救助者だ」

 

「はい、一応怪我などの手当ての用意はしましたが?」

 

「いや、ご配慮に感謝するが、特に負傷は無い。私はカルディア・バシリッサ。階級は少尉だ」

 

「白雪、カルディア少尉は来賓として扱ってくれ。作戦終了後に様々な情報を提供してもらわねばならんからな」

 

「准将、私は少尉であり下士官だ。ただの兵士に過ぎない。そのような配慮は無用だ」

 

「まぁ、そう言うな。カルディア少尉、私は優秀な兵士にはそれなりの待遇をする事にしている。味方にも敵にもな。味方ならば良い飯と良い金と良い部屋を用意する。敵ならば……。まぁ、そういう事だ。君は味方であると私は認識している。友軍であるとな」

 

 玄一郎はそう言って揺さぶりをかけてみる。

 

 これはゲシュペンストのモニターに表れた台詞を読んでいるのだが、どうやらゲシュペンストはカルディアに対して何らかの疑念を持っているようだ。

 

「……了解した。私は今、遂行すべき作戦も命令も何も持ち合わせてはいない。その申し出をありがたく受けよう」

 

「うむ、そうしてくれたまえ。では、白雪、すまないが何か冷たい飲み物を二人分頼めるか?」

 

「はい、司令官。ではすぐに!」

 

 玄一郎はゲシュペンストのハッチを開けて、外に出た。ゲシュペンストの中にいるのは快適ではあるが、やはり肌で感じる海の風は良いものである。

 

「姿を見せるのは初めてだな。私が黒田だ。カルディア少尉、よろしく頼む」

 

「……カーウァイ・ラウ大佐?」

 

「む?いや、俺は日本人だが?」

 

「いや、失礼した。私のデータベースにあなたと良く似ている人物があったのでな。黒田准将、こちらこそよろしくお願いいたしますにゃ。……ごほん!いたしますの事ですのよ……。すまない、言語がどうも混乱するようだ」

 

「まぁ、外国人には日本語は難しい言語だというからな。気にしないでくれ。君は我がパラオ泊地の来賓だ。階級は気にするな。ウチの部下も気にしない」

 

「そう言ってくれるとありがたい」

 

 二人は握手を交わし、そして。

 

 バシッ!!とその手に何か衝撃のような物が走り、そして二人はそのまま固まった。たったの数秒。だが、その数秒に互いの記憶が交叉し、お互いの何かが見えた気がした。

 

 玄一郎に見えたカルディアの記憶は、彼女の戦闘経験とも言うべきものだった。

 

 地球連邦軍特殊任務遂行部隊『シャドウミラー』のその行動とそして彼女が製造された経緯、さらには彼女が戦ってきた相手の様々な情報。そして。

 

 彼女が破壊されたその光景。敵味方とするならばそれは仕方が無かった事なのかも知れない。だが、二回も彼女は破壊された。

 

 玄一郎は彼女の無念を悟った。

 

「……そうか。あんたも、死んだんだなカルディア」

 

 そうつぶやいた玄一郎にカルディアは一筋の涙を流し言った。

 

「……く、黒田准将。確かにあなたの非業の死は理解した。あなたが核を阻止したいと思う気持ちも。くっ、まさか私が涙を流す日が来ようとは……!それに肉体を復活させたゲシュペンストとの友情っ、ううっ、なんて素晴らしいのだ……!」

 

 どうやらカルディアは玄一郎が肉体を持った経緯まで見えたらしい。

 

「……しかし、カルディア。ドックでチリビーンズをストレス食いはどうかと思うぞ。不味かっただろ?あれ。吐いてたもんな?」

 

 ピシッ。

 

 カルディアの動きが固まった。

 

「……あなたも、女性の乳ばかり見るのはどうかと思う。あと、やはり誠実に対応すべきだ。確かに攻撃を加えられれば撤退は仕方が無いとは思うが」

 

 黒歴史認定な誰にも見せたくなかった失態を知られた事に彼女は、男性だからそういう事もありだろう、黙っていようと思っていた玄一郎の記憶で反撃した。

 

「……服が脱げて良かったな?『これが……私?』ってか?キレイな身体してまぁ『あんっ♡』てか?このナマイキおっぱいめ」

 

「……裸で女子寮を走ってフル○ンで『ぶーらぶらぁあああっ!!』は無いのではないか?」

 

 ぐぬぬぬぬぬぬぬっ、と二人はにらみ合う。それは不毛な戦いだった。

 

「テロリスト達から逃げるのに海に飛び込んだはいいが、思い切り海水飲んだみたいだな?しょっぱい味の初体験だな?」

 

「そちらこそ、執務室の鍵付きの引き出しに婚約指輪二つ用意しておいて、いざという時には逃げているではないか。はやく『フソウ』と『ヤマシロ』に渡したらどうだ?人間年貢の納め時には観念するものだぞ?」

 

「「…………………。」」

 

 お互い絶句し、そして握った手を話す。

 

 そして、お互いに咳払いをし、そして玄一郎は提案する。

 

「とりあえず、忘れてくれ。うん。記憶なんてそう、気のせいさ。な?」

 

「うむ、そうだな。今のは単なる幻覚だ。そう、きっと疲れているのだ、我々は」

 

「「ハハハハハハハハ!!」」

 

 いらない記憶まで共有してしまうと人間関係はギスギスしたものになってしまうものである。

 

 とは言え先ほどの現象は果たして何であったのかとか、二人は全く考えずに大声でヤケクソのように笑いあい、そして。

 

 飲み物を持運んできた白雪に変なものを見るような目で見られたのであった。

 

 なお、ゲシュペンストは。

 

〔カーウァイ・ラウ、の名前が出てくるとはな〕

 

 と、少し悩んでいた。まぁ、話す事は決まっているのでさほどでは無かったが。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 さて、第一から第四艦隊はすでにされぞれの配置へとついていた。

 

 各艦は艦載機や水上機を飛ばし、そして島の敵を索敵していたが、そこに大きな白旗を上げ、それを振っている深海棲艦達がいるのを見つけた。

 

 最初にそれを見つけたのは、ミス瑞雲こと日向であった。その深海棲艦の大半がワ級、他には人型の深海棲艦がチラホラ。

 

「……なんなのだこれは」

 

 ワケが解らず、罠かとも思ったがとにかく状況が解らず、とりあえず玄一郎に判断を仰ぐ事にしたのだった。

 

 結論から先に言えば、白旗を振っている深海棲艦達はシュウ、つまり集積地棲姫の部下であり、テロリスト達が撤退したために解放されて出てきたのはいいが、周りを艦達に囲まれて急いで白旗を上げたようである。

 

 念のため、シュウに一人一人モニターに映して確認してもらったが、全員がシュウの部下であることが確認された。

 

「……ここまで肩すかし食らわされるとなんというか馬鹿にされたような気がするな」

 

 玄一郎は念のためにゲシュペンストに島全体のスキャンをさせたが、テロリストのテの字もいなかった。

 

〔……こうなると、どうも我々をここに引き付ける為ではないかと思わざるを得んな。泊地の状況は?〕

 

「長門からは特に何も無いとさ。あとはイージス艦を曳航用のサルベージ船でパラオに持っていくだけだな」

 

〔……解せない。何もかもな〕

 

「ああ。だが油断禁物だ。だが今は帰還の用意……ってもなんもしてねぇから撤収も楽だわな」

 

 拍子抜けしてはいるが、それだけに警戒心が頭をもたげて来る。連中の真の目的が何であったのか、それさえもが解らなくなってしまったからだ。

 

 詳細な情報は大本営、松平元帥の元へ直接送ったが、やはり松平元帥も今回の顛末は不可解過ぎて判断に困っていたようだ。

 

 肝腎の核弾頭と巡航ミサイルが使えないシロモノだったから計画を頓挫させたのか。それとも別の手がテロリスト達にはあるのか。

 

 それさえも解らず、玄一郎は歯噛みした。

 

 




 黒歴史認定。

 ナマイキおっぱいとは。ちょいと胸の先っぽが上にツンと向いた感じのぷりんとしたおっぱいの事……らしい。いえ、話に聞いただけですが、なんか想像したら良さげな感じだったので。

 不気味で不可解な深海テロリスト達の動き。謎が謎を呼びます。

 次回、レッドオクトーバーなら追わねばならないが、レッドオクトパスならそれ茹でダコや、でまた会おう!(嘘)

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