GATE 幻想郷防衛軍彼の地にて斯く戦えり 作:にょろ35106
話の都合上、時系列では第二ゲートが初めて報告された時に少し戻っています。
総理以下閣僚の話し方や会議の進め方等違和感があっても気にしないでほしいです。
side・日本政府。
最初の報告。
首相官邸。
「では、現地より送られて来た報告書の会議を行います」
進行役の自衛隊幹部が会議室で日本の指導者を前に礼をする。
「自衛隊と特地武装勢力の初めての特地での戦闘ですが、自衛隊側の死傷者ゼロの結果で終わりました。現在は陣地を構築中であります」
その言葉に本位総理大臣を始め各閣僚が安堵のため息をつく。
「ご苦労でした。自衛隊側の死傷者ゼロは喜ばしい」
「全くだ。死傷者が出ていた日には野党が大騒ぎする材料になりかねない」
閣僚の一人が本位に同意する。
「次にこちらをご覧ください」
プロジェクターが投影する画像に“ゲート”が映し出される。
「これが向こう側のゲートか?いや、自衛隊が写っていない・・・?」
「これは銀座に繋がるゲートより二キロ程離れた場所にて確認されました。現在自衛隊では“第二ゲート”と仮称しています」
会議室がどよめく。
「別のゲート・・・と言うわけか。これは?」
本位総理が湖の湖畔に見える建物を指差して聞く。
「推測でありますが、第二ゲート側の勢力の可能性があります」
「真っ赤な館だな・・・まるで吸血鬼の館みたいだ」
嘉納大臣が率直に言う。
「こちらをご覧ください」
映像が切り替わり望遠撮影された目を瞑る赤髪の女性が映る。
「こいつぁ・・・・」
女性の服装は中華風。
更に帽子の部分が拡大され“龍”の 漢字が映し出される。
「中国人・・・?」
「いや、しかし館は洋風だぞ・・・・」
会議室がざわめきに包まれる。
「中国にゲートが現れたと言う情報は?」
「確認できません。現場では接触の有無を判断しかねており、接触を行うかどうかを決めて頂きたいと」
総理以下閣僚達の話し合いが行われ、現状維持で相手から接触して来た場合はこの限りではないと結論が出された。
リィグゥ公夜襲失敗後。
「以上が、特地での武装勢力による夜襲に対する反撃戦闘の報告になります」
自衛隊幹部の説明が終わった。
今回も自衛隊員の死傷者は無し。
喜ばしい限りだ。
「報告は以上かい?」
嘉納大臣が自衛隊幹部に聞く。
「いえ、続きがあります。ほぼ同時刻に特地の武装勢力の一部が第二ゲート勢力と思われる相手に自衛隊に仕掛けたように夜襲を行いましたが第二ゲート勢力の勝利で終わりました」
「ほう?武装勢力の人数は?」
「画面に映る範囲からの推測ではありますが、最低で100名はいるかと思われます」
「どんな武器を使用していたんだ?第二ゲート側の人数は?」
「それが・・・」
自衛隊幹部が手元の資料に目を落とす。
先に戦闘の映像を見ているが今でも信じられない。
「どうしました?」
怪訝な表情で本位総理が話しかける。
「失礼しました。まず、第二ゲート側の人数ですが・・・三名で実際に戦闘を行なったのは
二名になります」
「たった二人で?」
「いや、遠距離からガトリングガンのようなものを使えば・・・」
「こちらの映像をご覧ください」
暗視カメラで撮影された映像。
カメラが映しているのは進軍する武装勢力。
「「「「「!?」」」」」
その武装勢力から少し離れた場所にテーブルとそれに座る二人の少女と一人のメイドが何の前触れもなく現れた。
「これは一切の編集を行なっていません。現地からも突然現れたとしか思えないと・・・」
映像は続く。
『咲夜、ありがとう!』
『ねぇ、あなた達も優雅で美しくないと思うでしょ?』
スピーカーから再生される音声。
「おい、こりゃあ・・・!!」
「あ、ああ・・・」
「日本語だ、日本語を喋っている・・・」
西洋人が日本語を喋ってもおかしくない、だがそれは地球での話であって特地ではあり得ない。
まして二人の少女にはそれぞれ異なる翼が生えていた。
二人の少女がメイドの喉元に噛み付いた。
その後少女の一人が軽々と小さなビルほどの高さまでジャンプし、未知の力で地面の上の敵を攻撃した。
爆発も起き、地面が抉れる。
逃げ出そうとした者達の周りを4人の少女達が囲む。
その姿、動き、指向性マイクの拾った音声は全て同じである。少女が手を握った瞬間に幾人もの逃走者が一箇所に、まるで本人の意思を無視して集められ、そして破裂した。
「こ、これは・・・・・」
本位総理も言葉を失う。
最初にジャンプした少女が何かをしたかと思えば夥しい数の蝙蝠が現れ、まだ息のあったと思われる者達を襲う。
「あの屋敷を初めて見た前の会議の時、吸血鬼の館みたいだと言ったが、こいつぁマジで吸血鬼なのか・・・・」
嘉納大臣が今の映像、そして少し前の映像でメイドの血を吸ってるように見えたのを思い出しながら言う。
引き上げる少女達。
『本日は妹様のご期待に応え、すき焼きの用意をしております』
『やった!咲夜大好き!』
『すき焼き・・・ああ、この間守矢の巫女が話していた食べ物ね。咲夜、確か倉庫にこたつがあったわよね?』
映像と音声は続く。
「すき焼きって、あのすき焼きなのか・・・・?」
「こたつも言ってた。それに守矢の巫女?第二ゲート側には神社もあるのか・・・・?」
理解を超える出来事の連続に最初にゲートが開き異世界の存在が確認された時に感じた胃痛を彼らは再び感じた。
「なお、偵察隊の消耗物資で胃薬の消費が増えたようです」
最後に自衛隊幹部の発した言葉を彼らは身をもって経験していた。
後日。
「本位さん」
嘉納大臣が昼食を終えた本位の元を訪れた。
「嘉納大臣、何か緊急の要件ですか?」
「まぁ、そんなところです」
急に真面目な顔になる嘉納大臣。
「聞きましょう」
「本位さん、あんた前回の第二ゲートに関する報告の時に“守矢の巫女”って言葉が出て来たのを覚えてるかい?」
「ええ、誰だったか覚えてませんが神社があるのかって言っていましたね?」
「気になって、調べてみたんだ。神社本庁に問い合わせてな」
「神社本庁に・・・?」
何故異世界の事を問い合わせたのか考え、ある考えに至る本位総理。
「当たりだったよ。守矢神社、巫女さん一人で切り盛りしていたらしい」
「らしい・・・・?」
「二、三年程前、送った郵便物が宛先が存在しないって戻って来たらしい。最初は住所の記載ミスかと思ったらしいが間違いはなく、記録の住所でそれまで何度も郵便を送っていた」
「・・・・・・・・・」
「神社本庁は放置したらしいが、気になって現場に行って見た。更地になってたがいくら調べても解体した業者が見つからず、おまけに航空写真に存在した湖も消えて無くなっていた・・・」
嘉納が現地で撮って来た写真と何年も前の神社と湖の航空写真を見せる。
「ちょ、ちょっと待ってください。神社はともかく、湖が消えたら大騒ぎに・・・」
「本位さん、地元や周辺住民が神社や湖の存在を忘れてしまっていたら・・・・?」
「そ、そんな馬鹿なことが・・・・」
「東風谷 早苗、守矢神社の巫女さんの名前だ。義務教育の記録があって中学の時の教師に会えたよ。二人の神様と一緒に住んでいるとか言っていた不思議な子だったのを覚えていた。まぁ、周りの連中は頭が可哀想な子だって腫れ物を扱うような接し方だったらしいが・・・なぁ、ここからは俺の勝手な想像だが・・・・。もし、本当にその子に神様が見えて、もし超常の力が存在したら・・・・」
数ヶ月前なら一笑されただろう。
だが、今では銀座に異世界へのゲートが存在し自衛隊が特地に駐屯している。
ゴブリンやオーク、ワイバーンと言った架空の存在の死体が様々な研究機関で研究されている。
「その早苗って巫女さん、こっちの世界に嫌気がさして神様と一緒に第二ゲートの向こうの世界に神社と湖ごと引っ越しちまったのかもな・・・・周りの人間の記憶から自分達の事を消して・・・・・」
早苗さんの設定は捏造です。
なお、作者の中の早苗さんは高校に進学せず中学卒業後に幻想卿に来た設定です。