GATE 幻想郷防衛軍彼の地にて斯く戦えり   作:にょろ35106

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当分の間短文での投稿が続きます


侵入者の正体

 

 

「「「「うきゃあああああーーーーっ!!?」」」」

 

居間に踏み込むのと同時に上がる四つの悲鳴。

 

居間に置かれたテレビはアニメ映画が再生されている。

 

こたつの上にはカセットコンロとその上でグツグツと煮立つ鍋料理に中身が半分以下に減った酒瓶。

 

そのこたつを四方から囲んでいる小さな少女達が突然の大声に驚き悲鳴をあげたのだ。

 

伊丹だけでなく自衛隊一行と異界一行にもそこにいる少女達が人間でないのはすぐに分かった。

 

体が小さすぎるのだ。

 

「ちょ、ちょっと!誰よあんた達!?」

 

一人の少女・・・いや、妖精が抗議の声をあげた。

 

「ここを私達の新居と知ってるの!?」

 

「なぁにが私達の新居だ!ここは俺ん家だ!」

 

「「「「へっ?」」」」

 

四人の少女は戸惑いの声をあげた。

 

「ちょ、ちょっと!ここって空き家だったんじゃないのサニー!?」

 

「え?だ、だってこの家見つけて一ヶ月以上誰も来なかったんだもん!ルナにスターだって新しい家だって喜んでたじゃない!」

 

「一ヶ月誰も来なかったって・・・それで空き家だって思ったの・・・・?」

 

「「「・・・・・・・」」」

 

沈黙してしまうサニーミルク、スターサファイア、ルナチャイルドの通称三月精。

 

「あたいの引っ越し祝いの立場が・・・・」

 

意気消沈したもう一人のピエロのような服装の妖精クラウンピースが呟いた。

 

 

 

 

「「「「ごめんなさいっ!」」」」

 

四人は素直に謝って来た。

 

妖精が素直に謝って来るのに思わず面食らう伊丹。

 

妖精達の思いは一つ、((((下手したらあの巫女に退治される))))だった。

 

伊丹本人は気付いていなかったが彼の姿は何度か博麗神社で見かけたことがあるからだ。

 

博麗神社近くにも彼女達の住処はある。

 

特にクラウンピースに至っては博麗神社に住んでいるも同じ状態。

 

以前の異変では霊夢にコテンパンにされているからだ。

 

ちなみに彼女達は家主が亡くなって空き家になっていたと思ったらしく家具があっても不思議がらなかったとか・・・。

 

それを聞いた伊丹は思わず「縁起でもない!」と反射的に大声をあげた。

 

「それで、引っ越しパーティーを開いていたと・・・・」

 

栗林の発言にコクコクと三月精とクラウンピースが頷く。

 

「伊丹さん、彼女達はどうします?」

 

倉田が聞いて来た。

 

ちなみに倉田は本物の妖精を見て最初はもの凄く、下手をすれば事案発生と思われかねないほど興奮していた。

 

「そうっすねぇ・・・。悪気そのものはなかったみたいですし・・・」

 

少し考える。

 

「じゃあ、こうしよう。俺はまだ当分の間は紅魔館に居ることになるからこの家を貸してもいい」

 

「ホント!?」

 

「ただし!使った分の電気代はちゃんと君達が集金の河童に支払うように」

 

「「「・・・・・・・」」」

 

「ん?どした?」

 

突然沈黙してしまう三人。

 

「いやー・・・」

 

「そのー・・・」

 

「なんと言いますか・・・」

 

途端に口ごもる三人。

 

「お兄さん、妖精がお金持ってると思う?」

 

三人の思いを知ってか知らずかクラウンピースが代弁した。

 

コクコクコクッと三人が一斉に頷く。

 

「・・・・・・そうか、なら仕方がない・・・・。体で払って貰おうか・・・?」

 

この時の伊丹の顔は三月精視点ではまさにゲス顔に見えたとか見えなかったとか。

 

「え?」

 

「かっ、から、から・・・」

 

「体でって・・・・」

 

三人がガクガクと震えた。

 

「キャハハハハッ。おにーさんのエッチスケベー」

 

クラウンピースが囃し立てる。

 

「引くわー・・・」

 

「あの、伊丹さん、流石にそれはいくらなんでも・・・・・」

 

「さ、流石にこんな小さい子に・・・・」

 

「ドン引きっす」

 

栗林、桑原、富田、倉田が少し引き気味に言いう。

 

「なるほど、伊丹は小さい方が好き・・・と」

 

「面白いわぁ・・・・」

 

「なんだか負けた気がする・・・・」

 

レレィ、ロゥリィ、テュカも続く。

 

ロゥリィに至ってはジト目だった。

 

ここでようやく伊丹は自分が何げなく言った一言が捉え方次第でとてもやばい発言だと気付いた。

 

「い、いや、体でってそういう意味じゃないぞ!?」

 

必死に否定する。

 

伊丹が誤解を解くまで十分近くかかった。

 

「なーんだ、そう言う事ならそう言えばいいのに」

 

ホッとしたサニーが笑いながら言う。

 

早い話が家の周りの雪掻きや雪が溶けたら家の裏手にある小さな畑を耕したりする様にと言う条件だった。

 

「取り敢えず、今晩だけはここで寝てくから君達は居間で我慢するよーに」

 

「「「「はーい」」」」

 

四人が返事を返して来た。

 

 

 

「しかし、一人で住むには少し大きな家ですね」

 

一人暮らしなのに広い客間や寝室を見て栗林が呟いた。

 

「以前は三世代で暮らしていた一家が住んでたんだけど俺がここに来る少し前に引っ越してて丁度空いてるからってここが俺の家になったんだ」

 

伊丹は押入れを開け事前に紫がスキマで送っておいてくれた人数分の布団を引っ張り出しながら答えた。

 

寝室は女組、客室は男組に別れ就寝する。

 

 

 

早朝。

 

「ちっがーーーうっ!!」

 

栗林の絶叫が心地よいはずの朝の目覚めを慌ただしいものにした。

 

寝床から飛び起きた伊丹に続いて桑原、倉田、富田と続いて声の上がったと思われる場所へ向かう。

 

居間の襖が開いており、栗林の後ろ姿が見えた。

 

「どうした!?なにがあった!?」

 

伊丹が栗林に聞く。

 

「私、幻想郷に来たら妖精に会えると思ったのよ・・・・。前に妖精もいるって聞いたから・・・」

 

栗林が目線を落としながら言う。

 

「妖精ってさ、花や木が似合って可愛らしいものだと思ってたの」

 

その目は目の前の存在を見回す。

 

「確かに可愛らしかったのよ。うん、可愛かった・・・・。でも、でも・・・・空になった日本酒の瓶を抱き締めながらよだれ垂らして寝てる妖精なんて・・・!!」

 

そう、目の前には三月精やクラウンピースが酔い潰れたままこたつで眠り込んでいた。

 

サニーに至っては日本酒の瓶を抱き締めている。

 

幻想郷において幻想を打ち砕かれた栗林であった。

 




と、言う訳で侵入者は三月精とクラウンピースでした

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