GATE 幻想郷防衛軍彼の地にて斯く戦えり 作:にょろ35106
10/12追記。
大統領制にしましたが今後の展開も鑑みて帝国を帝政に戻しました。
混乱させてすんません。
銀座・ゲート前に列を作るトラック。
運転手は全て身元を調査された企業の従業員達。
ゆっくりとゲートを覆うドームの扉が開き次々とゲート内に入って行く。
それを報道するテレビカメラとリポーターや記者達。
テレビの画面ではそれを苦々しく思いながら本位総理の手腕を渋々認めざるを得ない反日コメンテーター達。
国政から反日工作員がそれなりに駆逐されているが民間に強制するわけには行かず未だ反日勢力が必死にワイドショーで政府の揚げ足取りをするがそれを嬉々として見ているのは同類の反日活動家のみであり既に一般の視聴者は冷めている。
スポンサーへの抗議も急増しメディアから反日勢力が駆逐されるのももはや秒読み段階ではないかと囁かれている。
「しかし、そうは仰いますが国内企業への恩恵は計り知れないのですよ?特地と言う巨大マーケットをみすみす見逃せと?」
中立で有名なコメンテーターが正論を言う。
「いや、私は特地の自然な文化を壊すなと言いたいのです!これは言わば武力をともわない侵略・植民地化です!」
「植民地?工業製品を特地に輸出し特地の生活レベルを向上させることが侵略?特地が日本から輸入した医薬品によって病気や感染症による死亡者が減り、乳児の死亡率が減少し、トラクターを導入した穀倉地帯では次の作物の収穫見込みが既に今までの十数倍と現地の農業従事の方々も大喜び。基本的人権と言う概念の導入によって亜人と呼ばれていた人々へ対する差別が減少している事が侵略なのですか?」
「いや、私が言いたいのは日本製品だけでは不公平だと言いたいのです。何故韓国や中国の工業製品は除外されているのかと私は政府に問いたい!」
「あなた、主張が支離滅裂なのに気付いてますか?先程は特地の自然な文化を壊すなと言っておきながら今は韓国や中国の工業製品の除外が不公平と言っている」
「う、ぐぐぐぐ・・・・!」
「それにこれが侵略・植民地化なら先進国が行う発展途上国への支援も侵略であり植民地化だとでも?」
二人の後ろのモニターにはゲートに入って行くトラックが相変わらず映っている。
トラックの荷台に積まれているのは基準を満たした冷蔵庫や洗濯機等の工業製品や医療物資等々。
近々特地では初のテレビ放送も予定されている。
都市部限定だが娯楽として建てられた映画館では特地の字幕・吹き替えで許諾を得たハリウッド映画や邦画を公開したところ常に長蛇の列で噂を聞きつけ田舎から映画を観に出てくる人々もいる。
帝国はあの日滅亡し、そして新しく生まれ変わった。
現在の皇帝はピニャである。
帝国最後の日。
謁見の間にスキマを開き八雲紫と藍に伊丹、それに続き武装した桑原、栗林、富田、柳田を含めた自衛隊員が続き狭間陸将、柳田幕僚と続いて謁見の間に現れる。
当然ながら近衛兵達は大慌てで皇帝を護る布陣となり謁見の間の騒ぎを聞きつけた帝国兵達も駆け付ける。
「お初にお目にかかりますわモルト皇帝陛下。私の名は八雲紫、幻想郷から参りました」
わざとらしい丁寧な口調で挨拶をする紫。
「日本国特地方面派遣部隊指揮官、狭間浩一郎です。我々は日本政府を代表して参りました」
狭間も日本を代表し挨拶をする。
「早速ですが本題に入りますね?さっさと降伏していただきたいと思いますの」
紫が降伏勧告を行う。
「降伏?我が帝国がか?あり得ぬ!そも無礼であろうが!」
「戦争中ですもの、礼を徹底する必要なんてありませんよ?第一、仕掛けて来たのはそちらですが?」
コクコクと頷く栗林。
「あ、そうそう。栗林さん」
「はい、何でしょう?」
「後三十秒でそこの扉から全裸の日本人奴隷を引き摺ったバカが飛び込んで来ますから殴っても良くてよ?」
「!!ご協力感謝します!」
きっかり三十秒後。
「父上!今朝の揺れがまた来るとノリコが!」
中の状況もろくに確認せず飛び込んで来るゾルザル。
ゾルザルが引き摺っている奴隷の中に黒い髪の女性がいるのを確認すると。
「鉄拳制裁!!」
「ぶべらぁっ!!?」
栗林の全力パンチがゾルザルの顔面に炸裂する。
吹き飛びながら血液混じりの唾液と折れた歯を吹き出すゾルザル。
「殴ったな・・・・!?皇子である俺を!一族郎党死罪の重罪だぞ!!」
「無礼者!皇子殿下に手を上げたなっ!」
「生きてここを出られると思うな!」
「皇子をお守りしろ!」
衛兵や兵士たちがゾルザルを救い出そうとするが・・・・。
パパパパパパパパパパパパッ!
栗林を含めた自衛隊員達が一斉に発砲したちまち自らが流す血の池に沈む。
その圧倒的な戦力差に他の衛兵や兵士達は二の足を踏む。
「大丈夫ですか!?」
栗林の話す懐かしい日本語と迷彩服、装備している銃を見てそれに縋り付く女性。
「に、日本人・・・・自衛隊・・・・!?」
「ええ、そうよ!」
「ノリコ・・・・?」
「大丈夫よ・・・・!私たち助かるのよ・・・・!」
「そっちの人も!?」
もう一人黒髪の少女が引き摺られていた。
「それが・・・・・彼女、幻想郷っていう場所に住んでいたって・・・」
「って事は・・・人里の行方不明者!?」
伊丹が叫ぶ。
襲撃以前に何人かの行方不明者が発生し人里は大騒ぎになったが結局は人里の外に出て妖怪に襲われたのかもしれないと諦められていた人達がいたのを思い出す。
「その声・・・里の外れに住んでる・・・・」
「ああっ!?よく見れば定食屋の!?・・・・・・・・・・紫さん、俺もこいつ殴っていいっすか?」
「いいけどまだ殺しちゃダメよ?」
「うっす。・・・・・てめぇのせいで定食屋のおばちゃんがどれだけ悲しんでいたか!!」
「あがぁぁっ!!?」
伊丹と栗林にボコられるゾルザル。
「腕の一本も折ったらあっ!」
ゾルザルの腕を伊丹が抱え込み・・・・目配せで意図を理解した栗林がその腕に銃床を叩きつけ腕をへし折る。
「ぎゃあああああっ!!?」
「・・・・・はぁっ。力の差を見せつけてあげないといけないようね?栗林さん、私の合図でそのバカの頭を吹き飛ばして差し上げて」
紫の言葉に栗林は狭間を見る。
コクリと頷く狭間を見て拳銃を構え銃口を必死に腕を庇うゾルザルの頭に向ける。
何故栗林が紫の指示にも従っているのか・・・。
答えは単純明白、この降伏勧告は幻想郷側の指揮下で行われている。
日本としては襲撃の責任を取らせ賠償が行われればいいと言う判断。
そもそも紫がいなければこの作戦自体実行に移せたかどうか・・・。
「一分だけ考える時間を差し上げますわ。いかがしますかモルトさん?」
「八雲とか言ったな。貴様が幻想郷の支配者か」
「貴様・・・紫様に何と言う口を・・・」
ゆらりと藍が動く。
放たれる凄まじい殺気だがそれは紫によって抑えられる。
「藍、少し落ち着きなさい」
「見苦しいところをお見せしました・・・」
「支配者?いいえ、私は幻想郷を作っただけ・・・。支配なんてしてませんわよ?」
「支配をしていないとな?成る程、統治できぬ言い訳と言うわけか。ははははははっ」
紫を嘲笑うモルトに藍の表情が険しくなるが今回は紫の命もあり殺意を抑える。
「私は幻想郷に危害を加えない限りは基本的に傍観していますの。その方が面白いんですもの」
クスクスと口元を扇子で覆いながら笑う紫。
「ところで、後十秒を切りましたが返答は如何に?」
「我が帝国が降伏などあり得ぬ!」
成る程、ピニャが言っていた通り石頭・・・いや、ただ現実が見えていないのかも知れないと思う紫。
「八、七、六・・・」
カウントダウンを進める紫。
「ちっ、父上!?」
自分がモルトに切り捨てられたと理解しそれでも縋ろうとするゾルザル。
そんなゾルザルと栗林の構える銃の間に割って入る人影。
見に何も纏っていない全裸の兎耳を生やした亜人。
「殿下を・・・殺さないで・・・・」
一見すればゾルザルを守ろうとする忠誠心の強い奴隷に見える。
栗林は躊躇する。
「あら?そこのバカを焚き付けて操っている気になって戦争を継続させたがっているウォーリアバニーの元族長テューレさんってあなたね?」
紫が唐突に図星を突く。
「・・・・・!!」
「私の時は誰も助けてくれなかったのに〜って悲劇のヒロイン気取りは楽しいかしら?」
クスクスと笑う紫。
「なっ・・・・!」
内心を言い当てられ動揺する。
「どうして知っているって聞きたいの?答えは簡単、私の藍は優秀だけど藍だけが私の式ではないわ。ただ情報を集めるだけの式ならこの大陸に無数に放っているもの。そこのモルトがピニャさんの必死の説得を無視していた元老院の会議もここでピニャさんを精神異常者扱いして塔に幽閉した時も・・・全部見て聞いていたわ。もちろん、あなたの独り言や手先に使っている亜人との会話も・・・」
パタッと扇子を閉じる紫。
もうその口元は笑っていない。
「みんなで私の事を裏切り者扱いしている、私の時は誰も助けてくれなかった・・・・。貴女のそれはただの逆恨み」
スッと目を細める。
「貴女、黙っていても仲間は私の事を分かってくれているって思い込んでいたのよ。助けてくれなかったのに?貴女、助けてって言葉にして助けを求めて手を伸ばしたのかしら?それすらせずにただ恨むだけ・・・」
ズバズバ言う紫に反論できないテューレ。
「っと、もうとっくにタイムオーバーだけど・・・。少し気が変わったわ。栗林さん、銃を納めて下さいな」
「はい」
銃を下げる栗林。
助かった・・・とゾルザルは思った。
「銃で楽にしてあげるなんて優しすぎるわ」
ゾルザルとテューレの足元にスキマが開く。
そのスキマに二人は落ち、すぐに塞がる。
パンッと手を叩く紫。
「素敵な提案があるの。あのバカとおまけがその後どうなったのかみんなで見て見ましょう」
紫が再びスキマを開く。
そこに現れたのは百インチはありそうな巨大な液晶モニターの画面。
紫がリモコンのようなもので電源を入れる。
ファンファーレのような音楽と共に映像が映る。
現れた画面は中心部に惑星が描かれその上に鳥のようなマークがある。
そしてそのマークの上下に表示されている文字は英語。
FEDERAL
NETWORK
そして日本語と異界語で地球連邦放送と字幕が表示される。
「紫さん、あれは?」
「バカとおまけを放り込んだ並行世界の地球の放送よ」
まるでプロパガンダ放送のような放送の後に「もっと知りたいですか?」と選択する画面が表示され紫はYESを選んで行く。
ちなみに伊丹と倉田は時々流れてくる聞き覚えのある単語に少しずつ真っ青になっていく。
入隊すれば市民権が保証される、アラクニド・バグズ、クレンダス星等々。
「い、伊丹さん・・・これって・・・」
「あ、あの映画だよな・・・?見たこともない映像も多いけど・・・え?並行世界?新作出たの?」
「し、新作なんて出てないっすよ・・・・」
「こちらの世界にはバグズは存在してないから安心していいのよ?」
紫の言葉にホッとする二人。
(その代わりもっと厄介なのがいるんだけど・・・・知らない方が幸せよね)
唐突に画面が変わる。
画面に映るのはその世界の機動歩兵の装備を着た橙の姿。
「紫様見えてますかー?私は今、惑星Pって言う場所に来てまーす。カメラマンは私の式が行ってくれてまーす」
「見えてるわよ橙。なかなか似合ってるわね」
「ありがとうございまーす。えー、ついさっきこの先にある人間の前線基地が陥落して生き残りが脱出艇に乗って宇宙に逃げて行きましたー。式を飛ばして見ていましたが隊長の人間は自分が負傷して脚が千切れたら部下に自分を殺すよう命令しましたー。すごい勇気ですー」
時々見る外界のリポーターの喋り方を真似する橙。
「えーっと、あっちの方にさっき紫様がスキマで送り込んで来た人間と妖怪兎のようなのがいまーす。では、様子を見て見ましょー」
橙が移動しカメラマンの式も後を追う。
カメラが時々人間や敵性巨大昆虫型異星生物バグズの死体を映す。
「あ、いました!」
橙が指差しカメラがズームする。
岩と砂だらけの荒野を当てもなく歩く二人。
「あっ!大変です!あっちから数匹のアラクニド・ウォリアーが!」
カメラがパンしゾルザルとテューレの進む先の丘の向こうから移動をしているアラクニドの群れを映す。
そして遂にアラクニド達が丘を越えゾルザルとテューレの姿を捕捉した。
逃げようとするゾルザルとテューレだがあっけなくウォリアー達の鋭利な前足で体を貫かれ他のウォリアー達が群がり二人をバラバラにした。
「うわー、こうして見るとエグイですね〜。って、あー、私もあっちの方からくるウォリアーに見つかってしまったみたいですー。早速逃げまーす」
猫又の姿になり地を駆ける橙。
その先に小さなスキマが開き橙は迷うことなくその中に飛び込み出口である紫の腕の中に着地した。
すぐにスキマは閉じる。
「紫様、藍様、ただいま戻りましたー」
「お帰りなさい橙。いい子いい子」
「わーい、紫様に撫で撫でしてもらっちゃった」
式が破壊されたのかカメラが地面に落ち遠くのゾルザルとテューレのバラバラ死体が横倒しになった画面に延々と映る。
バカ皇子とテューレはインスマス送りにしようかと考えていたけど久々にスターシップトゥルーパーズのサントラ聞いてたらこんなシーンを思いついて書きました。
リコ達が惑星Pを脱出して少ししてからバカ皇子とテューレが送り込まれたような感じのイメージです。