GATE 幻想郷防衛軍彼の地にて斯く戦えり   作:にょろ35106

40 / 54
下手だから東方天空璋がなかなか進まない。
気分転換に書いた。


不幸な大統領

「これでよし・・・・っと」

 

優曇華の傷を縫合し終わり包帯を巻く。

 

「傷が塞がるのを促進する玉兎用の薬よ、飲みなさい」

 

永琳に出された薬を飲む優曇華。

 

 

「伊丹、荷物の方は全部大丈夫よ」

 

「ああ、まとめ終わった」

 

 

戻ってきた慧音に叩き起こされた後、酔いを覚ます永琳の薬を無理矢理飲まされ今は素面の状態になっている霊夢と魔理沙。

 

「こっちはいつでも行けます。それから先ほど紫さんから連絡が、都内で米国の工作員十人と戦闘になったそうです」

 

桑原に状況を伝える。

 

「それで、どうなりました?」

 

「九人は殺したそうです。一人は狂ってしまったと」

 

「一人で九人も・・・・」

 

「恐らく、紫からしてみれば遊びね。紫が本気で殺しにかかったら周りが跡形も無く吹き飛んでてもおかしくないから」

 

霊夢が自分の荷物を持ちながら言う。

 

「それで、狂った一人は?」

 

「飼い主に返す、とだけ・・・」

 

 

 

 

 

「・・・・・・後は、印を押すだけだ・・・・・」

 

本位総理は執務机に座り辞任の為の書類を作成し終えつつあった。

 

後は総理大臣の印を押すだけ。

 

インクが付いているのを確認し、書類に押し当てる直前。

 

電話が突如鳴る。

 

深夜にいきなり鳴る電話だ、重要でないわけがない。

 

印鑑を押すのを中断しそれを取る。

 

「私だ。・・・・何!?それで!?」

 

電話先からの情報を一字一句聞き逃さないように注意深く聞く。

 

 

 

 

 

 

少し前。

 

アメリカ合衆国首都ワシントンDCホワイトハウス・大統領執務室。

 

米国の最高権力者である大統領の住む白い家。

 

当然だが最高の警備体制が敷かれ地下に核シェルターをも完備する。

 

その周囲は月の軍事演習や月からの警告放送、島が一つ消滅したと言うニュースを見た国民が不安に駆られ集まり、更に各マスコミも集まり報道を行なっている。

 

そんなホワイトハウスの大統領執務室には大統領以下副大統領、下院議長、上院仮議長、国務長官、財務長官、国防長官、司法長官、内務長官、統合参謀本部議長と重鎮が勢揃いしていた。

 

執務室では彼ら要人が議論を交わしていた。

 

議論を交わす彼らが囲むテーブルには様々な機密資料やNASAや関係省庁から掻き集めた書類が置かれている。

 

ディレルが本位総理を脅す際に使用した日本政府要人や官僚の汚職情報の原本も今やその一部になっている。

 

「合衆国の領土が一つ消滅したのだぞ!無人だとは言え、これが軍事的、経済的、資源的にどれだけの損失になるのかわかっているのか!」

 

「だから即攻撃しろとは短絡的だ!第一、相手は三十八万キロの彼方にいるのだ!ミサイルを撃って届く距離か考えてみろ!」

 

「そうだ。もし届いたとしてもあの圧倒的な戦力を前に敵うと思うか?」

 

「軍のレーダーにも宇宙から飛来するミサイルのような物は写っていなかった。完全にステルス状態なのか、それとも物質転送を実用化しているのか」

 

「大統領、やはり来賓の招待を中止した方が・・・・」

 

「いや大統領、その必要はありません。我が軍は優秀なエージェントを派遣しました。彼らがジャップ相手に失敗することはありません」

 

「そうだ。それに来賓の一部は月のプリンセスと付き人なんだろ?そいつらの首にナイフでも押し当ててる映像を送れば月など恐るるに足りん。前回敗退したのだって、もしこちらがそのかぐや姫とやらを確保していれば負けてはおらんよ」

 

彼等はつい数時間前まで自らの国家が最強であると信じていた。

 

しかし突如頭上に圧倒的な技術力を持つ存在がいる事を知らされ、だが今なお地球の考え方で議論を交わしていた。

 

議論を交わす彼等の一人、統合参謀本部議長の職務用携帯電話が鳴る。

 

「失礼します。はは、きっといい報告ですよ。ああ、私だ。ああ、今大統領執務室にいる。・・・・・・・なんだと?・・・・・・・・・・・そうか、分かった」

 

静かに携帯電話をしまい溜息を吐く。

 

「作戦は失敗だ・・・・・・・」

 

力無く呟く。

 

「ど、どう言う事だ!?日本とは話がついているのだぞ!?」

 

ディレルが信じられないと言う感じで叫ぶ。

 

「ロシア、中国、韓国、北朝鮮の工作員と遭遇、戦闘に突入。以降、一切の連絡がつかない。都内でヤクモユカリを招待しようと動いていた連中も連絡が途絶えた・・・」

 

「ロシアと中国だけじゃなく、韓国に北朝鮮もだと・・・・!?」

 

「くそっ!!」

 

ドンッ!と机を叩くディレル。

 

ポタッ・・・・。

 

ほぼ同時に要人が囲んでいるテーブルの上の書類に赤い液体が落ちシミを作る。

 

「んっ?」

 

一人がそれに気付く。

 

ポタッポタッボタボタボタッ。

 

あっという間にに勢いを増すそれに全員がギョッとする、と同時に。

 

執務室の天井に開いた紫のスキマから。

 

ベチャベチャベチャベチャッ!!

 

勢いよくテーブルの上に錆の匂いを漂わせる赤黒い液体と共に生肉が降り注ぐ。

 

肉だけではない、腸や肺、心臓と言った内臓、砕けた骨、バラバラになった手や足、生首が降り注ぐ。

 

「う、うわぁっ!?」

 

「ひぃっ!?」

 

「な、なんだ!?」

 

それは一人や二人分と言った量ではない。

 

もっと多い。

 

生臭い悪臭を漂わせる臓物や破れた腸から漏れた汚物が悪臭を放つ。

 

それらの中に銃や手榴弾と言った武器も血肉にまみれて落下してきた。

 

ドスンッ!!

 

纏まった塊が落ちてきた。

 

全員が天井を見るが既にスキマは閉じており大統領執務室の天井しか見えない。

 

「うひっ、えひひひひっ」

 

臓物塗れのテーブルには落ちてきた塊はケタケタと笑っている。

 

紫のスキマに飲み込まれた発狂した米国工作員だ。

 

「ば、化け物だ、うひひひひひっ!」

 

相変わらず狂ったままだ。

 

「あひゃははははははっ!合衆国バンジャイ!いひひひひっ!」

 

ちゃっ。

 

ハンドガンを片手で構える。

 

照準も定まっていない、その体勢で撃てば腕の骨が影響を免れない持ち方で。

 

要人達が大統領を守ろうと咄嗟に大統領をガードする形になるが。

 

カチッ!カチッ!カチッ!

 

銃は弾切れで虚しい金属音だけがカチカチと鳴る。

 

「U・S・A!U・S・A!U・S・A!」

 

弾切れのハンドガンのトリガーを何度も引きながら祖国を讃える発狂してしまった工作員。

 

大統領以下閣僚はこの時、初めて自分達が利用しようとしていた存在が一人でも十人の武装工作員を殲滅出来るとんでもない化け物だとようやく実感した。

 

次に考えるのはまずはこの場をどうしようと言う事だ。

 

執務室のドアは重要会議と言うことで鍵を掛けてある。

 

この大量の原型を留めない死体の山と狂人をどう処理すればいいのか。

 

この時、不運にも全員がその事を考えてしまった。

 

だから工作員の行動に気付くのが遅れた。

 

ピンッと軽い金属音がした。

 

「はっ?」

 

ディレルが阿呆のように声を出した。

 

「うひっ、うひひひひっ」

 

工作員は口にピンを咥えていた。

 

何のピンかと手に持っているものを見る。

 

「まずい!大統領伏せて!!」

 

誰かが叫んだ。

 

工作員の手から落ちるのはピンを抜かれた手榴弾。

 

それはコロコロと血肉の坂を転げ落ちてコンッと埋もれていた銃に当たり宙を舞う。

 

「うわああああぁぁぁぁっ!!」

 

「ひいいいぃぃぃぃっ!!?」

 

「こんな馬鹿なあああぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

ホワイトハウス。

 

そこはアメリカ大統領の住居であり執務を行う場所。

 

大統領と言うアメリカの最高権力者。

 

当然、その地位にある者を守る為に防備は完全だ。

 

屋上には不審者を射殺する事が許されているスナイパーが二十四時間体制で警備している。

 

不審な飛行物体を迎撃するスティンガーミサイルも配備されている。

 

歴代大統領やホワイトハウス関係者の誰も突如大統領執務室に脅威が出現するとは想像だにしていなかっただろう。

 

破裂した手榴弾は工作員の身に付けていた手榴弾と弾薬を誘爆させる。

 

屋上の警備をしているスナイパー、庭を警備している者、執務室の前で待機しているシークレットサービス。

 

そのほか大勢のホワイトハウス職員が大統領執務室から響く爆発音に身を硬くした。

 

爆音はホワイトハウス前の群集やマスコミにも聞こえた。

 

特に執務室前のシークレットサービスは内側からの悲鳴にドアを破って大統領を守りに行こうと蹴破ろうとした矢先にドアが吹き飛び砕けた破片が体に突き刺さったりして負傷したりと散々な目にあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

本位総理は電話を終え、受話器を置くと完成間近だった辞任の書類をシュレッダーに掛ける。

 

「どうやら、辞任している場合ではないようだな・・・・・。まずは・・・・」

 

ディレルが脅しに使ってきた汚職の証拠。

 

これを元に内閣と官僚の大改造を行う必要があると確信した。

 

「その前に・・・・」

 

携帯電話を取り出すと嘉納大臣に電話をかける。

 

「嘉納さん、私です。どうやら辞任している場合ではなくなりました。ええ、はい。深夜と言えども一部のテレビ局では緊急速報を流していますからそちらを見てもらえれば。ええ、はい。それでは」

 

通話を終える。

 

 

 

「テレビを見ろだぁ?おい、ここってテレビ観れるか?」

 

作戦指揮室でスタッフに聞く。

 

「ええ、見れます」

 

スタッフが正面モニターを民放受信に切り替える。

 

チャンネルを報道系の番組にする。

 

「えー、先ほども言いました通り、ホワイトハウスにて爆発があり、現在とても混乱している状況です。未確認情報ですが、ディレル大統領以下閣僚の安否が不明と・・・あ、今入ってきたニュースです。え?こ、これ本当なの!?あ、し、失礼しました。先程、ディレル大統領以下閣僚含む十名の死亡が確認された模様です。繰り返します、ディレル大統領以下閣僚含む十名の死亡が確認されました。また、現場には身元判定が困難な損傷の激しい遺体が複数あるとのことで、現在合衆国は大変な悲しみに包まれています。また、CIA、FBIを含む合衆国政府機関にサイバーテロが行われた模様です。現在もサイバーテロの影響範囲は広まっており、未確認情報ですがいくつかの空港機能が麻痺しているとの情報もあり・・・・・・・・」

 

「こ、こいつぁ・・・・」

 

指揮室の誰もがただ事ではないと感じていた。

 

 

 

 

後日。

 

トップシークレット扱い・ホワイトハウス爆発事件及び米国全土同時多発大規模サイバーテロ簡易報告。

 

容疑者・不明。

 

ホワイトハウス爆発事件。

 

犠牲者・ディレル大統領以下閣僚十名と統合参謀本部議長、海兵隊員数名。

 

海兵隊員の遺体は損傷が激しく身元判定が不可能な遺体も有り。

 

爆発したのは海兵隊員の手榴弾及び誘爆した弾薬と推定。

 

しかし海兵隊員達が何処から執務室に入ったのか不明。

 

一部ではユカリ・ヤクモの関与も噂されたが証拠は無く、更にユカリ・ヤクモの拉致をディレル大統領が命じたとの噂が事実だとすればある意味正当防衛で有り、米国の恥部である。

 

合衆国の尊厳を守る為、これ以降のユカリ・ヤクモに対する事件関与の捜査は大統領令により中止される。

 

 

同時多発大規模サイバーテロ。

 

サイバーテロ攻撃元は米国軍事通信衛星まで辿れたもののそれから先は解析不可能であった。

 

CIA、FBI含む政府機関のネットワーク接続端末上の情報が漏洩。

 

電力・水力・ガス等のインフラ麻痺。

 

しかし医療機関、消防、警察等の人命に関わる機関や施設は攻撃から除外され供給が続いていた。

 

この事が犯人の目的を分からなくさせている。

 

米国内の全金融データが消失。

 

バックアップからの復元までの間の金融取引がほぼ不可能であった為に現金を所持していなかった者達の間で物々交換が行われていた。

 

普段カード決済が主なハリウッド俳優やセレブ達が服や時計を食料やガソリンと交換していたとの目撃情報もある。

 

金銭的損害は天文学的数字である。

 

CIAが行なっていた海外要人の暗殺や脅迫が白日の下に晒され、米国の国際信用度は失墜を免れない。

 

今や中東に頭を下げて原油を買っている状況がそれを示している。

 

報告終わり。

 

 

 

 

ディレル死去に全米が衝撃を受けていた時点(嘉納大臣が作戦指揮室でテレビを見ていた時)まで時は戻る。

 

「・・・・・・・マジ?」

 

アメリカ合衆国農務長官は目が点になっていた。

 

穀倉地帯視察中の彼は少し前まで大統領の死にマスコミから質問責めにされようやく解放されもはや昼飯になった朝食を食べようとしていた。

 

そこにいきなりヘリが飛んで来て何人もの人間が降りて来た。

 

何事かと思い外に出るとその中の一番偉そうな男が口を開いた。

 

「農務長官、合衆国法典第三編第十九条により貴方が大統領になります」

 

「・・・・・・・・・・リアリィ?」

 

「現実です。貴方より上の大統領継承権者は全員がホワイトハウス爆発事件において死亡が確認されています」

 

「・・・・・・ちょっと、ほっぺたつねってくれる?」

 

「・・・・・失礼します」

 

「いひゃいいひゃい!ゆ、夢じゃない・・・・・?え?わ、私が大統領!?無理無理無理!!」

 

「では、私に続いて復唱してください」

 

「マイガッ!?」

 

後に《米国が一番大変な時期に大統領になってしまった男》と自伝を発行しそこそこ書籍が売れた大統領の誕生の瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

月の都・地球上への電波ジャックより約三時間後。

 

 

「ど、どう言うことなんだこれは・・・・・」

 

プルプルと震える綿月依姫。

 

「あら?どうしたの?」

 

姉の豊姫がただ事ではないと思い声をかける。

 

「い、今、地球上のインターネットという物に割り込んで地上の情報を集めていたんだけど・・・・・これを見て・・・・・・」

 

「あらまぁ。素敵じゃない?」

 

「どこがよ!?」

 

依姫が見ていたのは日本のとあるホームページだ。

 

別に政治関係や軍事関係の情報ではない。

 

むしろそれとは全く無縁だ。

 

トップページの上部にデカデカと表示されるサイト名とサイトの説明文。

 

 

綿月依姫様非公認ファンクラブサイト

 

 

電波ジャックでお姿をお見せ下さった月の綿月依姫様のファンになった人々が集うサイトです。

 

月と関わるのは禁止なので非公認ですが依姫様の魅力を世界中に発信しましょう!

 

 

と。

 

 

コメントページを見ると

 

 

依姫様に見下されたい!!

 

冷たい目で見下ろされながら「豚のようにお鳴き」と言って欲しい!

 

ブヒイイイィィィィィィィィッ!!

 

踏んでくださいお願いします!!

 

ねぇねぇ、依姫今どんな気持ち?ねぇ、今どんな気持ち?

 

薄い本はよ!

 

おいバカやめろ・・・・・どこで薄い本買えますか!?教えてくださいなんでも(ry

 

んっ?

 

んっ?

 

今、何でもって(ry

 

 

 

などなど、色々と手遅れなコメントがずらっと並ぶ。

 

一部分だけどう見ても輝夜が投稿したとしか思えないコメントがあるが・・・。

 

「お、落とさなきゃ・・・・日本にプランク爆弾落とさなきゃ・・・・・」

 

ふらふらと依姫の手が制御装置に伸びるがそれを制する豊姫。

 

「駄目よ?日本はこちらの忠告を破ってはいない。こちらから約束を破って攻撃することは禁止します」

 

「ね、姉さん・・・・」

 

「ええと・・・・書き込みはここね?じゃあ、管理人グッジョブ!っと・・・・」

 

「姉さん!?」

 

 

 

非公認綿月依姫ファンサイト、非公認で姉の豊姫に認められた瞬間であった。

 

しかしわずか三時間でファンサイトが立ち上げられ無数の書き込みが行われる。

 

日本の紳士達には造作もないことである。

 

 




サブタイはディレルではなく、名も無い元農務長官です。


ディレル死亡は最初からの予定ですので問題ありません。
農務長官が大統領・・・・内閣総辞職ビームならぬ大統領継承権者総辞職手榴弾・・・・。
とりあえず今回は米国の件だけを書きました。
紫の行動と輝夜の行動は全く別々に進行したので調査している人も大変だったでしょう。
足なんか付くわけ無いけど。




輝夜を怒らせた他の国は次回以降に。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。