GATE 幻想郷防衛軍彼の地にて斯く戦えり   作:にょろ35106

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佐渡にマミゾウがいた化け狸たちの国があるならこんな連中がいてもいいよね?


内閣がパニック中な頃、一行は・・・・

 

 

総理以下閣僚達が聖徳太子が実は女性でしかも来訪団の中にいると知りパニックになっていた頃。

 

 

 

衣料品店に立ち寄り服を用意しようとしたが結局買ったのはテュカにスーツ一式のみだった。

 

ロゥリィとレレィは不要だと言い、幻想郷一行もそのままの服装で新たな服は不要だと伝えた。

 

伊丹も今は紫が用意したしっかりとした紋付羽織袴を着用している。

 

「では、食事に行きましょう」

 

牛丼店の前でバスが停止し桑原が降りようとする。

 

だが紫が待ったをかける。

 

「せっかく異界の客人がいるのに、牛丼は如何なものでしょうか?」

 

「はぁ、しかし経費では一食500円までしか・・・・」

 

一瞬伊丹は500円という金額にビビるが外界ではそれが当たり前だと思い出した。

 

日本は戦後にインフレが進んだが幻想郷ではそんな要因は全くなかった為、今でも普通に銭や厘の単位を使用している。

 

そば一杯が5厘前後だ。

 

その金銭単位に慣れきっている霊夢や魔理沙も驚いていたが伊丹が幻想郷での約1銭だと説明をすると納得した。

 

この会話を聞いていた自衛隊一行は幻想郷の貨幣単位が銭や厘を今でも使用している事に驚いていたが。

 

「安心してください、私の奢りですわ。運転手の方、この場所まで行っていただけます?」

 

紫が場所を書いた紙を運転手に渡す。

 

「そんなに離れた場所ではないですね・・・ここから10分程です。どうしますか?」

 

運転手の隊員が桑原に聞く。

 

「分かりました、お言葉にお甘えさせていただきます」

 

運転手に発進を指示しバスは走り出す。

 

目的地前で一行はバスを降りた。

 

運転手はバスを近くに駐車可能スペースに移動させ公安の一同と共に警戒を続ける。

 

桑原は都心近くにまだこの様な場所があるのかと驚く。

 

周囲はサラリーマンやOLが仕事をしているオフィス街だ。

 

だがここは竹が生い茂っている。

 

紫が入り口らしき小道を進み始めたので全員がその後に続く。

 

少し歩いたところで。

 

「あれ?今なんか・・・」

 

伊丹は何か違和感を感じた。

 

「伊丹も気付いた?」

 

霊夢が伊丹の言葉に続く。

 

「ええ・・・なんか違和感を・・・」

 

「結界よ。簡単な結界でいわば音を遮る結界ね」

 

「そう言えば、車の音がしない・・・・」

 

「それと周囲の霊力を集める結界も同時展開されてるわ。とは言っても大量に集める様な結界じゃないわね。地脈とかから漏れている行き場のない余った霊力を集める様な周囲に害を及ばさない様に注意深く張られているわね。紫、あんたの仕業?」

 

「流石は霊夢ね。そうよ、結界が張られてるわ。あ、私は関わってない結界よ」

 

紫が霊夢に答える。

 

話しているうちに突如視界が開ける。

 

そこにあるのは和風建築の建物。

 

暖簾がかけられている。

 

紫はそのまま建物に入り、一行も続く。

 

「八雲様、いつもご贔屓に」

 

料亭の女将の様な格好をした女性が丁寧に出迎える。

 

「お座敷をご用意しております。ささ、どうぞこちらへ・・・」

 

「ありがとう女将さん」

 

女将も紫も互いに顔見知りの様な雰囲気だ。

 

座敷に通され、女中が茶を人数分用意する。

 

5分もしないうちに少し頭の大きい好々爺に見える老人が挨拶に来た。

 

「八雲様、いつもご贔屓に。本日はあまりお時間がないとのことなので、早速ご用意させていただきました」

 

老人が挨拶を終えると女将を筆頭に女中達が配膳する。

 

「それでは、これにて・・・・。ごゆるりとご賞味下さいませ」

 

女中達が退出し終え、老人も挨拶をし部屋を後にする。

 

「さぁ、皆さん。遠慮せずにどうぞ」

 

紫の言葉が終わると同時に霊夢と魔理沙が早速食べ始める。

 

「た、隊長、寿司です・・・。どう見ても高級寿司ですよ・・・・」

 

富田が戸惑う。

 

栗林に至っては固まっている。

 

「う、うむ・・・。や、八雲殿、本当にいいのですか・・・・?」

 

「ええ、むしろ食べていただかないと食材の無駄になってしまいますわ」

 

そう言いながら紫も寿司を食べる。

 

「紫さん、ここってもしかして・・・・?」

 

「あら、やっぱり伊丹にも分かったかしら?」

 

「ええ・・・。女将さん、女中さん、ここのご主人と思われる先程のお爺さん・・・。もしかして全員が妖怪ですか?」

 

「正解よ。規模の大小はあれど、外界にもこの様な場所は幾つかあるわ。佐渡の化け狸達の所とかこことかね。ただ、幻想郷に来なくても存在を維持できる霊力の持ち主とかに限られてしまうけれど。じゃあ、伊丹。先程の老人が何の妖怪か分かるかしら?」

 

「あってるか分かりませんけど、頭が少し大きかったですよね?もしかしてぬらりひょんですか?」

 

「正解よ。ご褒美にいくらを進呈するわ」

 

 

 

「ぴ、ピニャ様・・・・生の魚を食べてます・・・・」

 

「う、うむ・・・。しかし、食欲をそそる香りだ・・・」

 

見ればロゥリィ、テュカ、レレィはすでに美味しそうに食べている。

 

「こ、この“しょうゆ”と言うタレをつけて食べるのか・・・・」

 

「で、では、ピニャ様、ご一緒に・・・・」

 

同時にネタに醤油を付け、見よう見まねで口に入れる。

 

「「んんっ!?」」

 

とろける様な舌触りと口の中に広がる未知の味わいに思わず次のネタに手を伸ばしていた。

 

 

 

「気に入ってくれた様ね」

 

見ればピニャとボーゼスは夢中で寿司を食べている。

 

「でも、紫さん・・・・。ここってすごく高いんじゃ・・・・」

 

「誰もお金で払うなんて言ってないわよ?」

 

「へっ?」

 

「ここ、霊力でも支払いができるのよ。だからここじゃあ基本的に妖怪や神仏の客は霊力払いよ。もちろんお金も使えるけれど」

 

「そう言えば、ここに入ってすぐに変な石に触れてましたけど・・・あれが?」

 

伊丹は入り口にある石を最初に紫が触っていたのを思い出した。

 

最初はオブジェか何かだと思っていたがそんな用途があったのかと感心した。

 

「ええ。もう霊力は分けた後よ。さ、そんな事気にしていないで好きなのを食べていいのよ」

 

紫が促し伊丹も食事を再開した。

 

 

 

「八雲殿、こちらを・・・」

 

食事を終え部屋を出て出入り口に向かうとここの主人のぬらりひょんが二つの包みを渡して来た。

 

「いつもの通り、稲荷寿司の詰め合わせとわさび抜きの詰め合わせをご用意しました」

 

「ええ、ありがとう」

 

紫はそれを受け取るとすぐにスキマを二つ開いて包みをスキマに入れる。

 

「ひょっとして、藍さんと橙ちゃんに?」

 

「そうよ。私達だけ楽しんでいたら不公平でしょう?」

 

話しながら店を出てバスに向かう。

 

 

 

 

 

紫達を見送った後。

 

「ぬらりひょんさん、ちょっといいかい?」

 

「ん?女将、どうした?」

 

「ちょっと気になる事が・・・。先程の八雲様一行は全員で23名だったよね?お土産を入れて25人前。でも27人分の支払いをされていて25人が飲み食いした形跡があるんだよ。どう言う事だい?」

 

「ああ、そんなことか。大丈夫だよ、ちゃんと25人の来客と2人分のお土産だったからね」

 

「?」

 

「さぁ、女将さん。今夜は普通の人間の団体客の予約が入ってるんだ、すぐに準備に入らないと。女中さん達にもいつも通り我々が妖怪だと知られない様に注意する様に伝えておいておくれ」

 

「あいよ、ぬらりひょんさん」

 

女将はぬらりひょんがそう言うのなら大丈夫だと思考を切り替えた。

 

 

 

 

 

バスは途中でパトカーと合流しパトカーの先導で国会議事堂に向かう。

 

敷地内で停車し殆どの人数が降りる。

 

だが紫は座ったままでピニャとボーゼスは降りようとした所を富田に止められる。

 

どうやら非公式来日扱いで富田の同行で外交交渉をするらしい。

 

紫も似た様な要件なので行動を共にするらしい。

 

まだしばらく時間があるらしく議事堂内の一室で待つ事となる。

 

こうなるとどこの世界にもじっとしていられない者が出てくる。

 

「ちょっとお花を摘みに行ってくるウサ」

 

「時間までには帰って来いよー」

 

伊丹が見送るが伊丹自身も緊張の為完全に失念していた。

 

てゐが語尾にウサとつけている時は嘘だと言う重大な特徴を。

 

 

「じっとしてるなんて退屈だわさ。さーって、どこで悪戯しようかな?」

 

すでに殆どの議員が議場入りしている為に人影は殆どなく所々に衛士がいる程度。

 

てゐは上手い事その衛士の目を欺いて廊下を移動しまくる。

 

「トラップ作るのに適した場所が見つからないよ・・・・」

 

はぁっ、と溜息をつく。

 

「そろそろ戻らないと怪しまれるし・・・諦めて戻ろ」

 

早歩きで曲がり角を曲がり・・・・。

 

ドンッ。

 

てゐの体が何かにぶつかり尻餅をつく。

 

「おっと、大丈夫だったかいお嬢ちゃん?」

 

スッと手が差し伸べられてゐは断るのも失礼とその手を取り引き起こしてもらう。

 

「ん?お嬢ちゃんは確か幻想郷からの来訪者だったね?どうしてここに?」

 

「お花を摘んで戻ろうとしたけど迷ったウサ」

 

「それは可哀想に。君、彼女を同行者の方達の所へ連れて行ってあげなさい」

 

「分かりました、総理」

 

てゐがぶつかり、そして手で引き起こした人物。

 

日本国内閣総理大臣・本位であった。

 

彼はてゐと道案内をするよう指示した衛視を見送ると自身も嘉納大臣ら閣僚と警備の衛視達と共に議場へ向かう。

 

そう、彼はてゐと直接接触した。

 

てゐは人間を幸運にする能力の持ち主である。

 

しかし幻想郷で迷いの竹林にて彼女と遭遇した人物はてゐと会える事で生き延びられると言う最大の幸運に恵まれそこで与えられた幸運を使い果たしてしまう。

 

しかしここは迷いの竹林ではない。

 

しかもただ会っただけでなく、助け起こす際に皮膚と皮膚が直接接触した。

 

これで幸運に恵まれない訳がない。

 

事実、彼はこの後様々な幸運に恵まれる事となる。

 




この後の展開には総理に幸運属性があった方がやりやすいので。

紋付羽織袴は江戸時代後期から明治時代初期の庶民の成人男性の今で言う高級スーツに該当するみたいです。

幻想郷以外にも大小いくつかの力のある妖怪や神仏のグループが存在する設定にしました。
まぁ、特に今後の展開にかかわるような設定じゃあないけど。

あと作者は幻想郷の貨幣価値は明治時代のまま設定にしました。
貨幣価値換算の目安はいくつかあったのでその中からそばの値段を基準にした計算方法を。
当時の5厘は今だと280円ぐらいらしいです。
1銭で560円。
1円で56,000円。
こうしてみると今の時代って戦後のインフレで一気に価値が変化しましたよね。
余談ですが作者の手元には500円札が一枚ありました。

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