GATE 幻想郷防衛軍彼の地にて斯く戦えり 作:にょろ35106
毎日暑い・・・・・・・。
皆様も熱中症にはお気をつけて・・・・(経験あり)
自衛隊・アルヌス駐屯地。
伊丹が騎士団に引き摺られていた頃。
狭間陸将と柳田幕僚は建軍一佐が帰還して後に提出された戦闘記録の映像を見ていた。
自衛隊側の航空攻撃から始まり、幻想郷の聖輦船到着から戦闘終了までの全てを撮影したヘリの映像記録を全て見る。
本国政府に提出する報告書に添付する映像資料だ。
「うむ、何も問題はないな」
「ええ、何も問題はありませんね」
常識を放棄した二人には明らかに異常な戦闘記録が普通に見えた。
日本の国会からは既に調査隊隊長の桑原が参考人として国会招致の指示が来ている。
その時用の資料と共にこの映像資料を内閣へ至急送る。
この時、不幸な事態が起きた。
本来送られた映像資料は報告の為に一度説明役の人員が視聴する。
所が招致日までの日時が限られている事と資料を積んだ車が渋滞に巻き込まれ首相官邸に詰めている説明役が確認する時間がなくなってしまうと言う事態だった。
しかし今まで送られて来ていた資料は全て問題が無かった為。
既に陸将と幕僚の常識感が崩壊していることを知らずに・・・・。
side:日本政府
「・・・・・・・・・・・・」
本位総理を始め全閣僚は開いた口が塞がらなかった。
以前の核爆発情報はある意味真実だった。
問題は使用したのが特地の存在ではなく幻想郷側。
しかも科学兵器ではなく八咫烏の力を持った地獄鴉の妖怪の少女が小型の太陽を創り出し炎龍と呼ばれるドラゴンを倒す為に爆発させたと言う。
無数に地面に突き刺さったままの注連縄が巻かれた巨大な柱、爆発時に出来上がったクレーターの写真も添付されている。
極め付けはイタリカと呼ばれる街を野盗と化した敗残兵達から守る戦いの映像だ。
空飛ぶ木造帆船が空域に突っ込んで来て旋回、そして一台の二人乗りのバイクが空中へ飛び出しそのまままるで見えない道路があるかのごとく地上へ向かって走行。
一度城門内へ突っ込んだかと思うと一人の状態で再度出現。
まるでプラズマ球の様な光の球をばら撒きながら戦場を駆け巡り、敵を跳ね飛ばしたり轢き殺したりしている。
投下された箱の中から大型のロボットが出現、腕から暴風を巻き起こし敵を吹き飛ばし、更に逆の腕は先端のドリルを回転させながらロケット噴射で飛び出す。
赤緑虹色のUFOが出現し地上を蹂躙する。
「な、なお、映像のロボット兵器は、動力に・・・・じょ、常温核融合!?し、失礼しました。じょ、常温核融合炉を搭載しているとのことです・・・・」
ドラゴンを倒す際に太陽を創り出したと言うのを何かの例えだと思い平静を装っていた文部科学省大臣もこの常温核融合の台詞を聞いた瞬間気絶したとか。
「腕から放たれた暴風は・・・風雨の神が同乗していて使用したとのことです・・・・」
「「「はぁっ!?」」」
常識外の連発にまともな台詞が出てこない。
「か、神って、あの神か・・・?」
「ば、馬鹿馬鹿しすぎる・・・・いや、しかし・・・・」
「そ、総理、やはり幻想郷に対して依頼した例の件は無期限延期とした方が・・・・」
「しかし、もう既に向こう側の人選は終了したと返答があった。今更こちら側の都合で変更は・・・」
「それに、例の核爆発に類似した大規模爆発の情報が野党側に漏れている。 マスコミも不確定情報としてだが掴み、既に一部の新聞やテレビで報道されている。中国を始めとしたいつもの連中は我々が特地で核実験を行ったのを隠そうとしているとか言いたい放題だ。これで中止なんて発表してみろ、国内外の活動家のデモが頻発するぞ」
「ううむ・・・・」
「やはり、予定通り行うしか・・・」
side:out
side:幻想郷・永遠亭
「あー、もう早くヒールしてよ死んじゃうじゃん!ったく、使えないパーティーだわ・・・やばっ!早くヒール!」
かぐや姫こと蓬莱山 輝夜はネトゲの攻城戦イベントで危機に陥っていた。
敵の攻撃を受けガリガリとHPが削れて行く。
「あーっ!くそっ!やられたっ!」
アバターキャラが画面内で倒れる。
「あーっ!限定クエストクリア報酬が他のパーティーに取られた!」
画面にパンチしかけるが堪える。
「ダメだダメだ、パソコンが壊れるだけよ。憂さ晴らしに妹紅の奴を殺ろう。最近殺し合いしてなかったし・・・・・。あ、でもその前にメールチェックっと・・・」
PCのメールソフトを立ち上げメールを受信する。
「最近チェックサボってたからかなり溜まってる・・・・。スパムメールウザっ、死ねよクソ業者・・・・」
セキュリティソフトに弾かれる迷惑メールが普通のメールより遥かに多い。
「うーん、セールのメールばかりね。あーっ、この密林のセールもう終わっちゃってる・・・。あれ?」
メール受信が終わる。
件名の中にあり得ない文字がある。
『永琳先生へ』
送信者は文字化けしている。
「開いてみましょ・・・・・・。え、えーりん!えーりん!」
大声をあげながら輝夜はバタバタと部屋を飛び出す。
「どうしました、姫?」
薬の調合途中の八意 永琳が顔を上げる。
「姫、髪ボサボサですよ」
「えっ!?嘘っ!?ってそうじゃなくって!いいから早く私の部屋来て!」
「なんですか?黒光りする虫でも出ましたか?」
「そんなの自分で叩き潰すわよ!いいから早く!」
永琳を急かす輝夜に永琳もただ事ではないと感じた。
「これ見て!」
開いたままのメールの文面を見る。
「こっ、これはっ!!」
「驚いたでしょ!?」
「FXの配当連絡ですが?おや、また儲かったようですね」
「そうでしょそうでしょ。みんな私の事ニートニートって馬鹿にするけど私の個人資産は・・・・って、違う!カーソル動いてた!?こっち!」
永琳に本来のメールを見せる。
読み進めるうちに永琳の口元に自然と笑みが浮かんだ。
「・・・・・・・・八雲 紫の申し出にはあまり乗り気ではありませんでしたが、渡りに船・・・とはまさにこの事」
「永琳!私も行くわ!」
「姫!?」
「私の真の自由の為に!優曇華!優曇華は何処!?」
「輝夜様?どうかなさいました?黒光りする虫でも出ましたか?」
「だからそんなの自分で叩き潰すって言ってるのに!」
庭の方から優曇華の声が聞こえ輝夜は障子を開けて庭に顔を出す。
鈴仙・優曇華院・イナバが庭の掃き掃除をしていた。
「優曇華!私の勝負服の用意をしなさい!」
「えっ?」
「勝負服よ!私の!」
「はっ、はいっ!直ちに!」
「で、永琳も優曇華もなんで私が大声で呼んだからって黒光りする虫が真っ先に出てくるのよ!?」
「なんで・・・・」
「と言われましても・・・・」
永琳は輝夜の部屋の床を見る。
外界から買ったジュースの空き缶やお菓子の袋が無造作に散らばっている。
優曇華は窓から見える輝夜の部屋の中を見た。
ゲームのパッケージが今にも崩れそうな山脈を築いている。
かぐや姫こと蓬莱山 輝夜、片付けられない女であった。
カサカサカサッ・・・・。
「あ、ゴキブ---」
「ふんっ!!」
バシーンッ!!
永琳が言い終わる前に黒光りする虫は天に召された。
side:out
夜の暗がりの中、夜間装備をした自衛隊一行がイタリカの街に入る。
町の住民や領主の兵は親しげに挨拶してくるが帝国兵が最大の障害である。
「隊長、伊丹さん大丈夫っすかね・・・」
「全ては私の責任だ。その後始末はする。お前達、付き合わせてすまん」
「いいって事っすよ。でも意外だったっすね。あの伊丹さんレンジャー持ちだったなんて」
「俺も駐屯地を出る前に知って驚いたよ。だがレンジャー持ちならば不屈の忍耐で耐えるだろう・・・・」
「イメージが・・・精強な戦士のイメージがぁ・・・・」
栗林は伊丹がレンジャー持ちだと知り何故かショックを受けていた。
そんな間にテュカが警備の帝国兵達に眠りの魔法をかける。
恐らくここにいるだろうと予測される領主の館の庭にまで侵入を果たす。
そこで彼等はある人物と出会った。
その人物とは・・・・。
「あら、皆様お揃いで。ひょっとして彼を助けに来たのかしら?」
青娥であった。
何故ここにいるのかと思ったが幻想郷側は条件の中に無条件移動許可とかそんなのを入れていたのを思い出す。
「ええ、まぁ・・・」
「じゃあ、一緒に行きます?」
そう言いながら青娥は領主の館の壁に穴を開いた。
しかし既にこんなことぐらいでは驚かなくなった一行である。
ちなみに館に入ってすぐに迎えに来た亜人のメイドに案内される事となる。
「いいかボーゼス、今回の失態はお前自身の身体で取り返すしかない。あのような男には勿体なさすぎるが・・・・帝国の命運はお前にかかっていると言っても過言ではない。いいか、頼んだぞ」
ボーゼスはピニャからの勅命の言葉を思い出しながら伊丹耀司に当てがわれた部屋の前に立っていた。
その姿はもはや下着姿と言っても過言ではない。
「貴族の家に生まれたからには、覚悟は・・・・!」
意を決してドアを開ける。
室内は薄暗い。
窓から差し込む月明かりがかろうじて室内の光源となる。
歩みを進め、寝息の聞こえるベッドに近づく。
「ね、眠っておるのか・・・・?」
返事はなく、寝息のみ。
一歩、また一歩と近付く。
「い、伊丹殿・・・」
ギシリ・・・とベッドが軋む。
「ぼ、ボーゼス・・・さん・・・・?」
ゆっくりとボーゼスの唇が伊丹に近付き・・・。
「ぷっ・・・・くくく・・・・」
伊丹の口から微かに笑い声が漏れる。
その声は男の声ではない。
「伊丹だと思った?残念、封獣ぬえちゃんでしたー!」
途端に目の前の伊丹の姿がたちまち奇妙な形の翼のようなものがある少女に変わる。
(か、からかわれた・・・・・?パレスティー候爵家次女たる私が・・・こんな小娘に・・・・?)
プチンッ。
ボーゼスの頭の中で何かが切れ・・・・。
バチンッ!
封獣ぬえの頰にボーゼスのビンタが炸裂する。
と、同時に。
「このおバカーーーっ!!」
スパーーーーンッ!
灯りが灯り部屋の小部屋に隠れていた伊丹がスリッパでぬえの頭をはたいた。
見ればメイドや緑の人、その他大勢がそこにいた。
「面白いものが見れるってこれかよ!?どう見てもこっちが悪者になっちまうじゃないか!?」
「あ、あううっ・・・」
「ぬえ・・・・?」
「ひ、聖さま・・・・・ひっ!?」
ゴゴゴゴゴゴゴッとも聞こえるような雰囲気の聖にぬえが後ずさる。
「おいたが過ぎますよ・・・・・?」
ニッコリと笑っているが怒りモードの聖。
命蓮寺に戻った後、ぬえには説法12時間コースが待っていたという。
「で、そこのぬえ殿の頰に・・・・」
「あ、頭の方は俺がやりました」
伊丹が先に答える。
「わ、私がやりました・・・・・・」
ボーゼスがしゅんっと自白する。
「はぁーーっ」っと溜息をつくピニャ。
伊丹だけではなく、このような少女にまで手を上げたのか・・・・とピニャは悩む。
ぬえの実年齢を聞けば驚くだろうが。
「今回の件に関してはこちらで済ませますので、どうかお気になさらず・・・・・」
聖がピニャに声をかける。
聖としては完全に善意からである。
だがネガティブ思考に陥ったピニャには別の意味に聞こえてしまう。
(こ、こちらで済ませるとは、もしや軍に指示を出すということか!?気にするなとは、もう気にしても無駄だという意味なのか!?)と。
正に負のスパイラルである。
「あー、じゃあ、自分たちは先に戻らせてもらいます」
桑原が切り出す。
「おやっさん、国会から参考人招致がかかってますもんね。遅れたらまずいっすよ」
倉田が理由を付け加える。
「隊長さん、国会で証言するんですか。大変そうだぁ・・・」
伊丹が本音を言う。
この時、ピニャはレレィから国会とはニホンの元老院の様なものだと教えてもらっていた。
「確か、幻想郷側からも国会に何人か人数は不明っすけど参加するみたいっすね。伊丹さんもですか?」
「いや、俺は何も聞いてないけど・・・・」
「当然、伊丹にも行ってもらう予定よ?」
天井から声が聞こえ幻想郷メンバー以外の皆が驚いてそちらを見る。
天井から逆さまにスキマから上半身を覗かせている紫。
相変わらず髪と帽子が重力に逆らっている。
「紫さん、今なんと?」
聞き間違いかと聞き直す。
「伊丹、あなたも幻想郷の代表の一員として行くのよ。大丈夫、私も行くから」
「お、俺も!?」
何が大丈夫なんだ!?とは口が裂けても叫べない伊丹である。
なお、この時のピニャは(他国の元老院に招待されているだと!?それ程の重要人物なのか!?)と曲解してしまっていた。
(まずいまずいまずい!!まさかそれ程ニホンとゲンソーキョーが親密な間柄だったとは!?)
ごくり、と息を飲む。
ピニャの脳裏に再び燃え上がる帝都を蹂躙する巨大ゴーレムの大群が思い浮かぶ。
(それにこの小隊の隊長とも親しげだ!この隊長が元老院でこの男と行う報告次第では・・・・ゲンソーキョーだけでなくニホンも動く!?)
生憎とここにはさとり妖怪は来ていない。
もし来ていればピニャの考え違いを教えることが出来たであろう。
だが来ていないのだから仕方がない。
「わ、妾も行く!妾もアルヌスに行くぞ!」
ピニャの申し出に自衛隊一行は「えっ?」と言う様な表情をした。
伊丹は嫌な予感がして紫を見た。
「あら、面白そうね。いいわよ」
ですよねー、と言う表情をする伊丹。
「じゃあ、早速聖輦船の出航準備をして来ますね!」
ムラサ船長が嬉々と部屋から出て聖輦船へ向かう。
ピニャ達も急ぎ出立の支度を行う為に部屋を後にした。
輝夜さんのネット環境?
月にいたころの技術力の無駄な使い方で外界の回線に割り込んでます。
もちろん足なんてつきません。
ネトゲシーンの元ネタはあの駄天使さんです。
輝夜さんの口調がなかなか掴みにくかったので普通に喋ってもらっています。