GATE 幻想郷防衛軍彼の地にて斯く戦えり 作:にょろ35106
アルヌスの丘。
異世界への派兵から数ヶ月後の現在、その丘は反撃に出た異世界の軍隊である自衛隊により制圧されていた。
門の周りには戦車が展開し、有刺鉄線や柵、更には日本語と異世界語で立ち入り禁止の看板が立てられていた。
その門から僅か2キロほどの距離。
そこにももう一つの門があった。
その門の存在を知った自衛隊側はそれを第二ゲートと呼称した。
「偵察隊からの第二ゲートに関する第一次報告書です」
報告書を受け取る特地方面派遣部隊の指揮官・狭間。
幾つかの事柄が書かれ写真も添付されていたが簡単にまとめると以下の事が判明した。
・第二ゲートの近くには小さな湖が存在し、その湖の畔りに館が存在する。
・館は全体が紅い色をしている。
・正門前に門番と思われる帽子を被った女性が立っている。
・女性の服装は中国風であり、帽子には可能な限り近付き望遠撮影した添付の写真にあるように漢字で“龍”と書かれている。
・女性は常に目を瞑っており、恐らく熟練した戦闘技術を身に付け気配を探っているのでは無いかと偵察隊は考える。
・他にも第二ゲート付近において幾つかの人影が確認できた。
・用途は不明だが機械のような物体も確認される。
・偵察隊としては第二ゲート勢力との接触を具申する。
「う~む・・・にわかには信じられんな」
「私もそう思いました」
報告書を持ってきた幕僚・柳田も同意見だと言う。
「中国風の服装に“龍”と漢字の書かれた帽子・・・中国人か・・・?」
「しかし現在、中国側にゲートが開いたと言う情報はありません。情報操作・・・も考えられますが、この館は明らかな洋風建築。加えて特地派遣に参加させろと相変わらず言ってくる中国側にゲートが開いているのならば嬉々として人民解放軍を派兵し国際社会に向けて我が国にもゲートが存在すると喧伝し国際社会での優位性を主張するのではないかと・・・」
「うーむ・・・第二ゲート側の戦力が不明な以上、迂闊に接触するのは避けたいな。最悪、我々と同等の戦力を持っていた場合に戦闘になれば・・・」
「では、第二ゲート勢力との接触は特地側の武装勢力の対処後に?」
「それが最善かもしれん。この報告書は上に上げておこう。斥候には引き続き監視と調査を進めるように。ただし、接触は極力避けるように」
第二ゲート側の湖畔の館・紅魔館。
幻想郷の紅魔館そっくりに建てられている幻想郷の一大勢力であり、現時点での幻想郷防衛軍前線基地である。
その敷地内に古風な洋風建築とは異なる建物が建っていた。
「にとりさん、小型原子炉のチェック完了しました」
「オッケー。じゃあ引き続き、防衛用荷電粒子砲の組み立てを続けて」
作業机の上の図面を細かくチェックしながらある物を組み立て途中のにとりが指示を出す。
幻想郷防衛軍技術工廠であり河童達のテリトリーだ。
紅魔館そのものに入るには筆頭メイドの咲夜の許可が必要ではあるが紅魔館への電力供給と引き換えに敷地内での自由が認められている。
「荷電粒子砲って、外の世界より明らかに進んでるじゃないか・・・」
呆れながら呟く伊丹がそこに居た。
「あ、盟友。もう来てくれたんだ、もうちょっとまっててね」
組み上げ終わった機械を念入りにチェックするとその機械を伊丹に押しつけるように渡す。
「じゃあ、ちょっと試射に付き合ってよ」
「試射?これ武器なのか?」
にとりの後を付いて行きながらその機械を角度を変えたりしながら見る。
よく見れば構え方とかが銃に似ている気もする。
「じゃあ、説明するね。それはにとり特製の電気式投射機だよ」
「電気式・・・磁力投射機?」
「うん、電気の力で磁力を発生させて金属の塊を射出するんだ」
伊丹はその言葉の一つ一つをゆっくりと考えて行く。
青年思考中・・・。
「って!これレールガンじゃないか!?」
思い当たる兵器の名を叫ぶ伊丹であった。
幻想卿の河童の技術力は世界一ィィィィッ!
月の都「ほぅ?」
目を瞑っている門番さん?
もちろんその後に咲夜さんに居眠りがばれてお仕置きされましたとも。