GATE 幻想郷防衛軍彼の地にて斯く戦えり 作:にょろ35106
構成も変更して原作どおりに死に場所を求めているエムロイ信者の兵士達を指揮官クラス、徴兵された諸王国の農民など民間人からなる一般兵の構成です。
一般兵も一緒にイタリカを襲う理由は本文内に。
まぁ、増えても蹂躙されるだけなんですけどね・・・・。
UAが2万突破・・・だとっ!?
「す、すまなかった!!」
未知の武力を持つ一行の為、ピニャはプライドを抑える。
「い、いえいえ・・・」
まだ少し痛む鼻をさすりながら答える伊丹。
「歯が折れなかっただけマシですよ」
「うぐっ・・・・本当にすまなかった・・・・」
伊丹としてはフォローしたつもりなのだがピニャには嫌味に聞こえる。
ピニャから説明された街の状況は悪かった。
連日野盗に身を落とした兵士が襲撃を仕掛けて来ている。
街の外に出ることも出来ず籠城を余儀なくされ、この街に食料や物資を運んでくる商隊は野盗に襲われてしまう。
元々一般兵は農民や商人などの一般人が徴兵されて武器を持たされている。
その一般兵は指揮官クラスの兵と違い給金が出る訳ではない。
その代わり略奪などを行う事を許され、襲った敵から金品などを奪いそれを自らの物とすることが許されている。
指揮官クラスは指揮官クラスで自分達の死に場所は戦いの中だと信じ込み、この街を襲撃して来ている。
早い話が一般兵はこのまま帰ってものたれ死にする道しかなく、生きる為に野盗と化している。
死ぬ為に街を襲う指揮官クラスとは違うがどちらもイタリカの住民と領主から見れば敵である。
では一般兵達に金品を渡せば敵は減ると単純に考えがちだがそうすれば結局イタリカの住民は財産を失い、今度はイタリカの住民が生きる為に野盗に身を落とす事になる。
当然、この様な状況では当初の目的である難民達の自活の第一歩となる交易など行える状況ではない。
現にイタリカの経済活動は麻痺しているのだから。
帝国皇女と言う身分のピニャの案内で伊丹達一行はフォルマル伯爵家の当主ミュイ・フォルマルと会う。
そこにいたのはどう見ても子供の少女だった。
聞けば年齢は11歳と言う。
野盗の襲撃が迫るなか、伊丹達幻想郷一行と桑原達自衛隊一行は相談の末に協力を申し出た。
「倉田ちゃん、彼女ドストライクじゃない?」
「ええ、健気にも伯爵家と言う重い責任を背負っている少女・・・・萌えです!」
「でも、わかってるよね?」
「当然じゃあないですか・・・・」
「「YES!ロリータ!NO!タッチ!」」
ハモる伊丹と倉田。
「うっわー・・・・駄目だこいつら、早くなんとかしないと・・・・」
そしてそれを目撃してしまい汚物を見る様な視線を向ける栗林であった。
なお、このあと伊丹は藍にしばらく橙に近付くなと言われ必死の弁解をする。
「言い訳があるなら聞こう」
「だから藍さん、変な意味じゃないんですって!あれは小さな女の子は温かく見守るべきって意味なんですってば!」
必死の伊丹の説得が続く。
「そ、そうなのか、そう言う意味なのか・・・・」
藍は伊丹に言い包められててしまった。
後日・・・・。
「YESロリータ、NOタッチ」
橙を見ながら何気なく藍はその言葉を呟いた。
呟いてしまった。
「ら、藍しゃま・・・・?」
ダダダダダッ!ガバッ!
ものすごい勢いで走って来た紫が藍から橙を引き離しスキマを使って別の場所へ匿う。
「ら、藍、あなた疲れているのよ・・・・。思えば、いろいろな事を貴女に頼りっぱなしだったものね。いくら式とは言え、心身をリフレッシュする事も必要よね?藍、しばらく隙を与えるわ。外界での旅行の手配をしてあげるから楽しんでらっしゃい?」
可哀想な人を見る様な目で紫が見つめてくる。
「え、ゆ、紫様!?」
「いいのよ、気にしないで楽しんでいらっしゃい?大丈夫、橙の面倒は私と伊丹が見ておくから・・・」
「ちっ、ちが、違うんです!紫様ー!橙ーー!」
ズドドドドドドッ!
そんな音が立つ様な勢いで藍は走る。
いつもの冷静さなどかなぐり捨て、風圧で髪は絡まったりしてボサボサになってしまっている。
目的は一つ、あの男のハウスだ。
「ここがあの男のハウスだな!伊丹耀司ーーーっ!!」
「ら、藍さん!?どうしたんです!?」
「問答無用ーーっ!死ねーーっ!!」
「え、ええっ!?」
「お前を殺して私も死ぬーーーっ!!」
「ひいいっ!?」
「待て逃げるなー!」
「おおっ!?まさかの展開!?人間の男と幻想郷の妖怪賢者の式神との愛憎痴話喧嘩!?これは記事になりますよー!」
ブン屋の烏天狗が何かを興奮して口走っているが今の藍には聞こえていない。
「ちょ、文さん見てないで助けてーーーっ!」
「あははははははははっ!捕まえたーー!」
伊丹が見た藍は血涙を流し、いつも被っている帽子は脱げてしまっている。
「ぎゃーーーっ!出たーーっ!?妖怪狐女!?」
「元々私は狐の妖怪だ文句あるかーーっ!」
ガバッ!
「はーっ、はーっ!ゆ、夢・・・・?」
すぐ側には橙の寝顔。
橙を寝かしつけている間にうっかり眠ってしまっていたのだろう。
「な、なんと言う悪夢だ・・・・あの言葉は禁句だな・・・・」
橙の寝顔を眺めながらあの言葉を記憶から抹消すると決意した藍であったとか。
そして伊丹と倉田が栗林に汚物を見る様な目で見られていた日の深夜まで時間は戻り・・・。
桑原が駐屯地に援軍を要請したのと時を同じくして伊丹達幻想郷側も紅魔館経由で幻想郷に援軍要請を行なった。
ロゥリィは伊丹達に戦う理由を問う。
エムロイは戦いの神で戦いの中での殺人を否定しないが動機が重要であると言う。
伊丹は短く、だがロゥリィの納得の行く理由を答えた。
街の人を守りたいのと同時に帝国皇女のピニャに自分たちと喧嘩するよりも友好的になった方がいいと教える為だと。
ロゥリィは伊丹の動機に満足し、ぜひ協力したいと言った。
なぜかその時いろいろ曲解した上に久々に狂えそうだと嬉々としていたが。
人里・異界門隔離結界外縁部。
異世界からの襲撃で大ダメージを負った人里は紫の提案で人里を少し外側に向かって拡張する代わりに門を中心に直径約200メートルを異界門隔離結界と河童の作った電磁柵で囲い万が一にも異界門から再度敵が侵入して来た際の防波堤として利用していた。
正しい道順で歩かなければ竹林の悪戯兎謹製のトラップが牙を剥く通路付だ。
人里の人間から見れば奇妙な光景である。
河童が力仕事を鬼に依頼して石造りの四角い建物を建造したのだから。
正確にはコンクリートなのだが人里にはコンクリートで建物を建てる技術はない。
人里の人間から見れば継ぎ目のない石の建物に見える。
その中では異界前線基地の紅魔館から送られてくる全ての情報を大勢の河童達がパソコンで処理していく。
そんな中来た援軍要請。
ただの力押しなら暴れたがっている血気盛んな地底の鬼達を送り込めばいいだけなのだが今回は距離があり過ぎる。
聞けば外界の自衛隊という組織は戦闘ヘリと呼ばれる戦闘能力を持った飛行機械を送り込むとの連絡が来た。
天狗を送り込もうにも大勢の天狗を送り込むのには大天狗も否定的だ。
なにせその隙を突かれて他の妖怪勢力に天狗の領域を奪われる恐れもある。
幻想郷防衛軍は各勢力への協力要請で構築されているのであって強制ではない。
その要請を断る権利を大小問わず各妖怪勢力は与えられている。
移動速度と武力を両立。
武力は各勢力からの協力者からなんとかなるとして問題は移動速度だ。
「プロジェクト・Sの進捗度は?不明な点は想像で補ったあれですが・・・・」
「ほぼ終わっていると連絡がありました。いつでも使用可能な状態にあるはずです」
「急な要請に応えてもらえるでしょうか・・・」
河童達の会話が行われ、プロジェクト・Sの協力組織に要請が行われた。
結果は快諾。
ただしプロジェクト・S協力組織の一行も同行することが条件であった。
深夜の自衛隊アルヌス駐屯地を戦闘ヘリの編隊が飛び立つ。
「こいつら、キルゴア中佐の霊でも取り憑いたのか?」との呟きが出撃が決まった際に思わず呟かれたとか。
幻想郷の存在を知った今、ありえなくもない話だ。
問題はキルゴア中佐が架空の人物という事だが。
「狭間陸将!柳田幕僚!たった今、幻想郷側からも援軍が飛び立つとの連絡が来ました!」
連絡員が伝えに来た。
「飛び立つ?」
「はっ!紅魔館に滞在している連絡官が映像を中継しても良いとの事で映像が繋がっています!」
「わかった、映像ではあるが見送らせてもらおう」
狭間、柳田の両名は映像が繋がっているモニターのある部屋へ向かう。
モニターには紅魔館のバルコニーからの映像が映っている。
紅魔館の兵に配置された照明機器が第二ゲートを照らす。
映っているのは第二ゲートを正面から見た映像だ。
突如第二ゲートの正面の空間が裂け無数の目の様なものが見える空間が広がる。
八雲紫のスキマと呼ばれる異空間で狭間も柳田も幾度か目にする機会があったが今回のスキマは今までとは規模が違う。
巨大な何かを通過させる為の大きさがある。
やがてスキマの中からそれは姿を現した。
「帆船・・・・?」
柳田の呟きがそれを指し示していた。
「新生聖輦船の処女航海です!犬走椛さん、お願いします!」
船の舳先に立つ舟幽霊の少女、村紗水蜜が叫ぶ。
「わっかりました!ムラサ船長!」
後部甲板に立つ犬走椛の手にはこのぐらいならば良いだろうと持ち出しを許可された天狗の団扇。
それを振るうと十二分な風が巻き起こり巨体が更に速度を上げる。
村紗水蜜はやる気に満ち溢れていた。
この新生聖輦船・・・以下聖輦船はオリジナルの聖輦船と比べて2倍を越える大きさを誇り、それに伴い帆も大型になっている。
何より自動操縦機能は存在するが切り替えが可能であり、今は手動になっている。
暇を持て余していた時とは違う。
「進路を現地名イタリカへ!そこに助けを求めている人々もいます!」
「木造帆船だな?」
狭間が確認する様に柳田に聞く。
「はい、木造帆船です。何か木製の大きな箱を引っ張ってますね?」
柳田が見たままを答える。
「ああ、引っ張っているな」
「どうやって空飛んでいるんでしょうか?」
「分からん」
「ですよね」
二人は考えるのをやめて達観していた。
そのおかげからか胃薬から解放されていた。
常識を捨てるとは意外にも素晴らしい事だと実感していた。
コノ素晴ラシサヲ早ク総理ヲ始メ皆ニ教エテアゲナケレバ・・・・。
船乗り用語はほとんど分からないのでムラサ船長には普通にしゃべってもらいます。
聖輦船も補助推進力のマストプラスαありで。