GATE 幻想郷防衛軍彼の地にて斯く戦えり   作:にょろ35106

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遂にピニャさんが出会ってしまう・・・・


イタリカの街へ行こう

数日後。

 

「街に行くって?」

 

紅魔館に連絡に来た倉田から避難民達が自衛隊から譲り受けたワイバーンの鱗を売りに行く事を聞いた。

 

避難民達の自立を支援する自衛隊はこれを支援する事に決めたそうだ。

 

紫に許可を貰いに向かう間に待っていた倉田は咲夜を見て「リアルメイドキター !」と叫んでしまい思いっきり不審者認定されてしまい時間停止の餌食になりナイフの冷たい感触を味わった。

 

 

 

 

 

自衛隊車両は既に待機し、幻想郷側の一行を待つ。

 

「すんません、お待たせしました」

 

先頭は伊丹だが、後ろにいるのは霊夢と魔理沙ではない。

 

「初めての方は初めまして、紫様の式の八雲 藍です」

 

「霍青娥よ。気軽に青娥娘娘って呼んでもいいわ。こっちは宮古芳香、私の可愛い部下よ」

 

霊夢は博麗大結界に解れや歪みが発生していないか博麗の巫女としての本来の仕事に一旦戻り魔理沙は新種のキノコの噂を聞いて近くの森へ探しに行ってしまっていた。

 

「あ、あの!そ、その芳香って子、すごく顔色悪いんですが・・・お医者さんに見せた方が・・・・」

 

栗林が芳香の土気色の顔色を見て言う。

 

と言うか、なんでこの子は額にお札を張っているのだろうか?と栗林は真っ先に思った。

 

「あら、この子はこれでいいのよ?」

 

「そーだぞー。よしかはいつもこうだぞー」

 

「ねぇ、もしかしてぇ、その子魂がないのぉ?」

 

ロゥリィが真っ先に芳香の在り方に気付いた。

 

「ゾーンービーだーぞー。こわいだろー」

 

「ひっ!?ひいいぃぃっ!?ぞ、ゾンビーーー!?」

 

栗林が悲鳴をあげる。

 

「あら、ゾンビなんて無粋ね?この子はキョンシーよ」

 

「同じじゃないですかーー!?」

 

「いつまでやってるんだ・・・」

 

藍の呆れた様な声がした。

 

「それでは、出発しましょうか」

 

伊丹は別に芳香を見るのが初めてではないから耐性があった。

 

「青娥、ひとつ言っておく。私は紫樣の命だからお前と共にいることを忘れるな」

 

「もう、藍ちゃんのいけず」

 

「藍ちゃんと言うな・・・」

 

「はーい、藍ちゃん」

 

「・・・・・もういい・・・・・」

 

「あ、芳香。車に乗るときは頭に」

 

ゴンッ!

 

「遅かったわね・・・・」

 

「いーたーいー・・・・」

 

頭を抑えて蹲る芳香。

 

「ほらほら、痛いの痛いの飛んでけー」

 

「おー、痛くなくなったー」

 

「じゃあ、頭に気をつけてね」

 

「あーい」

 

次は青娥が手を添えてやって無事に乗り込んだ。

 

 

 

走り出してしばらくし会話にも花が咲く。

 

「いやー、やっぱめい☆コンはいいよなー」

 

唐突に伊丹が言う。

 

「どうしたんです、急に?めい☆コンが神作品なのは認めますが」

 

倉田も同意する。

 

「いやー、この間めい☆コンの限定版が届いてね。時間を忘れて見ていたよ」

 

「めい☆コンの限定版って・・・この間発売されたばかりじゃないっすか!?特地にいながらどうやって買ったんです!?」

 

「いやー、ちょっと幻想郷での伝手があってね。あ、そう言えばあと2、3日でステーションプレイのマスターアイドルが発売だっけ。倉田ちゃんも限定版予約した?」

 

「そ、そりゃもちろん予約してますけど・・・一体どうやって買ってるんだこの人は・・・・」

 

幻想郷と言う世界から外界の同人誌やらCDやらゲームソフトをどうやって買っているのか倉田は疑問だった。

 

 

 

なお、その伝手とは・・・。

 

東京は秋葉原を中心に全国展開するアニメ・同人ショップ、タイガーホール通信販売部門。

 

そこの人々は入荷したソフトを箱詰めし運送会社の伝票を貼っていた。

 

「えーと・・・ステーションプレイのマスターアイドル超豪華限定版が2本か。支払い済みで送り先は・・・・ああ、いつもの佐渡ヶ島の二ッ岩商事さんか。会社みたいだけどなんでいつもゲームソフトとかアニメBDを複数買いするんだろうな?そのわりにこの間は往年のロボットアニメの復刻版BD-BOXは単品買いだったけど・・・・」

 

呟きながら注文の品を箱詰めして行く作業員であった。

 

 

 

 

 

 

一方、伊丹達が向かっている街イタリカでは・・・。

 

帝国皇女ピニャ・コ・ラーダは狂いまくっている予定に頭を抱えていた。

 

前の街を立つ直前にフォルマル伯爵領のイタリカの街が襲撃を受けていると知った。

 

咄嗟にニホンかゲンソーキョーと戦闘状態になっていると思い馬を早駆けで駆け付けた。

 

しかしそこで見たのはアルヌスの丘を支配しているニホンとゲンソーキョーとの戦いに敗れ野盗に身を落とした連合諸王国軍の敗残兵達の姿だった。

 

見捨てて行くわけにもいかず、援軍としてフォルマル伯爵家に身を寄せ敗残兵・・・いや、野盗達と戦っていた。

 

野盗が撤退し、次の襲撃も予想されるなかピニャは伯爵家へと戻り仮眠を取ることにした。

 

緊急時に起きなければ水をぶっかけてもいいとフォルマル伯爵家のメイド長に伝えて。

 

 

 

 

 

 

 

今回は全員が車に乗っているためそれなりの速度で街に近付く。

 

「あれは・・・煙か?」

 

藍が真っ先に気付いた。

 

「あれ、本当だ」

 

「また煙かよ・・・・今度は何なんだ?」

 

倉田の双眼鏡を借り見る。

 

「あれは・・・かぎ・・・?」

 

「いや、火事」

 

「そう、火事・・・?」

 

不慣れな日本語でレレィは原因を推測する。

 

「なんか、煙に縁があるよな俺達・・・」

 

「ですねー」

 

街に近付くと街を囲う壁に焼けた痕跡やらが見える。

 

「うっわー・・・もしかして取り込み中かな・・・?」

 

不安を覚える伊丹だった。

 

 

 

 

ばしゃあっ!

 

突然冷水を浴びせられピニャは飛び起きた。

 

「お起きになりませんでしたので」

 

にっこりと笑いながら水の入っていた桶を手にしたメイド長が言う。

 

いくら本人の許可があるとはいえ帝国皇女を水をぶっかけて起こす度胸が凄い初老のメイド長である。

 

メイド長から内容を聞きながら着替えるピニャ。

 

だがその話の内容は今のピニャに追い打ちをかけるものも同然。

 

(馬の居ない鉄の馬車に緑の服・・・ニホンとか言う異世界の軍勢か・・・?見たことのない格好しているのも何人かいる・・・ゲンソーキョーか・・・?)

 

情報を整理しながら街の正面門に向かう。

 

途中で目に入る野盗対策の準備をしている兵や疲れて眠ってしまっている市民兵、不安そうな顔でこちらを見る子供達・・・。

 

いざ門まで来ても気後れしてしまう。

 

覗き窓から外を見る。

 

確かに馬の居ない鉄の馬車に緑の服の集団。

 

何人かは既に馬車から降りている。

 

「あれは・・・・なんと見事な尻尾だ・・・・亜人か?」

 

思わず声に出す。

 

他にも額に奇妙な札を貼った少女がぎこちない動きをしている。

 

その次に降りて来たのは・・・・

 

「あれは・・・!ロゥリィ・マーキュリー!?エムロイの十二使徒の一人!」

 

思わずあげた声に周りの兵も騒めく。

 

「お、おい、今、エムロイの神官様って・・・」

 

「あ、ああ・・・」

 

これで門を開けない訳にいかなくなった。

 

他の連中だけなら街の安全の為と追い返せばいいがエムロイの神官が居ては追い返すのは失礼にあたる。

 

そもそも、何故異世界の軍勢と思われる一団とエムロイの神官が一緒にいるのだろうか・・・。

 

よく見えないがまだ数人、馬車の中にいるように見える。

 

「ええい、ままよ!」

 

思い切ってピニャはドアを開けた。

 

 

 

 

ピニャがドアを開ける少し前。

 

「おー、なんだかふらふらするぞー」

 

どうやら乗り物酔いしたらしい芳香。

 

キョンシーでも乗り物酔いするとか大発見だと伊丹は思った。

 

藍はあいも変わらず凛としている。

 

ロゥリィが降りて来て伸びをする。

 

「じゃあ、行きますか・・・!」

 

決意を固め、入口らしいドアのような場所に向かう。

 

「たのぶぎゃっ!?」

 

ガンッ!

 

「よく来たな!歓迎しよう!」

 

・・・・・・・・

 

「ん・・・・?ガンッ・・・・?」

 

普通ならない音の原因を求めると緑の人とは違う服を着ている男が仰向けで地面に倒れている。

 

「ちょっと!あなた人が居るのに突然ドア開ける!?」

 

テュカがピニャを責める。

 

「も、もしかして・・・妾が・・・・?」

 

テュカ、レレィ、ロゥリィが同時に頷く。

 

「おー、青娥、伊丹死んだのかー?」

 

「いいえ、気絶してるだけよ」

 

「よかったー。死ぬのはいかん、死ぬのだけはいかんからなー」

 

「まぁ、もし死んでたら芳香と同じキョンシーにするのも悪くないかも」

 

「おい、青娥。伊丹は紫様のお気に入りのおもちゃ・・・・コホンッ!人間だ。勝手にキョンシーにするなど私が許さない」

 

「え゛っ!?こ、この人今、伊丹さんの事おもちゃって言った!?言ったよね!?」

 

栗林が藍のとんでもない発言に思わず声をあげた。

 

「いや、言ってない」

 

「嘘っ、言ったよ確かに!?」

 

「聞き間違いだ。いいか、何も、問題はない・・・」

 

ジーッと、藍は栗林の目を見つめる。

 

藍の瞳が微かに妖しく光る。

 

「だ、だって・・・・あれ・・・・?・・・・・うん、聞き間違い・・・。・・・・何も・・・・問題は・・・ない・・・」

 

虚ろな目で藍の言った言葉を繰り返す栗林。

 

藍の目の光が消え視線を外すと栗林はハッと意識を引き戻される。

 

「あれ・・・?何話してたんだっけ・・・・?」

 

栗林の反応に口元に微かな笑みを浮かべる藍であった。

 

 




毎日暑いっす・・・・皆様も体はお大事に・・・・。

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